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【発明の名称】 摺動用メタルおよびその製造方法
【発明者】 【氏名】藤 田 正 仁

【氏名】斉 藤 康 志

【要約】 【課題】Pb含有量に関して相反する特性である耐荷重性と耐焼付性の両方共に優れた摺動用メタルを提供する。

【解決手段】自己および/または相手材が摺動する摺動面を有し且つ少なくともPbを含有するCu系焼結合金からなる摺動側メタルと、摺動側メタルを支える裏金をそなえ、摺動側メタルにおいてCu系合金マトリックスが粗な部分MとCu系合金マトリックスが密な部分mとを交互に形成してなる摺動用メタル3。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 自己および/または相手材が摺動する摺動面を有し且つ少なくともPbを含有するCu系焼結合金からなる摺動側メタルと、摺動側メタルを支える裏金をそなえ、摺動側メタルにおいてCu系合金マトリックスが粗な部分とCu系合金マトリックスが密な部分とを交互に形成してなることを特徴とする摺動用メタル。
【請求項2】 自己および/または相手材が摺動する摺動面を有し且つ少なくともPbを含有するCu系焼結合金からなる摺動側メタルと、摺動側メタルを支える裏金をそなえ、摺動側メタルにおいてCu系合金マトリックスが粗で且つPb含有量の多い部分とCu系合金マトリックスが密で且つPb含有量の少ない部分とを交互に形成してなる請求項1に記載の摺動用メタル。
【請求項3】 Pb含有量の多い部分のPb量が5〜30重量%の範囲であり、Pb含有量の少ない部分のPb量が1〜25重量%の範囲である請求項2に記載の摺動用メタル。
【請求項4】 自己および/または相手材が摺動する摺動面を有し且つ少なくともPbを含有するCu系焼結合金からなる摺動側メタルと、摺動側メタルを支える裏金をそなえ、摺動側メタルにおいてCu系合金マトリックスが粗な部分とCu系合金マトリックスが密な部分とを交互に形成してなる摺動用メタルを製造するに際し、Cu系合金粉末を裏金上で散布高さを交互に異ならせて散布したのち1次焼結し、ついで、一体化したCu系焼結合金と裏金をロール加圧してCu系焼結合金と裏金の合計厚さを一定にし、さらに、2次焼結することによって、摺動側メタルの摺動方向においてCu系合金マトリックスが粗な部分とCu系合金マトリックスが密な部分とを交互に形成することを特徴とする摺動用メタルの製造方法。
【請求項5】 自己および/または相手材が摺動する摺動面を有し且つ少なくともPbを含有するCu系焼結合金からなる摺動側メタルと、摺動側メタルを支える裏金をそなえ、摺動側メタルにおいてCu系合金マトリックスが粗で且つPb含有量の多い部分とCu系合金マトリックスが密で且つPb含有量の少ない部分とを交互に形成してなる摺動用メタルを製造するに際し、少なくともPbを含むCu系合金粉末を裏金上で散布高さを交互に異ならせて散布したのち1次焼結し、ついで、一体化したCu系焼結合金と裏金をロール加圧してCu系焼結合金と裏金の合計厚さを一定にし、さらに、2次焼結することによって、摺動側メタルにおいてCu系合金マトリックスが粗で且つPb含有量の多い部分とCu系合金マトリックスが密で且つPb含有量の少ない部分とを交互に形成する請求項4に記載の摺動用メタルの製造方法。
【請求項6】 自己および/または相手材が摺動する摺動面を有し且つ少なくともPbを含有するCu系焼結合金からなる摺動側メタルと、摺動側メタルを支える裏金をそなえ、摺動側メタルにおいてCu系合金マトリックスが粗な部分とCu系合金マトリックスが密な部分とを交互に形成してなる摺動用メタルを製造するに際し、Cu系合金粉末を裏金上で散布高さを交互に異ならせて散布したのち1次焼結し、ついで、一体化したCu系焼結合金と裏金をロール加圧してCu系焼結合金と裏金の合計厚さを一定にすると同時にCu系焼結合金と裏金との界面を凹凸状に形成し、さらに、2次焼結することによって、摺動側メタルにおいてCu系合金マトリックスが粗な部分とCu系合金マトリックスが密な部分とを交互に形成することを特徴とする摺動用メタルの製造方法。
