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【発明の名称】 有機ハロゲン化合物汚染物の浄化方法
【発明者】 【氏名】下村 達夫
【氏名】片岡 直明
【課題】還元脱ハロゲン反応において副次的に生じる硫黄系の悪臭ガスや可燃性ガスの生成、および土壌の過度の変色等を防ぎ、経済的かつ効率的に脱ハロゲン化を行う方法を提供する。

【解決手段】有機ハロゲン化合物の汚染物を浄化する方法において、該汚染物に還元剤、酸化態窒素および有機態炭素を添加し、中性条件下で分解浄化することを特徴とし、前記酸化態窒素および有機態炭素を添加する条件として、酸化態窒素を有機態炭素の20〜50wt%の比率で添加することが好ましく、前記還元剤が標準電極電位130mV〜−2400mVである還元剤であることが好ましい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 有機ハロゲン化合物の汚染物を浄化する方法において、該汚染物に還元剤、酸化態窒素および有機態炭素を添加し、中性条件下で分解浄化することを特徴とする汚染物の浄化方法。
【請求項2】 前記酸化態窒素および有機態炭素を添加する条件として、酸化態窒素を有機態炭素の20〜50wt%の比率で添加することを特徴とする請求項1記載の汚染物浄化方法。
【請求項3】 前記酸化態窒素を前記有機態炭素の20〜30wt%の比率で添加することを特徴とする請求項2記載の汚染物浄化方法。
【請求項4】 前記還元剤が標準電極電位130mV〜−2400mVである還元剤であることを特徴とする請求項1記載の汚染物浄化方法。
【請求項5】 前記還元剤が標準電極電位−400mV〜−2400mVである還元剤であることを特徴とする請求項4記載の汚染物浄化方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、テトラクロロエチレン等の有機塩素化合物に代表される有機ハロゲン化合物によって汚染された土壌、底質、汚泥、水などを浄化する方法に関し、特に、化学的並びに生物学的反応を組み合わせた還元脱ハロゲン反応を利用することによって短期間で簡便に当該汚染物質の浄化を達成し、かつ浄化の過程で周辺環境に対し負荷となりうるような悪臭、可燃性ガスの発生、および土壌の変色を抑制することを特徴とする有機ハロゲン化合物の新規な浄化方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、テトラクロロエチレン等の有機ハロゲン化合物系溶剤による地下水や土壌への汚染が深刻な社会問題となっている。土壌、地下水汚染の有効かつ効率的な除去・無害化方法として、土壌、地下水中の微生物を活性化させて汚染土壌、地下水を浄化する原位置浄化技術が現在検討されており、汚染物質の掘削や抽出の費用がかからないことから低コストで浄化可能な新技術として期待されている。従来、原位置浄化技術によりテトラクロロエチレン、ペンタクロロフェノール、四塩化炭素等の塩素数の大きい溶剤の浄化運転を行う場合には、汚染土壌に還元力を持つ基質を添加し、土壌を還元状態として嫌気性微生物により還元脱ハロゲン分解する方法が検討されてきた。
【0003】しかしこの方法は、嫌気性微生物による還元状態の形成のために数ケ月から1年に及ぶ期間を必要とし、また脱ハロゲン化反応が途中までしか進行しないことが多いという問題点があった。このように脱ハロゲン化反応が途中で停止した場合には、塩化ビニールモノマーなどの発癌性物質が蓄積し、逆に環境影響を悪化させる危険性もあった。また、土壌中で硫化水素、メルカプタンなどの硫黄系の悪臭ガスや、メタンガスなどの可燃性ガスが発生する可能性があった。
