| 【発明の名称】 |
多結晶水素吸蔵合金粒子の製法 |
| 【発明者】 |
【氏名】橋本 卓哉
【氏名】西村 康一
【氏名】藤谷 伸
【氏名】西尾 晃治
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| 【要約】 |
【課題】粉体粒子の結晶粒を微細化することにより、水素吸放出の際の結晶格子の歪みを緩和し、微粉化の進行を抑制して、耐久性の向上を達成できる多結晶水素吸蔵合金粒子を提供する。
【解決手段】水素吸蔵合金の粉末を所定の水素圧力雰囲気中で水素化するステップ、前記水素吸蔵合金粉末を、水素吸蔵合金粉体粒子に含まれる金属元素のうち、金属水素化物を形成する何れかの金属元素の水素解離温度以下の温度で加熱保持して脱水素化を行なう第1の脱水素化ステップ、前記水素吸蔵合金粉末に対して、真空引きを施して、さらなる脱水素化を行なう第2の脱水素化ステップ、前記水素吸蔵合金粉末を、所定温度に加熱された雰囲気中で保持し、各々の粉体粒子中に微細な結晶粒を多数析出させる等温保持ステップとを含んでいる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 水素吸蔵合金の粉末を所定の水素圧力雰囲気中で水素化するステップ、前記水素吸蔵合金粉末を、水素吸蔵合金粉体粒子に含まれる金属元素のうち、金属水素化物を形成する何れかの金属元素の水素解離温度以下の温度で加熱保持して脱水素化を行なう第1の脱水素化ステップ、前記水素吸蔵合金粉末に真空引きを施して、さらなる脱水素化を行なう第2の脱水素化ステップ、前記水素吸蔵合金粉末を、所定温度に加熱された雰囲気中で保持し、各々の粉体粒子中に微細な結晶粒を多数析出させる等温保持ステップを含むことを特徴とする多結晶水素吸蔵合金粒子の製法。 【請求項2】 水素化ステップは、水素吸蔵合金粉末をプラトー圧以上の水素圧力雰囲気中で保持して行なう請求項1に記載の多結晶水素吸蔵合金粒子の製法。 【請求項3】 第1の脱水素化ステップは、水素吸蔵合金粉末を、金属水素化物を形成する何れかの金属元素の水素解離温度以下の温度で、1時間〜24時間加熱保持して行なう請求項1又は請求項2に記載の多結晶水素吸蔵合金粒子の製法。 【請求項4】 第2の脱水素化ステップは、水素吸蔵合金粉末を10-2Torr以下の圧力中で保持して行なう請求項1乃至請求項3の何れかに記載の多結晶水素吸蔵合金粒子の製法。 【請求項5】 第2の脱水素化ステップは、水素吸蔵合金粉末を100℃〜600℃に昇温した状態で行なう請求項1乃至請求項4の何れかに記載の多結晶水素吸蔵合金粒子の製法。 【請求項6】 等温保持ステップは、水素吸蔵合金の融点より低く、該融点の1/2以上の温度で、水素吸蔵合金粉末を保持して行なう請求項1乃至請求項5の何れかに記載の多結晶水素吸蔵合金粒子の製法。 【請求項7】 等温保持ステップは、水素吸蔵合金粉末を、所定温度に加熱された雰囲気中で5分〜24時間保持して行なう請求項1乃至請求項6の何れかに記載の多結晶水素吸蔵合金粒子の製法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、水素の吸蔵、放出に対する耐久性にすぐれた水素吸蔵合金粉末の製造方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】水素吸蔵合金は、燃料電池、ヒートポンプ、蓄熱システム、水素自動車などのエネルギーとなる水素を貯蔵、輸送したり、ニッケル水素電池などの金属−水素化物電池の電極に用いられている。 【0003】これら装置は、水素吸蔵合金が水素を吸収、放出する反応を利用したものであって、水素吸蔵合金の寿命は、この吸放出サイクル回数によって判定される。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】水素吸蔵合金は、粉末状で使用されることが多い。一般に水素吸蔵合金粉体粒子は、単一の結晶粒からなり、結晶粒内の結晶格子間に水素が原子状態で取り込まれることにより水素を吸収し、また、結晶格子間に吸収された水素が取り出されることにより水素を放出する。この水素吸放出によって結晶格子に歪みを生ずるため、水素吸放出サイクルを繰り返すと、歪みが蓄積され、その応力によって水素吸蔵合金の粉体粒子に粉砕が起こり、微粉化することが知られている。