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【発明の名称】 作業ロール及びセラミックスロール並びにその製造方法
【発明者】 【氏名】川東 民人

【氏名】大河内 敬彦

【要約】 【課題】セラミックスロール表面に、凹状溝を精度良く形成すること、また、圧延板材の表面に幾何学的模様又は装飾模様等を精度良く転写することを課題とする。

【解決手段】セラミックスロールにおいて、該セラミックロールの胴部表面に凹状溝部や凸状突起部を形成することを特徴とする。また、焼結後に、セラミックロールの胴部表面にショットブラスト法によって凹状溝部や凸状突起部を形成すること特徴とする。或いは、上下作業ロールと、該上下作業ロールを支持する支持ロールとを有する圧延機において、前記上下作業ロールうち少なくとも一つの胴部表面に凹状溝部や凸状突起部を形成し、該胴部表面及び該凹状溝部内面や該凸状突起部面をセラミックスとすることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】圧延用の作業ロールにおいて、該作業ロールの胴部表面は、凹状溝部及び凸状突起部のうち少なくとも一方を備え、且つ該胴部表面の熱膨張係数が1.0〜10.0×10-6であることを特徴とする作業ロール。
【請求項2】圧延用の作業ロールにおいて、該作業ロールの胴部表面に、凹状溝部及び凸状突起部のうち少なくとも一方を備えて圧延面を形成し、該圧延面をセラミックスとすることを特徴とする作業ロール。
【請求項3】請求項1又は請求項2に記載の作業ロールにおいて、前記凹状溝部の深さ又は前記凸状突起部の高さが10μm以上であることを特徴とする作業ロール。
【請求項4】圧延用のセラミックスロールにおいて、該セラミックスロールの胴部表面に、凹状溝部及び凸状突起部のうち少なくとも一方を形成することを特徴とするセラミックスロール。
【請求項5】請求項4に記載のセラミックスロールにおいて、前記凹状溝部の深さ又は前記凸状突起部の高さが10μm以上であることを特徴とするセラミックスロール。
【請求項6】圧延用のセラミックスロールの製造方法において、焼結後に、該セラミックロールの胴部表面にショットブラスト法によって、凹状溝部及び凸状突起部のうち少なくとも一つを形成することを特徴とするセラミックロールの製造方法。
【請求項7】圧延用の上下作業ロールと、該上下作業ロールを支持する支持ロールとを有する圧延機において、前記上下作業ロールうち少なくとも一つの胴部表面をセラミックスとし、且つ該胴部表面に凹状溝部及び凸状突起部のうち少なくとも一つを形成することを特徴とする圧延機。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は板材圧延に使用する作業ロールに関し、特に、セラミックスロール及びその製造方法並びにセラミックスロールを用いた圧延機に関する。
【0002】
【従来の技術】板材を圧延するセラミックス製の作業ロールの胴部表面を加工する技術については、次のような種々の技術がある。
【0003】特開昭64−45755 号公報には、セラミックスロールにおいて、圧延製品の艶消し、及びめっき品や装飾品における圧延製品の下地面の密着性を向上するために、セラミックスロールの胴部表面のダル加工、つまり、粗さ2μm以上の粗さを付与する加工方法が記載され、その加工されたセラミックスダルロールを用いた圧延機が記載されている。
【0004】なお、セラミックスロールに半円形状のへこみ部を形成し、そのへこみ部にて線材や棒材を伸延する線材用のセラミックスロールが知られている。
【0005】また、圧延材の表面に、文字,記号,絵等の幾何学的模様又は装飾模様等を付ける技術としては、一般的に、所望する幾何学的模様又は装飾模様を圧延製品に転写するために圧延ロール表面に模様を形成する技術が知られている。
【0006】特開平8−24913号公報には、表面粗さの違い(Raで0.07μm 以下の鏡面部分と、Raで0.1〜1μm の粗面部分)によって、転写模様のパターンが形成されているセラミックスロールが記載されている。また、この技術では、セラミックロールの粗さを粗くするために、ショットブラスト法又はエッチング方法を用いている。
