トップ :: B 処理操作 運輸 :: B09 固体廃棄物の処理;汚染土壌の再生

【発明の名称】 汚染土壌の生物的修復方法および土壌修復剤
【発明者】 【氏名】古崎 眞也
【氏名】矢野 哲哉
【氏名】今村 剛士
【氏名】野本 毅
【課題】トリクロロエチレンで汚染された土壌をその分解微生物と接触させることによって修復する際、その分解活性を維持制御可能な、効率的な生物的修復方法、及びこの修復方法に用いる材料を提供する。

【解決手段】トリクロロエチレンによる汚染土壌の修復に用いる土壌修復剤において、該土壌修復剤中でのトリクロロエチレンの拡散速度を低下させ、該土壌修復剤内部への外部環境中の土着微生物の侵入を抑制する材料(材料A)、該土壌修復剤中のトリクロロエチレン分解微生物に徐々に栄養素が供給されるように栄養素を保持した材料(材料B)、トリクロロエチレン分解微生物を保持する材料(材料C)から構成され、材料A、材料B及び材料Cが互いに異なる材料からなる構成とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 トリクロロエチレンによる汚染土壌の修復に用いる土壌修復剤であって、該土壌修復剤中でのトリクロロエチレンの拡散速度を低下させ、該土壌修復剤内部への外部環境中の土着微生物の侵入を抑制する材料(材料A)、該土壌修復剤中のトリクロロエチレン分解微生物に徐々に栄養素が供給されるように栄養素を保持した材料(材料B)、トリクロロエチレン分解微生物を保持する材料(材料C)から構成され、材料A、材料B及び材料Cが互いに異なる材料からなることを特徴とする土壌修復剤。
【請求項2】 材料Aの水分含量が95重量%以上であることを特徴とする請求項2記載の土壌修復剤。
【請求項3】 汚染土壌中のトリクロロエチレン濃度に応じて土壌修復剤内部でのトリクロロエチレンの拡散速度を調整できるように、材料Aの中に、微細な貫通孔を有する粒子を包含する請求項1又は2記載の土壌修復剤。
【請求項4】 汚染土壌中のトリクロロエチレン濃度に応じて土壌修復剤中でのトリクロロエチレンの拡散速度を調整できるように、材料Aの水分含量が調整された請求項1、2又は3記載の土壌修復剤。
【請求項5】 材料Aが、ゼラチン、寒天、アルギン酸、カラギーナン、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール及びポリウレタンから選ばれる少なくとも1つである請求項1〜4のいずれか1項に記載の土壌修復剤。
【請求項6】 材料Bが、培地を乾固させたものである請求項1〜5のいずれか1項に記載の土壌修復剤。
【請求項7】 材料Cが、多孔質ガラス、セラミックス、ゼオライト及びセルロースから選ばれる少なくとも1つである請求項1〜6のいずれか1項に記載の土壌修復剤。
【請求項8】 請求項1〜7のいずれか1項に記載の土壌修復剤を土壌に投与することによってトリクロロエチレンにより汚染された土壌を修復する汚染土壌の生物的修復方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、トリクロロエチレンによって汚染された土壌の修復に有効な生物的修復方法および土壌修復剤に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、生体に対し有害であり、かつ難分解性であるトリクロロエチレンによる環境汚染が大きな問題となってきている。トリクロロエチレンは、土壌中に残留したものが雨水等により地下水中に溶解して周辺地域一帯に広がるとされており、発癌性や生殖毒性の疑いがあるため、特に飲料水の水源として利用されている地下水の汚染は深刻な社会問題となっている。
【0003】このようなことから、トリクロロエチレンの除去・分解による土壌の浄化・修復は、環境保全の視点から重要な課題であり、浄化に必要な技術の開発が行われてきている。
【0004】例えば、曝気処理、天日処理、真空釜、真空抽出等の物理化学的処理が行われているが、コスト、操作性、投下エネルギー量、処理範囲、難分解性物質の分解性などの点から総合的にみた場合、必ずしも有利な方法とはいえない。
