トップ :: B 処理操作 運輸 :: B09 固体廃棄物の処理;汚染土壌の再生

【発明の名称】 汚染土壌の修復方法
【発明者】 【氏名】徳永 修三
【課題】鉛、水銀、マンガン又はクロム(VI)で汚染された土壌より、これらの有害重金属のみを選択的に除去し、再利用が可能な土壌に修復しうる汚染土壌の修復方法を提供する。

【解決手段】鉛、水銀、マンガン又はクロム(VI)の少なくとも1種で汚染された土壌をクエン酸水溶液又は酒石酸水溶液で処理して前記有害重金属を除去する汚染土壌の修復方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 鉛、水銀、マンガン又はクロム(VI)の少なくとも1種で汚染された土壌をクエン酸水溶液又は酒石酸水溶液で処理して前記有害重金属を除去することを特徴とする汚染土壌の修復方法。
【請求項2】 pH5〜7のクエン酸水溶液で処理することを特徴とする請求項1記載の汚染土壌の修復方法。
【請求項3】 pH2〜4の酒石酸水溶液で処理することを特徴とする請求項1記載の汚染土壌の修復方法。
【請求項4】 鉛、水銀、マンガン又はクロム(VI)の少なくとも1種で汚染された土壌をクエン酸水溶液又は酒石酸水溶液で処理し、土壌を分離した処理排液を、粒状活性炭で処理して前記有害重金属を回収することを特徴とする汚染土壌の修復方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は鉛、水銀、マンガン又はクロム(VI)で汚染された土壌からこれらの重金属を除去して土壌を修復し、さらに汚染土壌修復処理の排液中から前記重金属を回収する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】有害重金属による土壌の汚染は、例えば有害化学物質の不注意な取り扱いや事故、金属鉱業の操業等に由来して発生する。汚染された土壌は従来、コンクリートや不透水性材料でできた空間への封じ込め処理、非汚染土による覆土、化学物質を添加して重金属を不溶化する安定化処理、セメント等による固化処理などによって処理されているが、いずれの方法もその効果は長期間持続するものではない。経時による処理施設や材料の劣化、降雨や地下水との接触による重金属の可溶化等によって、有害重金属が再び環境を汚染する可能性が残っている。そのため、塩酸や硝酸などの強酸を用いて汚染土壌を洗浄して、有害重金属を除去することにより土壌を修復しようとする試みがなされている。しかし、この方法ではシリカやアルミニウムなどの土壌の主要成分が溶出してしまい、土壌構造の損傷が著しく、かつ、鉄、カルシウム、マグネシウムなどの土壌養分をも溶解するため、処理後の土壌の再利用が困難であることや、有害重金属を含有する処理排液の排水処理が難しいことなどの問題がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】したがって本発明は、鉛、水銀、マンガン又はクロム(VI)で汚染された土壌より、これらの有害重金属のみを選択的に除去し、再利用が可能な土壌に修復しうる汚染土壌の修復方法を提供することを目的とする。さらに本発明は、前記修復方法において、発生した処理排液より前記有害重金属を簡便かつ効率的に回収、除去しうる汚染土壌の修復方法を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者は上記課題に鑑み鋭意研究した結果、土壌生物適合性があり環境を汚染することの少ない天然有機酸を用いて汚染土壌を洗浄することにより上記有害重金属の選択的除去を達成しうることを見出し、この知見に基づき本発明をなすに至った。すなわち本発明は、(1)鉛、水銀、マンガン又はクロム(VI)の少なくとも1種で汚染された土壌をクエン酸水溶液又は酒石酸水溶液で処理して前記有害重金属を除去することを特徴とする汚染土壌の修復方法、(2)pH5〜7のクエン酸水溶液で処理することを特徴とする(1)項記載の汚染土壌の修復方法、(3)pH2〜4の酒石酸水溶液で処理することを特徴とする(1)項記載の汚染土壌の修復方法、及び(4)鉛、水銀、マンガン又はクロム(VI)の少なくとも1種で汚染された土壌をクエン酸水溶液又は酒石酸水溶液で処理し、土壌を分離した処理排液を、粒状活性炭で処理して前記有害重金属を回収することを特徴とする汚染土壌の修復方法を提供するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】本発明の修復方法によって処理される汚染土壌は、鉛、水銀、マンガン又はクロム(VI)の少なくとも1種で汚染された土壌であり、土壌の他の成分や種類などには特に制限はない。本発明においてはこのような土壌をクエン酸水溶液又は酒石酸水溶液で処理する。このときのクエン酸水溶液のpHは5〜7が好ましく、できるだけ7に近いpHがより好ましい。酒石酸水溶液のpHは2〜4が好ましく、できるだけ4に近いpHがより好ましい。なお、4種の有害重金属除去率の合計では前記pHが好ましいが、個々の重金属で除去率の高い最適pHに多少ずれがある。したがって、土壌を汚染している金属の種類に応じ、異なったpHで段階的処理を行って、それぞれの金属を除去することも好ましい実施態様である。本発明においてクエン酸水溶液の濃度は0.1〜0.3モル/リットルが好ましく、0.2モル/リットル付近がさらに好ましい。酒石酸水溶液の場合は0.1〜0.3モル/リットルが好ましく、0.2モル/リットルがさらに好ましい。上記したpH同様、異なる濃度で繰り返し処理を行うことも可能である。
