| 【発明の名称】 |
鉄系焼結体部品の製造方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】志賀 竜治
【氏名】▲高▼ノ 由重
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| 【要約】 |
【課題】所望寸法の鉄系焼結体部品の製造方法を提供する。
【解決手段】鉄系粉末材料を圧粉、焼結した敷板焼結治具4に、鉄系粉末材料の圧粉体1を搭載して焼結する。さらには、鉄系粉末材料を圧粉、焼結した敷板焼結治具4の形状が、鉄系焼結体部品の焼結前圧粉体の多段下面を保持する形状である敷板焼結治具に、焼結前圧粉体を保持搭載して焼結する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 鉄系粉末材料を圧粉、焼結した敷板焼結治具に、鉄系粉末材料の圧粉体を搭載して、該圧粉体を焼結することを特徴とする鉄系焼結体部品の製造方法。 【請求項2】 鉄系粉末材料を圧粉、焼結した敷板焼結治具の形状が、鉄系焼結体部品の焼結前圧粉体の多段下面を保持する形状であって、前記敷板焼結治具に、前記焼結前圧粉体を保持搭載して、該圧粉体を焼結することを特徴とする鉄系焼結体部品の製造方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、鉄系粉末材料を所定形状に圧縮成形した圧粉体を焼結して、所望寸法の焼結体を得るための鉄系焼結体部品の製造方法に関する。 【0002】 【従来の技術】従来、焼結体部品の製造方法においては、粉末材料を圧縮成形した圧粉体をカーボン板、メッシュベルト、金網、セラミック板等の耐熱性を有する敷板上に配置し、焼結炉内を真空または非活性ガス雰囲気として、加熱焼結するものが一般的である。寸法精度を必要とする部品については、焼結後の焼結体を、さらにプレスして部品の寸法を正確に出すサイジング加工や切削研磨の加工を施している。 【0003】焼結後のサイジング加工や切削研磨の加工を焼結体に施す場合において、サイジング加工が困難であったり、切削研磨の加工に手間が多くかかり、結果として、粉末材料の歩留りが低下し、加工による費用が高くつくといった問題が生じる。 【0004】焼結体の所期の寸法精度が達成できないことの1つは、焼結温度において圧粉体が軟化し、降伏応力の低下をまねき、圧粉体の形状によっては、圧粉体の自重によって圧粉体の降伏応力を越える内部応力が圧粉体に発生した結果、圧粉体が変形してしまうことである。 【0005】また、焼結時に使用される敷板(敷板の形状は、圧粉体が搭載して接触する形状であればどのような形状でもかまわない。例えばリング状でも良い。以下同じ。)と圧粉体との熱膨張率が異なるため、焼結時の加熱冷却過程において敷板及び圧粉体の膨張や収縮が発生して、敷板と圧粉体との寸法の差が生じ、この寸法差により、敷板と圧粉体との接触による摩擦力により敷板と圧粉体の両者の自由な膨張や収縮が阻害される。この圧粉体における膨張や収縮の阻害から、圧粉体に降伏応力を越える内部応力が生じ、その結果、焼結体に歪みや寸法バラツキが生じる。 【0006】特開平8−20804号公報は、敷板の代わりにセラミックス製の複数のボールを圧粉体支持領域に敷き詰め、この敷き詰めたボール層により、敷板を使用した場合に発生する圧粉体との間の接触による摩擦力を減少させる方法を提案している。 【0007】しかし、図9に示すようなボス部9を有する多段の圧粉体6(外周凸部10の外径D3=80mm、ボス部9の外径D4=40mm、同内径D5=20mm、同高さh2=20mm、外周凸部10の高さh3=5mm、同幅h4=10mm、ボス部9の高さh5=7.5mm)場合には、その外周凸部10の自重F1(図10)による応力を緩和するために、多段の圧粉体6、特にそのボス部9をボール層に深く埋め込み、外周凸部10が自重でF1方向に変形しないよう上記ボールで保持しておく必要がある。 【0008】このため、ボス部9の高さh5に比例して外周凸部10を支えるボール量を増量させなければならず、ボス部9の高さh5が高い焼結体部品の場合にはボールのコストが増加し、またボールを増加させたことにより加熱に要する熱量も増え、焼結のコストの増加を伴う心配もある。 