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【発明の名称】 高ヤング率粉末及びその焼結体
【発明者】 【氏名】久田 建男

【要約】 【課題】自動車部品等機械構造部品に適用した場合において薄肉化,小型化,軽量化が可能な高ヤング率,高比ヤング率粉末及びその焼結体を提供することを目的とする。

【解決手段】粉末組成を、重量%で、C:1.0〜4.5%,Si:≦2.0%,Mn:≦2.0%,Cr:3.0〜20.0%、Mo,V,Tiの一種以上をMo:≦25.0%,V:≦15%,Ti:≦12%,Mo+V+Ti:≧10%で含有し、残部実質的にFeから成り且つW:≦2%,Ta:≦2%,Co:≦2%に規制されたものとし、その粉末の焼結体にて機械構造部品を構成するようになす。
【特許請求の範囲】
【請求項1】重量%でC :1.0〜4.5%Si:≦2.0%Mn:≦2.0%Cr:3.0〜20.0%Mo,V,Tiの一種以上をMo:≦25.0%V :≦15%Ti:≦12%Mo+V+Ti:≧10%で含有し、残部実質的にFeから成り、且つW:≦2%,Ta:≦2%,Co:≦2%に規制されていることを特徴とする高ヤング率粉末。
【請求項2】重量%でC :1.0〜4.5%Si:≦2.0%Mn:≦2.0%Cr:3.0〜20.0%Mo,V,Tiの一種以上をMo:≦25.0%V :≦15%Ti:≦12%Mo+V+Ti:≧10%で含有し、残部実質的にFeから成り且つW:≦2%,Ta:≦2%,Co:≦2%に規制された粉末を焼結して成る高ヤング率粉末焼結体。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は自動車部品等の機械構造部品に適用して好適な高ヤング率,高比ヤング率(ヤング率/比重)粉末及びその焼結体に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】従来、自動車の高性能化は燃料をできる限り多く投入し、エンジンを高速回転させることで実現されてきた。しかしながら一方で石油資源の多量消費や排出ガスによる環境悪化の問題を残してきた。
【0003】エンジンの高性能化と低燃費とを両立させるにはメカニックロス(エネルギーロス)をできるだけ低減すること、例えばエンジンの各部品を軽量化し、慣性力を低減すること等が極めて効果的である。また自動車に限らず一般の機械構造部品においても、これを軽量化することが強く求められている。そのためにAl,Mg,Ti等の軽量材を用いることは有効な手段である。
【0004】しかしながらこれらの軽量材は、自動車部品等機械構造部品の剛性を十分に高め、これにより部品を薄肉化し、コンパクト化する上では必ずしも十分に目的を達成することができない。
【0005】そこで機械構造部品に使用される材料としてヤング率の高いものを用いれば同部品を薄肉化,小型化でき、併せてこれを軽量化でき、有効である。
【0006】一般に鉄系の溶製材はヤング率が210GPa(ギガパスカル)程度であって、その値は熱処理を行っても基本的に大きく変化はしない。鉄系溶製材において、凝固時に炭化物を析出させることでヤング率を高めることが考えられるが、これとても材料自体として得られるヤング率は220GPa程度であって、そこには自ずと限界がある。
【0007】尤も切削或いは耐摩耗用途の超硬工具鋼等ヤング率の高い材料は知られているが、このものは比重の高いWCを多量に含んでいるため、部品の高ヤング率化を達成できたとしても重量がこれに伴って増加してしまい、自動車部品等の機械構造部品に適用したときにこれを軽量化し、メカニックロスを軽減するといった目的を十分に達成することができない。
【0008】
【課題を解決するための手段】本願の発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、特に機械構造部品に適用した場合においてこれを十分に薄肉化,小型化及び軽量化し得る高ヤング率粉末及びその焼結体を提供することを目的としてなされたものである。而して本願の発明は粉末組成を、重量%で、C:1.0〜4.5%,Si:≦2.0%,Mn:≦2.0%,Cr:3.0〜20.0%、Mo,V,Tiの一種以上を、Mo:≦25.0%,V:≦15%,Ti:≦12%,Mo+V+Ti:≧10%で含有し、残部実質的にFeから成り且つW:≦2%,Ta:≦2%,Co:≦2%に規制されてなる組成となし(請求項1)、これを焼結するようになしたものである(請求項2)。
【0009】
【作用及び発明の効果】以上のように本発明は、粉末のC成分を1.0〜4.5%とするとともに、Cとともに高ヤング率且つ比重の小さい炭化物を形成するCr,Mo,V,Tiを上記定められた量で含有させたもので、本発明の粉末を焼結して自動車部品等機械構造部品を製造したとき、これを効果的に薄肉化,小型化,軽量化することができる。
【0010】尚W,Taも高ヤング率の炭化物を形成するが、これらの炭化物は同時に比重も大きく、部品の軽量化の目的を減殺するため、本発明ではこれらの成分についてはそれぞれを2%以下に規制している。
【0011】次に本発明における各化学成分の限定理由を詳述する。
C:1.0〜4.5%Cは炭化物生成に必要であって、この目的で1.0%以上含有させる。但し4.5%を超えて多量に含有させると靱性が低下するので4.5%以下とする。好ましくは1.5〜4.0%である。
【0012】Si:≦2.0%Siは基地を強化して降伏点を高め、高温における表面酸化を防止する上で有用である。但し、2.0%を超えて多量に含有させると靱性を損なうので2.0%以下とする。好ましくは0.2〜1.0%である。
【0013】Mn:≦2.0%Mnは鋼の焼入性に寄与するが、粉末の酸素量を上げるので2.0%以下とする。好ましくは0.2〜1.0%である。
【0014】Cr:3.0〜20.0%CrはFeより比重が小さく、本発明鋼の比重を下げるのに有効であり、またMo,V,TiとともにCと結合して複炭化物を形成するため3.0%以上含有させる。一方、Cr主体の炭化物はヤング率があまり大きくないため、過度に添加しても本発明の目的への寄与が小さく、そこで上限を20.0%とする。
【0015】Mo:≦25.0%Moは炭化物を形成し、ヤング率を高める上で有用な元素である。但し、25.0%を超えて過度に含有させると粉末製造が困難となるため上限を25.0%とする。
【0016】V:≦15%Vは比重が小さい炭化物を形成し、ヤング率を高める上で有用な元素である。但し、15%を超えて過度に含有させると粉末製造が困難となるため上限を15%とする。
【0017】Ti:≦12%Tiは比重が小さい炭化物を形成し、ヤング率を高める上で有用な元素であるが、12%を超えて多量に含有させると粉末製造が困難となるため上限を12%とする。
【0018】Mo+V+Ti:≧10%本発明においてはこれらMo,V,Tiの一種以上を含有させることが必須である。またその含有量は、粉末ないし焼結体のヤング率を所定のヤング率以上に高める上で、合計量で10%以上添加することが必要である。
【0019】W :≦2%Ta:≦2%これらW,Taは炭化物を容易に形成するが、その比重が10g/cm3を超えるため、比ヤング率(ヤング率/比重)を低めてしまう。そこで本発明ではこれらをそれぞれ2%以下として、実質的に含まないようにする。
【0020】Co:≦2%Coは基地を強化する元素であるがFeより比重が大きく、上記W,Taと同様に比ヤング率を低めてしまう。そこで本発明ではCoを2%以下として、実質的に含まないようにする。
【0021】
【実施例】次に本発明の実施例を以下に具体的に説明する。
<実施例1>素材を2kgの高周波誘導炉で真空中で溶解し、続いてArガス噴霧法により表1に示す組成の粉末の製造を試みた。その結果、Vが15%を超えるNo.3,Tiが12%を超えるNo.4,Moが25.0%を超えるNo.6は何れも噴霧途中で注湯ノズルが閉塞して粉末を製造することができなかった。
【0022】
【表1】