【請求項7】 自己および/または相手材が摺動する摺動面を有し且つ少なくともPbを含有するCu系焼結合金からなる摺動側メタルと、摺動側メタルを支える裏金をそなえ、摺動側メタルにおいてCu系合金マトリックスが粗で且つPb含有量の多い部分とCu系合金マトリックスが密で且つPb含有量の少ない部分とを交互に形成してなる摺動用メタルを製造するに際し、少なくともPbを含むCu系合金粉末を裏金上で散布高さを交互に異ならせて散布したのち1次焼結し、ついで、一体化したCu系焼結合金と裏金をロール加圧してCu系焼結合金と裏金の合計厚さを一定にすると同時にCu系焼結合金と裏金との界面を凹凸状に形成し、さらに、2次焼結することによって、摺動側メタルにおいてCu系合金マトリックスが粗で且つPb含有量の多い部分とCu系合金マトリックスが密で且つPb含有量の少ない部分とを交互に形成する請求項6に記載の摺動用メタルの製造方法。
【請求項8】 Pb含有量の多い部分のPb量を5〜30重量%の範囲とし、Pb含有量の少ない部分のPb量を1〜25重量%の範囲とする請求項5または7に記載の摺動用メタルの製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、自己および/または相手材が摺動する場合の軸受等の用途に適する摺動用メタルに係わり、特に、摺動面における耐荷重性、耐摩耗性、耐焼付性に優れた摺動用メタルおよびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、自己および/または相手材が摺動する場合の軸受等の用途に適する摺動用メタルとしては、例えば、ホワイトメタルと称される錫基(Sn−Sb−Cu系)、鉛基(Pb−Sn−Sb系)、ケルメットと称される銅鉛合金(Cu−Pb系合金)があり、さらには、ケルメットの強度をより一層高めるために錫(Sn)を添加したCu−Pb−Sn系合金などがある。
【0003】これらの摺動用メタルは、例えば、所定の成分をもつ合金を溶製し、これにより得た合金溶湯をアトマイズすることによって粉末としたのち、この粉末を鋼製裏金の上に均一な厚さで散布し、その後焼結することによって製造される。
【0004】また、他の方法として、所定の成分をもつ合金を溶製し、これにより得た合金溶湯を鋼製裏金の上に直接注湯して合金層を鋳造により形成することによって製造される。
【0005】これらの製造方法では、いずれも、潤滑成分である鉛(Pb)が均一に分布することが要求されており、特に、先に説明した焼結による方法の場合には、合金粉末の粒度分布を制御することによって均質な組織を得ることができるようにしていた。
【0006】また、これらの摺動用メタルでは、Cu合金やCu−Sn系合金などの合金中に軟質なPbが連結して混在しており、表面温度が上昇したときに焼付の発生を防止するために、有効に機能するような組織をもつものとしている。
【0007】そして、Pbを多く含有する材料では、表面にPbオーバーレイを設けたものとすることによって、高速高荷重用軸受として適したものにし、例えば、自動車エンジンのコネクティングロッドの摺動用メタルとして一般に使用されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】このようなCu−Pb系合金やCu−Sn−Pb系摺動用メタルにおいては、自動車エンジンの高出力化、ならびに摩擦係数の低減化、などに伴って、従来よりもさらに優れた耐荷重性を有することが要求されるようになってきているが、一般的なCu−Pb系,Cu−Sn−Pb系等の軸受メタルにおいては、図1より明らかであるように、Pb含有量が増加すれば耐焼付性は向上するものの、耐荷重性が低下する傾向をもつものとなっており、耐荷重性を向上させるにあたっては、Cu−Pb系,Cu−Sn−Pb系軸受メタルにおいてマトリックス強度を高めて耐荷重性を向上させるために、Pb含有量を減らすことで対応しなければならない。
【0009】しかしながら、周速が20m/secにも達する自動車エンジンのコネクティングロッド用軸受メタルにおいては、潤滑油による油膜の形成が不十分なものとなりがちであって、焼付の発生を防止するためにはPb含有量を減らすことができないという問題点があった。
【0010】このように、摺動用メタルにおいてその耐荷重性と耐焼付性のいずれをも良好なものとすることはなかなか困難であるという課題があった。