【0009】また、圧粉体の重量が大きい場合、圧粉体の径方向(例えば、図9の外径D3)への熱膨張にボールの追随が難しくなることもあり、その時は、焼結温度、ボールの表面性状の条件によっては、焼結温度での圧粉体の降伏応力以上の応力をボールより受ける場合もあって、焼結体の充分な寸法精度を確保できない心配がある。 【0010】実開昭63−2735号公報は、セラミックボード上に焼結体部品と同程度の熱膨張率を有する平板形状の敷板治具を載せ、複層構造とすることにより、焼結体部品と敷板治具間の摩擦力を低減することを提案している。 【0011】しかしながら、鉄系粉末材料の圧粉体を焼結する際には、温度に対する鉄系特有の変態により大きな寸法変化が起こる。このため同程度の熱膨張率だけを有する敷板治具では不充分であり、同等の温度域で変態を起こし、かつ同等の寸法変化が生じる敷板治具である必要がある。 【0012】また、同程度の熱膨張係数を有する敷板治具であっても、この敷板治具に何回も焼結の加熱及び冷却を繰り返すと、敷板治具に歪が生じてきて、焼結体部品を載せた時に均一に設置できないという問題が出る。 【0013】その場合、焼結体部品にも歪みが転写され、寸法精度が低下する。一般には敷板治具の歪みは、矯正がむつかしく、矯正を繰り返すと割れが生じる心配がある。このため焼結時に用いる平板形状の敷板治具の寿命は短く、経済性が悪い。 【0014】また、実開昭63−2735号公報に開示されたように、単なる平板形状の敷板治具では、図9のようなボス部9を有する多段の圧粉体の場合に、外周凸部10の自重を保持することができず、焼結時に自重により変形し、焼結体部品の寸法精度が低下する。 【0015】鉄系焼結体部品の焼結前圧粉体の多段下面を保持する形状に、敷板治具を多段に加工する方法もあるが、敷板治具の機械加工費による製造コスト上昇が避けられない。 【0016】 【発明が解決しようとする課題】鉄系圧粉体を焼結する工程で、鉄系圧粉体を焼結温度まで加熱した際、圧粉体が著しく軟化する。そして、圧粉体の自重によって生じる内部応力や、圧粉体と敷板治具との摩擦力によって生じる応力により、前記軟化した圧粉体、あるいは多段の圧粉体が変形するため、焼結されると初期の焼結体の寸法精度が確保できないという課題があった。 【0017】 【課題を解決するための手段】本発明は、焼結時の圧粉体の自重によって生じる鉄系圧粉体の内部応力や、鉄系圧粉体と敷板治具との摩擦力によって生じる圧粉体への応力を緩和し、寸法精度の良好な焼結体部品を製造することを以下の手段により可能とした。 【0018】すなわち、鉄系粉末材料を圧粉、焼結した敷板焼結治具に、鉄系粉末材料の圧粉体を搭載して、該圧粉体を焼結して鉄系焼結体部品を製造する方法である。また、鉄系粉末材料を圧粉、焼結した敷板焼結治具の形状が、鉄系焼結体部品の焼結前圧粉体の多段下面を保持する形状であって、敷板焼結治具に焼結前圧粉体を保持搭載して、該圧粉体を焼結して鉄系焼結体部品を製造する方法も有用である。 【0019】焼結体を敷板治具として用いたことにより、複数回の加熱、冷却を繰り返しても歪みは小さく、歪みが生じた場合でも焼結体の変形能によりサイジングによる寸法矯正も可能であるため長寿命で経済性に優れる。 【0020】また、鉄系粉末材料による敷板焼結治具を用いることにより、鉄系の圧粉体が高温域で起こすオーステナイト変態等の寸法変化が生じても、敷板焼結治具も同様の寸法変化挙動を示すため、寸法精度を維持することができる。 【0021】 【発明の実施の形態】本発明の技術は、鉄系粉末材料を所定形状に圧縮成形した圧粉体を焼結して、所望寸法の焼結体を得るための鉄系焼結体部品の製造方法であり、各種の成分の鉄系粉末材料において有効である。焼結温度での圧粉体内部の応力を圧粉体の降伏応力以下にすることにより、圧粉体に変形が生じないため、寸法精度の良好な焼結体を製造することができる。 【0022】敷板治具としての焼結体(敷板焼結治具)の材質は、焼結しようとする鉄系粉末材料の圧粉体の材質と同一であることがより好ましく、変態域でも近似した熱膨張収縮挙動により圧粉体と敷板治具間の摩擦力を低減できる。 