【0004】有機塩素化合物の原位置浄化方法としては上記のほかに化学反応を用いたものが提案されている(先崎哲夫、有機塩素化合物汚染地下水の処理−金属鉄付着活性炭による低温下での処理技術、「PPM」、1995年、第26巻、第5号、64〜70頁)。この方法は担体に担持した金属鉄と有機塩素化合物汚染水を接触させ、金属表面において金属の溶出(酸化)と有機塩素化合物の還元脱塩素化反応を共役的に生じさせることを特徴とする。なお、この反応は単純な酸化還元電位の差による還元反応であることから、使用する金属粉末としては、金属鉄のほかに金属マンガン、ニッケル等の同等の還元電位を持つ金属も同様に利用可能であることは言うまでもない。この反応により有機ハロゲン化合物は、密閉容器内の適当な条件下では完全に脱ハロゲン化することが知られている。しかし実際に現場の汚染土壌、底質、汚泥、水などに金属粉末を添加した場合には、環境中の酸化物質による金属の酸化、pHの低下などにより金属が有効に利用されず、酸化還元電位も不安定であり十分な脱ハロゲン化反応が認められなかった。
【0005】本発明者らは、種々の微生物が多数共存する土壌中においては、化学的並びに生物的反応を組み合わせた還元脱ハロゲン反応が、実用的に有機ハロゲン化合物を浄化分解することを見いだし、有機ハロゲン化合物の浄化方法として特許出願を行った(特願平9−25367号)。この特許出願の内容は、有機塩素化合物の汚染物を浄化する方法において、該汚染物を還元雰囲気状態でかつ中性条件で、従属栄養型嫌気性微生物の少なくとも1種及び金属粉末の存在下で脱塩素させることを特徴とするものである。上記の発明を用いることにより有機塩素化合物を安定した条件下で完全に脱塩素化し、汚染物を浄化することが可能となった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながらこの浄化方法では、添加する栄養源の組成によっては従来の方法と同様に土壌中で硫酸還元、メタン発酵等の生物的還元反応が生じるため、硫化水素、メルカプタンなどの硫黄系の悪臭ガスや、メタンガスなどの可燃性ガスが発生する可能性が残っていた。また、土壌が硫化鉄などにより黒色に変色する可能性があった。さらに金属粉末と水との反応により可燃性の水素ガスが発生する問題があった。
【0007】すなわち、テトラクロロエチレンのようなハロゲン数の大きい有機塩素化合物(有機ハロゲン化合物)による汚染を効率的かつ経済的に、また周辺環境に悪臭等の負荷を与えないやり方で浄化する方法が求められていた。従って本発明は、上記還元脱ハロゲン反応において副次的に生じる硫黄系の悪臭ガスや可燃性ガスの生成、および土壌の過度の変色等を防ぎ、経済的かつ効率的に脱ハロゲン化を行う方法を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題は、以下の本発明の構成により解決された。
(1)有機ハロゲン化合物の汚染物を浄化する方法において、該汚染物に還元剤、酸化態窒素および有機態炭素を添加し、中性条件下で分解浄化することを特徴とする汚染物の浄化方法。
(2)前記酸化態窒素および有機態炭素を添加する条件として、酸化態窒素を有機態炭素の20〜50wt%の比率で添加することを特徴とする前記(1)の汚染物浄化方法。
(3)前記酸化態窒素を前記有機態炭素の20〜30wt%の比率で添加することを特徴とする前記(2)の汚染物浄化方法。
(4)前記還元剤が標準電極電位130mV〜−2400mVである還元剤であることを特徴とする前記(1)の汚染物浄化方法。
(5)前記還元剤が標準電極電位−400mV〜−2400mVである還元剤であることを特徴とする前記(4)の汚染物浄化方法。
【0009】本発明では、有機ハロゲン化合物(ここでいうハロゲン化合物とは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素及びこれらの化合物をいう)によって汚染された土壌、底質、汚泥及び水を処理する方法において、該汚染物に還元剤及び酸化態窒素、有機態炭素を添加し、中性条件下で分解浄化することにより、悪臭等の発生を防ぎかつ有機ハロゲン化合物の分解を効率化することを特徴とする土壌、地下水汚染の浄化方法としたものである。