| 【発明の名称】 |
鋳型および鋳型の製作方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】大 橋 孝 行
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| 【要約】 |
【課題】従来の鋳物砂製の鋳型では、鋳造時の熱により有機材料であるバインダが燃焼分解し、その分解ガスが鋳造品の欠陥や異臭の原因となっていた。
【解決手段】鋳物砂に対して無機材料を成分とするバインダを用いたことにより、鋳造時の熱でバインダの燃焼分解が発生しない鋳型とし、分解ガスによる鋳造品の欠陥や異臭の発生を解消した。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 鋳物砂製の鋳型であって、鋳物砂に対して、無機材料を成分とするバインダを用いたことを特徴とする鋳型。 【請求項2】 バインダの無機材料が水溶性を有することを特徴とする請求項1に記載の鋳型。 【請求項3】 バインダが硫酸カルシウムと硫酸マグネシウムを成分とすることを特徴とする請求項1または2に記載の鋳型。 【請求項4】 バインダの硫酸カルシウムと硫酸マグネシウムの混合比率は、硫酸カルシウムを35〜95%とし、残部を硫酸マグネシウムとしたことを特徴とする請求項3に記載の鋳型。 【請求項5】 鋳物砂製の鋳型を製作するに際し、鋳物砂と水溶性の無機材料を成分とするバインダと所定量の水を混合し、この混合物で鋳型形状を造型したのち、造型物を乾燥させて鋳型とすることを特徴とする鋳型の製作方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、鋳物砂製の鋳型および鋳型の製作方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】従来において、例えばシェル鋳型を製作するには、鋳物砂(珪砂が多い)の表面にバインダであるフェノール樹脂をコーティングしたレジンコーテッドサンドと呼ばれるものを用い、250〜300℃に加熱した成形用金型に対して空気圧等によりレジンコーテッドサンドを吹き付け、フェノール樹脂の熱硬化により鋳物砂同士を固着させて鋳型を形成していた。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】ところが、上記したような従来の鋳型にあっては、バインダであるフェノール樹脂が有機材料であるため、鋳造時において溶湯の熱によりバインダが燃焼分解し、その分解ガスが溶湯中に入り込んで鋳造品の欠陥になることがあると共に、分解ガスの異臭によって作業環境が悪くなるという問題があり、このような問題を解決することが課題であった。 【0004】 【発明の目的】本発明は、上記従来の課題に着目して成されたもので、鋳造時における分解ガスの発生を解消することができる鋳型およびその鋳型の製作方法を提供することを目的としている。 【0005】 【課題を解決するための手段】本発明に係わる鋳型は、請求項1として、鋳物砂製の鋳型であって、鋳物砂に対して、無機材料を成分とするバインダを用いた構成とし、請求項2として、バインダの無機材料が水溶性を有する構成とし、請求項3として、バインダが硫酸カルシウムと硫酸マグネシウムを成分とする構成とし、請求項4として、バインダの硫酸カルシウムと硫酸マグネシウムの混合比率は、硫酸カルシウムを35〜95%とし、残部を硫酸マグネシウムとした構成としており、上記の構成を課題を解決するための手段としている。 【0006】本発明に係わる鋳型の製作方法は、請求項5として、鋳物砂製の鋳型を製作するに際し、鋳物砂と水溶性の無機材料を成分とするバインダと所定量の水を混合し、この混合物で鋳型形状を造型したのち、造型物を乾燥させて鋳型とする構成としており、上記の構成を課題を解決するための手段としている。 【0007】なお、上記構成における鋳型には中子も当然含まれる。また、請求項4において、硫酸カルシウムと硫酸マグネシウムの混合比率として、硫酸カルシウムを35〜95%としたのは、混合比率を35%よりも小さくあるいは95%よりも大きくすると、バインダとしてフェノール樹脂を用いた従来の鋳型に対して強度が低下するからであり、硫酸カルシウムの混合比率を35〜95%とすることにより、従来の鋳型と同等あるいはそれ以上の強度が得られるからである。 【0008】 【発明の作用】本発明の請求項1に係わる鋳型では、鋳物砂に対して無機材料を成分とするバインダを用いているので、鋳造時の熱でバインダが燃焼分解することがなく、鋳造品の欠陥や異臭の原因となる分解ガスの発生が解消される。 【0009】本発明の請求項2に係わる鋳型では、バインダの成分である無機材料が水溶性を有するので、鋳型を水に浸漬するとバインダによる鋳物砂同士の固着作用が失われ、鋳型は容易に崩壊する。 【0010】本発明の請求項3に係わる鋳型では、硫酸カルシウムと硫酸マグネシウムを成分とするバインダを用いることにより、請求項1および2と同様に、鋳造時の熱によりバインダの燃焼分解が生じないと共に、水への浸漬により鋳型が容易に崩壊する。 