【0023】本発明の敷板焼結治具に含有された炭素量は、焼結体部品となる圧粉体に含有された炭素量の差が±0.3重量%以内のものが好ましい。敷板焼結治具に含有された炭素量が、焼結しようとする圧粉体に含有された炭素量より0.3重量%を超える場合、圧粉体が焼結される際に浸炭される心配がある。 【0024】また、敷板焼結治具の炭素量が、圧粉体より0.3重量%未満の場合、焼結体部品となる圧粉体が焼結される際に脱炭される心配がある。焼結体部品となる圧粉体の浸炭や脱炭が起こった場合、焼結体部品の金属組織に変化が生じ、焼結体部品の特性が変化する。焼結体部品となる圧粉体と同一の炭素量である敷板焼結治具を使用するのが望ましい。 【0025】敷板焼結治具の場合、複数回の加熱冷却を繰り返しても、空孔がほとんど存在しない溶製材(鋳造材、鍛造材等)による敷板治具と比較すれば、歪み量は小さい。焼結体中に空孔が存在するため、空孔形状が変形することにより局所的に応力の緩和を起こしやすいので全体の歪み量が小さくなるためと考えられる。 【0026】また、敷板焼結治具に歪みが生じた場合、金型内で再圧縮すること(サイジング)により歪みを矯正することができる。焼結体の場合、内部空孔が存在するため、圧縮時に空孔が潰れる効果により圧縮時の変形能が高く、容易に歪みを矯正することができる。そのため敷板治具としての寿命が長く経済性に優れる。内部空孔のない溶製板材を用いた場合、変形能が低いためサイジングによる歪み矯正が充分にできないため、寿命が短い。 【0027】たとえ形状が複雑なものであっても金型を作製すれば、安価に大量の圧粉体を製造することができる。このため、敷板焼結治具は、加熱、冷却を繰り返すような条件であって、それがために交換頻度が高いような敷板治具として用いるのに適している。 【0028】なお、段付き形状等の多段の圧粉体では、自重の影響による応力集中が多段の圧粉体の降伏応力を越える状況となりやすく、変形し寸法精度が低下しやすい。そこで、自重の影響を緩和するため、焼結体部品となる圧粉体の多段下面を保持する形状の敷板焼結治具を用いて、応力集中の原因となる部位の自重を保持し、焼結体部品の寸法精度を確保することができる。 【0029】敷板焼結治具は、金型を用意すれば、安価に大量の多段形状や複雑形状のものを歩留まり良く製造することができる。溶製材を用いた場合は、多段複雑形状に加工するためには切削加工が必要であり、材料の歩留まり、切削工程の費用を考慮せねばならず、結果的にコストが高くなる場合がある。 【0030】本発明で使用する敷板焼結治具の寸法と、焼結体部品の多段下面との寸法は、寸法差が少ないことが好ましいが、焼結体部品の要求寸法精度を考慮して規定されるべきである。焼結体部品の要求される寸法精度が低い場合は、敷板焼結治具の多段形状との寸法差も厳密な精度を要求されない。望ましくは、焼結体部品の多段下面に±0.02mmの範囲内での寸法差におさえて保持搭載するのが好ましく、図8に変形例の模式図を示すように、内側リング部12の自重F2による焼結体部品の変形を抑さえ、高寸法精度の焼結体部品を得ることができる。 【0031】また、敷板焼結治具は、多段形状の製品を支持するために、複数の焼結治具を組み合わせて多段形状の敷板焼結治具とすることもできる。組み合わせる場合には、焼結治具同志を焼結接合により結合させ、一体ものの敷板焼結治具とすることも有用である。 【0032】本発明で使用される敷板焼結治具の空孔率は、1〜50体積%が好ましい。1体積%未満では、空孔のほとんど存在しない溶製板材と同様に、加熱冷却を繰り返すと歪みを生じやすく、歪みはサイジング工程などを施しても矯正しにくくなる。また、50体積%を超えると、加熱冷却により強度が劣化して使用できなくなる。 【0033】なお、圧粉、焼結した敷板焼結治具の替わりに、焼結前の圧粉しただけの敷板治具(敷板圧粉治具)を用いることも有用である。ただし、敷板圧粉治具の1回の使用の後は、敷板焼結治具になるのは当然である。 【0034】以下、本発明をどのように実施するかを具体的に示した実施例及び比較例を示す。