また、このとき酸化態窒素を有機態炭素の20〜50wt%、好ましくは20〜30wt%の比率で添加することにより、酸化態窒素還元反応終了時に有機態炭素源を残留させず、また有機態炭素源消費完了時に酸化態窒素を残留させないことが可能となり、残留した有機態炭素源による有機酸発酵やメタン発酵を抑え、逆に酸化態窒素が残留することによる地下水の酸化態窒素汚染や還元脱ハロゲン反応の阻害をも防ぐことができる。また、酸化態窒素還元反応による窒素ガス発生により、金属粉末と水との反応により発生する水素ガスを不活性ガスである窒素ガスで希釈し、引火等の危険性を無くすよう発明したものである。さらに、硫黄分または硫酸根を含む塩類を添加する成分として加えないことにより、硫化水素等の硫黄系のガスの発生による悪臭や、硫化鉄の生成による土壌等の黒変を抑制できる土壌、地下水汚染浄化方法としたものでもある。
【0010】本発明では、前記還元剤が、鉄−金属鉄、還元鉄、鋳鉄、カルシウム、鉄−シリコン合金、チタン合金、亜鉛合金、マンガン合金、アルミニウム合金、マグネシウム合金、カルシウム合金、マンガン、ニッケル、マグネシウム、銅、亜鉛、及び水溶性化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種である。前記還元剤が、25℃における標準水素電極に対する標準電極電位がー400mV〜ー2400mVである金属物質であることが好ましい。本発明の一実施態様としては、還元剤としては、還元鉄を用いる。鉄粉は通常表面が酸化されて酸化皮膜が形成されている。これに対して、還元鉄では、酸化被膜が少なく、酸化されやすく、反応性が高い。ここで、還元鉄とは、酸化物の還元によって製造された金属鉄の一種をいい、きわめて細かい粉末状でありきわめて酸化されやすい(化学大辞典2、化学大辞典編集委員会、共立出版株式会社)。典型的には、高温下、水素ガスで還元されたものである。酸化鉄が還元されてもよいが、酸化物は酸化鉄には限られない。還元鉄には、Feの含有量が90%以上のものがある。例えば、和光純薬工業株式会社から入手できる。
【0011】本発明の他の実施態様としては、還元剤として、鋳鉄も好ましく用いられる。鋳鉄は、安全で、取り扱いが容易であり、且つ高い浄化率を達成できるからである。また、鋳物製品の削り屑、即ち、鋳鉄屑が更に好ましい。削り屑を再利用することができるからである。一般に、鉄鉱石を還元して製造される銑鉄から、さらに不純物を除いて産業利用される鉄のうち、炭素濃度が約2%(重量)以下のものを鋼、これ以上の炭素を含む物を鋳鉄という(「理化学辞典」第4版 1987年、第411頁)。鋼は機械的性質に優れているため、多くの工業製品に加工利用されている。その際に放出される鋼の削り屑を、ハロゲン化有機化合物で汚染を受けた物質の浄化方法に用い得るかを検討したところ、その切削加工には油を用いるため、鋼製品の削り屑には油が含まれている。これを用いて本発明の有機塩素を化合物による汚染物の浄化方法を行なおうとすれば、油による2次汚染を引き起こすおそれがある。これに対し、鋳物用に用いられる鋳鉄は、切削加工時に油を使用しないので、鋳物製品削り屑(鋳鉄屑)は前記鋼製品削り屑のような2次汚染を引き起こすおそれがない。
【0012】本発明の他の実施態様としては、還元剤としては、合金が用いられる。即ち、鉄−シリコン合金、チタン合金、亜鉛合金、マンガン合金、アルミニウム合金、マグネシウム合金、及び、カルシウム合金も用いられる。チタン合金としては、例えば、チタン−シリコン合金、チタン−アルミニウム合金が挙げられる。亜鉛合金としては、例えば、亜鉛−アルミニウム合金が挙げられる。マンガン合金としては、例えば、マンガン−マグネシウム合金が挙げられる。アルミニウム合金としては、例えば、アルミニウム−亜鉛−カルシウム合金、アルミニウム−スズ合金、アルミニウム−シリコン合金等が挙げられる。マグネシウム合金としては、例えば、マグネシウム−マンガン合金が挙げられる。カルシウム合金としては、例えば、カルシウム−シリコン合金が挙げられる。