【0005】一方、これらの物理化学的処理の問題を解決する手段として、微生物による生物学的な処理が、数多くのトリクロロエチレン分解微生物の発見とともに近年検討され始めている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】こうした分解微生物を用いたトリクロロエチレン汚染土壌の生物的修復方法は、分解微生物の持つトリクロロエチレン分解活性がどの程度持続するかが、物理化学的処理方法に対する優位性を左右する重要な鍵になってくる。しかしながら実際には、この分解活性維持期間は短く、これがトリクロロエチレンの生物学的処理の実用化を遅延させる大きな原因になっている。
【0007】トリクロロエチレンの分解活性維持期間が短かい原因の一つとして、トリクロロエチレンの分解によって生じた活性酸素種が分解微生物にダメージを与え、分解活性の源となる酵素蛋白を変性させたり、分解微生物の生存に不可欠な器官を破壊することで分解菌を死滅させたりしてしまうことが挙げられる。こうしたダメージを生物学的に回避する手法は今のところ開発されていない。
【0008】一方、物理的には、高濃度トリクロロエチレンの分解による微生物のダメージを回避する方法はある。すなわち、分解微生物と接触するトリクロロエチレンの濃度を物理的に低くする方法である。この場合、分解微生物によって分解されるトリクロロエチレンの量が減少するため、時間当たりに発生する活性酸素種の濃度も低いものとなる。活性酸素種によって引き起こされるダメージの発生速度が遅ければ、分解微生物はその活性や生存に致命的な障害が生じる前に活性酸素種によって生じたダメージ個所を修復することが可能となり、分解活性や菌濃度の減少を防ぐことができると考えられている。
【0009】しかし、リアクター等、反応槽内のトリクロロエチレン濃度を容易に制御できる系における場合と異なり、土壌中においては、分解微生物と接触するトリクロロエチレンの濃度を低くするのは非常に困難である。既存の技術でこれを行おうとすると、真空抽出等の方法を用いざるを得なくなり、コストや操作性の面から必ずしも実用的であるとはいえない。
【0010】トリクロロエチレンの上記分解産物以外に分解微生物の分解活性期間を短くしているものとして、分解微生物の持つ酵素活性の安定性の問題もある。分解微生物一個体の酵素活性は永続するものではなく、ある培養時間に活性のピークを迎えた後は減少の一途をたどる。分解活性を持続させるためには、分解微生物を持続的に増殖させて新しい個体を作り出さなくてはならず、そのためには分解微生物に対し、継続的に栄養素を供給することが必要となってくる。しかし、土壌中には土着微生物が数多く生息しており、分解微生物に対して与えた栄養素を利用して増殖してしまい、そのために分解微生物に対する栄養素の供給が不足したり、土壌中の酸素や生息場所を奪ったり、さらには分解微生物に対して害のある物質を生産するなど、分解微生物の増殖や活性に阻害的な影響を与えることとなる。
【0011】特開平06−212155号公報では、分解微生物を栄養素の含まれた担体に保持して土壌中に投与することで、分解微生物を土壌中の捕食生物から保護しながら土壌中で分解微生物を増殖させる方法が挙げられているが、ここでは高菌濃度の維持を目的としており、前記のトリクロロエチレンの分解産物の問題や栄養素の持続的な供給といった分解微生物の分解活性の維持を目的とした構成とはなっていない。
【0012】そこで本発明の目的は、トリクロロエチレンで汚染された土壌、特に比較的高濃度の汚染土壌をその分解微生物と接触させることによって分解・修復する際に、分解微生物と接触するトリクロロエチレンの濃度を、分解微生物の分解活性を維持できるように制御することによって、トリクロロエチレンで汚染された土壌を効率的に修復する方法を提供することにある。また、この修復方法に用いる材料を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、トリクロロエチレンの拡散速度を低下させる材料によって構成される担体の内部に分解微生物を配することにより、分解微生物に対して供給するトリクロロエチレン量を低減化し、分解微生物の活性の低下および死滅を抑制できること、さらに担体内部を外部環境中の土着微生物から隔離された状態にし、その中に担持した分解微生物に徐々に栄養素が供給されるように栄養物を保持させることで、土着微生物からの影響を受けない状態で継続的に分解微生物を増殖させることにより、分解微生物の分解活性の維持を実現できることを見い出し、本発明に至った。