まず、実施例(1)について示す。重量%でニッケル(Ni)が4%、銅(Cu)が1.5%、モリブデン(Mo)が0.5%で、残部が主成分となる鉄(Fe)である鉄合金粉末に、重量%で0.5%の黒鉛(C)粉末及び0.8%のステアリンサン亜鉛(潤滑成分となる。)を配合し、V型混合機(Vブレンダー)で30分間混合した粉末材料15を準備した。 【0035】次に、上記粉末材料15を用いて、図2に示す円筒形状の圧粉体1(寸法諸元は、外径D1=60mm、内径D2=50mm、高さh1=16mm)を成形した。図2の(a)は圧粉体1の横断面、(b)は上方から示したものである。この圧粉体1の成形密度は7.0g/cm3であった。焼結はメッシュベルト式の炉を用い、焼結温度は1150℃とした。 【0036】上記圧粉体1を焼結する時に用いる敷板治具は、実施例(1)のものでは圧粉体1と同じ粉末材料15を用いた敷板焼結治具4であって、図1に示すようにカーボン板2(厚みh11=5mm)の上に設置している。 【0037】実施例(1)の敷板焼結治具4(外径D15=66mm、内径D16=46mm、高さh10=8mm)は円環形状であって、上記圧粉体1を搭載してメッシュベルト炉で焼結するに十分な大きさである。そして、その熱膨張係数は12×10-6である。 【0038】前記敷板焼結治具4の熱膨張係数は、敷板焼結治具4と同じ粉末材料15を用いた直径3mm、長さ10mmの円柱の焼結体の室温から600℃までの長さの伸びを測定して求めたものである。 【0039】圧粉体1を焼結した焼結体部品の外径D1寸法の最大値と最小値との差を20コの焼結体部品で測定し、その平均値を外径バラツキとした。結果を表1に示す。併せて、焼結前の圧粉体の外径バラツキも示している。実施例(1)では外径バラツキの少ない焼結体部品が得られた。 【0040】 【表1】
【0041】比較例(1)でも、実施例(1)と同じ圧粉体1を用いた。比較例(1)での焼結時の敷板治具は、図7に示すように、表面に0.3mm厚さのアルミナ(Al2O3)を被覆したカーボン板2(厚さ5mm)である。なお、Al2O3の被覆は少なくとも0.2mm厚さで良いと考えられる。 【0042】比較例(1)は、従来からの技術に該当し、敷板治具であるカーボン板2の静摩擦係数(μ)は0.55、熱膨張係数は4×10-6である。静摩擦係数は、該カーボン板2を次第に傾斜し、圧粉体1が動き出す角度から計算したもので、熱膨張係数は、実施例(1)と同様の方法で測定した。 【0043】表1に示すように、比較例(1)では焼結時のカーボン板2と焼結体1との間の摩擦力によって、外径バラツキが大きい。前述のように、実施例(1)では外径バラツキの少ない焼結体が得られている。それは、比較例(1)における焼結時のカーボン板2と圧粉体1の間の摩擦力が、実施例(1)においては、敷板焼結治具4の存在によって低減された結果であると考えられる。 【0044】圧粉体1を焼結するときの敷板治具を圧粉体1と同じ粉末材料15を用いた敷板圧粉治具3や、純鉄粉末のみを用いた敷板圧粉治具5とした場合でも、実施例(1)と同様に、外径のバラツキの少ない焼結体部品を得ることができる。そして、上記敷板圧粉治具3、5は焼結されたものとなって敷板焼結治具4として使用できる。 【0045】次に、実施例(2)、(3)について示す。Fe粉末に、重量%でCu粉末1.5%、C粉末0.5%及びステアリン酸亜鉛0.8%を配合したものをV型混合機(Vブレンダー)で30分間混合して粉末材料16を準備した。 【0046】その粉末材料16を用いて、図5(a)、(b)に示す形状(外側リング部13外径D6=120mm、同内径D7=100mm、同高さh6=60mm、内側リング部12外径D8=70mm、同内径D9=50mm、同高さh7=40mm、外側リング部と内側リング部との結合部14の厚みh8=6mm、同幅h9=8mm)の圧粉体11を作成した。 【0047】図5(a)は圧粉体11の横断面、図5(b)は圧粉体11を上方から示したものである。圧粉体11の成形密度は6.9g/cm3であった。焼結はバッチ式の炉を用い、窒素雰囲気中で焼結温度は1150℃とした。 