【0007】更に、金属製の作業ロール表面に模様を彫刻して、模様付きの圧延材を得る技術として、特開昭59−47016 号等があげられる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】特開平8−24913号公報の技術では、セラミックスロールの胴部表面の粗さの違いによって、転写模様のパターンが形成しているため、圧延製品に転写される模様が薄く、その模様の輪郭がぼやけていた。つまり、表面粗さの違い(鏡面部分,粗面部分)だけでは、転写された場合に、その違いが明確でなくなってしまい、圧延材に転写された模様の精度が劣ってしまう。また、圧延材の圧延を繰り返すうちに、表面粗さの違いの差が無くなっていき、長期間その模様の転写を維持すること困難であった。
【0009】更に、表面粗度を粗くするとともに表面強度が低下してしまうため、粗面部分の粗さに限界があり、鏡面部分と粗面部分の差異を大きくすることが困難であった。
【0010】また、セラミックスロールに半円形状のへこみ部を形成する方法としては、へこみ部を有する形状のセラミックスロール素材を作成し、その形状の素材を焼結するものがある。しかし、この方法は、大きめの緩やかな曲面である半円形状のへこみ部を形成することは可能であるが、へこみ部の幅や深さを細かくすることが困難であり、且つ焼結前の形成であるために、その寸法精度が劣るものであった。更に、焼結後にセラミックスロールにへこみ部を加工形成することは、セラミックスの材料性質から困難であった。つまり、セラミックス材料は、硬度が非常に高く、且つ脆いために、研削刃等を用いるとセラミックス自体が割れてしまったり、また、研磨装置等を用いるとへこみ部を形成するのに非常に時間がかかり効率が悪かった。
【0011】更に、特開昭59−47016 号に記載のような一般的な金属製の作業ロール表面に模様を彫刻した場合には、平滑面で無く凹凸面が多いため、焼き付き現象が生じやすく、安定した圧延が困難である。また、圧延の際には、圧延材からの熱伝達や圧延材との摩擦によって作業ロールは50〜200℃という高温になる。この温度上昇を抑制するために、通常、冷却水等を作業ロール表面に吹き付けて表面温度上昇を抑制している。つまり、作業ロールは圧延中に温度上昇及び温度変化をおこしている。このような表面温度上昇及び温度変化によって、金属製の作業ロール表面に正確な模様を形成しても、その模様自体が熱膨張によって変化してしまい、正確な模様の転写が困難であった。更に、金属表面に彫刻しているため、模様の境界部となる角部が圧延による摩耗によって丸みを帯びてしまい、明確な転写を長期間持続することが困難であった。
【0012】本発明の第一の目的は、圧延板材の表面に幾何学的模様又は装飾模様等を精度良く転写することができる作業ロール又はセラミックスロールを得ることにある。
【0013】本発明の第二の目的は、セラミックスロール表面に、凹状溝又は凸状突起を精度良く形成することができるセラミックロールの製造方法を得ることにある。
【0014】本発明の第三の目的は、圧延板材の表面に幾何学的模様又は装飾模様等を精度良く転写する圧延機を得ることにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明の第一の目的は、圧延用の作業ロールにおいて、該作業ロールの胴部表面は、凹状溝部及び凸状突起部のうち少なくとも一方を備え、且つ該胴部表面の熱膨張係数が1.0〜10.0×10-6であることにより達成される。
【0016】また、本発明の第一の目的は、圧延用の作業ロールにおいて、該作業ロールの胴部表面に、凹状溝部及び凸状突起部のうち少なくとも一方を備えて圧延面を形成し、該圧延面をセラミックスとすることにより達成される。
【0017】或いは、本発明の第一の目的は、圧延用のセラミックスロールにおいて、該セラミックスロールの胴部表面に、凹状溝部及び凸状突起部のうち少なくとも一方を形成することを特徴とすることにより達成される。
