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【発明の名称】 冷間圧延機の制御方法
【発明者】 【氏名】村地 俊彦

【氏名】小代 純士

【要約】 【課題】最終スタンドにダル加工をした摩擦係数の高いロールを用いた場合でも、板厚制御性が悪化することが無く、しかも、最終スタンドの荷重変動に伴う板形状不良の発生することの無い冷間圧延機の制御方法を提供する。

【解決手段】最終スタンド1Cにダルロールを装着し、最終スタンド1Cの圧延荷重を最終スタンドの圧下位置制御装置3Cを操作することにより略一定に制御する。最終−1スタンド1Bの出側に板厚計5Bを配置し、最終スタンド出側の板厚目標値と最終スタンド出側板厚計5C実測値の偏差に応じたフィードバック制御の操作量を最終−1スタンド1Bの当初の板厚目標値に加え、その値を最終−1スタンド1Bの板厚目標値とし、最終−1スタンド出側の板厚計実測値がこの値になるように、最終2スタンドを除くスタンドのロール回転速度を操作する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数の圧延スタンドのうち最終スタンドにダルロールを装着し、最終スタンドの圧延荷重を最終スタンドの圧下位置を操作することにより略一定に制御するとともに、最終スタンドの後方張力を前段スタンドのロール回転速度を操作することによって略一定に制御し、加えて、製品板厚の制御を最終2スタンドを除くスタンドのロール回転速度を操作することにより制御する冷間圧延機の制御方法において、最終−1スタンドの出側に板厚計を配置し、最終スタンド出側の板厚目標値と最終スタンド出側板厚計実測値の偏差に応じたフィードバック制御の操作量を最終−1スタンドの当初の板厚目標値に加え、その値を最終−1スタンドの板厚目標値とし、最終−1スタンド出側の板厚計実測値がこの値になるように、最終2スタンドを除くスタンドのロール回転速度を操作することを特徴とする冷間圧延機の制御方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、複数の圧延スタンドのうち最終スタンドに摩擦係数の高いダルロールを装着した冷間圧延機の制御方法に関するものであり、さらに詳しくは、このような圧延機において、製品板厚を目標値に制御する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】冷間圧延機においては、製品板厚の制御を各圧延スタンドのロール回転速度を操作することによって行い、各スタンド間に生じる張力を後段側のスタンドの圧下位置を操作することによって制御する方法が一般に行われている。その制御方式を図5に示す。図5において、1A〜1Cは圧延スタンドを示し、1Cは最終スタンド、1Bは最終−1スタンド(最終スタンドの前段スタンド)、1Aは最終−2スタンド(最終スタンドの2つ前のスタンド)を示す。スタンド1Aより前段にもスタンドが存在するが、図5を始め以下の図においては図示を省略する。
【0003】2A〜2Cは各スタンドの駆動モータ、3A〜3Cは各スタンドの圧下装置、4Aはスタンド1Aと1B間の張力計、4Bはスタンド1Bと1C間の張力計、5Cは最終スタンド出側板厚計、6Cは最終スタンド圧延荷重計、7Cは最終スタンド出側板厚制御装置、8Cは最終スタンド出側板厚設定器、12Aはスタンド1Aと1B間の張力制御装置、12Bはスタンド1Bと1C間の張力制御装置、13Aはスタンド1Aと1B間の張力設定器、13Bはスタンド1Bと1C間の張力設定器である。
【0004】最終スタンド出側板厚計5Cで測定された板厚は、最終スタンド出側板厚制御装置7Cに入力され、最終スタンド出側板厚設定器8Cに設定された値と比較される。最終スタンド出側板厚制御装置7Cは、その偏差に応じて、最終−1スタンド1Bの駆動モータ2Bの回転数を変え、最終スタンド1Cと最終−1スタンド1B間での鋼板のマスバランスを変えることにより、最終スタンド1C出側板厚が目標値となるような制御を行う(最終−1スタンド1Bの駆動モータ2Bの回転数が変わると、それ以前のスタンドでの鋼板のマスバランスを保つため、駆動モータ2Aを始め、前段スタンドのモータの回転数も変化するが、図5においてはその説明を省略する。)。
【0005】駆動モータ2A、2Bの回転数が変化することによってスタンド間に発生する張力の変動は、スタンド間張力計4A、4Bで検出され、スタンド間張力制御装置12A、12Bが、各スタンドの圧下装置3B、3Cを制御して、検出値が張力設定器13A、13Bで設定された値となるように制御する。