【0048】実施例(2)については、図3(a)、(b)に焼結時の敷板焼結治具7の形状、図3(c)に圧粉体11を前記敷板焼結治具7に搭載した状況を示す。敷板焼結治具7は、図3(a)、(b)示す形状(外径D10=125mm、突起部外径D11=75mm、孔径D12=50mm、突起部高さは1/2(h6−h7)=10mm、突起部以外の厚さh13はカーボン板2の厚さh11と同じ5mm)であって、実施例(2)の圧粉体11と同じ粉末材料16を用いて焼結したものである。 【0049】実施例(3)については、図4(a)、(b)に焼結時の敷板焼結治具8の形状、図4(c)に圧粉体11を前記敷板焼結治具8に搭載した状況を示す。敷板焼結治具8は、図4(a)、(b)示す形状(外径D13=92mm、内径D14=78mm、高さh12=27mm)であって、実施例(3)の圧粉体11と同じ粉末材料16を用いて焼結したものである。 【0050】その敷板焼結治具7、8の熱膨張係数は、圧粉体11と同じ12×10-6である。実施例(2)、(3)に使用されている敷板焼結治具7、8は、圧粉体11の多段下面を支持するような形状を持つ治具の例である。図5(a)の圧粉体11は、焼結加熱時に自重の影響を受け、図8に示すような変形を生じやすい。そのための敷板治具の形状は圧粉体11の内側リング部12を支持するようなものとした。 【0051】図3(a)、図4(a)の敷板焼結治具7、8は、金型を用いて成形密度6.7g/cm3に圧粉され、バッチ炉1150℃で焼結されたものである。金型を用いて形状が形成されているため、安価に製造することが可能である。 【0052】実施例(2)では、敷板焼結治具7を用い、圧粉体内側リング部12を支持した(図3(c))。実施例(3)では、前記治具7の上に敷板焼結治具8を搭載して、圧粉体内側リング部12と外側リング部13並びに、その結合部分14を保持した(図4(c))。 【0053】これら実施例(2)、(3)での焼結された焼結体部品の上方部(敷板焼結治具7、8により保持されない部分)と下方部(敷板焼結治具7、8により保持される部分)の外径を4方向で測定した。その測定状況を図6に示す。10個の焼結体部品を各実施例にて測定し、その測定値の平均値及び最大値と最小値の差を表2に示す。併せて、焼結前の圧粉体の測定値も示している。 【0054】 【表2】
【0055】実施例(2)、(3)では、上方部外径と下方部外径の各平均値の差は小さく、自重の影響による変形のない良好な焼結体が得られた。また、実施例(2)、(3)では、自重を保持し、かつ敷板焼結治具の熱膨張収縮が圧粉体とほぼ同じであることから、変形量が少なく、寸法のバラツキも小さい。外径の寸法のバラツキが小さいことは、他の寸法(たとえば、高さ等)のバラツキも小さいものである。 【0056】比較例(2)では、比較例(1)と同じのカーボン板2を用いて、実施例(2)、(3)と同様の粉末材料16による圧粉体11により焼結を行った。表2に示すように、上方部外径平均値が下方部外径平均値より小さく、自重の影響により図8に示すような変形を生じていることが分かる。実施例(2)、(3)の方が、上方部外径と下方部外径の各平均値の差は小さく、自重の影響による変形のないことは、前述のとおりである。 【0057】また、比較例(2)で外径の最大値と最小値の差が大きい原因は、自重の影響による変形及び圧粉体と敷板焼結治具との間の摩擦の影響によるものと考えられる。実施例(2)、(3)では、変形量が少なく、寸法のバラツキが少ないことは前述のとおりである。 【0058】次に、実施例(4)〜(9)について説明する。実施例(4)〜(7)の粉末材料17は純鉄粉末に重量%で2%の銅(Cu)粉末と0.8%のステアリン酸亜鉛粉末をV型混合機(Vブレンダー)で30分間混合したもの、実施例(8)、(9)の粉末材料18は純鉄粉末に重量%で2%の銅(Cu)粉末と1%の黒鉛粉末(C)と0.8%のステアリン酸亜鉛粉末をV型混合機(Vブレンダー)で30分間混合したものである。 【0059】上記粉末材料17、18を前述の形状(図2(a)、(b)に示す。)の圧粉体1に成形した。圧粉体の成形密度は6.9g/cm3であった。焼結雰囲気は3種類を用いた。