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【発明の名称】 プレスブレーキのラム制御方法および制御装置
【発明者】 【氏名】高澤 彰宏

【要約】 【課題】専門の作業者を必要とすることがなく、しかも他の装置を付加しないで短時間で各軸の位置を調整して平行状態に復帰させる。

【解決手段】電源投入時に各駆動軸の現在位置に基づきそれら各駆動軸の高さ位置の差を求め、この差が予め設定された基準値を越える場合に、最も高い位置にある駆動軸と同じ高さ位置になるまで他の駆動軸を上昇させ、各駆動軸が同じ高さ位置に達した後に全軸を同期させて所定位置まで上昇させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数の駆動軸を有するラムに支持される駆動金型と、この駆動金型に対向配置されるようにテーブルに支持される固定金型との協働によって板状のワークを折り曲げるプレスブレーキのラム制御方法であって、電源投入時に各駆動軸の現在位置に基づきそれら各駆動軸の高さ位置の差を求め、この差が予め設定された基準値を越える場合に、最も高い位置にある駆動軸と同じ高さ位置になるまで他の駆動軸を上昇させ、各駆動軸が同じ高さ位置に達した後に全軸を同期させて所定位置まで上昇させることを特徴とするプレスブレーキのラム制御方法。
【請求項2】 前記電源投入時にまず全駆動軸の下降方向への移動が禁止される請求項1に記載のプレスブレーキのラム制御方法。
【請求項3】 複数の駆動軸を有するラムに支持される駆動金型と、この駆動金型に対向配置されるようにテーブルに支持される固定金型との協働によって板状のワークを折り曲げるプレスブレーキのラム制御装置であって、(a)電源投入時に各駆動軸の現在位置を検出する位置検出手段、(b)この位置検出手段により検出された各駆動軸の現在位置に基づきそれら各駆動軸の高さ位置の差を演算する演算手段、(c)この演算手段により演算された差と予め設定される基準値とを比較する比較手段および(d)この比較手段による比較結果に基づいて、最も高い位置にある駆動軸と同じ高さ位置になるまで他の駆動軸を上昇させ、各駆動軸が同じ高さ位置に達した後に全軸を同期させて所定位置まで上昇させるように前記ラムを駆動するラム駆動手段を備えることを特徴とするプレスブレーキのラム制御装置。
【請求項4】 さらに、前記電源投入時にまず全駆動軸の下降方向への移動を禁止する禁止手段が設けられる請求項3に記載のプレスブレーキのラム制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、複数の駆動軸を有するラムに支持される駆動金型と、この駆動金型に対向配置されるようにテーブルに支持される固定金型との協働によって板状のワークを折り曲げるプレスブレーキのラム制御方法および制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、プレスブレーキにおいては、ラムと固定テーブルとが対向配置されるとともに、ラムの下端部に上金型(パンチ)が、固定テーブルの上面に下金型(ダイ)がそれぞれ配置され、これら上金型と下金型との間に板状のワークを挿入してラムを油圧シリンダもしくはACサーボモータ等によって作動させることにより、これら上金型と下金型との間でワークを挟圧して所要の曲げ角度に折り曲げるようにされている。
【0003】このようなプレスブレーキにおいては、左右に1軸ずつ計2軸のラム駆動軸を有するものが最も一般的であるが、例えば特開平8−300047号公報に開示されているように、3軸以上の多軸のラム駆動軸を有するものも知られている。
【0004】ところで、このように多軸のラム駆動軸を有するプレスブレーキの場合、何らかの原因(例えば過負荷状態)で各駆動軸の高さ位置が異なる状態で電源が切断されたとき、あるいは電源が入っていないときに自然落下などが原因で各駆動軸の位置が動いてしまったときに電源が投入されると、各軸の位置が違っているためにそのままでは正常に運転することができないという不都合があった。このため、従来は、各軸の位置が異なる状態で停止している場合には、電源を切断した上でサービスマンや保全担当者が手動で各軸の位置を調整して平行状態に復帰させるようにしていた。