【0006】本発明方法により修復できる汚染土壌の量は、汚染の程度などによっても異なるが、上記の有機酸水溶液1リットルに対し通常、100g以下、好ましくは30〜40gである。上記有機酸水溶液と汚染土壌とを混合、振盪することにより、土壌中の鉛、水銀、マンガン及びクロム(VI)を溶出させ、除去することができる。混合、振盪の時間はある程度までは長いほうが有害重金属の除去率は高くなるが、通常、クエン酸水溶液では12〜24時間、酒石酸水溶液では6〜12時間である。このときの温度は特に制限はなく、常温でよい。本発明において、汚染土壌のこの洗浄処理を必要に応じて繰り返すことにより除去率を高めることができる。
【0007】上記のように処理した後、遠心分離、ろ過等の通常の方法で処理液と土壌とを分離し、必要に応じて乾燥等を行うことにより、鉛、水銀、マンガン及びクロム(VI)の除去された再利用に適した修復土壌が得られる。上記した本発明方法では、鉛、水銀、マンガン及びクロム(VI)のみを選択的に除去し、これら以外の土壌成分は溶出させないので、本発明方法により得られる修復された土壌は、土壌としての再利用が可能である。また、修復土壌に残存したクエン酸、酒石酸は天然有機酸であり、生物適合性があるので、再利用による環境汚染のおそれがない。
【0008】また、上記の土壌修復処理により発生した排液は、粒状活性炭と混合、振盪することにより、鉛、水銀、マンガン及びクロム(VI)を回収することができる。粒状活性炭は、好ましくは粒径3.35〜4.75mmのものを、排液1リットルに対し80g以上用いる。混合、振盪の時間は排液の汚染の程度により異なるが、通常12時間以上行えば、上記有害重金属の50%以上を回収できる。このとき、排液のpHを5〜7に調整するのが好ましく、pH6付近がさらに好ましい。
【0009】
【実施例】次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明する。
実施例1鉛1664mg/kg、水銀1280mg/kg、マンガン868mg/kg及びクロム(VI)840mg/kgを含む粘土質ローム土1.0gを遠沈管にとり、pHを0.1モル/リットル塩酸または水酸化ナトリウム溶液で調整した0.16Mクエン酸水溶液、0.2M酒石酸水溶液又は水(比較対照)を25ml添加し、20℃で24時間振盪し、遠心分離した。得られた上澄液中の各重金属濃度を測定し、除去率と平衡pHとの関係を図1に示した。図1中、(A)はクエン酸水溶液、(B)は酒石酸水溶液、(C)は水を加えた場合の結果である。クエン酸水溶液で処理した場合、pH5〜7で鉛、水銀、マンガン、クロム(VI)の除去率はそれぞれ80%以上、95%以上、60%以上、50%以上であった。また、酒石酸水溶液で処理した場合にはpH2〜4で前記重金属の除去率がそれぞれ80%以上、80%以上、50%以上、40%以上であった。これに対し、水のみで処理した場合、pH4でいずれの重金属も25%以下という低い除去率であった。また、4種の重金属の除去率の合計では、いずれのpHでもクエン酸水溶液又は酒石酸水溶液で処理した結果のほうが水で処理した場合より高かった。特に、クエン酸水溶液又は酒石酸水溶液で処理した場合、土壌構造等の損傷の少ない、pH4以上の比較的穏和なpH条件下で、高い重金属除去率が得られていることがわかる。また、pH5〜7の0.16Mクエン酸水溶液、又はpH4の0.2M酒石酸水溶液で処理した場合の土壌からの鉄、カルシウム、マグネシウムの溶出は、いずれも微量であった。
【0010】実施例2pHを0.1モル/リットル水酸化ナトリウム溶液で5.3に調整したクエン酸水溶液、及びpHを0.1モル/リットル水酸化ナトリウム溶液で4に調整した酒石酸水溶液の濃度を変えて用いた以外は、実施例1と全く同様の土壌処理を行い、重金属除去率と水溶液濃度の関係を試験したところ、図2のような結果を得た。図2中、(A)がクエン酸水溶液、(B)が酒石酸水溶液で処理した場合の結果である。図2より、クエン酸溶液は0.16M、酒石酸水溶液は鉛、水銀、マンガンでは0.2Mでクロム(VI)では0.3Mで除去率がほぼ飽和していることがわかる。
【0011】実施例3pH5.3に調整した0.16Mクエン酸水溶液又はpH4に調整した0.2M酒石酸水溶液を用い、振盪を時間を変えて行った以外は、実施例1と全く同様の土壌処理を行い、残存する重金属の含有量と振盪時間の関係を試験したところ、図3のような結果を得た。図3中、(A)がクエン酸水溶液、(B)が酒石酸水溶液で処理した場合の結果である。図3より、クエン酸水溶液では約24時間後、酒石酸水溶液では約12時間後に重金属除去量がほぼ飽和していることがわかる。
【0012】実施例4実施例1で遠心分離後に得られた上澄液(鉛76.3mg/リットル、水銀2.5mg/リットル、マンガン32.5mg/リットル、クロム(VI)15.0mg/リットル)25mlに粒径3.35〜4.75mmの粒状活性炭2.0gを添加し、20℃で12時間振盪した。その後、上澄液中の重金属濃度を分析したところ、pH6付近で鉛、水銀、マンガン、クロム(VI)はそれぞれ80%以上、95%以上、60%以上、70%以上という高い除去率で回収、除去できた。
【0013】
【発明の効果】本発明の汚染土壌の修復方法によれば、クエン酸水溶液又は酒石酸水溶液で処理することにより、土壌構造等に対する損傷の少ない比較的穏和なpHで汚染土壌から鉛、水銀、マンガン、クロム(VI)を選択的に除去でき、再利用可能な土壌に修復することができる。また、上記方法で発生した処理排液中の有害重金属は、粒状活性炭による処理で簡便に効率よく回収、除去することができる。
【出願人】 【識別番号】000001144
【氏名又は名称】工業技術院長
【出願日】 平成9年(1997)11月25日
【代理人】
【公開番号】 特開平11−156338
【公開日】 平成11年(1999)6月15日
【出願番号】 特願平9−322530