【0013】還元剤の作用について、還元鉄の場合で例示して説明する。金属鉄による嫌気脱ハロゲン化反応の反応機構は、還元鉄の反応について述べた先崎の報告(「有機塩素化合物汚染地下水の処理−金属鉄付着活性炭による低温下での処理技術」、PPM、1995年、第26巻、第5号、第64〜70頁)によれば、還元鉄表面にハロゲン化有機化合物の吸着が起こり、同時に還元鉄表面において金属側と環境側の条件の差異によってアノードとカソードの分極が生じ、これによって電流がながれる。これに伴って、アノードでは鉄が鉄イオンとなって溶出し、一方、カソードには電子が流入し、脱ハロゲン化反応等の還元反応が生じるものと思われる。
アノード: Fe → Fe2+ + 2e-【0014】鋳鉄は前記のように炭素濃度2%以上のものを言うが、一般には重量で3〜3.5%、容量では13〜14%の多量の炭素をグラファイトとして含有している。いわゆるヅクと呼ばれる鋳物製品削り屑(鋳鉄屑)は、廃棄物として排出される前に、一般にミルで粉砕されている。その粉砕時に一部のグラファイトは、離脱して鋳鉄粉の表面に付着する。このためこの鋳鉄粉が水膜で覆われるとグラファイトがカソードとして作用し、一方鉄がアノードとして作用し、前記のように電流が流れ、アノードで鉄が溶出し、カソードで脱ハロゲン化反応等の還元反応が生じると考えられる。上記合金もアノードとして作用し、合金が溶出するものと思われる。一方、カソードで脱ハロゲン化反応が生じると思われる。また、金属鉄よりも還元力が強い合金の場合には、より還元雰囲気を維持し易く、ハロゲン化有機化合物との電位差がより大きくなり、脱ハロゲン化反応が加速される。
【0015】さらに、マグネシウム−マンガン合金、亜鉛−アルミニウム合金、アルミニウム−亜鉛−カルシウム合金、アルミニウム−スズ合金などの合金を用いると、酸化膜や腐食生成物の金属表面への付着を生じないか、又は付着はしても反応を阻害するような緻密な膜にはならない(不動態化していない)ため、還元反応により接触効率が低下する問題が生ぜず、浄化反応が効率よく行える。また、前記還元剤が、水溶性化合物であることが好ましい。粉末等の固体を添加する場合と比較してハロゲン化有機化合物との接触効率が飛躍的に増大し、脱ハロゲン化反応が加速される。また、水溶性の還元剤は土壌等に浸透するため、注入井戸等を用いて還元剤を注入することができ、物理的な掘削混合作業を必要としない。さらに浄化運転中に還元状態が不安定になった場合には、汚染物の浸出水を回収して水溶性の還元剤を添加し、再注入することにより還元状態を容易に回復することも可能である。
【0016】水溶性還元剤としては、有機酸若しくはその誘導体、次亜リン酸若しくはその誘導体、又は、硫化物塩が挙げられる。有機酸としては、カルボン酸、スルホン酸、フェノール若しくはその誘導体等が挙げられる。カルボン酸としては、例えば、1〜20の炭素原子を有し、かつ、水酸基で置換されていてもよい、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、又は、テトラカルボン酸が挙げられる。具体的には、蟻酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、テレフタル酸等が好ましく、特に、クエン酸、シュウ酸等の2〜10の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸が好ましい。フェノール誘導体としては、ポリヒドロキシアリールが好ましい。ポリヒドロキシアリールとは、2以上の水酸基で置換されたアリールをいい、アリールとしては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン等が挙げられる。また、ナフタレン、インデンのように縮合環が形成されていてもよい。ポリヒドロキシアリールとしては、例えば、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、1,4−ジヒドロキシベンゼンが好ましい。ここで、1,2,3−トリヒドロキシベンゼンは、焦性没食子酸、ピロガロールとも呼ばれる。そのアルカリ性溶液は、酸素と反応して酸化物を生成する。