【0011】
【発明の目的】本発明は、このような従来の課題にかんがみてなされたものであって、Pb含有量に関して相反する特性である耐荷重性と耐焼付性について、いずれも良好な特性をもつものとすることができる摺動用メタルを提供することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明に係わる摺動用メタルは、請求項1に記載しているように、自己および/または相手材が摺動する摺動面を有し且つ少なくともPbを含有するCu系焼結合金からなる摺動側メタルと、摺動側メタルを支える裏金をそなえ、摺動側メタルにおいてCu系合金マトリックスが粗な部分とCu系合金マトリックスが密な部分とを交互に形成してなるものとしたことを特徴としている。
【0013】そして、本発明に係わる摺動用メタルの実施態様においては、請求項2に記載しているように、自己および/または相手材が摺動する摺動面を有し且つ少なくともPbを含有するCu系焼結合金からなる摺動側メタルと、摺動側メタルを支える裏金をそなえ、摺動側メタルにおいてCu系合金マトリックスが粗で且つPb含有量の多い部分とCu系合金マトリックスが密で且つPb含有量の少ない部分とを交互に形成してなるものとすることができる。
【0014】同じく、本発明に係わる摺動用メタルの実施態様においては、請求項3に記載しているように、Pb含有量の多い部分のPb量が5〜30重量%の範囲であり、Pb含有量の少ない部分のPb量が1〜25重量%の範囲であるものとすることができる。
【0015】本発明に係わる摺動用メタルの製造方法は、請求項4に記載しているように、自己および/または相手材が摺動する摺動面を有し且つ少なくともPbを含有するCu系焼結合金からなる摺動側メタルと、摺動側メタルを支える裏金をそなえ、摺動側メタルにおいてCu系合金マトリックスが粗な部分とCu系合金マトリックスが密な部分とを交互に形成してなる摺動用メタルを製造するに際し、Cu系合金粉末を裏金上で散布高さを交互に異ならせて散布したのち1次焼結し、ついで、一体化したCu系焼結合金と裏金をロール加圧してCu系焼結合金と裏金の合計厚さを一定にし、さらに、2次焼結することによって、摺動側メタルにおいてCu系合金マトリックスが粗な部分とCu系合金マトリックスが密な部分とを交互に形成するようにしたことを特徴としている。
【0016】そして、上記本発明に係わる摺動用メタルの製造方法の実施態様においては、請求項5に記載しているように、自己および/または相手材が摺動する摺動面を有し且つ少なくともPbを含有するCu系焼結合金からなる摺動側メタルと、摺動側メタルを支える裏金をそなえ、摺動側メタルにおいてCu系合金マトリックスが粗で且つPb含有量の多い部分とCu系合金マトリックスが密で且つPb含有量の少ない部分とを交互に形成してなる摺動用メタルを製造するに際し、少なくともPbを含むCu系合金粉末を裏金上で散布高さを交互に異ならせて散布したのち1次焼結し、ついで、一体化したCu系焼結合金と裏金をロール加圧してCu系焼結合金と裏金の合計厚さを一定にし、さらに、2次焼結することによって、摺動側メタルにおいてCu系合金マトリックスが粗で且つPb含有量の多い部分とCu系合金マトリックスが密で且つPb含有量の少ない部分とを交互に形成するようになすことができる。
【0017】同じ目的を達成する他の発明による摺動用メタルの製造方法は、請求項6に記載しているように、自己および/または相手材が摺動する摺動面を有し且つ少なくともPbを含有するCu系焼結合金からなる摺動側メタルと、摺動側メタルを支える裏金をそなえ、摺動側メタルにおいてCu系合金マトリックスが粗な部分とCu系合金マトリックスが密な部分とを交互に形成してなる摺動用メタルを製造するに際し、Cu系合金粉末を裏金上で散布高さを交互に異ならせて散布したのち1次焼結し、ついで、一体化したCu系焼結合金と裏金をロール加圧してCu系焼結合金と裏金の合計厚さを一定にすると同時にCu系焼結合金と裏金との界面を凹凸状に形成し、さらに、2次焼結することによって、摺動側メタルにおいてCu系合金マトリックスが粗な部分とCu系合金マトリックスが密な部分とを交互に形成するようにしたことを特徴としている。
