トップ :: B 処理操作 運輸 :: B09 固体廃棄物の処理;汚染土壌の再生

【発明の名称】 過剰窒素除去システム及びこのシステムの使用
【発明者】 【氏名】水上 春樹
【氏名】坪田 宏
【氏名】斉藤 仁信
【課題】土壌中に蓄積しつつある硝酸性窒素の地下水中への漏出を、畑地のように用水量が少ない領域においても抑止する手段を提供すること。

【解決手段】過剰の窒素成分で汚染された土壌の下に、この窒素成分を浄化可能な担体を埋設して,この担体で窒素汚染土壌と地下帯水層とを遮断することで、過剰の窒素成分が特に硝酸性窒素の形態で帯水層中に漏れ出ることを防ぎ得ることを見出して、上記課題を解決した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】過剰窒素による汚染領域の汚染土壌下に、窒素浄化用担体を、土壌中を浸透する硝酸性窒素が地下帯水層に漏れ出ることのないように、上記汚染土壌下に配置してなる過剰窒素除去システム。
【請求項2】窒素浄化用担体が、生物学的窒素浄化機能を有する担体,構造維持機能を有する担体又はこれらの担体を組み合わせである請求項1記載の過剰窒素除去システム。
【請求項3】嫌気条件の土壌層に構造維持機能を有する担体,あるいは構造維持機能を有する担体及び生物学的窒素浄化機能を有する担体を配置した、請求項1又は請求項2記載の過剰窒素処理システム。
【請求項4】嫌気条件の土壌層に構造維持機能を有する担体,あるいは構造維持機能を有する担体及び生物学的窒素浄化機能を有する担体を配置し、かつ好気条件の土壌層に生物学的窒素浄化機能を有する担体を配置した、請求項1又は請求項2記載の過剰窒素処理システム。
【請求項5】生物学的窒素浄化機能を有する担体が、以下の個別的特性を有する担体である請求項2乃至請求項4のいずれかの請求項記載の過剰窒素除去システム:■生分解性であること;
■生物学的窒素浄化を行う微生物に必要な生育要素を供給し得ること;
■生物学的窒素浄化を行う微生物を固定し得ること。
【請求項6】生物学的窒素浄化機能を有する担体が、セルロースを基本的素材とする担体である、請求項2乃至請求項5のいずれかの請求項記載の過剰窒素除去システム。
【請求項7】構造維持機能を有する担体が、多孔質で微生物を保持することができる担体である請求項2乃至請求項6のいずれかの請求項記載の過剰窒素除去システム。
【請求項8】構造維持機能を有する担体が、廃棄物由来のリサイクル担体である請求項7記載の過剰窒素除去システム。
【請求項9】土壌中を浸透する硝酸性窒素を、窒素浄化用担体で捕捉し又は無害な物質に変換して除去することにより、地下帯水層へのこの硝酸性窒素の浸入を防ぐための、請求項1乃至請求項8のいずれかの請求項記載の過剰窒素除去システムの使用。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、土壌中に蓄積する過剰窒素を除去して地下水を保全する過剰窒素除去システムに関する技術分野の発明である。より、具体的には土壌中における環境汚染の主な原因になるアンモニア性窒素及び/又は硝酸性窒素を除去し得る担体を汚染土壌下に配置して、これらの過剰窒素の地下帯水層への漏出を防御し得る、過剰窒素除去システムに関する。
【0002】
【従来の技術】集約的農業が行われている畑作地帯では、近年、地下水中の硝酸性窒素の濃度が高まる傾向が見られる。その主な要因として、地質と地下水の特性と、化学肥料等の多投入や不適切な使用、家畜の糞尿の不適切な処理が指摘されている。一般に、地下水の移動速度は極めて遅く、その循環には数十年から数百年かかることから、一旦地下水が汚染されてしまうと、その回復には長い年月がかかることになる。また、一旦汚染された地下水や、この汚染された地下水が混入して汚染した河川を人為的に修復しようとすると、膨大な時間と費用とがかかることになる。地下水は、生活用水,工業用水,農業用水として貴重な水源である。硝酸性窒素による地下水汚染が特に問題となるのは、特に飲料水とした場合に、硝酸性窒素による人体への健康被害が懸念されるからである。