【0006】しかしながら、次工程での通板性の安定化のため最終スタンドにダル加工をした摩擦係数の高いロールを装着した冷間圧延機においては、このような制御系で制御を行って最終スタンド圧下位置を変化させた場合、他のスタンドに比べ圧延荷重の変化が大きくなる。これにともない、ロールのベンディング量が大きく変化して、圧延材料の形状が不良となるという問題点を有する。
【0007】この問題点に対する解決策として、特許第2653128号公報には、最終スタンドの圧延荷重を、最終スタンドの圧下位置を操作することにより略一定に制御すると共に、最終スタンドの後方張力を前段スタンドのロール回転速度を操作することにより略一定に制御し、加えて、製品板厚の制御を最終2スタンドを除くスタンドのロール回転速度を操作することにより制御する冷間圧延機の制御方法が示されている。
【0008】その制御方式を図6に示す。図6において、図5に示された構成要素と同じ構成要素には、同じ符号を付してその説明を省略する。図6において、9Cは最終スタンド圧延荷重制御装置、10Cは最終スタンド圧延荷重設定器である。
【0009】最終スタンド出側板厚計5Cで測定された板厚は、最終スタンド出側板厚制御装置7Cに入力され、最終スタンド出側板厚設定器8Cに設定された値と比較される。最終スタンド出側板厚制御装置7Cは、その偏差に応じて、最終−2スタンド1Aの駆動モータ2Aの回転数を変え、最終スタンド1Cと最終−2スタンド1A間での鋼板のマスバランスを変えることにより、最終スタンド1C出側板厚が目標値となるような制御を行う。(最終−2スタンド1Aの駆動モータ2Aの回転数が変わると、それ以前のスタンドでの鋼板のマスバランスを保つため、前段スタンドのモータの回転数も変化するが、図6においてはその説明を省略する。)
【0010】最終スタンド圧延荷重制御装置9Cは、最終スタンド圧延荷重計6Cで検出された圧延荷重が、最終スタンド圧延荷重設定器10Cで設定された値になるように、最終スタンド圧下装置3Cを駆動する。
【0011】スタンド間張力制御装置12Bは、スタンド間張力計4Bで検出されたスタンド1Bと1C間の張力が、張力設定器13Bで設定された値になるように、最終−1スタンド1Bの駆動モータ2Bの回転数を制御する。
【0012】これに対し、スタンド間張力制御装置12Aは、スタンド間張力計4Aで検出されたスタンド1Aと1B間の張力が、張力設定器13Aで設定された値になるように、最終−1スタンド1Bの圧下装置3Bを駆動する。最終−2スタンドより前のスタンド間張力制御は、これと同様の方法によって行われる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】以上説明したように、特許第2653128号公報に開示されている制御方法においては、図7に示すごとく、製品板厚制御として最終−2スタンド以前のスタンドの速度を操作している。しかしながら、この方法においては、操作量は最終2スタンドより前段のロール回転速度であるため、検出器(板厚計)と操作端(最終−2スタンド以前のスタンド)の距離が遠く、大きなむだ時間が発生する。そのため、フィードバック制御のゲインや応答速度を上げると制御系が不安定となり板厚ハンチングが発生する。そこで、フィードバック制御のゲインを低くする必要があり、板厚制御性が従来の制御系に比べ悪化するという問題が避けられない。
【0014】本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、最終スタンドにダル加工をした摩擦係数の高いロールを用いた場合でも、板厚制御性が悪化することが無く、しかも、最終スタンドの荷重変動に伴う板形状不良の発生することの無い冷間圧延機の制御方法を提供することを課題とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】前記課題は、複数の圧延スタンドのうち最終スタンドにダルロールを装着し、最終スタンドの圧延荷重を最終スタンドの圧下位置を操作することにより略一定に制御するとともに、最終スタンドの後方張力を前段スタンドのロール回転速度を操作することによって略一定に制御し、加えて、製品板厚の制御を最終2スタンドを除くスタンドのロール回転速度を操作することにより制御する冷間圧延機の制御方法において、最終−1スタンドの出側に板厚計を配置し、最終スタンド出側の板厚目標値と最終スタンド出側板厚計実測値の偏差に応じたフィードバック制御の操作量を最終−1スタンドの当初の板厚目標値に加え、その値を最終−1スタンドの板厚目標値とし、最終−1スタンド出側の板厚計実測値がこの値になるように、最終2スタンドを除くスタンドのロール回転速度を操作することを特徴とする冷間圧延機の制御方法により解決される。
