トップ :: B 処理操作 運輸 :: B22 鋳造;粉末冶金




【発明の名称】 溶鋼流の制御装置
【発明者】 【氏名】森下 雅史

【氏名】小北 雅彦

【要約】 【課題】連続鋳造における鋳型内の溶鋼流を、静磁場の方向を適正な方向に規制して適切に制御することによって、内部欠陥のない鋳辺を製造することのできる溶鋼流の制御装置を提供する。

【解決手段】断面が長方形のスラブ鋳片またはブルーム鋳片を製造する連続鋳造機の鋳型部または鋳型直下部に静磁場を作用させて、前記鋳片内部の溶鋼流を制御する様にした制御装置において、鋳型断面両側の長辺の脇に1組または複数組の電気コイルを、それらのコイルの軸方向が鋳片断面の長辺方向に略平行となる様に配置して電磁石を構成し、且つ溶鋼中に前記長辺方向の磁場が貫通する様に構成したものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 断面が長方形のスラブ鋳片またはブルーム鋳片を製造する連続鋳造機の鋳型部または鋳型直下部に静磁場を作用させて、前記鋳片内部の溶鋼流を制御する様にした制御装置において、鋳型断面両側の長辺の脇に1組または複数組の電気コイルを、それらのコイルの軸方向が鋳片断面の長辺方向に略平行となる様に配置して電磁石を構成し、且つ溶鋼中に前記長辺方向の磁場が貫通する様にしたものであることを特徴とする溶鋼流の制御装置。
【請求項2】 前記電気コイルのいずれかの軸からの距離、または任意の2つのコイルの軸を含む平面内で軸と軸に挟まれた領域からの距離が下記(1)式で表される長さRよりも小さい領域であって、且つ鋳片の2つの短辺面を延長した平面に挟まれた領域には、コイルの鉄芯以外の大きな強磁性体を配置しない様に構成したものである請求項1に記載の制御装置。
(Wmax /2)×0.5≦R≦(Wmax /2)×3.0 …(1)
但し、Wmax は所定の静磁場を作用させる為の最大の鋳片幅である。
【請求項3】 鋳造する鋳片サイズを変更するに際し、鋳片短辺面が長辺方向に動くのに連動させて、短辺部の磁極をスライド動作させる様に構成した請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項4】 鋳片短辺銅板を駆動する為の装置の一部または全部、或は鋳型下短辺ガイドロールまたは短辺ガイドクーリンググリッドを短辺部磁極とする請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】 電気コイルを鋳型内に組み込むか、または鋳型下端より上方の鋳型背面に鋳型と独立に懸架する様に構成した請求項1〜4のいずれかに記載の制御装置。
【請求項6】 前記電気コイルを、浸漬ノズル吐出孔の底の延長線と鋳片短辺表面が交わった点より下方となる様に配置した請求項1〜5のいずれかに記載の制御装置。
【請求項7】 前記電気コイルを鋳片表面温度がキューリー点温度となる位置よりも上方に配置したものである請求項1〜6のいずれかに記載の制御装置。
【請求項8】 前記電気コイルの周囲を超電導体からなる磁気シールドで覆ったものである請求項1〜7のいずれかに記載の制御装置。
【請求項9】 電磁石設置位置における鋳片中心部の磁束密度が1500〜20000ガウスとなる様にしたものである請求項1〜8のいずれかに記載の制御装置。
【請求項10】 長辺方向の磁場を発生する電磁石の磁場が作用しない鋳型上端部に、電磁攪拌用リニアモーターを組み合わせて配置したものである請求項1〜9のいずれかに記載の制御装置。
【請求項11】 鋳型上端部に、鉄芯を持たない別の電気コイルを配置し、鋳型内メニスカス部の溶鋼を制動する様に構成した請求項1〜10のいずれかに記載の制御装置。