【0018】そして、上記本発明に係わる摺動用メタルの製造方法の実施態様においては、請求項7に記載しているように、自己および/または相手材が摺動する摺動面を有し且つ少なくともPbを含有するCu系焼結合金からなる摺動側メタルと、摺動側メタルを支える裏金をそなえ、摺動側メタルにおいてCu系合金マトリックスが粗で且つPb含有量の多い部分とCu系合金マトリックスが密で且つPb含有量の少ない部分とを交互に形成してなる摺動用メタルを製造するに際し、少なくともPbを含むCu系合金粉末を裏金上で散布高さを交互に異ならせて散布したのち1次焼結し、ついで、一体化したCu系焼結合金と裏金をロール加圧してCu系焼結合金と裏金の合計厚さを一定にすると同時にCu系焼結合金と裏金との界面を凹凸状に形成し、さらに、2次焼結することによって、摺動側メタルにおいてCu系合金マトリックスが粗で且つPb含有量の多い部分とCu系合金マトリックスが密で且つPb含有量の少ない部分とを交互に形成するようになすことができる。
【0019】また、本発明による摺動用メタルの製造方法の実施態様においては、請求項8に記載しているように、Pb含有量の多い部分のPb量を5〜30重量%の範囲とし、Pb含有量の少ない部分のPb量を1〜25重量%の範囲とするようになすことができる。
【0020】
【発明の作用】図1に示したように、Pbを含むCu系摺動用メタルにおいて、Pbの均一な分布を求める限り、Pb含有量によって摺動用メタルの耐荷重性がほぼ定まってしまう。
【0021】そこで、このような従来は常套とされていた均一なPbの分布をもつものとはせず、意図的にPb含有量を少なくした部分を形成すると共に、それに隣接して意図的にPb含有量を多くした部分を形成するというように、不均一な組織をもつものにあえて形成し、Pb含有量の少ない部分で耐荷重性をより一層向上させたものにすると同時に、Pb含有量の多い部分で良好なる耐焼付性を維持させるようになすことによって、相反する特性である耐荷重性と耐焼付性の両方共が良好であるようにした。
【0022】このような不均一組織をもつ摺動用メタルを製造するに際しては、例えば、図2に示すような工程を採用することができる。
【0023】まず、図2(A)に示すように、少なくともPbを含むCu系合金粉末1pを裏金2上において散布高さを交互に異ならせて散布する。
【0024】次いで、図2(B)に示すように、1次焼結を行うことによって、裏金2上でCu系焼結合金1sが支持されている状態とする。
【0025】その後、Cu系焼結合金1sと裏金2とを加圧することによって、図2(C)に示すように、Cu系焼結合金1sと裏金2の合計厚さを一定にし、さらに2次焼結することによって、摺動用メタル3においてCu系合金マトリックスが粗な部分MとCu系合金マトリックスが密な部分mとが交互に形成されてなるものとする。
【0026】そして、一実施態様においては、摺動用メタル3において、Cu系合金マトリックスが粗で且つPb含有量が多い部分Mと、Cu系合金マトリックスが密で且つPb含有量が少ない部分mとが形成されてなるものとする。
【0027】この場合、同じく図2(C)に示すように、Cu系焼結合金1sと裏金2との界面が凹凸状に形成されているもの、すなわち、Cu系合金マトリックスが密な部分mで凹状部2mが形成されていると共にCu系合金マトリックスが粗な部分Mで凸状部2Mが形成されているものとすることによって、Cu系焼結合金1sと裏金2との間での密着性はさらに向上したものとなる。
【0028】図2をもとにして説明したように、裏金2上においてCu系合金粉末1pが厚く散布された部分は、1次焼結後の加圧において強い圧下力を受けることとなるので、この部分の1次焼結されたCu系焼結合金1sはほぼ偏平になった状態で圧下されると共に、この部分の裏金2も強い加圧力を受けることとなって、Cu系合金マトリックスが密な部分mが形成されると共に裏金2には凹状部2mが形成されることとなる。
【0029】また、裏金2上においてCu系合金粉末1pが前記厚く散布された部分に比べて薄く散布された部分は、1次焼結後のロール加圧において前記強い圧下力よりも弱い圧下力を受けることとなるので、この部分の1次焼結されたCu系焼結合金1sはほぼ球状を保つ(ないしはさほど偏平にならない)状態で圧下され、この部分の裏金2はさほど強い圧下力を受けないこととなるので、Cu系合金マトリックスが粗な部分Mが形成されると共に裏金2には前記凹状部2mに隣接して凸状部2Mが形成されることとなる。