【0016】最終スタンドにブライトロールを使用した場合には、20〜40%の高い圧下率での圧延が可能であるが、最終スタンドにダルロールを用いた場合には、ロール表面の摩擦係数が高いため5%前後の小さい圧下率でしか圧延することができない。つまり最終スタンドにダルロールを用いた場合には、最終スタンドでの板厚変動量は最終−1スタンドでの板厚変動に比べ小さくなり、製品板厚の変動は最終−1スタンドで支配されることがわかっている。図8に最終スタンドにダルロールを用いた圧延時の板厚変動の例を示す。図8を見ると、最終−1スタンドと最終スタンド出側の板厚変動の形態が似ていることがわかる。
【0017】そこで、本手段においては、まず、製品板厚の制御のため最終−1スタンドの出側に板厚計を配置し、最終−1スタンドでの目標板厚に対するフィードバック制御を最終2スタンドより前段のロール回転速度を制御することで行う。これにより、最終−2スタンドでのむだ時間の少ない高応答な板厚制御が行われる。
【0018】この制御系を図9に示す。最終スタンドの板厚コントローラは、最終スタンドにおける製品板厚目標値と製品板厚実績値との差に応じて、最終−2スタンドロール速度を操作する。それと同時に、最終−1スタンドの板厚コントローラは、最終−1スタンド出側板厚目標値と出側板厚実績値との差に応じて、最終−2スタンドロール速度を操作する。
【0019】しかし、これでは最終スタンドのフィードバック制御と最終―1スタンドのフィードバック制御の操作端が同じであり、干渉をひきおこす。例えば、ある時点で、最終スタンド出側の板厚が目標値よりも厚く、逆に最終−1スタンド出側の板厚が目標値通りであると、最終スタンドの制御量は負の制御量となり板厚を薄くするように最終−2スタンドのロール速度を操作する。その結果、最終−1スタンド出側の板厚が目標値よりも薄くなり、最終−1スタンドの板厚制御は板厚を厚くするように正の制御量を最終−2スタンドのロール速度に与える。このような場合には、同じ最終−2スタンドロール速度に与える制御量の符号が反対であり、板厚変動を精度良く抑制することができない。
【0020】図10にこの例を示す。図10において最終前スタンドとは、最終−1スタンドのことである。図10においては、最終スタンドの板厚の誤差が、+0.01mmに急変した場合、最終スタンドの板厚制御装置は、最終−2スタンドのロール回転数を操作することにより、この誤差を打ち消そうとするように働く。すると、最終−1スタンドの板厚が目標値より下回るようになる。最終−1スタンドの板厚制御装置は、最終−2スタンドのロール回転数を操作することにより、この誤差を無くしようとする。その結果、最終スタンド出側の板厚偏差が+0.005mmあり、最終−1スタンド出側の板厚偏差が-.005mmある状態で、最終−2スタンドへの操作量は打ち消しあって0となってしまい、結局製品板厚偏差が+0.005mm残ったままで制御が安定してしまっている。
【0021】この問題に対して、本手段においては、最終スタンド出側の板厚目標値と板厚計実測値の偏差に応じたフィードバック制御の操作量を最終−1スタンドの当初の板厚目標値に加えあわせ、その値を最終−1スタンドの板厚目標値に逐次置き換えながら、最終−1スタンド出側の板厚計実測値がこの値になるように、最終2スタンドを除くスタンドのロール回転速度を操作することにより解決を図っている。
【0022】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態の例を示すブロック図である。図1において、1A〜1Cは圧延スタンドを示し、1Cは最終スタンド、1Bは最終−1スタンド(最終スタンドの前段スタンド)、1Aは最終−2スタンド(最終スタンドの2つ前のスタンド)を示す。
【0023】2A〜2Cは各スタンドの駆動モータ、3A〜3Cは各スタンドの圧下装置、4Aはスタンド1Aと1B間の張力計、4Bはスタンド1Bと1C間の張力計、5Bは最終−1スタンド出側板厚計、5Cは最終スタンド出側板厚計、6Cは最終スタンド圧延荷重計、7Bは最終−1スタンド出側板厚制御装置、7Cは最終スタンド出側板厚制御装置、8Bは最終−1スタンド出側板厚設定器、8Cは最終スタンド出側板厚設定器、9Cは最終スタンド圧延荷重制御装置、10Cは最終スタンド圧延荷重設定器、11は板厚目標値変更装置、12Aはスタンド1Aと1B間の張力制御装置、12Bはスタンド1Bと1C間の張力制御装置、13Aはスタンド1Aと1B間の張力設定器、13Bはスタンド1Bと1C間の張力設定器である。