粉砕によって出現する新生面は、非常に活性であるため、酸素などの吸着性の高いガスにより被毒されやすい。水素吸蔵合金が被毒されると、水素の吸収能力が低下してしまうため、水素吸蔵合金の耐久性を向上させ、長寿命化を達成するには、結晶格子の歪みの発生を緩和して、微粉化の進行を抑えることが重要である。 【0005】結晶格子の歪みを緩和するには、水素吸蔵合金粉体粒子の結晶粒を微細化させることが有効である。結晶粒を微細化させた水素吸蔵合金粉体粒子は、出発材料である純金属の混合体や、溶融法で得た合金粒子をボールミリング処理してアモルファス状態の水素吸蔵合金を作製し、該合金に所定の熱処理を施して作製できることが知られている。しかしながら、一旦アモルファスの状態にした後、結晶質にすると、結晶粒と結晶粒の間(粒界)に、水素の吸放出に寄与し難いアモルファス相が残ったり、粒界に他の相が形成されてしまうことがあった。 【0006】発明者らは、水素吸蔵合金を水素化した後、昇温による脱水素化を行なっても、構成元素のうちの単体金属の何れかが水素化物として点在した状態で残留することに着目し、このような状態の水素吸蔵合金から水素をさらに除去すると、残存していた水素化単体金属が純金属となり、この純金属が再結合時に結晶粒の成長を抑制する働きがあり、析出する結晶粒は微細になることを見出した。 【0007】本発明の目的は、粉体粒子の結晶粒を微細化することにより、水素吸放出の際の結晶格子の歪みを緩和することができ、微粉化の進行を抑制して、耐久性の向上を達成できる多結晶水素吸蔵合金粒子を提供することである。 【0008】 【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明の水素吸蔵合金粉体粒子の製法は、水素吸蔵合金の粉末を所定の水素圧力雰囲気中で水素化するステップ、前記水素吸蔵合金粉末を、水素吸蔵合金粉体粒子に含まれる金属元素のうち、金属水素化物を形成する何れかの金属元素の水素解離温度以下の温度で加熱保持することにより脱水素化を行なう第1の脱水素化ステップ、前記水素吸蔵合金粉末に真空引きを施して、さらなる脱水素化を行なう第2の脱水素化ステップ、前記水素吸蔵合金粉末を、所定温度に加熱された雰囲気中で保持し、各々の粉体粒子中に微細な結晶粒を多数析出させる等温保持ステップとを含んでいる。 【0009】水素化ステップは、水素吸蔵合金粉末をプラトー圧以上の水素圧力の雰囲気中で保持して行なうことが望ましい。第1の脱水素化ステップは、水素吸蔵合金粉末を、金属水素化物を形成する何れかの金属元素の水素解離温度以下の温度で1時間〜24時間加熱保持して行なうことが望ましい。第2の脱水素化ステップは、水素吸蔵合金粉末を10-2Torr以下の圧力中で保持して行なうことが望ましく、また、水素吸蔵合金粉末を100℃〜600℃に昇温した状態で実施することが望ましい。等温保持ステップは、水素吸蔵合金の融点より低く、該融点の1/2以上の温度で行なうことが望ましく、また、水素吸蔵合金粉末を所定温度に加熱された雰囲気中で5分〜24時間保持して行なうことが望ましい。 【0010】 【作用】水素吸蔵合金の粉末を一旦水素化した後、昇温による第1の脱水素化が行なわれる。このとき、上記条件で第1の脱水素化を行なうことにより、構成元素のうちの何れかの金属元素が、金属水素化物群(金属水素化物が数個から数十個程度の凝集を起こした島の領域)の状態で多数点在した状態で残留する。このような状態の水素吸蔵合金粉末に対して、真空引きによる第2の脱水素化を行なうと、金属水素化物群から水素がほぼ完全に除去されて、水素化単体金属が純金属群となる。得られた水素吸蔵合金粉末に熱処理を施すと、前記純金属群を夫々核として結晶粒が成長するため、再結合時に結晶粒の成長が抑制され、水素吸蔵合金粉体粒子中に多数の結晶粒が析出する。 【0011】 【発明の実施の形態】本発明の適用される水素吸蔵合金は、その組成が特に限定されるものではなく、例えば、LaNi5、TiMn2、Mg2Ni、ZrMn2、ZrNi2、TiCr2や、これらの合金に対して種々の元素を添加した多成分系の水素吸蔵合金を挙げることができる。なお、上記結晶粒の核となる純金属群を多数存在させるために、水素化物を形成しやすい金属元素を、所定の化学量論比よりも若干多く含ませることが望ましい。 