【0030】従来、ケルメット(Cu−Sn−Pb系合金)粉末の焼結は、Pb液相を介在することとなる液相焼結であると言われている。すなわち、アトマイズされた原料粉末の段階では、Cu−Snマトリックス中にPbが微細に分散しているが、焼結することによって、Pb液相が粉末の外部表面を濡らすことによって、粉末同士の焼結を進行させることとなる。
【0031】このとき、Pb液相にCu成分が若干溶解し、このCu成分が粉末同士の焼結時のネックの成長を助けると言われている。
【0032】従って、上記のごとく比較的強く加圧された部分と比較的弱く加圧された部分とが混在する不均一加圧焼結においては、原則的に、強く加圧された部分は強く焼結されることとになる。
【0033】すなわち、図3に示すように、Cu系合金粉末が厚く散布された部分(図示右側の部分)は1次焼結後の加圧によって高い歪を与えられることとなり、焼結の際の昇温時においてこの歪を解放する力が、すなわち、焼結力の増大につながる。
【0034】また、この焼結力の増大は、Pb液相の粉末外部への移動をも加速させることとなるので、結果的に、Cu系合金マトリックスが密な部分mで移動を生じたPbは、Pbの放出量が比較的少なく且つ一部空間が残っているCu系合金マトリックスが粗な部分Mに流れることとなる。
【0035】その結果、Cu系合金マトリックスが比較的粗で且つPb含有量が比較的多い部分Mと、Cu系合金マトリックスが比較的密で十分に焼結され且つPb含有量が比較的少ない部分mとが形成されることとなる。
【0036】このように、図3(B)に模式的に示す如く、m部(図示右部)の強い焼結によるネックの形成が生じることとなり、偏平化された合金粒子と強いネックの形成はきわめて圧縮応力に有効な耐力を持つことになり、耐荷重性のより一層の向上を促すことになる。
【0037】本発明においては、図2および図3に示したように、マトリックスであるCu−Sn系合金とPbの分布状態について、従来の均一な組織から不均一な組織に変えることによって、それぞれの組織が持っている特長を合理的に引き出そうとしたものである。
【0038】すなわち、Cu系合金マトリックスは粗であるもののPb含有量の多い部分(M)で十分良好な耐焼付性を発揮させ、Pb含有量は少ないものの骨格がしっかりしていてCu系合金マトリックスが密なっている部分(m)で十分良好な耐荷重性を発揮させるようにしており、それぞれの部分で各々の機能を発揮するようになすことによって、より高いレベルの複合材料からなる摺動用メタルとすることが可能となる。
【0039】さらに、具体的に説明すれば、Cu系合金マトリックスが粗で且つPb含有量が多い部分MのPb量は5〜30重量%の範囲であり、Cu系合金マトリックスが密で且つPb含有量が少ない部分mのPb量は1〜25重量%の範囲のものとすることができるが、例えば、部分MのPb量が20重量%であり且つ部分mのPb量が10重量%であるとした場合に、平均のPb量は約15重量%となるが、耐荷重性は部分mのPb量10重量%相当の約700kgf/cmを得ることができ、耐焼付性は部分MのPb量20重量%相当の約450kgf/cmを得ることができるものとなる。
【0040】
【実施例】この実施例では、表1の従来例1,2および発明例3〜8に示す粉末成分のCu系合金粉末を使用し、表および図4(A)に示す形態でCu系合金粉末1pを鋼製裏金2上に散布した。
【0041】次いで、焼結温度が810〜850℃、焼結雰囲気がプロパン分解ガス、焼結時間が20分である条件の1次焼結を行った。
【0042】次に、散布高さが異なっているCu系焼結合金と裏金とをロール加圧することによって、Cu系焼結合金の表面の凹凸をなくしてCu系焼結合金と支持側メタルの合計厚さを一定にし、続いて、前記1次焼結条件と同じ条件による2次焼結を行い、その後わずかにロールダウンを行うことによって所定厚さの摺動用バイメタルを得た。
【0043】このようにして得た摺動用バイメタルの界面における凹凸形態(図4(B)に示す寸法d)は同じく表1に示すものとなっていた。