【0017】有機酸の誘導体としては、塩、エステル、アミド、酸無水物等が挙げられ、塩が好ましい。反対イオンとしては、特に制限がなく、ナトリウムイオン等のアルカリ金属イオン;カルシウムイオン等のアルカリ土類金属イオン;鉄イオン、チタンイオン等の遷移金属イオン等の無機イオン、又は、テトラアルキルアンモニウムイオン等の有機イオンであってもよい。次亜リン酸の誘導体としては、塩、エステル等が挙げられ、塩が好ましい。反対イオンとしては、特に制限がなく、ナトリウムイオン等のアルカリ金属イオン;カルシウムイオン等のアルカリ土類金属イオン;鉄イオン、チタンイオン等の遷移金属イオン等の無機イオン、又は、テトラアルキルアンモニウムイオン等の有機イオンであってもよい。また、前記還元剤が、有機酸又は次亜リン酸と、鉄、チタン、亜鉛、マンガン、アルミニウム又はマグネシウムとからなる塩であってもよい。
【0018】これらの還元剤を添加した場合では、嫌気的脱ハロゲン化反応で多く報告されている塩化ビニル等の中間代謝産物の生成・蓄積は全く認められず、反応生成物はいずれも完全に脱ハロゲン化された物質へと転換されて気相部へ放出されることがわかった。また、標準電極電位が金属鉄と同等もしくはそれ以下の還元剤を用いた場合には、ハロゲン化有機化合物との電位差がより大きくなり、脱ハロゲン化反応が促進され、好ましい。
【0019】還元剤の使用量は、汚染物が土壌の場合、土壌100g当たり0.01〜20gが好ましく、更に好ましくは0.05〜10gである。また汚染物が水の場合、水100ml当たり0.1〜30gが好ましく、更に好ましくは0.2〜20gである。いずれの場合も、脱ハロゲン化の対象となるハロゲン化有機化合物の汚染濃度が50mg/kg(または50mg/l)を越える場合には、ハロゲン化有機化合物1mgに対し、0.05〜0.1gの比率で金属粉末等の還元剤の添加量を増加させることが必要となる。ただしこれはあくまでも理想条件下での数値であり、実際の汚染現場においては、微生物による酸素消費が順調に行われなかった場合には還元剤の還元力がむだに消耗されることも起こりうる。また、雨水や外気による酸素等の供給によっても還元剤の還元力は容易に消耗するため、実施に当たっては現場で予備試験を行い、現場の条件に合わせて個々に添加濃度を決定すべきである。還元剤と汚染物との接触効率を高めるために還元剤は粉末状又は溶液状のものが好ましい。ただし上述した物質の多くは水と反応して容易に酸化態へ変更するので、その場合は汚染物と還元剤を直接混合することか、混合する直前に水に溶解させることが望ましい【0020】還元剤が粉末状の場合には、500μm以下の粒径を有することが好ましい。粒径が小さい場合には、ハロゲン化有機化合物の分解率が向上するためである。また、用途によっては、還元剤は、粒径が0.001mmから5mmの粉末であることが好ましく、0.01mmから1mmの粉末であることが更に好ましい。粒子径は化学的還元反応の速度を支配し、粒子径が増加するのに比例して単位重量あたりの還元反応速度は低下するので注意を要する。さらに、粒子径が5mm以上であり、かつ、金属物質である場合には金属粒子の表面が比較的厚い酸化膜で覆われる結果、中心部の還元状態の金属は利用されない可能性が大きい。また一方、粒子径が0.001mm以下である場合には非常に酸化速度が速いので、輸送中及び混合時に水分と接触して酸化されてしまう危険性が高くなるからである。なお、還元剤が金属物質の場合には、粉末の表面が酸化されていても、内部が還元状態であり酸化されていなければ利用可能である。
【0021】
【発明の実施の形態】次に、本発明を詳しく説明する。本発明は、汚染土壌に金属粉末等の還元剤と、嫌気性微生物の増殖基質となるようなグルコース、酢酸塩、モラセス廃液、醸造廃液等の有機態炭素および栄養塩類を添加し、土壌中を水で飽和もしくはそれに準じる状態とすることにより、汚染土壌中を還元状態とし、嫌気性微生物により汚染物質である有機ハロゲン化合物の脱ハロゲン化反応を進行させる。しかしながら、この方法だけでは通常、増殖基質の組成に応じて土壌中で硫酸還元、メタン発酵等の生物的還元反応が生じるため、硫化水素、メルカプタンなどの悪臭ガスや、メタンガスなどの可燃性ガスが発生する可能性がある。また、還元条件下では金属粉末と水とが反応することにより水素ガスが発生する。さらに、硫酸還元の結果硫化鉄が生成して土壌が黒変する場合もある。