【0014】本発明は、トリクロロエチレンによる汚染土壌の修復に用いる土壌修復剤であって、該土壌修復剤中でのトリクロロエチレンの拡散速度を低下させ、該土壌修復剤内部への外部環境中の土着微生物の侵入を抑制する材料(材料A)、該土壌修復剤中のトリクロロエチレン分解微生物に徐々に栄養素が供給されるように栄養素を保持した材料(材料B)、トリクロロエチレン分解微生物を保持する材料(材料C)から構成され、材料A、材料B及び材料Cが互いに異なる材料からなることを特徴とする土壌修復剤に関する。
【0015】また、本発明は、上記本発明の土壌修復剤を土壌に投与することによってトリクロロエチレンにより汚染された土壌を修復する汚染土壌の生物的修復方法に関する。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を挙げて詳細に説明する。
【0017】まず、トリクロロエチレンの拡散速度を低下させる材料(材料A)としては、材料中に占める水分含量が高く、材料内に土着微生物が侵入できない若しくは困難なものであればよい。この材料Aの水分含量は、好ましくは95重量%以上、より好ましくは96〜98重量%である。
【0018】静止水中でのトリクロロエチレンの拡散速度は非常に遅く、気体中での拡散速度の数百〜数千分の一である。このため、材料A中に保持されている水分によって、土壌修復剤外部に存在する高濃度のトリクロロエチレンは材料A部分をゆっくりと透過し、土壌修復剤内部の分解微生物に対して徐放される。分解微生物に対するトリクロロエチレンの供給速度が遅いと、分解微生物の分解活動により分解微生物体内のトリクロロエチレン濃度は高まることはなく、したがって高濃度のエポキサイドも生成しないため、分解微生物の分解活性および菌濃度は低下することはない。
【0019】ただし、土壌中のトリクロロエチレンの濃度がそれほど高くない場合は、材料Aによってトリクロロエチレンと分解微生物との接触効率が低下し、かえって分解効率が低下する場合もある。
【0020】この場合は、材料A中に微細な貫通孔を有する粒子(トリクロロエチレン拡散速度調整粒子)を適当濃度混合することで、土壌中のトリクロロエチレン濃度に応じた拡散速度に調整ことができる。この粒子の含有量は、好ましくは10〜90重量%、より好ましくは20〜80重量%である。トリクロロエチレン拡散速度調整粒子は、その貫通孔が粒子の周辺に放射状に開口しており、各貫通孔が互いに連通しているものが望ましい。貫通孔内部は、材料A中の水分が侵入せず、空気が封入された状態のものとするため、貫通孔の孔径は数ミクロンサイズとすることが好ましい。粒子径は、材料Aと混合し分散された状態になればどのような大きさでもよい。材料A内の静止水中をゆっくりと拡散してきたトリクロロエチレンは、拡散速度調整粒子と接触すると貫通孔内の空気中にガスになって揮散し、貫通孔内を速やかに移動し、再び粒子外部の静止水中に溶解する。これによって、トリクロロエチレンは粒子内の貫通孔の長さ分だけ拡散速度を増加させることができ、トリクロロエチレンと分解微生物との接触効率を向上させることができる。
【0021】材料A中でのトリクロロエチレンの拡散速度を増加させる別の構成としては、材料Aの水分含量を低下させたものを用いてもよい。材料Aの水分含量が低下し、材料A中に空隙が生じた状態になれば、材料A内の静止水中をゆっくりと拡散してきたトリクロロエチレンは空隙内の空気中にガスになって揮散し、空隙内を速やかに移動し、再び静止水中に溶解する。これによって、トリクロロエチレンは空隙の長さ分だけ拡散速度を増加させることができ、トリクロロエチレンと分解微生物との接触効率を向上させることができる。
【0022】このような構成は、あらかじめ水分含量の低い材料Aを作製してもよいが、高水分含量の材料Aを一律に作製し、作製された材料Aの水分含量を低下させた方が、土壌中のトリクロロエチレンの濃度に適時に応じやすく、また作製も行いやすい。作製された材料Aの水分含量を低下させる方法としては、外殻部に位置する材料Aの表面を乾燥器等で乾燥させるだけでよい。この方法によれば、材料Aの外側は水分含量が小さく、内側に進むにつれて水分含量が大きくなるため、栄養物および分解微生物の保持された内側部分の水分含量の低下を抑えることができる。乾燥時間と材料Aの水分含量の低下の関係をあらかじめ調べておけば、乾燥時間によって任意の水分含量に調製することができる。
