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【発明の名称】 連続鋳造用浸漬ノズルおよびその製造方法
【発明者】 【氏名】望月 陽一郎

【氏名】伏見 哲郎

【氏名】長谷部 悦弘

【氏名】大屋 鎖登志

【要約】 【課題】補強用のファイバー体の酸化による強度の劣化がなく、十分吐出口近傍の強度が得られる連続鋳造用浸漬ノズルおよびその製造方法を提供する。

【解決手段】化学組成Al2 3 と化学組成SiO2 の合計が80重量%以上である無機材質のファイバー体9を、ノズル本体2の吐出口6の内側上端部10から20mm以上の位置を起点として吐出口柱状部8の耐火物2a中にノズル本体2の長手方向に延伸させて埋設する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 化学組成Al2 3 と化学組成SiO2 の合計が80重量%以上である無機材質のファイバー体を、ノズル本体に設けられた吐出口の内側一端部からノズル本体の開口部方向に20mm以上離間した位置を起点として前記吐出口の側部に隣接する吐出口柱状部を形成する耐火物中にノズル本体の長手方向に延伸させて埋設したことを特徴とする連続鋳造用浸漬ノズル。
【請求項2】 前記ファイバー体の埋設部位におけるこのファイバー体の含有量が0.1〜2重量%であることを特徴とする請求項1に記載の連続鋳造用浸漬ノズル。
【請求項3】 前記ファイバー体の直径が0.5〜2mmであることを特徴とする請求項1または2に記載の連続鋳造用浸漬ノズル。
【請求項4】 マンドレルが設けられ開口部を有するゴム型を用意し、この開口部からゴム型の一部に耐火物原料を充填し、耐火物原料が充填されていないゴム型内に無機材質のファイバー体をリング状に垂下し、このファイバー体を埋設するように耐火物原料を充填し、ゴム型に充填した耐火物原料を押圧後、脱型して連続鋳造用浸漬ノズルの成形体を形成し、この成形体の一部をファイバー体と共に切除して吐出口を設け、この成形体を焼成することを特徴とする連続鋳造用浸漬ノズルの製造方法。
【請求項5】 前記ファイバー体は化学組成Al2 3 と化学組成SiO2の合計が80重量%以上である無機材質のファイバー体を、ノズル本体に設けられた吐出口の内側一端部からノズル本体の開口部方向に20mm以上離間した位置を起点として前記吐出口の側部に隣接する吐出口柱状部を形成する耐火物中にノズル本体の長手方向に延伸させて埋設したことを特徴とする請求項4に記載の連続鋳造用浸漬ノズルの製造方法。
【請求項6】 前記ファイバー体の埋設部位におけるこのファイバー体の含有量が0.1〜2重量%であることを特徴とする請求項4または5に記載の連続鋳造用浸漬ノズルの製造方法。
【請求項7】 前記ファイバー体の直径が0.5〜2mmであることを特徴とする請求項4ないし6いずれかに記載の連続鋳造用浸漬ノズルの製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は連続鋳造用浸漬ノズルおよびその製造方法に係わり、特にノズルの吐出口近傍の強度向上を図った連続鋳造用浸漬ノズルおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】連続鋳造工程において、タンディッシュからモールドヘ溶綱を注入する場合、溶鋼の酸化防止及びモールド内の溶鋼の流れ方を制御するために浸漬ノズルが使用される。通常、タンディッシュから垂直に流れ落ちた溶鋼は浸漬ノズルの内口底面部にあたり浸漬ノズルの下部側面に設けられた吐出口からモールド内に流れ込む。初期溶鋼注入時にはタンディッシュから浸漬ノズルに大量の溶鋼が流入し、浸漬ノズル内口底部へ機械的な衝撃がかかる。吐出口近傍は吐出口が設けられているため浸漬ノズルの部位の中では構造的強度が最も弱かったが、従来は吐出口近傍の構造的強度の安全率を十分大きく取ることができたので、吐出口近傍の構造的強度が最も弱いことは問題にならなかった。
【0003】しかし、近年ノズル自体のスリム化、吐出口サイズ大型化による吐出口柱部の面積の減少によって吐出口近傍の構造的な強度が低下し、初期溶鋼注入時の衝撃により、吐出口近傍から浸漬ノズルに破断が生じ、浸漬ノズルの先端部が欠け落ちる問題が発生している。このような問題の解決を図るため、従来の鋳造用耐火物の補強方法は、耐火物に炭素ファイバーを添加したり、カーボンファイバー製のネットを配設したり、単繊維を結束した炭素あるいは黒鉛繊維束を方向性を持たせて配設したり、あるいは方向性を持たせずに耐火物中に分散させたり、メタルファイバーを凝集させたりしている。
【0004】しかしながら、これら従来の補強方法は、材質の厚みを十分確保し難い吐出口近傍では、耐火物内に配設されたファイバーが酸素と接触する可能性が高く、炭素、黒鉛系のファイバーでは酸化によりその強度が極端に低下し、またこの補強方法に適した十分な長さのファイバーが得られない。メタルファイバーでは高温状態における強度が弱く、補強とはならない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】そこで補強用ファイバーに酸化による強度の劣化がなく、十分吐出口近傍の強度が得られる連続鋳造用浸漬ノズルおよびその製造方法が要望されていた。