【0024】図1の冷間圧延機はの最終スタンドにはダルロールが装着されている。また、制御装置は、プロセス計算機、圧延機制御装置、圧下制御装置、モータ制御装置から構成されており、プロセス計算機は、板厚・張力・荷重目標値の計算を行い圧延機制御装置に設定する。圧延機制御装置は、各設定値と実績値を比較し、制御回路にて操作量を演算する。ここで演算された操作量は、圧下制御装置もしくはモータ制御装置に設定され、各制御量分の動作を制御する。
【0025】最終スタンド圧延荷重制御装置9Cは、最終スタンド圧延荷重計6Cで測定した圧延荷重が、最終スタンド圧延荷重設定器10Cで設定された値になるように、最終スタンド圧下装置3Cを操作する。
【0026】張力制御装置12Bは、張力計4Bで測定したスタンド1Bと1C間の張力が、張力設定器13Bで設定した値になるように、最終−1スタンド1Bの駆動モータ2Bの回転数を操作する。
【0027】これに対し、スタンド間張力制御装置12Aは、スタンド間張力計4Aで検出されたスタンド1Aと1B間の張力が、張力設定器13Aで設定された値になるように、最終−1スタンド1Bの圧下装置3Bを駆動する。最終−2スタンドより前のスタンド間張力制御は、これと同様の方法によって行われる。
【0028】最終スタンド出側板厚制御装置7Cは、最終スタンド出側板厚計5Cで検出された板厚と最終スタンド出側板厚設定器8Cで設定された板厚目標値とを比較し、その偏差に応じた板厚変更量を板厚目標変更装置11に与える。板厚目標変更装置11は、この板厚変更量を、最終−1スタンド出側板厚設定器8Bで設定された最終−1スタンド出側板厚目標値に加え、その和を、最終−1スタンド出側板厚制御装置7Bの新たな目標板厚とする。
【0029】最終−1スタンド出側板厚制御装置7Bは、最終−1スタンド出側板厚計5Bで検出された板厚が、この新たな目標板厚になるように、最終−2スタンド1Aの駆動モータ2Aの回転数を操作する。(最終−2スタンド1Aの駆動モータ2Aの回転数が変わると、それ以前のスタンドでの鋼板のマスバランスを保つため、前段スタンドのモータの回転数も変化するが、図1においてはその説明を省略する。)
図2に、以上説明した板厚制御系のブロック図を示す。
【0030】図1と図6を比較すると分かるように、図1においては図6に比して板厚の検出端(板厚計)と操作端(最終−2スタンド)の位置が近くなっているので、操作から検出までの無駄時間が短くなって、制御精度のよいものとなる。
【0031】図3にこの板厚制御系の応答の例を示す。図3において、最終前スタンドとは、最終−1スタンドのことである。図3においては、最終スタンドの板厚の誤差が、+0.01mmに急変した場合、最終スタンドの板厚制御装置は、この誤差を打ち消すような操作量を算出し、これを最終−1スタンドの板厚制御装置の目標板厚に加算する。よって、最終−1スタンドの板厚制御装置の目標板厚は、-0.01mm程度となり、この結果、最終スタンド出側板厚は目標値に保たれた状態で制御系が安定する。
【0032】図4に本制御方法の実施例と従来の制御系による制御の比較を示す。上段が従来の制御系での最終スタンド実績板厚偏差、下段が本発明の制御系での最終スタンド実績板厚偏差を示す。上段のチャートは、4.5mm厚で1062mm幅の原板から、板厚1.597mmの冷延鋼板を製造した場合のものであり、下段のチャートは、4.5mm厚で1021mm幅の原板から、板厚1.621mmの冷延鋼板を製造した場合のものである。両者を比較すると、明らかに、本発明の制御系での板厚制御精度の向上が確認できる。
【0033】
【発明の効果】以上説明したように、本発明においては、最終スタンドの圧延荷重を最終スタンドの圧下位置を操作することにより略一定に制御するとともに、最終−1スタンドの出側に板厚計を配置し、最終スタンド出側の板厚目標値と最終スタンド出側板厚計実測値の偏差に応じたフィードバック制御の操作量を最終−1スタンドの当初の板厚目標値に加え、その値を最終−1スタンドの板厚目標値とし、最終−1スタンド出側の板厚計実測値がこの値になるように、最終2スタンドを除くスタンドのロール回転速度を操作しているので、最終スタンドにダル加工をした摩擦係数の高いロールを用いた場合でも、板厚制御性が悪化することが無く、しかも、最終スタンドの荷重変動に伴う板形状不良の発生することが無い。
【出願人】 【識別番号】000004123
【氏名又は名称】日本鋼管株式会社
【出願日】 平成10年(1998)5月29日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】細江 利昭
【公開番号】 特開平11−342409
【公開日】 平成11年(1999)12月14日
【出願番号】 特願平10−164380