【0023】材料Aは、土着微生物の侵入を防ぐ機能を有することも必要であるため、外部と連通する分子間の間隙部分の面積が通常の土着微生物の大きさより狭くなっていることが望ましい。
【0024】材料Aの具体例としては、特にゲル状の高分子化合物が適しており、ゼラチン、寒天、アルギン酸、カラギーナン、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリウレタン等の包括担体に用いられる高分子化合物などが挙げられる。
【0025】栄養素を保持する材料(材料B)としては、栄養素を徐放できる機能を有していればいかなるものでもよい。吸水性の高い材料に液体の栄養素を含浸させたものや、粘度の高い材料に栄養素を混合して造粒したものや、材料自体が固形の栄養素そのものであってもよい。
【0026】材料Bの素材は栄養素を徐放できれば限定はないが、材料B自体が分解微生物の栄養素となるものの具体例としては、通常の培地を乾固させたもの等が挙げられる。
【0027】保持する栄養物としては、各分解微生物の増殖および活性の発現に好適な培地を用いる。例えば、塩類培地であるM9培地にミネラルと炭素源として有機酸塩を加えたものなどが挙げられる。
【0028】次に、上述の材料Bに栄養物を保持させる方法を示す。
【0029】まず、無機多孔質材料に栄養物を含有させる方法の例としては、1)材料Bを、栄養物を含む溶液にひたし、2)超音波処理などにより材料の孔隙の奥までその溶液を浸透させる、或いはさらに3)加温乾燥することにより栄養物を材料Bの孔隙中で乾燥・固結させる、といった方法がある。
【0030】また、ゲル状の高分子材料に栄養物を保持させる方法としては、1)栄養物を含む溶液とゲル化材料を含む溶液と混合し、2)冷却等によってゲル化した後、3)細断等によって形状を制御する、といった方法がある。
【0031】上記の栄養物の保持方法はほんの一例にしかすぎず、栄養物は乾燥状態、あるいは水溶化された状態いずれの状態でも用いることが可能であり、その適用は担体としての材料Bの存在状態、形状、性質などに最適な状態、方法を用いて保持させればよい。
【0032】分解微生物を保持する材料(材料C)としては、トリクロロエチレンの吸着性があまり高くなく、保持した分解微生物が増殖できるスペースを有するものが好ましい。特に、材料Cは、その内部に保持した分解微生物の生息環境である水分が十分に行き渡るように親水性であればなお望ましい。さらに多孔性であれば保持できる分解微生物数を増加させることができるため望ましい。
【0033】分解微生物を保持させる方法は通常の方法でよく、例えば、材料Cが粒状固形の場合は物理的あるいはイオン的に吸着させるか或いは共有結合させたり、包括法を用いる場合は前述の栄養物の保持と同様の保持方法をとればよい。
【0034】材料Cの素材は上記の要件を満たせば限定はないが、特に、多孔質ガラスやセラミックス、ゼオライト、セルロースなどが挙げられる。
【0035】材料Cに保持させるトリクロロエチレン分解微生物は特に限定されないが、例としてPseudomonas、Methylosinus、Methylomonas、Methylobacterium、Alcaligenes、Mycobacterium,Nitrosomonas、Xanthomonas、Spirillum、Vibrio、Bacterium、Achromobacter、Acinetobacter、Flavobacterium、Chromobacterium、Desulfovibrio、Desulfotomaculum、Micrococcus、Sarcina、Bacillus、Streptomyces、Nocardia、Corynebacterium、Pseudobacterium、Arthrobacter、Brevibacterium、Saccharomyces、Lactobacillusの各種に属する微生物等を用いることができる。好ましくは、JM1株(FERM BP−5352)、J1株(FERM BP−5102)、TL2株(FERM P−14642)等を用いることができる。
【0036】なお、投与微生物としては、既に単離されているもの、土壌等から目的に応じて新たにスクリーニングしたものが利用でき、複数の株の混合系を利用してもよい。スクリーニングにより分離したものを利用する場合はそれが未同定のものであってもよい。