すなわち、実施例(4)、(5)、(8)、(9)での炭化水素変成ガスは、体積%でCH4:0.4〜0.7%、CO:28.6〜28%、CO2:0〜0.2%、H2:48〜45%、N2:22.2〜26.4%、水蒸気:0.093〜0.6%のものである。実施例(6)は窒素雰囲気であり、実施例(7)は真空(10-3torr)雰囲気である。実施例(7)の場合は密閉型炉であって、それ以外の焼結雰囲気ではバッチ型の炉を用いた。いずれも、1150℃の焼結温度で1時間の焼結を行った。 【0060】そして、表3に示すように、実施例(4)では純鉄粉を用いて、また実施例(5)では重量%で0.3%、実施例(6)、(7)では0.4%、実施例(8)では0.7%、実施例(9)では1.0%の黒鉛粉末(C)を純鉄粉に混合した粉末材料を用いた。そして、実施例(1)と同様の形状(外径D15=66mm、内径D16=46mm、高さh10=8mm)の圧粉体を作成し、1150℃で焼結した敷板焼結治具4を使用した。 【0061】 【表3】
【0062】実施例(4)〜(9)で実施例(1)と同様の寸法測定を行った結果、外径のバラツキは小さいものであった。また、焼結体部品の金属組織を調査したところ、浸炭や脱炭のような組織は検出されなかった。結果を表4に示す。なお、実施例(6)の窒素雰囲気、あるいは実施例(7)の真空雰囲気でも、焼結体部品の外径バラツキが小さく、又その金属組織に浸炭や脱炭がみられない良好な結果を得た。 【0063】 【表4】
【0064】比較例(3)、(4)では実施例(4)〜(7)と同じ粉末材料17を用いて、比較例(5)、(6)では実施例(8)、(9)と同じ粉末材料18を用いて、同様に、前述の形状の圧粉体1を作成して、炭化水素変成ガス中にて焼結を行った。 【0065】その際、比較例(3)、(5)では、圧粉体をセラミック敷板治具の上に搭載して焼結を行った。この比較例(3)、(5)は従来の技術に相当する。比較例(4)、(6)については、敷板焼結治具4を用いた。すなわち、比較例(4)では重量%で0.4%、比較例(6)では0.6%の黒鉛粉末(C)を混合した粉末材料を用いて、実施例(1)と同様の敷板焼結治具4を使用した。 【0066】表4に示すように、比較例(4)、(6)において、外径のバラツキは小さいものであったが、比較例(3)、(5)での外径バラツキは大であった。また、焼結体部品の金属組織を調査したところ、比較例(4)、(6)で浸炭組織や脱炭組織が見られ、焼結体部品として使用できなかった。比較例(4)では、圧粉体1にCが含まれておらず、敷板焼結治具4のC量が0.4%であることから、敷板焼結治具4中のCが焼結中に圧粉体1に拡散し、浸炭したと考えられる。 【0067】また、比較例(6)では、逆に、圧粉体1のC量が敷板焼結治具4のC量よりも0.4%多いため、圧粉体1中のCが敷板焼結治具4へと拡散し、圧粉体1が脱炭したと考えられる。敷板焼結治具4中のC量が、圧粉体1のC量の±0.3%以内であれば、良好な金属組織が得られることが判る。 【0068】 【発明の効果】鉄系粉末材料を圧粉、焼結した敷板焼結治具に、鉄系粉末材料を所定形状に圧縮成型した圧粉体を搭載して、該圧粉体を焼結すると、所望寸法の焼結体を得ることができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000002130 【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
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| 【出願日】 |
平成10年(1998)6月30日 |
| 【代理人】 |
【弁理士】 【氏名又は名称】上代 哲司 (外2名)
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| 【公開番号】 |
特開平11−80807 |
| 【公開日】 |
平成11年(1999)3月26日 |
| 【出願番号】 |
特願平10−183557 |
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