【0005】なお、2軸のラム駆動軸を有するプレスブレーキにおいては、ラムを平行移動させるために、ラムに設けられた検出バーでラムの傾きを検出するようにした技術が、例えば特公昭57−61490号公報に開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、各軸の位置が異なる状態で停止した時に、各軸の復帰作業を人手で行うのでは、専門知識を有する特定の作業者を確保する必要があり、またその復帰作業自体が複雑で多くの時間が必要であるという問題点がある。
【0007】一方、前記公報(特公昭57−61490号公報)に開示されている検出バーを用いる方法では、特に3軸以上の駆動軸を有するプレスブレーキの場合にその検出機構の構造,制御方法が複雑となって、装置の大型化とコストアップが避けられないという問題点がある。
【0008】本発明は、このような問題点を解消することを目的として、専門の作業者を必要とすることがなく、しかも他の装置を付加しないで短時間で各軸の位置を調整して平行状態に復帰させることのできるプレスブレーキのラム制御方法および制御装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段および作用・効果】前述された目的を達成するために、本発明によるプレスブレーキのラム制御方法は、複数の駆動軸を有するラムに支持される駆動金型と、この駆動金型に対向配置されるようにテーブルに支持される固定金型との協働によって板状のワークを折り曲げるプレスブレーキのラム制御方法であって、電源投入時に各駆動軸の現在位置に基づきそれら各駆動軸の高さ位置の差を求め、この差が予め設定された基準値を越える場合に、最も高い位置にある駆動軸と同じ高さ位置になるまで他の駆動軸を上昇させ、各駆動軸が同じ高さ位置に達した後に全軸を同期させて所定位置まで上昇させることを特徴とするものである。
【0010】本発明においては、電源投入時に各駆動軸の現在位置が検出され、この検出された現在位置に基づいてそれら各駆動軸の高さ位置の差が演算により求められる。そして、この差が予め設定された基準値(許容値)を越えているか否かが比較され、この基準値を越えていると判断される場合には、最も高い位置にある駆動軸と同じ高さ位置になるまで他の駆動軸が上昇操作され、この上昇操作によって各駆動軸が同じ高さ位置に達すると、その後は全軸が同期されて例えば上限位置等の所定位置まで上昇される。こうして、例えばサーボモータやサーボアンプ等の異常で各駆動軸の高さ位置が異なる状態で電源が切断された場合でも、あるいは電源が入っていないときに自然落下などが原因で各駆動軸の位置が動いてしまった場合でも、電源投入時には、作業者が手動で復帰作業を行うことがなく、自動的に各駆動軸の位置を同じ高さ位置、言い換えれば平行状態に復帰させることができるので、各軸にかかる負荷を平均化することができて破損を防ぐことができる。また、常にラムを安全サイドである上昇方向へ移動させるように復帰動作が行われるので、金型間にワークが噛み込んでいる場合にも金型に余分な負荷をかけずに正常位置に復帰させることができる。
【0011】本発明においては、電源投入時にまず全駆動軸の下降方向への移動が禁止されるのが好ましい。こうすることで、誤動作によってラムが下降方向へ移動することによる金型の破損等の事故の発生を未然に防ぐことができる。
【0012】次に、前述のプレスブレーキのラム制御方法を具体的に実現するための、本発明によるプレスブレーキのラム制御装置は、複数の駆動軸を有するラムに支持される駆動金型と、この駆動金型に対向配置されるようにテーブルに支持される固定金型との協働によって板状のワークを折り曲げるプレスブレーキのラム制御装置であって、(a)電源投入時に各駆動軸の現在位置を検出する位置検出手段、(b)この位置検出手段により検出された各駆動軸の現在位置に基づきそれら各駆動軸の高さ位置の差を演算する演算手段、(c)この演算手段により演算された差と予め設定される基準値とを比較する比較手段および(d)この比較手段による比較結果に基づいて、最も高い位置にある駆動軸と同じ高さ位置になるまで他の駆動軸を上昇させ、各駆動軸が同じ高さ位置に達した後に全軸を同期させて所定位置まで上昇させるように前記ラムを駆動するラム駆動手段を備えることを特徴とするものである。
