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【発明の名称】 熱間圧延ラインにおける金属帯の巻取り方法および巻取りコイラ
【発明者】 【氏名】久木▲崎▼ 太一

【氏名】前田 一郎

【氏名】清水 益人

【氏名】今関 敏夫

【要約】 【課題】連続熱間圧延ラインにおける金属帯のコイル巻取りにおける通板トラブルを解消し、極薄材の安定的な高速圧延を可能にする。

【解決手段】複数個の巻取りコイラのいずれかでコイル巻き取りを行い、シャーによる金属帯切断後、ひきつづき別の巻取りコイラによる次材のコイル巻取りへと移行するに際し、前記別の巻取りコイラに付設のピンチロールの次材待機ギャップ設定値を、該ピンチロールを通過した前材又は過去材のピンチロールギャップ実績値から学習して算出したピンチロール摩耗量に基いて補正することにより前記課題を解決する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 巻取りコイラの入側に配置した上下一対のピンチロールにより所定の押力にて金属帯を挟時しながら巻取る熱間圧延ラインにおける金属帯の巻取り方法において、前記ピンチロールの摩耗量を、該ピンチロールを過去材が通過した際の上下ピンチロール間ギャップ実績値を用いて求め、該ピンチロールに次材の先端を通過させる際の上下ピンチロール間の待機ギャップ設定値を、前記摩耗量にもとづいて補正することを特徴とする熱間圧延ラインにおける金属帯の巻取り方法。
【請求項2】 所定の押力にて金属帯を挟時可能なピンチロールを入側に配置した熱間圧延ラインにおける金属帯の巻取りコイラにおいて、前記ピンチロールのギャップ検出器と、過去材が通過した際の該ギャップ検出器のギャップ検出値にもとづいて次材の先端が前記ピンチロールを通過する際のピンチロールの最適待機ギャップを演算するピンチロール最適ギャップ演算装置と、該最適ギャップ演算装置による最適ギャップ演算結果にもとづいて前記ピンチロールのギャップを設定するピンチロールギャップ設定器とを備えることを特徴とする熱間圧延ラインにおける金属帯の巻取りコイラ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱間圧延ラインにおいて、仕上圧延された金属帯を、入側にピンチロールを配置した巻取りコイラにて巻取る際の巻取り方法および巻取りコイラに関するものである。
【0002】
【従来の技術】熱間圧延ラインにおいては、仕上げ圧延機にて所定の厚さに圧延された後、該仕上げ圧延機よりも下流側に設置された巻取りコイラにて巻取りコイル状の製品としている。熱間圧延ラインに供給される被圧延材は、例えば上工程である製鋼工場にて製造される長さ数m〜十数mのスラブと呼ばれる鋼片である。通常、スラブ1本づつ仕上圧延する、いわゆるバッチ圧延が行われているが、近年、熱間仕上げ圧延のエンドレス圧延化が図られている。
【0003】エンドレス圧延は、先行する金属帯の尾端と後行する金属帯の先端を仕上げ圧延機の入側にて接合し、先行金属帯と後行金属帯の仕上げ圧延を連続して行うものである。図4にエンドレス圧延ラインの構成の一例を示す。まず、図の上流側に設置されている図示しない設備によって粗圧延を行ないスラブをシートバーとする。先行するシートバーの尾端と後行するシートバーの先端は仕上げ圧延機3の入側にあるシートバー接合装置2により接合される。そして、先行シートバーと後行シートバーを連続化した金属帯1として仕上げ圧延を行う。
【0004】仕上げ圧延機3にて所定の厚さに圧延された金属帯1は通板テーブル4において冷却された後に、巻取りコイラ10でコイルに巻き取られる。ライン上には、それぞれそれぞれ入側にピンチロール9a、9bが設置された複数(図4の例では2機)の巻取りコイラ10a 、10b が設置されている。また、ピンチロール9aの入側にはシャー8及びシャー入側ピンチロール5が設置されている。
【0005】例えば、先行金属帯が上流側の巻取りコイラ10a にて巻き取られている時を考える。シートバー接合機2にて接合された先行金属帯の尾端と後行金属帯の先端部との接合部は、仕上げ圧延機3、通板テーブル4を通板された後シャー8に至り、シャー8により、金属帯が接合部近傍にて切断される。尚、切断の際はシャー入側ピンチロールにて金属帯を挟持することにより、巻取りコイラ10a と仕上げ圧延機3により後行金属帯に付与されていた張力が切断により開放されてしまうのを防止する。切断後、先行金属帯の尾端は巻取りコイラ10a へと送り込まれ巻取りが完了し、その先行金属帯がコイル11となる。そして、後行金属帯の先端はピンチロール9b側へ搬送され、ピンチロール9bにより下流側の巻取りコイラ10b へと送り込まれ、後行金属帯の巻取りが開始される。
【0006】以上のようにして、エンドレス圧延を行う際の金属帯の切断および巻取りコイラの切り替えが行われ、巻取りコイラ10a と10b にて交互に巻取りが行われる。なお、先行金属帯が下流側にある巻取りコイラ10b により巻取られている際は、先行金属帯の尾端はピンチロール9bの方へ送り込まれ、後行金属帯の先端はピンチロール9aにより巻取りコイラ10a へと送り込まれる。このように、巻取りコイラの切り替えが行われる。