【請求項12】 鋳型下の複数組のガイドロールに、長辺方向磁場発生用電気コイルを組み込んだものである請求項1〜4、6〜11のいずれかに記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、連続鋳造において鋳型内の溶鋼流を静磁場の作用によって制御することによって、内部欠陥のない鋳片を製造する為の制御装置の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図1は、従来の連続鋳造法における鋳片中の溶鋼流の様子を示す概略説明図であり、図中1は短辺側鋳型、2は長辺側鋳型、3は浸漬ノズル、4は溶鋼、5は凝固殻、6は非金属介在物、15はガイドロールを夫々示す。尚図1(a)は長辺側から見た断面図であり、図1(b)は短辺側から見た断面図である。
【0003】この様な連続鋳造においては、鋳型内に注入された溶鋼流(図1、2でAで示す)が深く潜り込むと、溶鋼よりも軽い気泡やアルミナ等も溶鋼流に乗って鋳片内に深く入り込み、溶鋼表面上に浮上分離されずに、湾曲内側に非金属介在物6として捕捉されることになる。そしてこれが鉄鋼製品の内部欠陥となる。
【0004】こうした不都合を回避するという観点から、溶鋼流速が早い領域に静磁界を作用させて溶鋼流動を減速する技術が様々提案されている。例えば、特開昭57−17356号には、図2[図2(a)は長辺側から見た断面図、図2(b)は短辺側から見た断面図]に示す様に、鋳型の周囲に電気コイル7と鉄芯8からなる電磁石9を配置し、この電磁石9によって発生する静磁場を溶鋼流速が早い領域に作用させて溶鋼流動を減速する技術が開示されている。
【0005】しかしながら、静磁場を局所的に作用させると、前記図2(a)に示す様に溶鋼流Aは磁場の弱い領域を迂回するので、溶鋼流Aの潜り込みを十分に抑制できず、電磁石を配置しただけの効果が発揮されない。
【0006】こうしたことから、例えば特開平2−284750号には、断面が長方形のスラブ鋳片またはブルーム鋳片(以下、これらを一括して単に「鋳片」と呼ぶことがある)を製造する連続鋳造機の鋳型において、その長辺方向(以下、「幅方向」と言うことがある)の全域に静磁場を作用させて溶鋼流の迂回経路を断つ技術が提案されている。また例えば特開平5−55220号には、磁場作用領域を鋳型の上下2段とする技術も提案されており、ある程度の品質改善が発揮されている。
【0007】しかしながらこれらの技術は、いずれも鋳型短辺近傍(幅方向の両端部付近)の領域では、下降流の抑制効果が不十分であり、鋳片内部の非金属介在物の欠陥が低減しないという問題があった。そしてこうした問題が生じる原因としては、次の様に考えられる。上記した技術はいずれも断面空間が長方形の鋳型を流下する溶鋼流に対して鋳型短辺方向(以下、「厚み方向」と言うことがある)の磁場を作用させる技術であるが、こうした磁場を作用させると図3に示す様に、鋳型幅中央部においては鋳型幅方向の電流が誘起され、磁場と電流が水平面内で直交するので、フレミングの法則に従って上向きの電磁力が発生し、溶鋼流が制動されることになる。これに対して鋳型短辺面近傍部では、鋳型厚み方向に磁場を作用させても、鋳型幅方向には電流が誘起されにくいため、水平面内で磁場と電流が直交した場合に発生する鉛直上向きの電磁力が弱い。従って、短辺面に沿った溶鋼の潜り込みを十分に抑制できず、幅方向両端部では内部に多くの非金属介在物が残存することになる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上記した技術に対して、例えば特開昭59−76647号の様な技術も提案されている。この技術は、図4に示す様に鋳型部分で第1の磁場を作用させつつ、鋳型の直下に配置した別の電磁石9aによって第2の磁場を作用させ、これらの磁場の作用によっ図4のAに示す様に溶鋼流を制御しようとするものである。また図4に示した技術においては、第2の磁場を作用させる為の電磁石9aは、図5に示す様に、C字型の鉄芯8aに電気コイル7aを巻付けた構成のものを採用しており、鋳片10内でBの方向(鋳型長辺方向)の磁場を作用させるものである。しかしながら、こうした技術においても下記に示す様な問題があり、依然として改善の余地が残されていた。
