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【発明の名称】 金属粉末の均一拡散処理方法
【発明者】 【氏名】有馬 慎弥

【要約】 【課題】拡散元素材料からの拡散元素により金属粉末を拡散処理し、かつ拡散処理後の金属粉末中の拡散元素量を目標通りに制御できる金属粉末の均一拡散処理方法を提供する。

【解決手段】金属粉末を拡散元素により拡散処理する方法において、密封容器内に金属粉末の近傍に固体状の拡散元素材料を配置し、両者を熱処理して、前記金属粉末を拡散元素材料からの拡散元素により均一に拡散処理する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 金属粉末を拡散元素により拡散処理する方法において、前記金属粉末の近傍に固体状の拡散元素材料を配置し、両者を熱処理して、前記金属粉末を拡散元素材料からの拡散元素により均一に拡散処理することを特徴とする金属粉末の均一拡散処理方法。
【請求項2】 上記固体状の拡散元素材料中の拡散元素が窒素である請求項1記載の金属粉末の均一拡散処理方法。
【請求項3】 密封容器内に窒化クロムと粉末高速度鋼を隣接して充填し、脱気後、温度 500℃以上で一定時間保持して拡散処理した後、温度 500℃以上、圧力9.8MPa以上で熱間静水圧成形を行い、その後、窒化クロム部分を切断除去することを特徴とする窒化粉末高速度鋼鋼片の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、金属粉末に拡散元素を均一に拡散し、製鋼段階で成分のコントロールが難しい金属粉末を製造する技術に属するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、粉末高速度鋼を窒化処理する場合は、例えば、予め成分調整された溶鋼をガスアトマイズ法により粉末化し、この粉末をトレイに充填し、炉内で窒素ガス雰囲気中で約1050℃で 3時間、拡散処理を行う。3 時間高温で保持されたトレイ中の粉末は弱焼結状態になるため、破砕処理して粉末化する。このようにして窒化粉末高速度鋼を得る。
【0003】さらに、窒化粉末高速度鋼鋼片を製造する場合は、上記の窒化粉末高速度鋼を密封容器に充填し、脱気後、熱間静水圧成形(以下、 HIP成形と言う) により真密度化する。このようにして、耐摩耗性に優れた窒化粉末高速度鋼鋼片を得ることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、窒化粉末高速度鋼鋼片を製造する場合、上記の例では、拡散処理に相当する窒化処理と真密度化する HIP成形とが二つの工程に別れるため、製造工期が長くなるとともに、コストも高くなる。また、炉内で窒素ガス雰囲気中で行う窒化処理は、窒化反応量の制御が難しいという問題もある。
【0005】本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、密封容器内に拡散元素材料と金属粉末とを充填し、 HIP成形することによって拡散元素材料からの拡散元素により金属粉末を拡散処理し、かつ拡散処理後の金属粉末中の拡散元素量を目標通りに制御することができる金属粉末の均一拡散処理方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】その要旨は、金属粉末を拡散元素により拡散処理する方法において、前記金属粉末の近傍に固体状の拡散元素材料を配置し、両者を熱処理して、前記金属粉末を拡散元素材料からの拡散元素により均一に拡散処理する金属粉末の均一拡散処理方法で、上記固体状の拡散元素材料中の拡散元素が窒素である金属粉末の均一拡散処理方法である。
【0007】密封容器内に窒化クロム(拡散元素材料)と粉末高速度鋼を隣接して充填し、脱気後、温度 500℃以上で一定時間保持して拡散処理した後、温度 500℃以上、圧力9.8MPa以上で HIP成形を行い、その後、窒化クロム部分を切断除去する窒化粉末高速度鋼鋼片の製造方法である。
【0008】本発明の金属粉末の拡散処理は、拡散処理と真密度化する HIP成形とを同時に行うため、従来例のように、工程が二つに別れることがなく、製造工期が短くなる。また、拡散元素量は固体状の拡散元素材料の量と拡散元素材料中の拡散元素の濃度とによって決まる。したがって、拡散処理後の金属粉末中の拡散元素量の制御が容易である。
【0009】脱気した密封容器内の拡散元素材料は、 500℃以上の高温雰囲気では不安定となり拡散成分が分離する。したがって、密封容器内に窒化クロムと粉末高速度鋼を隣接して充填しておくと、昇温によって窒化クロムからの窒素が拡散し、粉末高速度鋼を窒化する。例えば、窒化処理には、 Cr:50%以上、 N:5%以上、Si:1.5%以下、残部がFeである窒化クロムを用いる。また、 拡散処理前には、残存ガスに起因する空孔の発生を防止するために密封容器内を脱気する。拡散処理が密封容器内という狭い系内で行われるため、粉末高速度鋼の窒化が均一に行われる。その後、温度 500℃以上、圧力9.8MPa以上で HIP成形を行うことにより、例えば、窒化粉末高速度鋼鋼片を得ることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の実施の形態例を示し、本発明を詳細に説明する。表1に示す目標窒素含有量 0.6%の窒化粉末高速度鋼鋼片を製造するために、容器に外径27.2mm、肉圧 2.9mm、長さ 300mmのJIS STPG 370鋼管を用い、図1に示すように、容器4の一端に窒素含有量が 6.5%の小塊状の窒化クロム(FeCrN)2を 61g配置し、次に軟鋼製の金網3を配し、次に表1に示す化学組成の粉末高速度鋼1を600g充填し、さらに軟鋼製の金網3を配し、容器内を脱気後密封した。その後、密封容器を、1100℃で 1時間予熱し(この間に窒化が進行する)、引き続いて温度1150℃、圧力 98MPaで、 3時間 HIP成形した。なお、窒化クロム2、金網3、粉末高速度鋼1、金網3の順に金網3を配しているため、脱気時に粉末高速度鋼1が容器4内から吸引されることはない。
【0011】HIP成形後、 HIP成形により焼結して容器、窒化クロム、窒化粉末高速度鋼鋼片が一体化しているため、外側の容器部分を切削除去して窒化クロムと均一に窒化した窒化粉末高速度鋼鋼片を取り出し、窒化クロム部分を切断除去して窒化粉末高速度鋼鋼片を得た。このようにして得た窒化粉末高速度鋼鋼片を長手方向に3分割し、窒化クロムに近い側の三つの面(A、B、C)について窒素と炭素の分析を繰り返し2回行った。その結果を表2に示す。
【0012】
【表1】