【0007】以上説明したエンドレス圧延においては、金属帯先端または金属帯尾端を、仕上げ圧延機および通板テーブル4を通板させる時に、金属帯先端と金属帯尾端が接合されているため、連続して圧延または通板させることができ、従来のバッチ圧延では製造が困難であった極薄材の圧延が行われるようになってきた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】ここで、後行材の先端が巻取られる巻取りコイラの入側のピンチロール9に噛込ませる際に、一般にピンチロール9の待機ギャップは、巻取られる金属帯の板厚より小さい値に設定している。これは、金属帯がピンチロール9に噛込むと同時にピンチロールのグリップ力により金属帯を巻取りコイラ10へと誘導させるためである。
【0009】ところが、ピンチロール9は金属帯の通板距離数が増加するとともに摩耗していく。そのため、摩耗が進行したピンチロール9を用いる場合、ピンチロール9の待機ギャップを所定値になるように設定しても、実際のピンチロール9の待機ギャップは前記摩耗の分だけ大きくなってしまう。この状態で、ピンチロール9に金属帯先端が噛込むと、このピンチロール9では所定のグリップ力が得られず、金属帯をコイラ10側へと誘導できない。そのため、金属帯の先端が進行せずに、ピンチロール9とシャー入側ピンチロール5の間にて金属帯が図5に示すようにたくれてしまう。
【0010】前述のようにエンドレス圧延においては、極薄の金属帯を圧延することが可能となり、また、通板スピードも高速化している。したがって、剛性の弱い薄い金属帯を超高速で巻取る場合が多くなり、前述の一瞬のたくれが通板事故につながってしまう。
【0011】そこで、本発明は、熱間圧延された金属帯を高速で巻取り可能な巻取り方法および巻取り装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】熱間圧延ラインの巻取りコイラにおいては、入側のピンチロールは金属帯が噛込んだ後は所定の押力を維持するように制御される。本発明では、押力制御している際のピンチロールのギャップ実績値を検出し、その検出値と押力と巻き取った金属帯の板厚とを用いてピンチロールの摩耗量を求めることができる。そして、次に巻取る金属帯先端をピンチロールに噛込ませる際に、該ピンチロールの待機ギャップ設定を摩耗量の分だけ補正する。
【0013】即ち、巻取りコイラの入側に配置した上下一対のピンチロールにより所定の押力にて金属帯を挟持しながら巻取る熱間圧延ラインにおける金属帯の巻取り方法において、前記ピンチロールの摩耗量を、該ピンチロールを過去材が通過した際の上下ピンチロール間ギャップ実績値を用いて求め、該ピンチロールに次材の先端を通過させる際の上下ピンチロール間の待機ギャップ設定値を、前記摩耗量にもとづいて補正することにより前記課題を解決したものである。
【0014】また、本発明は、所定の押力にて金属帯を挟時可能なピンチロールを入側に配置した熱間圧延ラインにおける金属帯の巻取りコイラにおいて、前記ピンチロールのギャップ検出器と、過去材が通過した際のギャップ検出値にもとづいて次材の先端が前記ピンチロールを通過する際のピンチロールの最適待機ギャップを演算するピンチロール最適ギャップ演算装置と、最適ギャップ演算結果にもとづいてピンチロールのギャップを設定するピンチロールギャップ設定器とを備えることにより前記課題を解決したものである。
【0015】
【発明の実施の形態】図2は、巻取りコイラの入側に配置した、上下一対のピンチロール20、21により板厚t(mm)の金属帯1を挟持している状態を示している。油圧シリンダ等の圧下装置25により上ピンチロール20は所定の押力P(kN) にて矢印Aの方向に圧下されている。そして、上下ピンチロール間ギャップSr(mm)はピンチロールギャップ測定器26により測定されている。図2(a)はピンチロール20、21に摩耗がない状態を示しており、摩耗がない状態のピンチロール20、21で板厚tの金属帯を押力Pで挟持すると、上下ピンチロール間ギャップSrの測定値は、(1)式に示す値となる。
【0016】Sr=t−P/k …(1)
ここで、kはピンチロールスタンドのバネ剛性(kN/mm) である。図2(b)はピンチロール20、21がそれぞれa1(mm)、a2(mm)だけ摩耗した状態を示している。上下ピンチロールの摩耗量の合計a1+a2をピンチロール摩耗量aとすると、ピンチロール摩耗量a=a1+a2だけ前記上下ピンチロール間ギャップSrの測定値は小さくなるので、Srは(2)式で表される。
【0017】Sr=t−P/k−a …(2)
従って、ピンチロール摩耗量aは(3)式で表される。
a=t−Sr−P/k …(3)
(3)式より、過去材を巻き取った際のピンチロールの押力P、上下ピンチロール間ギャップSrおよび金属帯の板厚tを用いて、ピンチロール摩耗量aを求めることができる。ここで、前記ピンチロールの押力Pおよび金属帯の板厚tは、設定値を用いてもよいし、押力Pの実績値および図示しない位置でオンライン測定されている金属帯の板厚tの測定値を用いても良い。但し、上下ピンチロール間ギャップSrはピンチロールギャップ測定器26による測定値を用いる必要がある。
【0018】本発明においては、次材の先端をピンチロールに噛込ませる際の待機ギャップ設定値を、(3)式を用いて求めたピンチロール摩耗量aの分だけ補正する。即ち、摩耗がない状態におけるピンチロールの待機ギャップ設定値をSp(mm)とすると前記ピンチロール摩耗量aが発生している場合、実際のピンチロールの待機ギャップ(金属帯が通板する位置でのピンチロールの待機ギャップ)はa(mm)だけ広くなるはずであるから、次材のピンチロール待機ギャップ設定値Sを(4)式のようにする。
【0019】S=Sp−a …(4)
aの値としては、(3)式で求められるaをそのまま用いて次材のロールギャップ補正分とすることもできるが、【0020】
【数1】