【0023】<実施例2>素材を真空中で2kgの高周波誘導炉で溶解し、Arガス噴霧法により表2に示す組成の粉末を製造した。その粉末を−42メッシュに分級し、そしてその分級した粉末を外径30mm,長さ100mmの軟鋼製の有底の筒状容器に充填してEB溶接し、真空脱気及び密封した。
【0024】続いて1000kgf/cm2の静水圧下且つ1200℃×1hrの条件下でHIP処理を行った。そしてHIP処理後に870℃×2hr加熱し、徐冷により球状化焼鈍を行った。得られたHIP体から幅8mm,厚さ2mm,長さ60mmの試験片を切り出して、1100℃×3minの加熱→油冷の焼入れを行い、続いて580℃×1hr→空冷を3回繰り返し、焼戻しを行って、その後試験片の表面を研磨仕上げした。その試験片のヤング率を横振動共振法で、また密度を水浸法で測定した。結果を表2に示す。
【0025】
【表2】

【0026】表2の結果から、本発明例のものはヤング率,比ヤング率ともに高く、試作したピストンピンの事例では軽量化率が大きかった。尚、ヤング率及び比ヤング率の目標値は、それぞれヤング率260GPa以上,比ヤング率34以上である。また軽量化率は発明鋼(比較鋼)の比ヤング率/構造用鋼の比ヤング率で求めた。
【0027】尚表2の結果は、粉末をHIP処理して焼結した場合の例であるが、本発明においては粉末を通常の粉末冶金で焼結した場合においても十分な効果が認められた。
【0028】以上本発明の実施例を詳述したがこれはあくまで一例示であり、本発明はその主旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた態様で実施可能である。
【出願人】 【識別番号】000003713
【氏名又は名称】大同特殊鋼株式会社
【出願日】 平成9年(1997)6月23日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 和夫
【公開番号】 特開平11−12602
【公開日】 平成11年(1999)1月19日
【出願番号】 特願平9−182998