【0003】硝酸性窒素は、体内に入ると体内の嫌気的条件下で、亜硝酸性窒素に還元され、酸素を運ぶ赤血球のヘモグロビンと結合し、特に乳幼児が酸素欠乏症(メトヘモグロビン症)、いわゆるチアノーゼ症状を惹き起こす原因となり得る物質である。また、硝酸や亜硝酸は、強力な発癌物質であるニトロソアミン類の生成にも関与するといわれている。日本の農業は、その土地事情等から集約的であり、単位面積当りの施肥量は、世界でも上位に位置づけられる。そのため、日本においては特に硝酸性窒素による地下水汚染が深刻な問題となっている。
【0004】
【発明が解決すべき課題】第1図は、硝酸性窒素の地下水への浸透の機構を表す概略図である。土壌に吸収される窒素化合物として主なものは、植物により固定される有機態窒素、肥料や畜産廃棄物から供給される有機態窒素及びアンモニア性窒素、降水により供給されるアンモニア性窒素及び硝酸性窒素等である。
【0005】一般に肥料や畜産廃棄物,降水等によって土壌に供給される無機態窒素は、土壌中で微生物の作用を受け、アンモニア性窒素,硝酸性窒素(硝化細菌による),窒素ガス(脱窒細菌による)等の形態の変化を繰り返しており、これらの中でも硝酸性窒素は、窒素化合物が様々な酸化反応を経た最終生成物と考えられている。
【0006】これらの窒素化合物のうち、アンモニア性窒素や硝酸性窒素等の一部は作物により吸収利用されており、作物に吸収されない過剰の無機態窒素のうち、アンモニア性窒素はその大部分が土壌粒子や土壌有機物に吸着する。一方、作物吸収されない過剰の硝酸性窒素は土壌にほとんど吸着せずに浸透水へと溶脱し、一旦浸透水に溶脱した硝酸性窒素は、次第に深層へと浸透し、その一部が帯水層まで到達する。
【0007】硝酸性窒素が生ずる基となり得る過剰の窒素成分を、土壌中から除去する方法として、■土壌中を浸透した汚染物質を集積するための暗渠を設けて,汚染された暗渠廃水を特定の浄化施設で処理する「地上集積処理法」や,■帯水層に浸透した汚染物質で汚染された地下水を,揚水井戸を用いて揚水して,これを浄化後に帯水層に戻す「揚水処理法」が挙げられる。
【0008】しかしながら、上記■の「地上集積処理法」による場合、用水を多く利用する水田では、暗渠を設置することにより窒素成分を含む水を回収することができるが、畑地は水田に比べて窒素成分が残存しやすい上に、年間を通じて使用する水の量が水田に比べて少ないため、暗渠による回収が困難であり、この処理法を適用するには必ずしも適当ではない面がある。
【0009】また、■の「揚水処理法」の場合も、畑地の場合には帯水層に浸透した窒素成分の揚水のみでは、畑地に残存する窒素成分を十分には回収し切れないおそれが強い。
【0010】そこで本発明が解決すべき課題は、この土壌中に蓄積しつつある硝酸性窒素の、地下水中への漏出を、畑地のように用水量が少ない領域においても抑止する手段を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者は、この課題の解決に向けて鋭意検討を行った結果、過剰の窒素成分で汚染された土壌の下に、この窒素成分を浄化可能な担体を埋設して,この担体で窒素汚染土壌と地下帯水層とを遮断することで、過剰の窒素成分が特に硝酸性窒素の形態で帯水層中に漏れ出ることを防ぎ得ることを見出し、本発明を完成した。
【0012】すなわち、本発明者は以下の発明を本願において提供する。請求項1において、過剰窒素による汚染領域の汚染土壌下に、窒素浄化用担体を、土壌中を浸透する硝酸性窒素が地下帯水層に漏れ出ることのないように、上記汚染土壌下に配置してなる過剰窒素除去システムを提供する。
【0013】請求項2において、窒素浄化用担体が、生物学的窒素浄化機能を有する担体,構造維持機能を有する担体又はこれらの担体を組み合わせである、前記請求項1記載の過剰窒素除去システムを提供する。
【0014】請求項3において、嫌気条件の土壌層に構造維持機能を有する担体,あるいは構造維持機能を有する担体及び生物学的窒素浄化機能を有する担体を配置した、前記請求項1又は請求項2記載の過剰窒素処理システムを提供する。
【0015】請求項4において、嫌気条件の土壌層に構造維持機能を有する担体,あるいは構造維持機能を有する担体及び生物学的窒素浄化機能を有する担体を配置し、かつ好気条件の土壌層に生物学的窒素浄化機能を有する担体を配置した、前記請求項1又は請求項2記載の過剰窒素処理システム。
【0016】請求項5において、生物学的窒素浄化機能を有する担体が、以下の個別的特性を有する担体である前記請求項2乃至請求項4のいずれかの請求項記載の過剰窒素除去システムを提供する。