【0018】本発明の第二の目的は、圧延用のセラミックスロールの製造方法において、焼結後に、該セラミックロールの胴部表面にショットブラスト法によって、凹状溝部及び凸状突起部のうち少なくとも一つを形成することにより達成される。
【0019】本発明の第三の目的は、圧延用の上下作業ロールと、該上下作業ロールを支持する支持ロールとを有する圧延機において、前記上下作業ロールのうち少なくとも一つの胴部表面をセラミックスとし、且つ該胴部表面に凹状溝部及び凸状突起部のうち少なくとも一つを形成することにより達成される。
【0020】
【発明の実施の形態】一般に、圧延中に作業ロール表面の温度は、圧延材からの熱伝達や圧延による加工熱等によって、順次温度上昇する。そして、圧延中の作業ロールの高温化を抑制するため、作業ロール表面に冷却水等を吹き付けて冷却を行っている。つまり、圧延中に作業ロールは、温度変化を繰り返しており、その温度変化はおおよそ50〜200℃の範囲で行われる。即ち、作業ロールにおいては、圧延中に任意の範囲で熱膨張を繰り返している。
【0021】従来の模様パターン印刷用のハイス材からなる金属製作業ロールでは、仮に、正確な転写用の模様パターンをロール表面に形成しても、あくまで、形成した際の常温の寸法精度であって、圧延中の温度範囲では、熱膨張によってその精度を失ってしまう。また、圧延中の温度変化によって熱膨張する度合いが大きく、安定した寸法精度を維持しながら圧延を行うことが困難である。
【0022】本発明では、模様パターン印刷用の作業ロールの圧延時の温度上昇や圧延中の温度変化に着目した。
【0023】図5には、従来の模様パターン印刷用作業ロールの金属材料と、セラミックスと熱膨張率を示す。図5では、従来の金属材料としてハイス材を、セラミックスとしてサイアロンを示した。
【0024】ハイス材は、熱膨張係数が12×10-6程度である。常温20℃で、ハイス材温度が50℃,100℃,150℃,200℃の温度の場合には、常温との温度差はそれぞれ30℃,80℃,130℃,180℃であるので、熱膨張率は、図5に示すようにそれぞれ、ハイス材温度50℃の時3.6×10-4 ,ハイス材温度100℃の時9.6×10-4 ,ハイス材温度150℃の時15.6×10-4 ,ハイス材温度200℃の時21.6×10-4 である。
【0025】仮に、このハイス材で800mm長さの胴長を有する金属製作業ロールを製作して圧延に使用すると、その胴長は、常温で800mm、50℃で800.288mm、100℃で800.768mm、150℃で801.248mm、200℃で801.728mm である。つまり、胴長800mmの場合、常温と圧延中温度とで、その長さは0.288mm 以上膨張し、大きく変化する。また、圧延中の50〜200℃の間では、その長さは、0.288mm〜1.728mmの間で大きく変動する。
【0026】また、このような胴長と同様に、作業ロールの胴部直径に関しても、温度上昇や温度変化によって変化する。このような寸法変動が生じるため、作業ロール胴部に正確に模様パターンを形成しても、実際に印刷のための圧延を行うと、印刷される模様パターンに寸法の狂いが生じてしまう。つまり、圧延の温度上昇による熱膨張で模様パターンが変化したり、圧延中の温度変化による熱膨張変動で模様パターンが種々変化したりしてしまう。
【0027】これに対して、セラミックスの一種であるサイアロン材は、熱膨張係数が金属等に比べて約1/4である3.2×10-6 程度である。そして、熱膨張率は、図5に示すようにそれぞれ、サイアロン材温度50℃の時0.96×10-4 ,サイアロン材温度100℃の時2.56×10-4 ,サイアロン材温度150℃の時4.16×10-4 ,サイアロン材温度200℃の時5.76×10-4 である。