【0011】本発明の請求項4に係わる鋳型では、バインダの硫酸カルシウムと硫酸マグネシウムの混合比率として、硫酸カルシウムを35〜95%とし、残部を硫酸マグネシウムとしたので、例えば、バインダとしてフェノール樹脂を用いた従来の鋳型と同等あるいはそれ以上の強度となる。 【0012】本発明の請求項5に係わる鋳型の製作方法では、鋳物砂製の鋳型を製作するに際し、鋳物砂と水溶性の無機材料を成分とするバインダと所定量の水を混合し、この混合物で鋳型形状を造型したのち、造型物を乾燥させて鋳型とするので、これにより得られた鋳型は、鋳造時の熱によりバインダの燃焼分解が生じないと共に、水への浸漬により容易に崩壊する。 【0013】 【発明の効果】本発明の請求項1に係わる鋳型によれば、鋳物砂に対して無機材料を成分とするバインダを用いたことから、鋳造時の熱でバインダが燃焼分解することがなく、鋳造品の欠陥や異臭の原因となる分解ガスの発生を解消することができ、これにより鋳造品の品質を高めることができると共に、作業環境を良好なものにすることができる。 【0014】本発明の請求項2に係わる鋳型によれば、請求項1と同様の効果を得ることができるうえに、水溶性の無機材料の採用により、使用後の鋳型は水に浸漬することによって容易に崩壊させることができ、鋳物砂の回収および再利用にきわめて容易に対処することができる。 【0015】本発明の請求項3に係わる鋳型によれば、硫酸カルシウムと硫酸マグネシウムを成分とするバインダを用いたことから、1100℃程度の熱に充分に耐え得るものになると共に、請求項1と同様に、分解ガスの発生を解消して、鋳造品の品質や作業環境を向上させることができ、また、請求項2と同様に、使用後の鋳型は水に浸漬することで簡単に崩壊させることができ、鋳物砂の回収および再利用にきわめて容易に対処することができる。 【0016】本発明の請求項4に係わる鋳型によれば、請求項3と同様の効果を得ることができるうえに、バインダの硫酸カルシウムと硫酸マグネシウムの混合比率において硫酸カルシウムを35〜95%としたことから、例えば、バインダとしてフェノール樹脂を用いた従来の鋳型と同等あるいはそれ以上の強度を得ることができる。 【0017】本発明の請求項5に係わる鋳型の製作方法によれば、鋳物砂製の鋳型を製作するに際し、鋳物砂と水溶性の無機材料を成分とするバインダと所定量の水を混合した混合物で鋳型形状を造型し、造型物を乾燥させて鋳型とするので、これにより得られた鋳型は、請求項1と同様に、鋳造時において鋳造品の欠陥や異臭の原因となる分解ガスの発生を解消することができ、これにより鋳造品の品質や作業環境の向上を実現することができると共に、使用後の鋳型は水に浸漬することによって崩壊させることができるので、鋳物砂の回収および再利用にきわめて容易に対処することができる。 【0018】 【実施例】図1は、本発明に係わる鋳型および鋳型の製作方法の一実施例を説明する図である。 【0019】鋳型を製作するには、まず図1(a)に示すように、成形用金型1の表面に、鋳物砂とバインダと水との混合物Aをブロー装置2で吹き付ける。成形用金型1は、その周囲にフレーム3を備えている。鋳物砂としては、珪砂を用いている。また、バインダとしては、水溶性の無機材料を成分とするものが用いられ、具体的には、硫酸カルシウムと硫酸マグネシウムを用いている。このとき、硫酸カルシウムと硫酸マグネシウムの混合比率は、硫酸カルシウムを35〜95%とし、残部を硫酸マグネシウムとしている。 【0020】成形用金型1の表面に所定量の混合物Aを吹き付けて鋳型形状を造型した後には、適宜加熱を行い、図1(b)に示すように造型物Bを乾燥させる。この乾燥過程において、水分の除去に伴って鋳物砂同士がバインダにより固着する。そして、最終的には、図1(c)に示すように、フレーム3の取り外し等を行い、造型物Bを鋳物砂製の鋳型Cとして取り出す。 【0021】このようにして製作された鋳型Cは、鋳物砂にフェノール樹脂をコーティングしたレジンコーテッドサンドを用いた従来の鋳型と同等あるいはそれ以上の強度を有すると共に、1100℃程度の熱に耐え得るものとなっており、例えばアルミニウムの鋳造などに用いることができる。 【0022】また、鋳型Cは、無機材料を成分とするバインダを用いているので、鋳造時の熱によってバインダが燃焼分解することがなく、鋳造品の欠陥や異臭の原因である分解ガスが発生しないものとなっている。さらに、鋳型Cは、バインダの成分である無機材料が水溶性を有するので、水に浸漬するだけで簡単に崩壊する。したがって、鋳物砂の回収や再利用を行うこともきわめて容易である。 【0023】なお、図1には、成形用金型1の表面に混合物Aを吹き付けて鋳型形状を造型する場合を示したが、この他、成形用金型1に混合物Aを流し込むことにより、鋳型形状を造型するようにしても良い。 【0024】ここで、本発明に係わる鋳型および鋳型の製作方法に基づいて、バインダの成分である硫酸カルシウムと硫酸マグネシウムの混合比率が異なるテストピースを製作し、各テストピースに対する強度試験を行った。 