【0022】本発明ではこれらの反応を抑制するために、栄養塩類中に硝酸塩等の酸化態窒素を添加し、土壌中を酸化態窒素還元反応状態に維持する。酸化態窒素塩が共存している状態では、増殖基質である有機態炭素源は主に酸化態窒素還元活性を持つ微生物によって利用され、メタン発酵や硫酸還元反応は生じないことを土壌を用いた試験により確認している。土壌からは主に窒素ガスが発生し、水素ガスも発生するものの窒素ガスにより希釈されているため、引火爆発等の恐れがない。さらに栄養塩として添加する物質として硫黄分もしくは硫酸根を含む塩類を使用しないことにより、硫化水素、メルカプタン系のガスや硫化鉄の発生をより確実に抑制することができる。
【0023】ただし単に酸化態窒素塩を過剰に汚染物に加えた場合は、酸化態窒素塩が有機態炭素の消費後も残留するため酸化還元電位が+100mV程度までしか低下せず、還元脱ハロゲン化反応が殆ど進行しなくなるので注意を要する。また逆に、有機態炭素源の添加量に対し酸化態窒素塩が極端に不足した場合は、初期の窒素ガス発生により酸化態窒素塩が消費し尽くされてしまい、その後メタン発酵などの通常の生物的還元反応が生じることとなる。このため、添加する有機態炭素源と酸化態窒素塩との比率が重要となる。一般に酸化態窒素還元活性を持つ微生物として知られるアルカリゲネス・ユートロファスやパラコッカス・デニトリフィカンスでは水溶液中での酸化態窒素態窒素の消費比率は有機態炭素源の40〜50wt%であるが、発明者らが各種土壌中で土着菌を用いて本発明の還元反応を行なわせた結果では、酸化態窒素を有機態炭素源の20〜50wt%、望ましくは20〜30wt%の比率で添加した場合にメタン、硫黄系の悪臭ガスの発生がなく、かつ酸化態窒素塩が完全に消失して有機ハロゲン化合物の完全な脱ハロゲン化が達成された。
【0024】従来、還元脱ハロゲン化反応を進行させるに当たって酸化態窒素を添加することは、反応を阻害するものであると見なされていた(藤田らProc. 8th International Cont. on Anaerobic Digestion, 1997年、第2巻、492〜499頁)。しかし本発明では、酸化態窒素と有機態炭素の添加比率を適正に調節することにより、酸化態窒素還元活性を持つ微生物を優占化させて硫黄系の悪臭ガスやメタンなどの可燃性ガスの発生を防ぎ、かつ汚染物中の還元状態を安定に維持して金属粉末のみでは達成できない安定して効率的な脱ハロゲン化反応を可能とした。このように本発明は従来の常識を打ち破る新規な浄化方法であるといえる。
【0025】本発明により処理することができる有機ハロゲン化合物汚染物としては、有機ハロゲン化合物により汚染された土壌、底質、汚泥や水などが挙げられる。処理する汚染物が土壌、汚泥などの固形物である場合、それの含水率は少なくとも25Wt%以上であることが好ましい。理想的には、40〜60Wt%が望ましい。これは目的とする微生物の増殖に好適であるとともに、土壌、汚泥などの内部に外気が入りにくく、還元状態を維持しやすい条件である。なお、この含水率の定義としては、(水分重量/湿潤土壌重量)×100によって求められる値を含水率(%)として表した。また、前記汚染物が水の場合には、全体が水であるから、含水率という問題を気にする必要は無い。
【0026】本発明において処理を行なう際には、還元雰囲気状態を維持することが重要である。この条件は、化学的脱ハロゲン反応及び生物的脱ハロゲン反応の両方の反応を生じさせる上で必須である。この還元雰囲気状態を具体的に言うと、酸化還元電位が0〜−600mVの範囲と言うことができる。この酸化還元電位は、測定方法によってかなりの幅で差があるが、本発明で示す酸化還元電位値は、金属電極として白金電極、比較電極に飽和塩化銀電極を用いて測定された場合の電位値を指すものである。よって、他の測定法で得られる電位値に対しては本発明で言う酸化還元電位値に換算して比較を行なう必要があることは言うまでもない。