【0028】前述のハイス材と同様に、仮に、このサイアロン材で800mm長さの胴長を有するセラミックス製作業ロールを製作して圧延に使用すると、その胴長は、常温で800mm,50℃で800.0768mm,100℃で800.2048mm,150℃で800.3328mm,200℃で800.4608mmである。つまり、胴長800mmの場合、常温と圧延中温度とで、その長さは大きくても0.4608mmしか膨張せず、小さな変化であることが分かる。また、圧延中の50〜200℃の間では、その長さは、0.0768mm〜0.4608mmという少ない範囲でしか変動せず、小さな変化であった。
【0029】また、このような胴長と同様に、作業ロールの胴部直径に関しても、温度上昇や温度変化によってもあまり変化しない。このように寸法変動が非常に少ないため、作業ロール胴部に正確に模様パターンを形成し、実際に印刷のための圧延を行うと、印刷される模様パターンは正確なものとなる。
【0030】つまり、圧延の温度上昇による熱膨張での模様パターンの変化が少なく、且つ圧延中の温度変化による熱膨張変動での模様パターンの種々変化が小さい。よって、寸法精度の良い転写(印刷)が可能である。
【0031】ここで、熱膨張係数は、1.0〜10.0×10-6が望ましい。この範囲にすることにより、模様パターン等の印刷の寸法精度が良い。また、セラミックスの熱膨張係数はおおよそ2.0〜8.0×10-6であり、模様パターン印刷の作業ロールに適していることがわかる。
【0032】以上のように、セラミックスは、あまり熱膨張しないので、種々の模様を凹状溝加工や凸状突起加工しても、その溝幅や突起幅は温度の影響を受けづらい。よって、本発明のセラミックスロールでは、模様パタ−ンが圧延時の温度上昇や圧延中の温度変化によって影響が少なく、高精度な模様を維持し、圧延材にその模様を安定して転写できることがわかる。
【0033】(実施例1)本発明のセラミクスロール及びその製造方法について、図1〜図4を用いて以下説明する。
【0034】図1は、本発明の一実施例であるセラミックスロールの断面図であり、図2は、本発明の一実施例であるセラミックスロールの胴部展開図であり、図3は、本発明の一実施例であるセラミックスロールの製造工程図であり、図4は、本発明の一実施例であるセラミックスロールの胴部表面の溝部拡大断面図である。
【0035】まず、セラミクスロールの製造方法について述べる。本実施例に用いたセラミックスは、サイアロンセラミックスである。このサイアロンセラミックスの化学式は、Si6−2AlzOzNg−z で示され、zは0〜4.2 であり、β−サイアロンと呼ばれるものである。
【0036】図4に示すように、本実施例でのセラミクスロールの製造工程は、造粒工程11,圧粉成形工程12,焼結工程13,軸部形成工程14,胴部研磨工程15、及び溝部加工工程16を順次行うものである。
【0037】造粒工程11では、z=0.5 のβ−サイアロン粉を用い、少量のバインダを添加後、メタノールを加えて湿式混練し、スプレードライ法により造粒した。
【0038】圧粉成形工程12では、造粒後に、冷間静水圧法を適用し、直径105mm,長さ900mmの円柱状に圧粉成形した。
【0039】焼結工程13では、圧粉成形後に、600℃の温度で40時間維持して脱脂を行った後、窒素雰囲気下において1700℃の高温で焼結して、サイアロンセラミックスの焼結体を得た。
【0040】軸部形成工程14では、焼結後に、上記セラミックスロールの軸部となる部位に金属製キャップ2を設ける。この金属製キャップ2は加工精度を向上させるために設けるものである。図1に示すように、先ず、セラミックスロール1の両端でロール軸方向に径小部5を形成する。つまり、セラミックスロール1の両端に径小部分を形成する。そして、この径小部分にコイルバネ状に金属製パイプ4を巻く。この金属製パイプ4の巻回径よりも若干小さい径である内径を備えた金属製キャップ2を、約800℃まで加熱して熱膨張させて、金属製パイプ4の上から嵌め込んで固定した。この金属製キャップ2は、ロール軸方向では凹部形状を有し、SUS304製とした。また、この金属製キャップ2には、胴部の研磨を行う際に使用する加工用のセンタ穴3を設けた。更に、センタ穴3にはロール軸方向に貫通孔7を設けた。このセンタ穴3を設けることにより、セラミックスロールの胴部表面の研磨精度を向上することができ、貫通孔7を設けることにより、嵌め込み時にエアーぬきができて焼き嵌め性を向上することができる。また、金属製キャップ2のセンタ穴3の内面には、金属製キャップよりも硬さが高いステライトの肉盛溶接等を施して、セラミックスロールの胴部表面の研磨を行う際のセンタ穴の寿命を延ばすことができる。
