トップ :: B 処理操作 運輸 :: B09 固体廃棄物の処理;汚染土壌の再生

【発明の名称】 汚染土壌の浄化方法及びその装置
【発明者】 【氏名】増田 幹
【課題】動電学的処理方法により、汚染土壌から重金属の汚染物質を効率良く除去し、短い時間で経済的に汚染土壌を浄化する方法を提供する。

【解決手段】含水した汚染土壌A中に陰極11と陽極15を配置し、陰極11を土壌Aと分離する電気絶縁性の透水性隔壁12内に水が存在する状態で、陽極15と陰極11の間に直流電圧を印加して土壌A中の重金属を陰極11側の透水性隔壁12内に移動させながら、透水性隔壁12内の水を排水手段13で排水すると同時に清浄な水を給水手段14で給水する。透水性隔壁12内の水のpHを7.5以下に維持し、陽極15側の土壌Aにも逐次給水する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 含水した汚染土壌中に、陽極と、透水性隔壁で土壌と分離した陰極とを配置し、透水性隔壁内に水が存在する状態で陽極と陰極の間に直流電圧を印加して汚染土壌中の重金属を陰極側の透水性隔壁内に移動させながら、透水性隔壁内の水を排水すると同時に清浄な水を該透水性隔壁内に給水することを特徴とする汚染土壌の浄化方法。
【請求項2】 前記透水性隔壁内の水のpHを7.5以下に保持することを特徴とする、請求項1に記載の汚染土壌の浄化方法。
【請求項3】 陽極側の土壌に、清浄な水か、又は酸、電解質若しくはキレート剤の水溶液を給水することを特徴とする、請求項1又は2に記載の汚染土壌の浄化方法。
【請求項4】 汚染土壌中に配置した陽極と陰極の間に直流電圧を印加し、汚染土壌中の重金属を陰極側に移動させて回収する汚染土壌の浄化装置であって、前記陰極を土壌から分離する透水性隔壁と、陰極側の透水性隔壁内に給水及び排水するための給水及び排水手段とを備えることを特徴とする汚染土壌の浄化装置。
【請求項5】 前記陽極及び/又は陰極は、壁部に複数の貫通孔を有する中空体からなり、前記給水手段を兼ねることを特徴とする、請求項4に記載の汚染土壌の浄化装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、重金属で汚染された土壌から汚染物質の重金属を除去して、汚染土壌を浄化する方法、及びそのための浄化装置に関する。
【0002】
【従来の技術】最近、市街地再開発等に伴う調査により、工場跡地や廃棄物処理場等の重金属による汚染が判明する事例が増加している。このような汚染土壌の現状における処理対策は、汚染物質の不溶化処理や遮水工事、覆土工事等の周辺環境から汚染土壌を遮断する方法が一般的である。しかし、これらの方法では重金属そのものが現場の土壌中に残るため、処理後においても土地利用に制限がある。
【0003】そこで最近では、重金属で高濃度に汚染された土壌は現場から運び出して廃棄し、新しい土と入れ替える処置も行われている。しかしながら、産業廃棄物の最終処分場が近い将来不足することは明らかであるため、汚染土壌を入れ換えるのではなく、汚染土壌から重金属を除去して浄化する方法が求められている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】汚染土壌を浄化する方法として、動電学的処理方法が提案されている。この方法は、汚染土壌中に陽極と陰極を配置し、その電極間に直流電圧を印加することによって、電気浸透及びイオン泳動の作用により陰極側に汚染物質である重金属を移動させて濃縮し、陰極付近の土壌ごと回収する方法である。
【0005】しかし、この方法では、陰極で起こる水の電気分解により生成した水酸化物イオンのため陰極付近の土壌のpHが上昇するので、鉛等の重金属が陰極付近に沈澱してくる。このため、陰極近くでの重金属の移動力が次第に減少し、且つ時間の経過と共に印加電圧が増大し、汚染物質の除去効率が減少して、浄化期間が長期化するという問題があった。
【0006】そこで、陰極付近のpH上昇を抑制する手段として、陰極付近の土壌に酸を添加する方法が考えられる。しかし、この場合には、酸の添加に伴って、重金属の除去に寄与しない酸の陰イオンのために土壌中のイオン濃度が増加してしまう。その結果、動電学的作用が低下するため、逆に重金属の除去効率の低下を引き起こす。
【0007】また、土壌が難溶性の汚染物質で汚染されている場合には、その汚染物質を水に溶解してイオンにする必要があるが、土壌の緩衝能力が高いため、水の電気分解により生成するプロトンのみでは、難溶性の汚染物質の浄化に多くの時間を必要とするという問題があった。