【0006】本発明は上述した事情を考慮してなされたもので、補強用ファイバーに酸化による強度の劣化がなく、十分吐出口近傍の強度が得られる連続鋳造用浸漬ノズルおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するためになされた本願請求項1の発明は、化学組成Al2 3 と化学組成SiO2 の合計が80重量%以上である無機材質のファイバー体を、ノズル本体に設けられた吐出口の内側一端部からノズル本体の開口部方向に20mm以上離間した位置を起点として前記吐出口の側部に隣接する吐出口柱状部を形成する耐火物中にノズル本体の長手方向に延伸させて埋設したことを特徴とする連続鋳造用浸漬ノズルであることを要旨としている。
【0008】本願請求項2の発明は、前記ファイバー体の埋設部位におけるこのファイバー体の含有量が0.1〜2重量%であることを特徴とする請求項1に記載の連続鋳造用浸漬ノズルであることを要旨としている。
【0009】本願請求項3の発明は、前記ファイバー体の直径が0.5〜2mmであることを特徴とする請求項1または2に記載の連続鋳造用浸漬ノズルであることを要旨としている。
【0010】本願請求項4の発明は、マンドレルが設けられ開口部を有するゴム型を用意し、この開口部からゴム型の一部に耐火物原料を充填し、耐火物原料が充填されていないゴム型内に無機材質のファイバー体をリング状に垂下し、このファイバー体を埋設するように耐火物原料を充填し、ゴム型に充填した耐火物原料を押圧後、脱型して連続鋳造用浸漬ノズルの成形体を形成し、この成形体の一部をファイバー体と共に切除して吐出口を設け、この成形体を焼成することを特徴とする連続鋳造用浸漬ノズルの製造方法であることを要旨としている。
【0011】本願請求項5の発明は、前記ファイバー体は化学組成Al2 3 と化学組成SiO2 の合計が80重量%以上である無機材質のファイバー体を、ノズル本体に設けられた吐出口の内側一端部からノズル本体の開口部方向に20mm以上離間した位置を起点として前記吐出口の側部に隣接する吐出口柱状部を形成する耐火物中にノズル本体の長手方向に延伸させて埋設したことを特徴とする請求項4に記載の連続鋳造用浸漬ノズルの製造方法であることを要旨としている。
【0012】本願請求項6の発明は、前記ファイバー体の埋設部位におけるこのファイバー体の含有量が0.1〜2重量%であることを特徴とする請求項4または5に記載の連続鋳造用浸漬ノズルの製造方法であることを要旨としている。
【0013】本願請求項7の発明は、前記ファイバー体の直径が0.5〜2mmであることを特徴とする請求項4ないし6いずれかに記載の連続鋳造用浸漬ノズルの製造方法であることを要旨としている。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係わる連続鋳造用浸漬ノズルの実施の形態について添付図面に基づき説明する。
【0015】図1に示すような本発明に係わる連続鋳造用浸漬ノズル1は、ノズル本体2よりなり、この本体2は長さが、例えば700mmの中空状で溶鋼流通用の直径が例えば72mmの溶鋼流路3を軸方向に有し、この溶鋼流路3の端部には底面部4が設けられ、この底面部4に対向して溶鋼流入用の流入口5が設けられ、さらに底面部4に近接したノズル本体2の周側面にはノズル本体2の直径上に2個の溶鋼吐出用の例えば高さ80、幅70mmを有する長方形状の吐出口6が対向した設けられている。
【0016】この吐出口6を形成するためノズル本体2の一部を切欠したノズル本体2の残部、すなわち吐出口6間にはこの吐出口6の側部7に隣接して吐出口柱状部8が形成され、吐出口柱状部8には、この吐出口柱状部8の肉厚中央部に無機材質のファイバー体9が埋設されている。
【0017】このファイバー体9は、化学組成Al2 3 と化学組成SiO2 との合計が80重量%以上、たとえば化学組成Al2 3 が60重量%、化学組成SiO2 が25重量%、B2 3 が15重量%の無機材質であり、単繊維を撚り合わせて結束され直径が0.5〜2mm、たとえば0.8mmである。
【0018】なお、ファイバー体9は化学組成Al2 3 と化学組成SiO2 の合計が80重量%以上の単繊維であってもよい。
【0019】さらに、ファイバー体9は、ファイバー体9の端部12が吐出口6の内側一端部10から離間距離Xが20mm以上、たとえば20mmのところの柱状部基部域11に位置し、この端部12を起点として柱状部基部域11および吐出口柱状部8を形成する耐火物2a中をノズル本体2の長手方向に平行に延伸し、埋設されている。なお、柱状部基部域11は吐出口柱状部8の上部延長線上に位置し吐出口6の内側一端部10から一定距離Xの範囲内の部位である。
【0020】ファイバー体9の埋設部位、すなわち柱状部基部域11および吐出口柱状部8を形成する耐火物2aにおけるファイバー体9の含有量は0.1〜2重量%、たとえば1重量%である。