【0012】水素吸蔵合金の粉末化方法も、限定されるものではなく、アーク溶解で作製された水素吸蔵合金インゴットを機械的に粉砕したものでもよいし、アトマイズ法などによって予め粉末状にしたものでもよい。なお、水素吸蔵合金は、均質化された単相のものを用いることが望ましい。単相の水素吸蔵合金を得ることが困難な場合は、母合金を急冷凝固処理により均質化させて単相化すればよい。 【0013】以下、本発明の各ステップについて説明する。本発明は、図2に示す装置(10)を用いて実施することができる。図2の装置(10)は、内部に耐圧性の容器を有する試料室(12)の外周にグラファイトヒーター(14)を具えており、試料室(12)には、高圧の水素ガスを供給する圧縮水素ボンベ(16)と、試料室(12)を真空状態にする真空ポンプ(17)と、試料室(12)の圧力を昇温中も維持できるように逆流防止弁(18)が連繋されている。 【0014】<水素化ステップ>水素吸蔵合金の粉末を調製し(図1のステップ1)、これを試料室に入れ、室温で水素化する(図1のステップ2)。水素化は、反応炉に水素ガスを導入することによって実施される。導入される水素ガスの圧力は、水素吸蔵合金を初期活性するのに必要な水素圧力以上、つまり使用する水素吸蔵合金のプラトー圧以上の水素圧力で行なう。水素化を行なうことによって、水素吸蔵合金に水素が吸収される。なお、後述する実施例2に示すとおり、水素ガス雰囲気中でボールミリング処理を行なうことにより、水素化と同時に粉末の調製を行なうようにしてもよい。 【0015】<第1の脱水素化ステップ>水素化された水素吸蔵合金粉末を、以下の温度、圧力条件下で保持して、水素吸蔵合金を構成する何れかの金属元素の一部又は全部が金属水素化物の状態で残存するように、脱水素化を行なう(図1のステップ3)。何れかの金属元素を水素化物の状態で残存させるために、水素吸蔵合金粉末を、当該金属元素の水素解離温度以下の温度、水素解離圧力以上の圧力で保持して、脱水素化を行なう。なお、金属水素化物の水素解離温度及び水素解離圧力は、水素吸蔵合金の熱分析を行なうことによって予め知ることができる。図3(a)は、第1の脱水素化を施した水素吸蔵合金粉体粒子の模式図である。図示のとおり、数個から数十個程度の金属水素化物が凝集を起こし、島の状態となった金属水素化物群が多数点在してることがわかる。 【0016】<第2の脱水素化ステップ>第1の脱水素化によって、金属元素の一部又は全部が水素化物の状態で残存した水素吸蔵合金粉末に対して、真空引きを実施して、強制的に完全な脱水素化を行なう(図1のステップ4)。なお、水素吸蔵合金粉末を昇温させた状態で、真空引きを行なうと、脱水素効率を高めることができる。第2の脱水素化ステップにより、点在していた金属水素化物群から水素が取り除かれて、図3(b)に示すように、純金属群となる。 【0017】<等温保持ステップ>上記ステップにより、ほぼ完全な脱水素化が行なわれた水素吸蔵合金粉末を、水素吸蔵合金の融点よりも低く、該融点の1/2以上の温度で所定時間保持する(図1のステップ5)。この等温保持による熱処理によって、純金属が析出物として微細に分散した状態から、夫々の純金属が核として合金化され、図3(c)に示すように、結晶粒が成長する。この純金属群は、水素吸蔵合金中に多数分散しているため、再結合された各結晶粒は微細なものとなる。 【0018】上記方法により得られた水素吸蔵合金粉末は、各々の粉体粒子が夫々微細な結晶粒の集合体であり、水素の吸収、放出に際し、結晶格子に歪みが生じにくいため、粉砕が起こり難く、微粉化が抑制される。 【0019】 【実施例】 <実施例1>発明例以下の条件で、水素吸蔵合金粉末を作製した。なお、材料合金は、結晶粒の核となる純金属群を多数存在させるために、水素化物を形成しやすい金属元素(Ti)を、化学量論比(Ti:Mn=1:2)よりも、多く含有する水素吸蔵合金(Ti:Mn=1:1.5)を使用した。 ■粉末の調製: アーク溶解によって作製されたTiMn1.5合金に、予め1050℃で8時間均質化熱処理を行なった後、機械的に粉砕。 ■水素化ステップ: 室温、30atm■第1の脱水素化ステップ: 800℃(なお、Ti水素化物の30atm水素加圧下における水素解離温度は900℃である)、30atm(なお、Ti水素化物の800℃における水素解離圧力は20atmである)にて、10分間保持■第2の水素化ステップ: 10-2Torr、900℃、1時間■等温保持ステップ: 900℃、2時間【0020】作製された水素吸蔵合金粉体粒子の粒径を測定したところ、約10μmであった。また、1個の粉体粒子を拡大して観察したところ、図3(c)に示すように、多数の結晶粒が析出しており、各結晶粒の直径は約1μm程度であった。 【0021】比較例比較のために、■の条件で調製された粉末に、■の水素化処理を施した水素吸蔵合金粉体粒子を観察したところ、粉体粒子径は約10μmであり、その粉体は単一の結晶粒から構成されていた。 【0022】吸放出サイクル試験つぎに、水素吸蔵合金粉末の耐久性を評価するために、発明例の水素吸蔵合金粉末と、比較例の水素吸蔵合金粉末に対して、水素の吸放出サイクル試験を行なった。試験条件は、水素圧:10atm、吸収時間:5分、放出時間:10分とし、吸放出サイクルを1万サイクル実施した。初期の水素吸放出量は、発明例と比較例のどちらもほぼ同じであった。水素吸放出サイクル試験については、図4に示すとおり、発明例の水素吸蔵合金粉末は、1万サイクル後における水素吸収量維持率の低下が約5%であったのに対し、比較例の水素吸蔵合金粉末の水素吸収量維持率の低下は約10%で、発明例の2倍であった。つまり、本発明によって作製された水素吸蔵合金粉末は、水素吸収率を長期に亘って高い状態で維持できるため、耐久性の向上を図れたことがわかる。 【0023】比較例さらに、アモルファス状態の水素吸蔵合金粉末に熱処理を施して、比較を行なった。水素吸蔵合金粉末は、上記と同様、水素雰囲気中でボールミリング処理を施したものを使用し、該粉末に800℃、8時間の熱処理を施した。得られた水素吸蔵合金粉体粒子を観察したところ、結晶粒の直径は、約50nm程度と微細なものであったが、結晶粒と結晶粒の間(粒界)に、アモルファス相が多く残存していることが確認された。なお、この水素吸蔵合金粉末に対して、実施例1と同様に水素の吸放出サイクルを実施したところ、初期の水素吸収量は、実施例1の発明例及び比較例よりも約5%程度低く、また、水素吸収量維持率も発明例よりも劣ることが確認された(図4参照)。これは、前記■、■のステップを施さない結果、粒界にアモルファスの相が多く残存してしまうためである。 【0024】<実施例2>実施例1の粉末の調製ステップ■に代えて、TiMn1.5合金をロール急冷処理によって調製した後、実施例1の■から■の処理を行なった。■のステップによって調製された粉体粒子の結晶粒の直径が数100nmであったのに対し、■から■の処理を行なった粉体粒子の結晶粒の直径が10nm程度であり、約1/10に微細化されていた。 【0025】 【発明の効果】本発明の処理を施すことにより、水素吸蔵合金粉体粒子中に微細な結晶粒を多数析出させることができる。この結果、水素吸放出時の結晶格子の歪みを大幅に緩和することができ、水素吸蔵合金粉体粒子の微粉化を抑制して、水素吸蔵合金の長寿命化を達成できる。また、結晶粒と結晶粒との間(粒界)にアモルファス相が形成されることは殆んどないため、水素吸収、放出量も低下しない。また、水素化物を形成しやすい金属元素を、化学量論比よりも多く含有させることにより、水素化物の形成を容易にすることで、結晶粒の粗大化を抑制することができ、長寿命化を達成できる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000001889 【氏名又は名称】三洋電機株式会社
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| 【出願日】 |
平成9年(1997)9月5日 |
| 【代理人】 |
【弁理士】 【氏名又は名称】丸山 敏之 (外2名)
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| 【公開番号】 |
特開平11−80801 |
| 【公開日】 |
平成11年(1999)3月26日 |
| 【出願番号】 |
特願平9−240686 |
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