【0041】胴部研磨工程15では、センタ穴3を用いて、両センタ押しで、セラミックスロール1の胴部表面の研磨加工を施した。ここでは、まず、ダイヤモンドの砥石を使用した円筒研削を行って所定寸法に粗加工した後、遊離砥粒による仕上研磨を行って、圧粉成形工程12における大きさの約80%の大きさである、胴径φ70mm,胴長600mm,全長720mmサイズのロールを製作した。その結果、加工精度の良いセラミックスロールを得ることができた。つまり、真円度1μm以下、円筒度5μm以下の高い寸法精度で、その表面粗さがRaで0.05μm以下の鏡面仕上げを実現することができた。
【0042】溝部加工工程16では、ショットブラスト法によって、鏡面加工されたセラミックロール胴部表面に溝部を形成した。従来、ショットブラストは、セラミックスロール及び金属製のロールの加工においては、単に、表面粗さを変化させるために用いられ、特に、ダル加工用としては、均一な粗い面を得ることができるため広く用いられてきた。
【0043】本実施例では、ショットブラスト法を利用して、硬くて脆いセラミックスロールに、溝部研削加工を施すものである。以下具体的な方法について説明する。
【0044】幾何学的模様又は装飾模様等の一例として、本実施例では、ROLLという文字を採用した。そして、本実施例では、前述のセラミックスロール1の胴部表面を鏡面仕上げした後に、そのセラミックスロール1の胴部全面に、100μm厚のネガ型感光性のドライフィルム20を巻いた。そして、そのドライフィルム20の上に、原版フィルム21を密着させて設けた。ここで、この原版フィルム21には、前記密着前に、所望する幾何学的模様又は装飾模様等の一例であるROLLという文字パターンを形成しておく。ROLLという文字パターンは、曲線部(円部),直線部,交わり部,角部等を含んでおり、それぞれの転写効果を確認できる。この文字パターンの1文字の大きさは、3mm×3mmで行った。この状態の拡大断面図を図4(a)に示す。
【0045】文字の太さ、つまり、形成する凹状溝の太さは、0.38〜0.4mmで実施した。
【0046】図4(a)の状態で、セラミックスロール胴部全体に対して露光を実施した。その後、原版フィルム21を取り外し、1パーセントの炭酸ソーダ液をセラミックスロール胴部全体に噴霧させて、現像することによって、文字パターン部を露出させた。その結果、図4(b)の拡大断面図に示すように、文字パターン部には、ドライフィルム20が存在せず、文字パターン部以外はドライフィルム20が残存し、ドライフィルム20による文字パターンをロール表面に形成することができた。
【0047】このような文字パターンを形成する原版フィルム21は、種々の模様を形成することが容易であり、種々の幾何学的模様又は装飾模様等を原版フィルム21に形成することができ、よって、ドライフィルム20による種々の模様パターンをロール表面に容易に形成することができる。
【0048】図4(b)の状態で、次いで、ショットブラストを行う。全面均等に加工するために、セラミックスロール1をロール軸中心に回転させながら行った。使用したショットは、平均粒径90μmのSiC砥粒を用いた。また、ショットの種類は、本実施例のセラミックスロール1の材質を考慮して、セラミックスロール1(硬さ:Hv1600程度)よりも硬いSIC(硬さ:Hv2400程度)を用いた。このようなショットを用いることにより、効率よく溝部を形成することができる。