■生分解性であること;
■生物学的窒素浄化を行う微生物に必要な生育要素を供給し得ること;
■生物学的窒素浄化を行う微生物を固定し得ること;
【0017】請求項6において、生物学的窒素浄化機能を有する担体が、セルロースを基本的素材とする担体である、前記請求項2乃至請求項5のいずれかの請求項記載の過剰窒素除去システムを提供する。
【0018】請求項7において、構造維持機能を有する担体が、多孔質で微生物を保持することができる担体である、前記請求項2乃至請求項6のいずれかの請求項記載の過剰窒素除去システムを提供する。
【0019】請求項8において、構造維持機能を有する担体が廃棄物由来のリサイクル担体である、前記請求項7記載の過剰窒素除去システムを提供する。
【0020】請求項9において、土壌中を浸透する硝酸性窒素を、窒素浄化用担体で捕捉し又は無害な物質に変換して除去することにより、地下帯水層へのこの硝酸性窒素の浸入を防ぐための、前記請求項1乃至請求項8のいずれかの請求項記載の過剰窒素除去システムの使用を提供する。
【0021】本発明において「浄化」とは、おおよそ過剰窒素〔土壌中で生物学的に消費されずに蓄積している窒素化合物のこと(アンモニア性窒素,硝酸性窒素等)〕を除去するすべての手段を含む概念であり、例えば過剰窒素を担体に捕捉させて除去することや、担体によって硝酸性窒素を無毒化すること等を当然に含む概念である。
【0022】本発明に関わる過剰窒素除去システムにおいて用いる窒素浄化用担体は、土壌中の過剰窒素を浄化することが可能な担体であれば特に限定されない。具体的には、硝酸性窒素等を浄化する能力する微生物を固定した「生物的機能性浄化用担体」や、硝酸性窒素等を捕捉する能力を要する「汚染物質捕捉性担体」や、イオン交換することにより電気化学的に硝酸性窒素等を浄化する能力を有する「イオン交換性浄化用担体」や、硝酸性窒素等の透過を遮断する能力を有する「窒素遮断性浄化用担体」等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0023】ただし、例えば以下の理由から生物的機能性浄化用担体、すなわち「生物学的窒素浄化機能を有する担体」を選択することが一般には好ましい:■過剰窒素除去システムの運転コストが安価で、維持管理が容易である。
■土着の脱窒細菌の作用を利用した硝酸性窒素除去法は、実際には水田等に認められる自然界の浄化作用を応用したものであり、環境への負荷が小さい。
■畑地等において面的な広がりをもって供給される硝酸性窒素の供給にも容易に対応可能である。
【0024】この「生物学的浄化機能を有する担体」が有する望ましい個別的特性としては、例えば以下の特性を例示することができる。
1)生分解性(一定期間内に生物的に分解されて土壌中に残存しない性質)であること。
2)生物学的窒素浄化を行う微生物に必要な生育要素(炭素源,電子供与体,微量元素等)を固定し得ること。
3)生物学的窒素浄化を行う微生物(脱窒菌,硝化菌等)を固定し得ること。
【0025】このような生物学的窒素浄化機能を有する担体としては、例えばセルロース担体,アガロース担体,PVA(ポリビニルアルコール),でんぷん担体,ゼラチン担体,アルギン酸担体,カラギーナン担体等を挙げることができる。
【0026】また、「生物学的窒素浄化機能を有する担体」として、上記のような個別的特性を有する機能性担体の他に、分解されにくい「構造維持機能を有する担体」を用いることもできる。
【0027】この構造維持機能を有する担体の、構造維持機能の他に有するべき個別的特性としては、多孔質で上記生物学的窒素浄化を行う微生物(脱窒菌,硝化菌等)を保持することができる担体であることが挙げられる。
【0028】このような構造維持機能を有する担体としては、例えば珪藻土焼成粒,粘土質焼成粒,真珠岩パーライト,黒曜石パーライト,ゼオライト,バーミキュライト,PVF(ポリビニルフォルマール)等を用いることが可能であり、さらに廃棄物由来のリサイクル担体〔例えば,下水道処理汚泥を焼き固めた煉瓦状のリサイクル担体,焼却媒を用いた煉瓦状のリサイクル担体,焼き物(窯業等)の廃棄物(不要になった焼きかす等)〕を用いることも可能である。
【0029】また、上記の「生物学的窒素浄化機能を有する担体」と「構造維持機能を有する担体」とを組み合わせて、「生物学的窒素浄化機能を有する担体」として本発明システムにおいて用いることが可能であり、かつ一般的にこの組み合わせ担体を用いることが好ましい。