【0021】で与えられるa'を用い、過去n 本の摩耗量の平均値としてもよい。また、【0022】
【数2】

【0023】で与えられるように、重み付平均を取っても良い。ここで、wi はi本前のaiに対する重み付け係数である。例えば、ピンチロールの摩耗の進行状況やピンチロールの摩耗量aを求める際の演算精度に合わせてWiを適当な値とすることにより、信頼性を高めることができる。以上示すように、種々の学習法によってロール摩耗量を学習して算出することが可能である。
【0024】そして、以上で求めたa'により次材のピンチロールギャップ待機位置Sを前記の (4) 式と同様に次式から求めることが出来る。
S=Sp−a' ……(5)
図1に、本発明を適用する巻取りコイラ直前ピンチロール9の構成を示す。金属帯1は巻取りコイラ直前ピンチロール9でピンチされ張力を与えられながら巻取りコイラ10に巻き取られる。その際、巻取りコイラ直前ピンチロール9では、油圧シリンダ25により上側ピンチロール20を下側ピンチロール21に押付けて押力を発生させる。この押力は押力検出器22で検出される。油圧シリンダ25に取り付けられたピンチロールギャップ測定器26によりピンチロール間のギャップも同時に測定されている。油圧シリンダ25は、油圧ポンプ29により発生する油圧をサーボ弁30によりコントロールすることにより制御される。サーボ弁30は、ピンチロール押力制御装置24により押力検出器22の出力信号に基づいて押力設定器23により設定された押力となるようにフィードバック制御される。そしてコイル巻取りが完了し、次の金属帯噛み込み時には、あらかじめピンチロールギャップの設定が行われる。
【0025】その設定においては前述の学習演算のいずれかを適用し、押力制御中のピンチロールギャップ実績値および巻取った金属帯の板厚およびピンチロール押力に基きピンチロール最適ギャップ演算装置27によりロール摩耗量の推定演算が行われる。そしてギャップ設定器28にはこの推定演算によるロール摩耗分の補正を加味して金属帯の噛み込み時の初期ギャップ値が設定される。この際、サーボ弁30はギャップ設定器28からの設定出力に切り替えられており、金属帯噛み込み時のピンチロールギャップ設定が行なわれる。
【0026】
【実施例】本発明を、0.8mm 板厚の極薄鋼帯の連続熱間圧延に適用した場合の従来との比較例を示す。ラインの搬送速度を仕上げ圧延機出側において1000m/分の条件として、上記0.8mm 板厚の鋼帯を100 コイル巻取った。このとき、前記(5)式において過去10本分の単純平均をとる学習方法を採用して本発明に基づく上下ピンチロール待機ギャップ設定を実施した。
【0027】1コイル目と100 コイル目の上下ピンチロール待機ギャップ設定値を比較すると、100 コイル目を巻取る際は1コイル目を巻き取る際に比較して0.1mm 小さい値となっていた。一方、100 コイル巻取り前後でのピンチロールの摩耗量を実測した結果、0.1mm であった。このように、本発明においては、前記上下ピンチロール待機ギャップ設定をピンチロールの摩耗分だけ精度よく補正できていることがわかる。
【0028】また、図3に示すように、従来の操業では同様に0.8mm の鋼帯を100 コイル巻取った際に5コイル程度の巻取り不良が発生していたが、本発明を適用した結果、巻取り不良の発生は皆無とすることができた。
【0029】
【発明の効果】本発明により、連続熱間圧延ラインにおいて、1000m/分を超える高速で、かつ板厚1.0mm 以下の極薄材の圧延において問題となっていた巻取りコイラでの通板事故発生を皆無とすることができ、コイルの安定した巻取りを可能とした。
【出願人】 【識別番号】000001258
【氏名又は名称】川崎製鉄株式会社
【出願日】 平成9年(1997)7月9日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】小林 英一
【公開番号】 特開平11−28513
【公開日】 平成11年(1999)2月2日
【出願番号】 特願平9−183545