【0049】ショットを噴射した後に、セラミックスロール1の胴部表面において、メチルエチルケトンでドライフィルムを除去した結果、ショットを当てた文字パターン部分で、セラミックスロール1の胴部表面に、0.12〜0.14mm深さ,0.38〜0.4mm 幅の凹状溝部9を設けることができた。本実施例では凹状溝部について述べたが、凸状突起部形成についても同様である。また、ここでは、凹状溝部9の深さを0.1mm 程度としたが、この深さは、所望する印刷模様によって設定されるが、0.1μm以上が望ましい。0.1μm未満であると、凹状溝部や凸状突起部の段差が明瞭でなく、転写(印刷)のための圧延を行っても、模様の境がはっきりせず、0.1μm 以上にすることが望ましい。なお、この段差は、ロールの強度上、ロール半径の2分の1程度までにするのが望ましいが、所望する模様の凹凸量によって、ロール強度,ロール径等を決定すべきである。
【0050】図2に、本実施例での文字パターンが形成されたセラミックスロールの胴部展開図を示す。これは、図1のロール断面に示すA,B,C,D線上を基準として展開したものである。このように、圧延材に印刷したい所望するROLLという記号を反転させた記号をロール胴部に形成するものである。
【0051】また、凹状溝部9の側面と、セラミックスロール1の胴部表面とのなす角度θは、ほぼ90度のものが得られ、且つその角部先端Aは丸みをおびずに、良好な形状であった。本実施例では、セラミックスロール1を用いているため、耐摩耗性が優れており、前記角部先端Aは摩耗しにくく、長期間鋭角性を維持できる。更に、凹状溝部9や凸状突起部は、ショットによって形成するため、形成部の粗さが粗くなり過ぎることがなく、適切な硬さを確保することができる。例えば、胴部表面の鏡面仕上げされた面と同程度の粗さにすることが可能である。
【0052】ここで、ネガ型感光性のドライフィルム20の厚さは、100μm程度が望ましい。あまり薄すぎると、硬いショットがぶつかることによって、ドライフィルム20が取り除かれてしまい、所望の模様を得ることができない。また、厚すぎると、ドライフィルム20に形成する模様パターンの隙間にショットが入りにくく、溝形成の効率が悪い。よって、ショット大きさ及びショット硬さを考慮し、加工効率をよくするように、ドライフィルム20の厚さを選定することが望ましい。
【0053】本実施例では凹状溝部9について説明したが、凸状突起部形成についても同様である。
【0054】なお、本実施例では、一体型のセラミックス製のロールについて、説明したが、金属とセラミックスとの複合構造のロールとしても良い。例えば、ロール軸心となる円柱状の金属材料表面にセラミックス層を形成しても良い。セラミックス層の形成方法は、スリーブ式,溶射法等種々の方法が適用できる。
【0055】次に、本実施例によって製造したセラミックスロール1を圧延機に使用した場合について説明する。図6は、本発明の一実施例である4段圧延機を示し、図7は、本発明の一実施例である6段圧延機を示す。
【0056】図6に示す4段圧延機には、ハウジング47内に、板材を圧延する上作業ロール31及び下作業ロール32,その上作業ロール31及び下作業ロール32をそれぞれ支持する支持ロールである上補強ロール35及び下補強ロール36が設けられている。本実施例では、文字パターンが胴部表面に形成された前記セラミックスロール1を上作業ロール31に適用した。そして、下作業ロール32は、文字パターンが胴部表面に形成されていないセラミックス製のロールとした。また、上作業ロール31及び下作業ロール32の軸部は、それぞれ上作業ロール用軸受41及び下作業ロール用軸受42によって回転可能に支持され、上補強ロール35及び下補強ロール36の軸部は、それぞれ上補強ロール用軸受45及び下補強ロール用軸受46によって回転可能に支持される。
【0057】圧延荷重は、ハウジング47に取り付けた圧下装置48によって、上補強ロール35を介して上作業ロール31から圧延板材49に与えられる。本実施例での回転駆動機構は、上作業ロール31及び下作業ロール32を剛性の劣るセラミックス製とし、また、小径であるため、作業ロール直接駆動でなく、間接駆動とした。つまり、補強ロール駆動方式とした。