【0044】また、マトリックスが粗である部分Mおよび密である部分mのそれぞれにおけるPb量を調べたところ、同じく表1に示す結果であった。
【0045】さらに、発明例No.5で得た摺動用メタルの金属組織を調べたところ、図5に示すものとなっていた。
【0046】次に、各摺動用メタルを用いて軸受形状に加工し、下記に示す試験条件により疲労荷重と焼付荷重を求めた。
【0047】
【表1】

【0048】[疲労荷重]疲労荷重は、実際のエンジンでの使用条件と同じようにし、製作した軸受をコネクティングロッドに固定し、軸に偏心荷重をかけて、表2に示す条件で耐久テストを実施するものとし、200時間のテスト後、破損のないものの割合が70%を超えた場合にその材料の疲労荷重とした。この結果を同じく表1に示す。
【0049】
【表2】

【0050】[焼付荷重]焼付荷重は、表3に示す条件で50kgf/cmづつ荷重をステップアップさせ、軸摩擦トルクが3kgf・mを超えた時の荷重を焼付荷重とした。この結果を同じく表1に示す。
【0051】
【表3】

【0052】表1に示した結果より明らかであるように、発明例No.3〜8の摺動用メタルでは、いずれも疲労荷重と焼付荷重の両方共が高い値を示しており、耐荷重性と耐焼付性が共に優れていることが認められた。
【0053】すなわち、Pb含有量が少ないにもかかわらず焼付荷重が改善されており、また、従来はPb含有量が多く焼付性は良好であったものの耐荷重性が劣ったものにおいても、疲労荷重が改善されていることが認められた。
【0054】このように、Cu系合金粉末の不均一散布による不均一組織をもつ摺動用焼結メタルとすることによって、著しく有効な軸受性能の改善効果がもたらされることが判明した。
【0055】
【発明の効果】本発明による摺動用メタルでは、請求項1に記載しているように、自己および/または相手材が摺動する摺動面を有し且つ少なくともPbを含有するCu系焼結合金からなる摺動側メタルと、摺動側メタルを支える裏金をそなえ、摺動側メタルにおいてCu系合金マトリックスが粗な部分とCu系合金マトリックスが密な部分とを交互に形成してなるものとしたから、従来は相反する特性とされていた耐荷重性と耐焼付性の両方共に優れた摺動用メタルを提供することが可能であるという著大なる効果がもたらされる。
【0056】そして、請求項2に記載しているように、自己および/または相手材が摺動する摺動面を有し且つ少なくともPbを含有するCu系焼結合金からなる摺動側メタルと、摺動側メタルを支える裏金をそなえ、摺動側メタルにおいてCu系合金マトリックスが粗で且つPb含有量の多い部分とCu系合金マトリックスが密で且つPb含有量の少ない部分とを交互に形成してなるものとすることによって、Cu系合金マトリックスが粗で且つPb含有量の多い部分で耐焼付性を向上させ、Cu系合金マトリックスが密で且つPb含有量の少ない部分で耐荷重性を向上させたものとすることによって、耐焼付性と耐荷重性の両方共に優れた摺動用メタルを提供することが可能であるという著大なる効果がもたらされる。
【0057】そして、請求項3に記載しているように、Pb含有量の多い部分のPb量が5〜30重量%の範囲であり、Pb含有量の少ない部分のPb量が1〜25重量%の範囲であるものとすることによって、耐荷重性と耐焼付性が共に優れた摺動用メタルを提供することが可能であるという著大なる効果がもたらされる。
【0058】本発明による摺動用メタルの製造方法では、請求項4に記載しているように、自己および/または相手材が摺動する摺動面を有し且つ少なくともPbを含有するCu系焼結合金からなる摺動側メタルと、摺動側メタルを支える裏金をそなえ、摺動側メタルにおいてCu系合金マトリックスが粗な部分とCu系合金マトリックスが密な部分とを交互に形成してなる摺動用メタルを製造するに際し、Cu系合金粉末を裏金上において散布高さを交互に異ならせて散布したのち1次焼結し、ついで、一体化したCu系焼結合金と裏金をロール加圧してCu系焼結合金と裏金の合計厚さを一定にし、さらに、2次焼結することによって、摺動側メタルにおいてCu系合金マトリックスが粗な部分とCu系合金マトリックスが密な部分とを交互に形成するようにしたから、従来は相反する特性とされていた耐荷重性と耐焼付性に共に優れた摺動用メタルを製造することが可能であるという著大なる効果がもたらされる。