【0030】すなわち、上記「生物学的窒素浄化機能を有する担体」において、生物学的窒素浄化を行う微生物とその栄養分等の補給を図り、「構造維持機能を有する担体」でシステム全体の構造維持を図ることが、一般的により好ましい態様である。
【0031】本発明システムは、上記の窒素浄化機能を有する担体を、土壌中を浸透する硝酸性窒素が地下帯水層に漏れ出ることのないように、過剰窒素で汚染された土壌下に配置してなるシステムである。
【0032】また、本発明においては、上記のように土壌中を浸透する硝酸性窒素を、窒素浄化用担体で捕捉し又は無害な物質に変換して除去することにより、地下帯水層へのこの硝酸性窒素の浸入を防ぐための、この過剰窒素除去システムの使用もまた提供される。土壌中を浸透する硝酸性窒素の地下帯水層への浸潤を防ぐための、上記の両種類の担体の組み合わせの具体的態様については後述する。
【0033】
【発明の実施の態様】以下、本発明の実施の態様を図面を用いつつ説明する。第2図は、本発明システムの一実施態様20を表した図面であり、第3図は本発明システムの他実施態様20’を表した図面である。
【0034】第2図において、畑地,水田,牧場等のを直接的に特徴付ける最表層部21の直下に位置する好気条件の表層土壌層22は、原位置の土壌と機能性担体との混合物で構成されている。また、表層土壌層22の下層に位置する嫌気条件の硝酸性窒素処理層23は、構造維持担体あるいは構造維持担体と機能性担体との混合物で構成されている。さらに、硝酸性窒素処理層23の下層に位置する土壌層24の上部は水と土壌との不飽和帯であり、下部は水と土壌との飽和帯(地下帯水層)である。
【0035】最表層部21における施肥や降雨等により蓄積した過剰窒素は、表層土壌層22に配置されている機能性担体における亜硝酸菌及び硝酸菌により、アンモニア性窒素から,亜硝酸性窒素を経て硝酸性窒素に変換される。
【0036】次いで、この硝酸性窒素は、硝酸性窒素処理層23に移行し、本層23に配置された構造維持担体,または構造維持担体及び機能性担体における脱窒菌により脱窒されて窒素ガスに変換されることで、硝酸性窒素が土壌層へ浸潤することが妨げられ、所望のとおり硝酸性窒素が浄化される。
【0037】なお、表層土壌層22及び硝酸性窒素処理層23は、予め所定の土木工事をすることによって配置することができる。この土木工事の方式は、例えば過剰窒素を浄化する領域の土壌を掘り起こして、所望する担体層をその部分に配置する方式とすることも可能であるが、例えば過剰窒素を浄化する領域下に、実質上汚染領域における土壌面に対して漏れなく設けて、ここに所望する担体を充填することにより工事の手間を簡略化することも可能である(図示せず)。
【0038】また、機能性担体としてセルロース担体等の生分解性の担体を用いる場合、この機能性担体は経時的に分解する。機能性担体の分解後も、継続して過剰窒素の浄化を行う場合には、例えば表層土壌層22を機能性担体と共に鋤込むこと等により、再び機能性担体を表層土壌層22に配置することができる。また、この表層土壌層22及び/又は硝酸性窒素処理層23に、過剰窒素を浄化する細菌の栄養分等を注入すること等により、補給することもできる。
【0039】第3図においては、硝酸性窒素処理層23及び土壌層24は、第2図と同様であるが、最表層部21’及び表層土壌層22’においては、表層土壌層22のごとく機能性担体をに対して均等に配置せずに、表層土壌に機能性担体25を、矢印方向に一定距離を置いて打ち込んでいる。このようにすることにより、システム20’設定時の土木工事及び機能性担体の経時における取替の手間を簡略化することができる。
【0040】
【発明の効果】本発明により、土壌中に蓄積しつつある硝酸性窒素の地下水中への漏出を、畑地のように用水量が少ない領域においても抑止する手段が提供される。
【出願人】 【識別番号】593118427
【氏名又は名称】株式会社バイオマテリアル
【出願日】 平成9年(1997)10月27日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】志村 光春
【公開番号】 特開平11−128902
【公開日】 平成11年(1999)5月18日
【出願番号】 特願平9−311378