【0058】このような4段圧延機において、圧延板材49を圧延することにより、上作業ロール31に設けた模様パターンを圧延板材に転写すると、精度の良い模様パターンを得ることができる。つまり、圧延中には作業ロールの冷却を実施しているが、約50〜200℃の範囲でロール表面温度が変化しても、良好な制度の良い模様パターンを安定して得ることができた。また、セラミックス製であるため、耐摩耗性が優れ、長期間安定して印刷圧延ができた。更に、焼き付きが生じにくく、焼き付きによる圧延事故等が少なく、長期間安定した圧延が可能である。
【0059】本実施例で使用した作業ロールは、その胴部圧延面に0.1μm 以上の段差を備えている。つまり、ここでは0.12〜0.14mmの段差が存在する。一般的にこのような段差があると、平滑な面に比べて焼き付き現象が頻繁に生じて圧延が中断してしまう。しかし、本実施例では作業ロールの胴部表面がセラミックスで形成されているため、焼き付き現象を顕著に抑制することができ、長期間安定した圧延が可能である。
【0060】ROLLという文字パターンにて、圧延を行った結果、曲線部(円部),直線部,交わり部,角部等が良好に転写され、それぞれの輪郭も明確に転写されていた。本実施例では凹状溝について述べたが、凸状突起に関しても同様である。
【0061】次に、6段圧延機に適用した場合について、説明する。
【0062】図7に示す6段圧延機には、ハウジング47内に、板材を圧延する上作業ロール31及び下作業ロール32、その上作業ロール31及び下作業ロール32をそれぞれ支持する支持ロールである上中間ロール33及び下中間ロール34が設けられ、更に、上中間ロール33及び下中間ロール34を支持する上補強ロール35及び下補強ロール36が設けられている。本実施例では、文字パターンが胴部表面に形成された前記セラミックスロール1を上作業ロール31に適用した。そして、下作業ロール32は、文字パターンが胴部表面に形成されていないセラミックス製のロールとした。また、上作業ロール31及び下作業ロール32の軸部は、それぞれ上作業ロール用軸受41及び下作業ロール用軸受42によって回転可能に支持され、上中間ロール33及び下中間ロール34の軸部は、それぞれ上中間ロール用軸受43及び下中間ロール用軸受44によって回転可能に支持され、上補強ロール35及び下補強ロール36の軸部は、それぞれ上補強ロール用軸受45及び下補強ロール用軸受46によって回転可能に支持される。
【0063】圧延荷重は、ハウジング47に取り付けた圧下装置48によって、上補強ロール35及び上中間ロール33を介して上作業ロール31から圧延板材49に与えられる。本実施例での回転駆動機構は、上作業ロール31及び下作業ロール32を剛性の劣るセラミックス製とし、また、小径であるため、作業ロール直接駆動でなく、間接駆動とした。つまり、中間ロール駆動方式とした。
【0064】また、上作業ロール31及び下作業ロール32には、それぞれ作業ロール用ベンダ装置52を設け、上中間ロール33及び下中間ロール34には、それぞれ中間ロール用ベンダ装置50,51を設けた。つまり、上中間ロール33及び下中間ロール34には、正及び負のベンダ力を付与できるようにした。
【0065】このような6段圧延機において、圧延板材49を圧延することにより、上作業ロール31に設けた模様パターンを圧延板材に転写すると、精度の良い模様パターンを得ることができる。つまり、圧延中には作業ロールの冷却を実施しているが、約50〜200℃の範囲でロール表面温度が変化しても、良好な制度の良い模様パターンを安定して得ることができた。また、セラミックス製であるため、耐摩耗性が優れ、長期間安定して印刷圧延ができた。更に、焼き付きが生じにくく、焼き付きによる圧延事故等が少なく、長期間安定した圧延が可能である。
【0066】本実施例では、4段圧延機や6段圧延機を示したが、他段圧延機等の他の圧延機等にも適応できる。
【0067】以上のように、本実施例によると、次のような効果が得られる。
【0068】(1)作業ロールの胴部表面は、凹状溝部及び凸状突起部のうち少なくとも一方を備え、且つ該胴部表面の熱膨張係数が1.0〜10.0×10-6であることにより、圧延板材の表面に幾何学的模様又は装飾模様等を精度良く転写することができる。