【0009】上記の様に、連続鋳造法においては、幅方向の磁束をほぼ水平方向に作用させるのが理想的であるが、鋳型の長辺銅板背面(後記図8参照)には溶鋼よりも遥かに透磁率が高い磁石(第1の磁場を発生させる為の磁石)が存在するので、鋳型直下の磁極間の磁束が上方の鋳型背面に迂回してしまい、溶鋼中の磁束密度が大幅に低下することになる。また鋳型は通常、溶鋼よりも磁束を通しやすい強磁性体製のガイドロールやクーリングガイドが存在するので、溶鋼中を貫通するべき磁束が、ガイドロール中やクーリングガイド中を迂回してしまい、溶鋼中に十分な磁束が貫通しないことになる。またコイルの位置が低過ぎて、コイルに挟まれた鋳片表面温度がキューリー点温度以下に降下すると、凝固殻自体が磁性を持つようになるので、幅方向の磁束が凝固殻内に集中し、溶鋼中の磁束密度が大幅に低下する。
【0010】上述した様に、溶鋼中に十分な磁束が貫通しなければ、潜り込み流を抑制してスラブの内部欠陥を十分に防止することができないのであるが、これまでの技術では鋳片に幅方向の磁場を作用させることは困難であった。
【0011】また第2の磁場を作用させる為の電磁石9aは、前記図5に示した様にC字型の鉄芯8aを採用したものでので、下記の様な不都合も発生する。即ち、上記した様な電磁石9aでは、図6に示す様に磁束が厚み方向で不均一分布するので(図6中11は磁束線を示す)、磁場が強い領域Cが歪んだ形状となり、幅方向の両端部で強く中央部が弱い磁場分布が形成されることになる。こうした傾向が極端な場合には、短辺に沿った溶鋼下降流がより磁場の弱い幅中央部に迂回し、中央部で溶鋼流が深く潜り込み、鋳片幅中央部の内部品質が悪化することになる。
【0012】更に、通常1つの連続鋳造機で種々異なる幅の鋳片が製造されるのであるが、図5,6に示した様に幅中央部が両端部に比べて磁束密度が小さいC字型電磁石9aでは、磁極間距離に近い幅広の鋳片10aには強い磁場を作用させることができても[図7(a)]、幅が狭い鋳片10bには十分な磁場を作用させることが困難である[図7(b)]。
【0013】上述した様な技術では、電磁石9aは鋳型直下に配置されるものであるので、ブレークアウト(鋳片の凝固殻が破れて内部の溶鋼が鋳型下に流出する操業トラブル)が発生すると、電磁石9aが溶鋼を浴びて破損することもある。また幅方向の磁場を作用させる場合には、厚み方向の磁場を作用させる場合に比べて磁極間距離が大きくなり、漏れ磁束が多いものとなる。こうしたことから上記の制御装置では、消費電力が大きくなる上、磁石周辺の設備の磁性体部分に多大な吸引力が作用し、鋳型振動負荷がオーバーロードとなったり、設備が変形することがある。
【0014】本発明は上記事情に着目してなされたものであって、その目的は、連続鋳造における鋳型内の溶鋼流を、静磁場の方向を適正な方向に規制して適切に制御することによって、内部欠陥のない鋳辺を製造することのできる溶鋼流の制御装置を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決した本発明の制御装置とは、断面が長方形のスラブ鋳片またはブルーム鋳片を製造する連続鋳造機の鋳型部または鋳型直下部に静磁場を作用させて、前記鋳片内部の溶鋼流を制御する様にした制御装置において、鋳型断面両側の長辺の脇に1組または複数組の電気コイルを、それらのコイルの軸方向が鋳片断面の長辺方向に略平行となる様に配置して電磁石を構成し、且つ溶鋼中に前記長辺方向の磁場が貫通する様に構成したところに要旨を有するものである。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明者らは上記従来の問題点を考慮し、断面が長方形のスラブ鋳片またはブルーム鋳片を製造する連続鋳造機の鋳型部または鋳型直下部に静磁場を作用させて、前記鋳片内部の溶鋼流を制御する様にした制御装置において、静磁場の作用が最も効果的に発揮される装置構成について様々な角度から検討した。その結果、連鋳機内の鋳片がほぼ垂直となっている領域で、軸方向が鋳型幅方向にほぼ平行な1組(または複数組)の通電コイル(電気コイル)を配置して電磁石を構成し、両コイルに同一方向の直流電流を通電することによって、溶鋼に幅方向でコイル内と逆向きの磁場を作用させる様にすれば、上記目的に適う制御装置が実現できることを見出し、本発明を完成した。