【0013】この制御装置においては、さらに、電源投入時にまず全駆動軸の下降方向への移動を禁止する禁止手段が設けられるのが好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】次に、本発明によるプレスブレーキのラム制御方法および制御装置の具体的な実施の形態につき、図面を参照しつつ説明する。
【0015】図1は本発明の一実施例に係るプレスブレーキの正面図、図2は同プレスブレーキの側面図、図3は同プレスブレーキの制御システム構成図である。
【0016】本実施例のプレスブレーキにおいては、固定のテーブル1と、このテーブル1に対位して昇降駆動されるラム2とが備えられ、テーブル1の上面にはダイ保持装置3を介してV字状の型溝を有するダイ(下金型)4が保持され、ラム2の下部にはダイ4に対向してパンチ(上金型)5がパンチ保持装置6を介して取り付けられている。
【0017】前記テーブル1の両端部には一対のサイドフレーム7,8が一体に設けられ、各サイドフレーム7,8の上端部を連結するように支持フレーム9が設けられている。そして、この支持フレーム9には複数個(本実施例では4個)のラム駆動装置10a〜10dが取り付けられており、これらラム駆動装置10a〜10dの下端部にラム2が連結されている。こうして、ラム駆動装置10a〜10dの作動によってラム2が昇降動されることにより、パンチ5とダイ4との間に介挿されるワークWが折り曲げられるようになっている。
【0018】各ラム駆動装置10a〜10dは、後方に設けられるACサーボモータ11a〜11dを駆動源としてその駆動力をタイミングベルト12を介してラム2に連結されているボールスクリュー13に伝え、このボールスクリュー13によってサーボモータ11a〜11dの回転駆動力を上下方向の移動力に変換してワークWに対する加圧力を発生するように構成されている。
【0019】前記ラム2の上下位置は、各ラム駆動装置10a〜10dの駆動軸位置に対応して設けられるリニアエンコーダ14a〜14dによって検出され、その検出データがNC装置(多軸NC装置)15に入力されることにより、各軸位置に応じてサーボアンプ16a〜16dを介して各サーボモータ11a〜11dがフィードバック制御されようになっている。ここで、前記リニアエンコーダ14a〜14dは、各サイドフレーム7,8に沿うように設けられる2枚のサイドプレートと、左右のサイドプレートを連結するビームとにより構成される補正ブラケット17に支持されている。このような構成により、これらリニアエンコーダ14a〜14dは、サイドフレーム7,8の負荷変化による変形の影響を受けることがなく、ラム2の各軸毎の絶対位置を計測することが可能である。
【0020】曲げデータ等の入出力用の入出力装置および各種データを表示する表示器等を含む操作盤(ペンダント操作盤)24は支持フレームに旋回自在なアーム25を介して吊り下げられている。また、本体フレームの側部には各種データを基に演算を行うNC装置15,サーボアンプなどの制御機器を内蔵する制御盤20が取り付けられている。さらに、本体フレームの側部下方には足踏み操作用のフートスイッチ26が設けられている。
【0021】NC装置15においては、操作盤24より入力される曲げ加工データに基づき、ラム2の動作位置(遅送り位置および下限位置)やラム2の移動速度および加圧力(曲げに必要な圧力)が演算される。なお、これらデータは作業者が操作盤24より入力することも可能である。
【0022】作業者がフートスイッチ26によりラム2に動作指令が与えられると、NC装置15ではサーボアンプ16a〜16dに対して速度指令とラム動作に必要なトルクの最大値(トルク制限値)とが与えられる。前記サーボアンプ16a〜16dでは、与えられた速度指令とトルク制限値によりサーボモータ11a〜11dに駆動指令が発せられる。また、このサーボモータ11a〜11dに内蔵されるエンコーダ18a〜18dの出力パルスはサーボアンプ16a〜16dにフィードバックされる。サーボアンプ16a〜16dは、このエンコーダ18a〜18dからの信号に基づいて速度を算出し、NC装置15から入力される速度信号に近づくようにサーボモータ11a〜11dを制御する。