【0025】まず、図2(a)に示す型ごめ装置11と成形用金型12を用いてテストピースを製作した。型ごめ装置11は、角筒体であって、上部内側に、複数の邪魔板13を互いに平行に備えると共に、邪魔板13の下位側に、角筒体の外部から挿脱して角筒体の内部を開閉する引戸14を備えている。成形用金型12は、角棒状のテストピースを5本形成する複数の分割型15と、各分割型15を組合わせた状態に保持するホルダ16を備えている。 【0026】そして、鋳物砂として珪砂6号を用い、鋳物砂と、硫酸カルシウムおよび硫酸マグネシウムを成分とするバインダと、水とから成る混合物を成形用金型12に充填したのち、350℃で4時間加熱して水分を完全に除去し、図2(b)に示すように、幅w=10mm、高さh=10mm、長さl=60mmのテストピースPを製作した。なお、バインダにおいて、硫酸カルシウムの混合比率は0%、25%、50%、75%、90%および100%の6種類とした。残部は硫酸マグネシウムである。 【0027】このようにして、バインダの硫酸カルシウムと硫酸マグネシウムの混合比率が異なるテストピースを各々5本ずつ製作したのち、高千穂式抗折力試験機のスパン上にテストピースをセットし、荷重ハンドルを1秒に1回転の割合で操作してテストピースの中央に負荷を与え、テストピースが破断したときの荷重を測定した。このとき、テストピースの幅wは10mm、高さは10mm、折力試験機のスパン間隔Lは50mmであり、テストピースが破断したときの荷重をP(kg)とすると、曲げ強さ(kg/mm2)は、3PL/2wh2で求められる。 【0028】上記の試験行ったのち、混合比率が異なるテストピース毎の平均値を測定値とした。その結果を次の表に示す。 【0029】
【0030】上記の測定値を図3のグラフに示す。なお、図3では、硫酸カルシウムを0%および100%としたものは、対象外として測定値を0にした。また、従来例として、鋳物砂である珪砂5.5号にフェノール樹脂を0.5%混合して同一寸法のテストピースを製作し、このテストピースの曲げ強さを測定したところ、0.1kg/mm2であった。 【0031】図3から明らかなように、硫酸カルシウム(CaSO4)と硫酸マグネシウム(MgSO4)の混合比率として、硫酸カルシウムを35〜95%とし、残部を硫酸マグネシウムとすることにより、従来のものと同等あるいはそれ以上の曲げ強さが得られることが判明した。 【0032】次に、本発明に係わる鋳型のガス発生試験を行った。バインダとして硫酸カルシウムを75%とし、残部を硫酸マグネシウムとし、これに2倍の重量比で水を加え、さらに、鋳物砂である珪砂6号と混合して、先の試験と同様にテストピースを製作し、ガス発生試験装置において、テストピースを700℃で180秒(アルミニウム鋳物の凝固固相率が約70%程度に成る時間)加熱した。その結果、ガスの発生は無かった。これにより、当該鋳型によれば、鋳造品の欠陥や異臭の原因となる分解ガスの発生が解消されることを確認した。 【0033】さらに、本発明に係わる鋳型に用いるバインダの結合強度試験を行った。硫酸カルシウムと硫酸マグネシウムの混合比率として、硫酸カルシウムを0%、25%、50%、75%、90%および100%とした各バインダ5gを各々10mlの水に混合し、その混合液Dを注射器で図4に示す金属片21上に1滴落し、その上にシート22を載置して、温度27℃、湿度70%の環境で48時間放置した。 【0034】その後、図4に示すように、金属片21およびシート22に各々糸23,24を連結すると共に、各糸23,24を上下のチャック25,26で把持し、5mm/1minで上下方向に引っ張り、金属片21とシート22が分離した際の引っ張り荷重を測定した。 【0035】その結果、本発明に係わるバインダの硫酸カルシウムと硫酸マグネシウムの混合比率として、硫酸カルシウムを35〜95%とし且つ残部を硫酸マグネシウムとした範囲に含まれるもの、すなわち硫酸カルシウムが50%、75%および90%のバインダにおいて0.2kg以上の値が測定され、充分な結合強度が得られることが判明した。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000003997 【氏名又は名称】日産自動車株式会社
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| 【出願日】 |
平成10年(1998)4月2日 |
| 【代理人】 |
【弁理士】 【氏名又は名称】小塩 豊
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| 【公開番号】 |
特開平11−285777 |
| 【公開日】 |
平成11年(1999)10月19日 |
| 【出願番号】 |
特願平10−90309 |
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