【0037】材料Cへの保持前における分解微生物の培養は、各分解微生物の増殖に適した培養方法で行えばよく、中でも液体培養が望ましい。
【0038】本発明の土壌修復剤の担体は、互いに異なる材料A、材料B及び材料Cの3つの材料を構成することで形成される。
【0039】本発明の土壌修復剤の担体の構造としては、基本的に材料Aの中に1つ以上の材料B及び材料Cが包含され、材料Aの中に分散した状態をとることが望ましい。このとき、材料Bと材料Cを結合させて材料Aの中に包含してもよい。特に材料Cは材料Aの中心付近に分散させた方が分解微生物へのトリクロロエチレンの徐放効果が高まるので好ましいが、材料Cが材料Aの外部表面から一定の距離以上に位置し、分解微生物へのトリクロロエチレンの徐放効果が発揮されているのであればこの限りではない。
【0040】本発明の土壌修復剤の作製方法としては、例えば以下の方法がある。
1)ゲル状高分子化合物である材料Aのゲル化前の溶液を45℃前後に保持し、2)これに栄養物を含む材料B、及び分解微生物が保持された材料Cを添加し、混合・分散させ、3)適温で冷却してゲル化した後、4)細断等によって形状を制御し、土壌修復浄化剤を得る。
【0041】本発明の土壌修復剤の作製方法において、作製時に材料C中の分解微生物の失活や死滅が起こったり、材料Aの強度が不足し、材料B、材料Cが材料Aから脱離したりしなければどのような方法で作製しても構わない。
【0042】上述したような本発明の土壌修復剤を土壌に投与することによって土壌の修復浄化処理を行うことができる。土壌修復剤の土壌への投与は、分解微生物が分解活性を発現・維持できればいかなる方法で行ってもよいが、例として、散布処理や、土壌との混合処理等が挙げられる。
【0043】
【実施例】以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、これらは本発明の範囲をなんら限定するものではない。
【0044】実施例1リンゴ酸ナトリウム1%含有M9寒天培地上のJM1株のコロニーを坂ロフラスコ中のグルタミン酸ナトリウム1%含有M9培地200mlに接種し、15℃で48時間振とう培養を行った。この菌液0.3mlをキチン粉末に添加し、吸着させた。
【0045】また、30mlのグルタミン酸ナトリウム1%含有M9培地を乾固し、粒径1mmの栄養物粒子を作製した。
【0046】次に、純水30mlに寒天3gを加え、121℃で10分間オートクレーブ内で加熱処理を行った後、45℃に冷ました。これに、上記のキチン及び栄養物粒子を添加し、混合した。次いで、15℃へ冷却し、ゲル化した寒天を約10mm角に細断し、土壌修復浄化剤を得た。
【0047】次に、68ml容バイアル瓶に佐原通し砂(未滅菌)50gを入れ、上記の土壌修復剤10gを添加して混合し、(a)ブチルゴム栓およびアルミシールで密閉した後、ガス状のトリクロロエチレンをシリンジで加えた。このときトリクロロエチレンがバイアル瓶中の水分中の濃度が100ppm(全てのトリクロロエチレンが水中に溶解したときの濃度)となるようにした。(b)バイアル瓶を15℃で48時間静置した後、気相部分のトリクロロエチレン濃度をガスクロマトグラフィーで測定した。(c)次いで、密栓を開放し、トリクロロエチレンを揮散させた。以下、(a)〜(c)の操作を繰り返した。
【0048】対照として、上記土壌修復剤を添加する代わりに、グルタミン酸ナトリウム1%含有M9培地10mlに上記のように培養した菌液0.1mlを添加したバイアル瓶を用いて測定した。
【0049】トリクロロエチレン添加48時間後の各回のトリクロロエチレン残存率を表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】実施例2リンゴ酸ナトリウム1%含有M9寒天培地上のJMl株のコロニーを坂口フラスコ中のグルタミン酸ナトリウム1%含有M9培地200mlに接種し、15℃で48時間振とう培養を行つた。この菌液0.3mlをセルロース微粉末(旭化成社製マイクロキャリア)に添加し、吸着させた。
【0052】また、30mlのグルタミン酸ナトリウム1%含有M9培地を乾固し、粒径1mmの栄養物粒子を作製した。