【0008】本発明は、このような従来の事情に鑑み、汚染土壌の動電学的処理方法において、汚染土壌から重金属の汚染物質を効率良く除去し、短い時間で経済的に汚染土壌を浄化する方法及びその装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明が提供する汚染土壌の浄化方法は、含水した汚染土壌中に、陽極と、透水性隔壁で土壌と分離した陰極とを配置し、透水性隔壁内に水が存在する状態で陽極と陰極の間に直流電圧を印加して汚染土壌中の重金属を陰極側の透水性隔壁内に移動させながら、透水性隔壁内の水を排水すると同時に清浄な水を該透水性隔壁内に給水することを特徴とする。
【0010】上記本発明の汚染土壌の浄化方法においては、透水性隔壁内に給水及び排水することにより、該透水性隔壁内の水のpHを7.5以下に保持することが好ましい。また、陽極側の土壌中には、清浄な水か、又は酸、電解質若しくはキレート剤の水溶液を、必要に応じて給水することが好ましい。
【0011】本発明の汚染土壌の浄化方法を実施するための装置は、汚染土壌中に配置した陽極と陰極の間に直流電圧を印加し、汚染土壌中の重金属を陰極側に移動させて回収する汚染土壌の浄化装置であって、前記陰極を土壌から分離する透水性隔壁と、陰極側の透水性隔壁内に給水及び排水するための給水及び排水手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明の汚染土壌の浄化方法では、汚染土壌中に配置した陰極を透水性隔壁で取り囲み、この透水性隔壁内の水を排水しながら同時に清浄な水を給水することによって、陰極側の透水性隔壁内に移動して濃縮された重金属を沈澱させることなく、排水される水と共に回収するものである。
【0013】即ち、動電学的方法においては陰極での水の電気分解により水酸化物イオンが生成するが、本発明方法では上記のごとく透水性隔壁内への給排水を行うことにより陰極付近の水を常に更新せているので、生成した水酸化物イオンが排出されてpHが上昇せず、従って移動してきた重金属が陰極付近で沈澱するのを防止することができる。重金属の沈澱を防止するためには、透水性隔壁内の水のpHを7.5以下に維持することが好ましい。
【0014】透水性隔壁内に給水する清浄な水は、通常の水道水等であって良い。また、透水性隔壁内から排出した重金属を含む水は、イオン交換樹脂等を利用した浄水装置で処理するが、この処理された後の浄化水を透水性隔壁内への給水に利用することもできる。この場合には、透水性隔壁内から排水した水を、浄水装置を通して循環させることにより繰り返し使用できるので、経済的にも有利である。
【0015】また、本発明方法により陽極と陰極の間に通電すると、電気浸透作用により土壌中の水分が陽極側から陰極側に移動し、陽極近傍の土壌中の含水率が低下してくる。土壌中の含水率が低いと、重金属を除去する処理速度が低下するので、必要に応じて陽極側の土壌に給水することが好ましい。また、陽極側の土壌に給水することによってpHの低下が速まり、土壌中の難溶性の重金属のイオン化を促進する効果もある。この場合に給水する水としては、水道水等の清浄な水のほか、酸、電解質若しくはキレート剤等の水溶液であっても良い。
【0016】次に、本発明方法による処理操作を順を追って説明する。まず、汚染土壌が少なくとも電気的導通を確保できる程度に含水していることを確認する。土壌中の汚染物質の移動経路や導通部分は土壌間隙水であり、この土壌間隙水が土壌粒子間を満たす状態であれば汚染物質の移動は円滑になり、電気的導通も十分確保でき、電位の上昇も抑制することができるからである。
【0017】汚染土壌の含水が少ないときは、現地処理の場合は土壌表面に水を直接散布したり、バッチ処理では処理槽内で水と混ぜ合わせることにより、土壌の含水率を上昇させる。その場合、飽和含水率に近い程度か、あるいはそれ以上に含水させることが好ましいが、目視においては土壌表面に水が滲み出る状態に含水させれば十分である。
【0018】この含水した汚染土壌内に、陽極と透水性隔壁で分離した陰極とを所定の間隔で配置し、陰極側の透水性隔壁内に水を存在させた状態で電極間に所定の直流電圧を印加する。電圧を印加して電極間に通電しながら、透水性隔壁内の水を排水すると同時に、清浄な水を給水する。また必要に応じて、陽極側の土壌に給水して、土壌の十分な含水状態を保持することが好ましい。
【0019】上記のごとく透水性隔壁内の水を排水することにより、陰極に移動してきた重金属の陽イオンも排水されるので、別に設置した浄水装置により排水から重金属を除去する。このようにして、汚染土壌中の重金属を効率良く除去することができる。尚、透水性隔壁内の水を給排水する速度は、印加する電流値や電極の大きさ等に依存し、例えば電流値が50mAの場合は20〜30ml/min程度の速度で十分である。
【0020】かかる本発明方法を実施するためには、汚染土壌中に配置する陽極及び陰極と共に、陰極を土壌から分離する電気絶縁性の透水性隔壁と、陰極側の透水性隔壁内に給水及び排水するための吸水及び排水手段とが必要である。尚、陰極は導電性材料であれば特に限定されず、例えば鉄やステンレス等で作製することができる。また、陽極としては、カーボンやチタン等の不活性電極材料を用いることが好ましい。