【0069】(2)圧延用の作業ロールにおいて、該作業ロールの胴部表面に、凹状溝部及び凸状突起部のうち少なくとも一方を備えて圧延面を形成し、該圧延面をセラミックスとすることにより、圧延板材の表面に幾何学的模様又は装飾模様等を精度良く転写することができる。また、長期間安定した転写のための圧延(印刷)ができる。
【0070】(3)前記凹状溝部の深さ又は前記凸状突起部の高さが10μm以上であることにより、転写(印刷)された幾何学的模様又は装飾模様等の境がはっきりとして区別ができ、明確な寸法精度の良い模様を転写できる。
【0071】(4)圧延用のセラミックスロールにおいて、該セラミックスロールの胴部表面に、凹状溝部及び凸状突起部のうち少なくとも一方を形成することにより、圧延板材の表面に幾何学的模様又は装飾模様等を精度良く転写することができる。また、長期間安定した転写のための圧延(印刷)ができる。
【0072】(5)焼結後に、該セラミックロールの胴部表面にショットブラスト法によって、凹状溝部及び凸状突起部のうち少なくとも一つを形成することにより、セラミックスロール表面に、凹状溝又は凸状突起を精度良く形成することができる。
(6)圧延用の上下作業ロールと、該上下作業ロールを支持する支持ロールとを有する圧延機において、前記上下作業ロールうち少なくとも一つの胴部表面をセラミックスとし、且つ該胴部表面に凹状溝部及び凸状突起部のうち少なくとも一つを形成することにより、圧延板材の表面に幾何学的模様又は装飾模様等を精度良く転写する圧延機を得ることができる。
【0073】(実施例2)実施例1の溝部加工工程16におけるショットブラスト法にて、ロールを回転させながら平均粒径90μmのSiC砥粒を使用し、実施例1に比べて、12.5倍の加工時間をかけてショットブラスト加工行った。その後、メチルエチルケトンでドライフィルムを除去した結果、ショットを当てたパターン部に1.50〜1.52mmの深い溝を設けることができた。
【0074】模様は、図8に示すような模様パターンを形成した。図8は、模様パターンを形成したロール展開図である。本実施例では、黒部分で示す凹状溝部9が低い段差に形成され、その他の胴部表面は鏡面状に仕上げ研磨された鏡面部分8とした。勿論、所望する模様パターンに応じて、逆に形成しても良い。例えば、黒部分で示す部分を凸状突起部として段差を高くし、その他の胴部表面をショット加工によって段差を低くしても良い。
【0075】このロールを中間ロールの回転駆動により、作業ロールが従回転して圧延を行う圧延機の作業ロールとして使用すると圧延材に段差の凹凸による模様を形成させることができた。
【0076】なお、実施例1,2の加工により製作したセラミックスロール1は、セラミックスが本質的に高硬度,耐摩耗性を有しているためほとんど摩耗せず長期間にわたり安定して使用することができる。また、1.50〜1.52mmという段差が形成されていても、焼き付き現象が起こりにくく、耐焼き付き性に優れていることがわかった。
【0077】以上のように、本実施例によれば、圧延材に幾何学的模様又は装飾模様が明確に印刷でき、また幾何学的模様又は装飾模様を圧延材の段差により形成させることが可能となり、セラミックスロールが高硬度,耐摩耗性を有しているため長期間において使用できる。
【0078】
【発明の効果】本発明のセラミックスロールによると、圧延板材の表面に幾何学的模様又は装飾模様等を精度良く転写することができるという効果を奏する。
【0079】本発明のセラミックスロールの製造方法によると、セラミックスロール表面に、凹状溝を精度良く形成することができるという効果を奏する。
【0080】本発明の圧延機によると、圧延板材の表面に幾何学的模様又は装飾模様等を精度良く転写することができるという効果を奏する。
【出願人】 【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
【出願日】 平成9年(1997)11月11日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】小川 勝男
【公開番号】 特開平11−147117
【公開日】 平成11年(1999)6月2日
【出願番号】 特願平9−308270