【0021】ファイバー体9の直径が0.5〜2mmであることが必要な理由は、図3に示すように浸漬ノズル1の成形体1aを製造するため、ファイバー体9の直径が0.5mm以上でないと耐火物原料2a中に埋設する作業が難しく、2mm以下でないとファイバー体9埋設部位、すなわち吐出口柱状部8から耐火物が剥離するためである。
【0022】ファイバー体9の化学組成Al2 3 と化学組成SiO2 との合計が80重量%以上であることが必要な理由は、浸漬ノズル1は溶鋼注入前に約1200℃まで予熱されるが、この温度以上で使用には、ファイバー体9の組成はAl2 3+SiO2 が80重量%以上のものしか耐えられないためである。
【0023】ファイバー体9の端部12に設置位置、すなわちファイバー体9の起点が吐出口6の内側上端部7から20mm以上である理由は、吐出口6上部近傍で最も構造的に強度が弱いのは柱状部基部域11であるため、内側一端部10よりも20mm以上の位置までファイバー体8が埋設されていないと初期溶鋼注入時の衝撃によってこの柱状部基部域11よりノズル本体2の底面部4を含む先端部が落下する危険性があるためである。
【0024】ファイバー体8の埋設部位におけるファイバー体8の含有量は0.1〜2重量%である理由は、0.1重量%以下では強度が向上が図れず、2重量%より多いと初期溶鋼注入時の機械的な衝撃によってファイバー体9の埋設部位より耐火物2aが剥離するためである。
【0025】次に本発明に係わる連続鋳造用浸漬ノズルの製造方法を図3に基づき説明する。
【0026】マンドレル13が設けられ開口部14を有するゴム型15を用意し、この開口部14からゴム型15の一部16に耐火物原料2aを充填する。次に耐火物原料2aが充填されていないゴム型15の他部17内に上述のような化学組成Al23 と化学組成SiO2 の合計が80重量%の無機材質のファイバー体9を耐火物原料2aの肉厚中央部に相当する位置にリング状に垂下し、このファイバー体9を埋設するように他部17にさらに耐火物原料2aを充填する。
【0027】さらに静水圧プレスによりゴム型15を介してゴム型15に充填された耐火物原料2aを押圧し、脱型して浸漬ノズル1の成形体1aを形成する。この成形体1aの一部をファイバー体9と共に切除して吐出口6を設け、この成形体1aを焼成して浸漬ノズル1を製造する。
【0028】本発明に係わる浸漬ノズル1は上述したような構造を有するから、浸漬ノズル1をタンディッシュに取り付けて使用する場合、溶鋼は浸漬ノズル1を通してタンディッシュに注入される。初期溶鋼注入時にあっては、モールドに溶鋼が満たされておらず浸漬ノズル1の底面部zの裏面を溶鋼が押圧していないので、溶綱の流による衝撃が浸漬ノズル1の底面部4にすべてかかる。しかし、浸漬ノズル1はノズル本体2の中で構造的に最も強度の弱い柱状部基部域11および吐出口柱状部8にファイバー体9を吐出口6の内側上端部10から20mm以上の位置を起点として柱状部基部域11および吐出口柱状部8にノズル本体2の長手方向に平行に埋設させ構造的強度の補強を図っているので、柱状部基部域11または吐出口柱状部8よりノズル本体2の先端部が欠け落ちることがない。
【0029】また、モールドに溶鋼が満たされた状態では、ノズル本体2は常時高温の溶鋼に曝されているが、ファイバー体9は化学組成Al2 3 と化学組成SiO2 の合計が80重量%の無機材質であり、吐出口柱状部8の肉厚部に埋設されているので、ファイバー本体9は酸化され劣化することも少なく、高温にも耐えられる。また、万一、柱状部基部域11または吐出口柱状部8に亀裂が入っても、ファイバー体9により亀裂の進行は妨げられ、亀裂から断裂へと進行することは確実に食い止められる。
【0030】さらに、ファイバー体9の埋設部位である柱状部基部域11および吐出口柱状部8におけるファイバー体9の含有量は0.1〜2重量%にしたので、初期溶鋼注入時の機械的な衝撃によって柱状部基部域11または吐出口柱状部8から耐火物が剥離することがない。また、ファイバー体9の直径が0.5〜2mmとしたので、上述のような浸漬ノズル1を製造工程において、ファイバー体9を耐火物原料2a中に埋設するための作業性がよく、さらにファイバー体9と耐火物2aの結合度合が強く柱状部基部域11または吐出口柱状部8から耐火物2aが剥離することがない。
【0031】
【実施例】ファイバー体の埋設による耐火物の補強度合を評価するために、ファイバー体の種類、直径、埋設位置、含有量を変えてファイバー体を埋設した耐火物原料のアルミナー黒鉛質の断面形状25mm×25mm、長さ150mmの直方体の試料を作製した。
【0032】これらの試料を図5に示すような試験方法により、ファイバー体と耐火物原料の曲げ強さ(接合強度)を測定した。試験結果を表2〜4に示す。
【0033】■ ファイバー体の種類を変えた場合表1に示すファイバー体測定した結果を表1に記する。実施例1では、曲げ強さが室温で9.8MPa、1400℃で7.8MPa、実施例2では、曲げ強さが室温で9.5MPa、1400℃で7.9MPaであるが、ファイバー体のステンレス鋼を用いた比較例1では、室温で10.0MPa、1400℃で5.0MPaと室温の曲げ強さが向上しているが、浸漬ノズルを実際に使用する1400℃では、曲げ強さの補強が図れていない。
【0034】
【表1】