【0021】陰極を土壌と分離する隔壁は、陰極に向かって移動する汚染土壌中の重金属が通過できるように、透水性であることが必要である。また同時に、この透水性隔壁は陰極と電気的に絶縁されていることが必要であるが、そのためには電気絶縁性の材料で作製することが好ましい。このような透水性隔壁の材料としては、不織布や多孔質のプラスチック等を使用することができる。
【0022】陽極及び陰極の形状は特に限定されず、例えば板状や棒状等であって良い。また、陽極及び陰極と給水及び排水手段とは別体であっても良いが、一体的に構成することもできる。例えば図1及び図2に示すように、陰極1を壁部に複数の貫通孔1aを穿設した中空体で構成すれば、この中空体の内側に供給した水を貫通孔1aから透水性隔壁2内に給水することができ、陰極1が同時に給水手段を兼ねることができる。
【0023】図1及び図2の陰極について更に具体的に説明すると、給水手段を兼ねた陰極1は中空の円筒体でも又は中空の薄い箱体等でも良く、この陰極1の周囲には陰極1と汚染土壌とを分離するための透水性隔壁2を配置する。排水手段3は、透水性隔壁2の内側にパイプ等を1本又は複数本挿入して構成することができる。各排水手段3の間及び排水手段3と陰極1の間は、図示しない接合部材により互いに固定しても良い。処理操作に際しては、内側に陰極1を配置した透水性隔壁2内に、陰極1を兼ねた給水手段により水4を供給し、給水と排水により常にほぼ一定の水位を保つようにすることが望ましい。
【0024】尚、陽極についても、陰極と同様に複数の貫通孔を有する中空体を用いることにより、陽極側土壌への給水手段を兼ねることができる。この場合の給水手段を兼ねる陽極の形状も、中空の円筒体や中空の薄い箱体等であって良い。また、陰極及び陽極の形状や数、配置間隔等は、処理すべき汚染土壌の形態等により、例えば現場処理か又は処理槽を用いるバッチ処理か等によって決定される。
【0025】
【実施例】図3に示すように、容積が0.5m3である処理槽10に、約2000ppmの鉛を含有する汚染土壌Aを充填した。この処理槽10の両側にはステンレス製で多数の貫通孔11aを有する板状の陰極11をそれぞれ配置し、中央にはカーボン製で壁部に多数の貫通孔15aを設けた薄い中空箱状の陽極15を配置して、それぞれ上端部を露出させて汚染土壌A中に埋設してある。尚、各陰極11と陽極15の間隔は約1mであり、それぞれ電源に接続してある。
【0026】上記両側の陰極11の陽極15側には、多孔質プラスチックからなる透水性隔壁12を配置して、陰極11を汚染土壌Aから分離した。また、各透水性隔壁12の内側で、陰極11の陽極15側にはパイプで構成した排水手段13を、及び陰極11の陽極15と反対側には同様の給水手段14を設けてある。この排水手段13と給水手段14は、共に浄水装置17に接続してある。更に、中空箱状の給水手段を兼ねた陽極15の内側には、水槽18に接続されたパイプの給水手段16が接続してある。
【0027】この汚染土壌Aに十分散水して含水させた後、陰極11と陽極15の間に10Aの電流を印加し、そのまま14日間通電した。その間、排水手段13により陰極11側の透水性隔壁12内の水を3リットル/minの速度で排水して浄水装置17に送り、浄化された清浄な水を給水手段13を通して同じ速度で透水性隔壁12内に給水した。また、水相18中の0.001N塩化ナトリウム水溶液を、給水手段16を通して中空の陽極15から汚染土壌Aに逐次給水した。その結果、透水性隔壁12内の水のpHは約7に維持され、14日間通電後の土壌中の鉛濃度は300mg/kg未満に減少した。
【0028】
【比較例】上記実施例と同じ装置を用いて同様に汚染土壌の処理を行ったが、陰極11側の透水性隔壁12内の水を排水と給水により循環する代わりに、透水性隔壁12内の水に0.01Nの硝酸溶液を添加することによりpHを約7に維持した。その結果、14日間の通電後における土壌中の鉛濃度は、上記実施例の3倍近い800mg/kgであった。
【0029】
【発明の効果】本発明によれば、汚染土壌の動電学的処理において、透水性隔壁により土壌から分離した陰極付近の水のpHをほぼ中性以下に保つことにより、また必要に応じて陽極側の土壌に給水することにより、汚染物質である重金属イオンの沈殿や土壌含水率の低下が引き起こす処理効率の低下を防止し、重金属の汚染物質を効率良く除去して、短い時間で経済的に汚染土壌を浄化することができる。
【出願人】 【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
【出願日】 平成9年(1997)10月29日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】山本 正緒
【公開番号】 特開平11−128901
【公開日】 平成11年(1999)5月18日
【出願番号】 特願平9−296920