【0017】本発明の制御装置の構成を図面によって詳細に説明する。図8は本発明の制御装置の一構成例を示す縦断面図であり、図中7b,7cは電気コイル、8bは鉄芯(コア)、12は鋳型フレーム、13はフットロール、14はトップカバー、15,15aはガイドロール、16,16aはロールスタンドフレームを夫々示す(3は前述した浸漬ノズルである)。また図9は図8における鋳型付近の構成を説明する為の平面図であり、図中20は長辺銅板バックプレート、21は長辺銅板、22は短辺銅板バックプレート、23は短辺銅板であり、これらによって鋳型が構成される。また25aは磁極N、25bは磁極Sを夫々示すが、これらについては後述する。
【0018】図示した制御装置では、軸方向が鋳型幅方向にほぼ平行な1組の電気コイル7b,7cを鉄芯8bに巻付けて鋳型断面両側の長辺の脇に配置することによって電磁石が構成され、両コイルに同一方向の直流電流Eを通電する様に構成されている。こうした構成を採用することによって、鋳片の幅方向(図9のB方向)の磁場を効果的に作用させることができる。
【0019】上記した様な構成を採用して鋳片の幅方向の磁場を作用させると、鋳片の水平方向断面内の溶鋼下降流速分布が均一化され、鋳片への介在物の侵入が防止できるのであるが、こうした効果が発揮される理由について図面を用いて説明する。
【0020】まず鋳片厚み方向(短辺方向)の磁場を作用させた場合には、前述した様に例え磁束密度が幅方向に均一であっても、図10に示す様に鋳片短辺近傍部では電流の水平成分が小さく、上向きの電磁力が弱くなる。その結果、磁石の下流側には鋳片厚み方向を回転の軸として、幅方向両端近傍で下方に深く潜り込む2つの大きな溶鋼流の渦が残ることになる。そしてこの渦に乗って非金属介在物(図中、「○」印で示す)が鋳片内部に深く侵入するので、製品内部に欠陥が発生し易くなるものと考えられる。
【0021】これに対し、本発明の様に鋳片幅方向(長辺方向)に磁場を作用させた場合には、図11に示す様に鋳片長辺近傍で上向きの電磁力が弱い領域が形成されるが、鋳片短辺近傍部では十分な上向きの電磁力が発生する。その結果、磁石の下流側には鋳片幅方向を回転の軸として厚み方向両側で潜り込む2つの渦が形成されるが、鋳片の厚み(短辺長さ)は幅(長辺長さ)よりも格段に小さいので、この渦の大きさも厚み方向の磁場の場合の渦に比べて格段に小さいものとなる。従って、溶鋼自体の粘性による渦の消滅が速くなり、磁石の下流側で流速分布が速やかに均一化されることになる。そして、鋳片内部には集積帯を形成する様な介在物が侵入しなくなり、製品の内部欠陥が防止できることになる。
【0022】前述した様に、電磁石の磁束が作用する近傍に磁性材料を配置すると、磁束が磁性材料の方に引き寄せられてしまい、静磁場による作用を効果的に発揮できなくなることがある。従って、コイルの中心軸からの距離、または2つのコイル軸を含む平面内で軸と軸に挟まれた長方形状平面領域からの距離が所定の長さRよりも小さい領域であって、且つ鋳片の2つの短辺面を延長した平面に挟まれた領域から、コイルの鉄芯以外の大きな磁性体を排除するのが好ましく、より好ましくは当該領域から一切の磁性体を排除するのが良い。
【0023】上記の所定の長さRが、磁場を作用させる最大の鋳片幅Wmax の1/2よりも極端に小さいと、最大幅の鋳片でおよそWmax の磁極間距離の間を水平に直線的に磁束が貫通するよりも、コイル中心から長さRの距離内に存在する幅方向に長い磁性体(例えば、短辺にほぼ水平に配置されたボルト等)に迂回する方が磁気抵抗が小さくなるので、溶鋼を貫通する磁束の密度が低下する。但し、長さRを余り大きくすると、より高価な非磁性材料を使用する領域が大きくなり、経済的でない。従って、前記長さRの範囲は下記(1)式で示される範囲とすることが好ましい。
(Wmax /2)×0.5≦R≦(Wmax /2)×3.0 …(1)
但し、Wmax は所定の磁場を作用させる為の最大の鋳片幅である。