【0035】なお、使用ファイバー体−Aおよび使用ファイバー体−Bの特性は表5に示す。
【0036】■ ファイバー体の直径を変化させた場合表2に示す条件にファイバー体の直径を変化させて測定を行った結果を表2に記する。
【0037】ファイバー体の直径が0.5〜2mmの範囲にある実施例1、3、4にあっては、室温、1400℃とも良好な曲げ強さを示すが、ファイバー体の直径が0.1mmの比較例2では、室温で6.9MPa、1400℃で4.8MPaと曲げ強さの補強が図れてず、さらにファイバー体がよれた状態で耐火物中に充填されていた。
【0038】ファイバー体の直径が2.5mmの比較例3では、測定前に耐火物に剥がれが生じ、測定を行えなかった。
【0039】
【表2】

【0040】■ ファイバー体の端部の設置位置を変化させた場合表3に示す条件にファイバー体の設置位置を変化させて測定を行った結果を表3に記する。
【0041】
【表3】

【0042】端部の設置位置が20mmの実施例1、25mmの実施例5は何れも良好な曲げ強さを示したが、設置位置が0mmの比較例4では曲げ強さが室温で6.9MPa、1400℃で4.8MPa、設置位置が15mmの比較例5では、曲げ強さが室温で7.0MPa、1400℃で5.0MPaでファイバー体による補強の効果が十分得られていない。
【0043】■ ファイバー体の量を変化させた場合表4に示す条件にファイバー体の量を変化させて測定を行った結果を表4に記する。
【0044】
【表4】

【0045】ファイバー体の量が0.05重量%の比較例6では、曲げ強さが室温で6.9MPa、1400℃で4.7MPa、ファイバー体の量が2.1重量%の比較例7では、曲げ強さが室温で7.2MPa、1400℃で5.8MPa、ファイバー体の量が2.5重量%の比較例8では、曲げ強さが室温で5.0MPa、1400℃で4.2MPaとファイバー体による補強の効果が十分得られていない。
【0046】
【表5】

【0047】
【発明の効果】本発明に係わる連続鋳造用浸漬ノズルは、所定の化学組成と直径を有する無機材質のファイバー体を吐出口近傍の所定の位置の耐火物中に所定の量だけノズル本体の長手方向と平行になるように埋設したので、ファイバー体に酸化による強度の劣化がなく、ノズル本体の断裂を防止し、十分吐出口近傍の強度が十分得られる連続鋳造用浸漬ノズルおよびその製造方法を提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000221122
【氏名又は名称】東芝セラミックス株式会社
【出願日】 平成10年(1998)4月1日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】波多野 久 (外1名)
【公開番号】 特開平11−285791
【公開日】 平成11年(1999)10月19日
【出願番号】 特願平10−88887