【0053】次に、κ−カラギーナン1gに生理食塩水20mlを添加し、121℃で10分間オートクレーブ内で加熱処理を行った後、45℃に冷ました。これに、上記のセルロース微粉末、栄養物粒子、及びトリクロロエチレン拡散速度調整剤として多孔質ガラス(旭硝子(株)製MPG(孔径20μm、粒径1mm、0.35cc/g))を添加し、混合した。次いで、これを10℃の0.3MKCl溶液に注加し、30分間振とうした。ゲル化したカラギーナンを約10mm角に細断し、土壌修復剤を得た。
【0054】次に68ml容バイアル瓶に佐原通し砂(未滅菌)50gを入れ、上記の土壌修復剤10gを添加して混合し、(a)ブチルゴム栓およびアルミシールで密閉した後、ガス状のトリクロロエチレンをシリンジで加えた。このときトリクロロエチレンがバイアル瓶中の水分中の濃度が50ppm(全てのトリクロロエチレンが水中に溶解したときの濃度)となるようにした。(b)バイアル瓶を15℃で48時間静置した後、気相部分のトリクロロエチレン濃度をガスクロマトグラフィーで測定した。(c)次いで、密栓を開放し、トリクロロエチレンを揮散させた。以下、(a)〜(c)の操作を繰り返した。
【0055】対照として、上記土壌修復剤にトリクロロエチレン拡散速度調整剤を添加しなかつたもの(対照A)、及びグルタミン酸ナトリウム1%含有M9培地10mlに上記のように培養した菌液0.1mlを添加したバイアル瓶(対照B)を用いて測定した。
【0056】トリクロロエチレン添加48時間後の各回のトリクロロエチレン残存率を表2に示す。
【0057】
【表2】

【0058】実施例3リンゴ酸ナトリウム1%含有M9寒天培地上のJM1株のコロニーを坂口フラスコ中のグルタミン酸ナトリウム1%含有M9培地200mlに接種し、15℃で48時間振とう培養を行った。この菌液0.3mlをゼオライト(粒径200〜500μM)1gに添加し、耐圧瓶中で減圧して微小孔隙中に菌を吸着させた。
【0059】また、30mlのグルタミン酸ナトリウム1%含有M9培地を乾固し、粒径1mmの栄養物粒子を作った。
【0060】次に、ポリビニルアルコール(平均重合度2000)5gを、純水50mlに溶解し、15℃に冷却した。これに、上記のゼオライト、栄養物粒子および炭酸水素ナトリウム5gを添加し、混合した。次いで、これを60%硫酸アンモニウム(pH4)中に注加し、約30分間接触させ、析出したゲル状物を水洗し、その後、約10mm角に細断し、土壌修復剤を得た。
【0061】さらにトリクロロエチレンの拡散を促進させるために土壌修復剤を乾燥気流中に1時間静置し、表面部分の水分含量を内部の約50%に低下させた。
【0062】次に、68ml容バイアル瓶に佐原通し砂(未滅菌)50gを入れ、上記の土壌修復剤10gを添加して混合し、(a)ブチルゴム栓およびアルミシールで密閉した後、ガス状のトリクロロエチレンをシリンジで加えた。このときトリクロロエチレンがバイアル瓶中の水分中の濃度が30ppm(全てのトリクロロエチレンが水中に溶解したときの濃度)となるようにした。(b)バイアルを15℃で48時間静置した後、気相部分のトリクロロエチレン濃度をガスクロマトグラフィーで測定した。(c)次いで、密栓を開放し、トリクロロエチレンを揮散させた。以下、(a)〜(c)の操作を繰り返した。
【0063】対照として、乾燥処理を行わない上記土壌修復剤(対照A)、及びグルタミン酸ナトリウム1%含有M9培地10mlに上記のように培養した菌液0.1mlを添加したバイアル瓶(対照B)を用いて測定した。
【0064】トリクロロエチレン添加48時間後の各回のトリクロロエチレン残存率を表3に示す。
【0065】
【表3】

【0066】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように本発明の土壌修復剤およびこれを用いた土壌修復方法により、トリクロロエチレンによって汚染された土壌の効率的な生物的修復浄化が可能となる。
【出願人】 【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
【出願日】 平成9年(1997)12月25日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】若林 忠 (外4名)
【公開番号】 特開平11−179338
【公開日】 平成11年(1999)7月6日
【出願番号】 特願平9−358262