【0023】一方、リニアエンコーダ14a〜14dからの位置フィードバック信号はNC装置15に入力され、NC装置15はこの位置フィードバック信号に基づきラム2を目標位置に位置決めする。
【0024】本実施例のプレスブレーキにおいては、例えばサーボモータやサーボアンプ等の異常で各駆動軸の高さ位置が異なる状態で電源が切断された場合等においても、各駆動軸を自動的に平行状態に復帰させるために、NC装置15内において復帰処理が実行される。次に、この復帰処理の処理フローを図4に示されるフローチャートによって説明する。
【0025】S1〜S2:プレスブレーキの電源が投入されると、ラム2の各軸(本実施例では4つの軸)の停止位置(現在位置)を読み取る。
S3〜S4:読み取った各軸の停止位置と上限位置とを比較し、全軸が上限位置より上にない場合に、下降方向への移動を禁止する。ここで、各軸の上限位置は、予め入力される曲げ加工データにより演算され、記憶されている。
【0026】S5:読み取った各軸の高さ位置の差を計算する。
S6〜S7:各軸の高さ位置の差をそれぞれ求め、この求められた差と基準値(この基準値は例えば0.1〜0.2mm程度の値に設定されている。)とを比較する。そして、これら位置間の差が基準値以上のときには各軸の中で最も高い位置Aを算出する。
【0027】S8〜S11:位置Aと上限位置とを比較し、上限位置の方が位置Aより低い場合にはその上限位置を位置Aに置き換え、逆に位置Aの方が上限位置より低い場合にはそのままにして、フートスイッチ等により上昇指令を出してラム2を上昇させる。これによって各軸は位置Aまで低速度で独立して上昇する。
【0028】S12:一方、ステップS6の判定において、各軸の位置間の差が基準値未満のときにはそのままラム2に上昇指令を出す。
S13〜S14:全軸が位置Aに達したことを確認した後、高速度に切り替えて全軸を同期させて上限位置まで移動させる。そして、全軸が上限位置まで到達したことを確認した後、全軸を停止させる。
S15:下降方向への移動禁止を解除する。
【0029】S16:ステップS3の判定において、全軸の位置が上限位置より上にある場合には、下降指令が出るのを待って下降指令が出たときに、各軸が独立して上限位置に移動してから下降を開始する。
【0030】以上のように、本実施例によれば、例えばサーボモータやサーボアンプ等の異常で各駆動軸の高さ位置が異なる状態で電源が切断された場合や、あるいは電源が入っていないときに自然落下などが原因で各駆動軸の位置が動いてしまった場合でも、特別な操作や専門の作業者などを必要とせずに、電源投入時に、金型に余分な負荷をかけずに、また他の装置を必要とせずに、しかも短時間で各駆動軸を容易に平行状態に復帰させることができる。
【0031】本実施例においては、各軸を一番高い位置に停止している軸位置に一致させた後、全軸を同期させて上限位置まで移動させるものとしたが、上限位置の代わりに予め設定される原点位置まで移動させるようにする実施例も可能である。また、一番高い位置に停止している軸位置に一致させる代わりに、各軸の平均の高さ位置に一致させるようにすることも可能である。
【0032】本実施例においては、ラムの駆動源としてACサーボモータとボールスクリューとを用いる高速の動作速度を有するプレスブレーキに適用したものを説明したが、本発明は、ラム駆動源として油圧ユニットとシリンダを用いるタイプのものに対しても適用することができる。
【0033】なお、本実施例におけるリニアエンコーダ14a〜14dは、本発明における位置検出手段に、本実施例におけるNC装置15は、本発明における演算手段,比較手段および禁止手段に、本実施例におけるラム駆動装置10a〜10dは、本発明におけるラム駆動手段にそれぞれ対応する。
【出願人】 【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
【出願日】 平成9年(1997)6月13日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】井上 勉
【公開番号】 特開平11−5122
【公開日】 平成11年(1999)1月12日
【出願番号】 特願平9−156373