【0024】上記長さRによって規制される領域を、図8,9に領域F(強磁性体配置不可領域F)として示す。即ち、この領域F内には強磁性体を配置しない様にすることが好ましいのであるが、具体的には前記図8,9に示した長辺銅板バックプレート20、長辺銅板21、短辺銅板バックプレート22、短辺銅板23を始め、浸漬ノズル3、電気コイル7b,7c、鋳型フレーム12およびトップカバー14等の材質は全て非磁性材料(例えば、SUS304等)とする他、フットロール13や短辺ガイドクーリングリッド(図示せず)を含め、領域内のガイドロール15、ロールスタンドフレーム16等も基本的に非磁性材料を用いる。
【0025】領域F内に配置されるガイドロール15の材料構成について、図面を用いて更に詳細に説明する。図12は、図8に示した鋳型下のガイドロール15付近の水平断面であり、このガイドロール15は長辺側の4個のガイドロール15bと、短辺側の2個のガイドロール15cからなり、長辺側のガイドロール15bは軸受け18a,18b等によって回転自在に支持されている(短辺側のガイドロール15cの軸受けについては図示せず)。そして前記領域F内に配置されるガイドロール15bおよび長辺中央部に配置される軸受け18a(即ち、軸受け18aを構成するハウジング、軌道輪および転動体等)は非磁性材料からなる。これに対し鋳片10の幅よりも外側の軸受け18bや短辺側のガイドロール15c(即ち、軸受けを構成するハウジング、軌道輪および転動体等を含めて)は、磁性材料で構成しても良い。
【0026】上記の様に領域F内に配置される部材については、非磁性材料で構成することが好ましいのであるが、例えば長辺中央部に配置される軸受け18aにおいて、軸受け寿命を向上されるという観点から、軸受けにおいて大きな構成部材であるハウジングについては非磁性材料で作製し、小さな構成部材である軌道輪(内輪や外輪)については磁性材料を使用することも次善の策である。尚鋳型銅板温度測定用の熱電対の線材に関しては、直径数mm以下の細い磁性材料を使用することができる。また前記図8に示したガイドロール15aおよびロールスタンドフレーム16a等の様に、前記領域Fの外側に配置されるものについては、大きな部材でも磁性材料を用いることができる。また前記長辺銅板21については、摩耗防止という観点からめっきが施されるのが一般的であるが、そのめっき材としては強磁性材のCoやNiよりも、非磁性材のCrを用いることが望ましい。
【0027】上記の様にして、幅方向の磁場を発生させる電磁石のコイル周辺から大きな磁性材料を排除することによって、溶鋼中以外を迂回する磁束を大幅に低減できるので、効率良く溶鋼に磁場を作用させることができる。
【0028】ところで、通常1つの連続鋳造機で種々異なる幅の鋳片が製造されることは前述した通りであるが、前記図9に示した短辺部の磁極N25aおよび磁極S25bは、こうした事態に対応できる様に構成されたものである。即ち、磁極N25aおよび磁極S25bは一対の鋳型短辺銅板23の背面に配置されるものであるが、鋳辺の幅に応じて鋳型短辺銅板23が幅方向に動くのに連動して、磁極N25aおよび磁極S25bもスライド動作させる様に構成されている。そして、幅の広い鋳片を鋳造する場合には、図13に示す様に磁極N25aおよび磁極S25bの間を広げて短辺銅板23間の距離を大きくし、幅の狭い鋳片の場合には、図14に示す様に磁極N25aおよび磁極S25bの間を狭くして短辺銅板23間の距離を小さくする様に構成される。この様な構成を採用することによって、幅の狭い鋳片を鋳造する際にも十分な磁場を作用させることができる。尚短辺銅板バックプレート22や短辺銅板駆動装置(図示せず)の材質を磁性材料とし、これらを磁極とする様にしても良い。
【0029】前記電気コイル7b,7cを配置する場所についても、図8に示した様に鋳型下端より上方の鋳型の背面に鋳型と独立に懸架しても良いが、鋳型内に組み込む様にしても良い。これらの構成を採用することによって、鋳片にブレークアウトが発生しても、溶鋼が電気コイルに飛散することなく、電磁石が破損することがない。