【0059】そして、請求項5に記載しているように、自己および/または相手材が摺動する摺動面を有し且つ少なくともPbを含有するCu系焼結合金からなる摺動側メタルと、摺動側メタルを支える裏金をそなえ、摺動側メタルにおいてCu系合金マトリックスが粗で且つPb含有量の多い部分とCu系合金マトリックスが密で且つPb含有量の少ない部分とを交互に形成してなる摺動用メタルを製造するに際し、少なくともPbを含むCu系合金粉末を裏金上で散布高さを交互に異ならせて散布したのち1次焼結し、ついで、Cu系焼結合金と裏金をロール加圧してCu系焼結合金と裏金の合計厚さを一定にし、さらに、2次焼結することによって、摺動側メタルにおいてCu系合金マトリックスが粗で且つPb含有量の多い部分とCu系合金マトリックスが密で且つPb含有量の少ない部分とを交互に形成するようになすことによって、Cu系合金マトリックスが粗で且つPb含有量の多い部分で耐焼付性を向上させ、Cu系合金マトリックスが密で且つPb含有量の少ない部分で耐荷重性を向上させたものとすることによって、耐焼付性と耐荷重性の両方共に優れた摺動用メタルを製造することが可能であるという著大なる効果がもたらされる。
【0060】さらに、請求項6に記載しているように、自己および/または相手材が摺動する摺動面を有し且つ少なくともPbを含有するCu系焼結合金からなる摺動側メタルと、摺動側メタルを支える裏金をそなえ、摺動側メタルにおいてCu系合金マトリックスが粗な部分とCu系合金マトリックスが密な部分とを交互に形成してなる摺動用メタルを製造するに際し、Cu系合金粉末を裏金上で散布高さを交互に異ならせて散布したのち1次焼結し、ついで、Cu系焼結合金と裏金をロール加圧してCu系焼結合金と裏金の合計厚さを一定にすると同時にCu系焼結合金と裏金との界面を凹凸状に形成し、さらに、2次焼結することによって、摺動側メタルにおいてCu系合金マトリックスが粗な部分とCu系合金マトリックスが密な部分とを交互に形成するようになすことによって、耐荷重性と耐焼付性に優れ、摺動側メタルと裏金との間での耐剥離性にも優れた摺動用メタルを製造することが可能であるという著しく優れた効果がもたらされる。
【0061】さらにまた、請求項7に記載しているように、自己および/または相手材が摺動する摺動面を有し且つ少なくともPbを含有するCu系焼結合金からなる摺動側メタルと、摺動側メタルを支える裏金をそなえ、摺動側メタルにおいてCu系合金マトリックスが粗で且つPb含有量の多い部分とCu系合金マトリックスが密で且つPb含有量の少ない部分とを交互に形成してなる摺動用メタルを製造するに際し、少なくともPbを含むCu系合金粉末を裏金上で散布高さを交互に異ならせて散布したのち1次焼結し、ついで、一体化したCu系焼結合金と裏金をロール加圧してCu系焼結合金と裏金の合計厚さを一定にすると同時にCu系焼結合金と裏金との界面を凹凸状に形成し、さらに、2次焼結することによって、摺動側メタルにおいてCu系合金マトリックスが粗で且つPb含有量の多い部分とCu系合金マトリックスが密で且つPb含有量の少ない部分とを交互に形成するようになすことによって、Cu系合金マトリックスが粗で且つPb含有量の多い部分で耐焼付性を向上させ、Cu系合金マトリックスが密で且つPb含有量の少ない部分で耐荷重性を向上させ、さらには摺動側メタルと裏金との間での耐剥離性を向上させた摺動用メタルを製造することが可能であるという著大なる効果がもたらされる。
【0062】さらにまた、請求項8に記載しているように、Pb含有量の多い部分のPb量を5〜30重量%の範囲とし、Pb含有量の少ない部分のPb量を1〜25重量%の範囲とするようになすことによって、耐荷重性と耐焼付性が共に優れた摺動用メタルを製造することが可能であるという著しく優れた効果がもたらされる。
【出願人】 【識別番号】000102902
【氏名又は名称】エヌデーシー株式会社
【出願日】 平成9年(1997)8月11日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】小塩 豊
【公開番号】 特開平11−61204
【公開日】 平成11年(1999)3月5日
【出願番号】 特願平9−216763