【0013】
【表2】

【0014】表2に示すように、窒化粉末高速度鋼鋼片の窒素は目標 0.6%に対して、0.59〜0.60%である。したがって、拡散元素材料である窒化クロムからの窒素は HIP成形中に拡散し、粉末高速度鋼を均一に窒化していることがわかる。また、本発明法は目標通りの拡散処理が可能であることがわかる。なお、炭素は0.95%である。また、このときの窒化粉末高速度鋼鋼片の密度は8.1g/cm3であった。また、窒化することによって、粉末高速度鋼鋼片の靱性および耐凝着摩耗性が著しく改善される。なお、窒化の場合、本発明法で 0.1〜1.0 %の窒素を金属粉末に均一に拡散することができる。
【0015】
【発明の効果】以上述べたところから明らかなように、本発明によれば、密封容器内に拡散元素材料と金属粉末とを充填し、拡散処理と真密度化する HIP成形とを同時に行うため、金属粉末鋼片を製造する場合、従来例のように、工程が二つに別れることがなく、製造工期が短くなる。また、拡散元素量を固体状の拡散元素材料の量と拡散元素材料中の拡散元素濃度とによって制御できるため、目標通りの拡散処理が可能である。
【出願人】 【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
【出願日】 平成9年(1997)8月11日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】明田 莞
【公開番号】 特開平11−61201
【公開日】 平成11年(1999)3月5日
【出願番号】 特願平9−216412