【0030】前記電気コイル7b,7cは、図15に示す様に、浸漬ノズル3の吐出孔3aの底の延長線Lが鋳型短辺面27と交わる位置よりも下方に配置すれば、浸漬ノズル3から略水平または斜め下方に吹き出した吐出噴流が鋳型短辺面に衝突した後、ほぼ真下に向かう下降流に磁場が作用することになるので、上向きの電磁力による流動効果が高くなる(幅方向磁場は溶鋼流の幅方向成分に対しては殆ど制動効果がない)。また電気コイル7b,7cの位置を、鋳片表面温度がキューリー点温度となる位置より上方とすれば、凝固殻に磁束を吸い寄せられて溶鋼中の磁束密度が低下することがなくなるので好ましい。
【0031】前記電気コイル7b,7cおよび鉄芯8b(即ち、電磁石)は、図16に示す様に、例えば超電導体からなる磁気シールド30で覆えば、外部に漏出する磁束を更に低減できるので、溶鋼中の磁束密度が増加し、より低い消費電力で鋳片内部欠陥の発生を防止することができる。また電磁石の周辺の設備の磁性材料に大きな吸引力が作用して、鋳型振動負荷がオーバーロードとなったり、設備が変形するという問題も発生することがなくなり、しかも前記磁性体配置不可領域Fをより狭くすることもできる。尚鋳片に作用させる磁束密度は、電磁石設置位置における鋳片中心部で1500〜20000ガウス(Gauss)程度であることが好ましい。
【0032】本発明の基本的な構成は上述した通りであるが、下記図17〜19に示す様々な形態を採用することができる。図17は本発明の他の構成例を示す概略説明図であるが、この装置構成においては、連鋳機の鋳型2のロールスタンド下部に電磁石9を配置して幅方向磁場を作用させて鋳片内部の介在物欠陥の発生を防止すると共に、前記電磁石9から十分離れた鋳型内のメニスカス近傍部にリニアモータ32を配置して電磁攪拌し、鋳片表層における欠陥を低減するものである。
【0033】図18は、本発明の更に他の構成例を示す概略説明図であり、この装置構成においては、連鋳機の鋳型2の近傍に電磁石9を配置して幅方向磁場を作用させて鋳片内部の介在物欠陥の発生を防止すると共に、鋳型上方のメニスカス近傍部に水平に巻き回した空芯のコイル33を組み合わせて配置して鉛直方向の極低周波磁場を作用させ、湯面を安定化させるものである。こうした構成を採用することによって、下降流による鋳片内部欠陥を防止すると同時に、表面近傍での鋳型パウダーの噛み込みや巻き込みに起因するパウダー系欠陥をも防止できる。
【0034】また図19に示す様に、鋳型2の下方に配置される複数のガイドロール15d〜15fの夫々の中心軸部を鉄芯8a〜8cとし、外周部を通電コイルとすることによって、複数組の幅方向磁場発生用電磁石を構成することもできる。
【0035】以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の主旨に徴して設計変更することはいずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0036】
【実施例】湾曲型のスラブ連鋳鋳型内に、従来装置(前記図2参照:厚み方向磁場1段印加)と、本発明の装置(前記図8,9)の夫々を適用して溶鋼流を制御し、磁場の方向が非金属発生に与える影響について調査した。このときの鋳造条件は、下記の通りである。
(鋳造条件)
スラブ厚み:230mmスラブ幅 :1230mm鋳造速度 :1.8m/min鋼種 :0.05%C鋼鋳型中心での磁束密度:0.23T(テスラ)
サンプル採取位置:一方の短辺から30〜280mm【0037】鋳片内部の非金属介在物分布を図20に、熱延製品の欠陥発生頻度を図21に、夫々の比較して示すが、幅方向磁場を印加させた場合に欠陥が非常に低減されていることがわかる。
【0038】
【発明の効果】本発明は以上の様に構成されており、連続鋳造における鋳型内の溶鋼流を、静磁場の方向を適正な方向に規制して適切に制御することによって、内部欠陥のない鋳辺を製造することのできる溶鋼流の制御装置が実現できた。
【出願人】 【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
【出願日】 平成10年(1998)3月31日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司 (外1名)
【公開番号】 特開平11−285789
【公開日】 平成11年(1999)10月19日
【出願番号】 特願平10−87665