【0027】また、その処理の条件は、中性条件であることが必要であるが、その中性条件をpH値で表すとpH5.8〜8.5であり、好ましくはpH6〜8であり、さらに好ましくはpH6.2〜7.6である。本発明の汚染土壌等の生物的有機ハロゲン化合物汚染浄化に寄与する嫌気性微生物としては、土壌中に一般的に存在する酸化態窒素還元活性を有する微生物を利用すればよく、例えばバチルス(Bacillus)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、アエロモナス(Aeromonas)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、ミクロコッカス(Micrococcus)属などの一般的な微生物が挙げられる。
【0028】前記の微生物を増殖させるための増殖基質としては、有機態炭素源としてブドウ糖、ショ糖などの糖類、酢酸、クエン酸、乳酸などの有機酸または有機酸塩、モラセス廃液、醸造廃液、ビール粕、おから等の有機性廃液、廃棄物を利用することができる。有機態炭素の添加量は汚染物の持つ酸化力及び有機ハロゲン化合物の汚染濃度を考慮して決定すべきであるが、汚染物が通常の不飽和土壌である場合、土壌1kgに対して1g程度の有機態炭素が還元状態維持のために必要である。さらに、脱ハロゲン化の対象となる有機ハロゲン化合物の汚染濃度が50mg/kg を越える場合には、有機ハロゲン化合物1mgに対し10〜20mgの比率で有機態炭素の添加量を増加させることが必要となる。ただしこれはあくまでも目安であり、実際の汚染現場においては汚染物の酸化力だけでなく雨水や空気による酸素等の供給によっても有機態炭素や後述する金属粉末の還元力が消耗されるため、現場で予備試験を行なって個々に添加濃度を決定すべきである。
【0029】前記の有機態炭素源に対し、上述したように酸化態窒素を有機態炭素源の20〜50wt%、好ましくは20〜30wt%の比率で添加する。使用する酸化態窒素源としては、亜硝酸又は亜硝酸塩でも良いが、硝酸もしくは硝酸塩(硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸カルシウム等)を用いることが現実的である。汚染物中に有機態炭素及び/又は酸化態窒素が予め存在している場合には、有機態炭素の添加量との比率を計算し、混合後の最終濃度比率が上記の設定範囲内となるよう調節することが重要である。
【0030】本発明に用いられる金属粉末の種類としては、金属鉄、金属マンガン、金属ニッケル、金属マグネシウム、金属銅などが考えられる。これらの中でも、金属鉄または金属マンガンは、酸化状態で天然に土壌中に多く存在しているため、添加しても生態系への影響が少なく、安全である。また、市販されているため容易に入手できる。金属粉末の使用量は汚染物が土壌の場合、土壌1kgあたり0.1〜200g、好ましくは0.5〜100gであり、また汚染物が水の場合、水1リットルに対し1〜300g、好ましくは2〜200gである。いずれの場合も、脱ハロゲン化の対象となる有機ハロゲン化合物の汚染濃度が50mg/kg(または50mg/l)を越える場合には、有機ハロゲン化含物1mgに対し0.05〜0.1gの比率で金属粉末の添加量を増加させることが必要となる。ただしこれはあくまでも理想条件下での数値であり、実際の汚染現場においては、微生物による酸素消費が順調に行なわれなかった場合には金属粉末の還元力が無駄に消耗されることも起こりうる。また、雨水や外気による酸素等の供給によっても金属の還元力は容易に消耗するため、実施に当たっては現場で予備試験を行ない、現場の条件に合わせて個々に添加濃度を決定すべきである。
【0031】なお、ここで言う金属粉末とは粒子直径が0.001mmから5mmの還元状態の金属であり、望ましくは0.01mmから1mmの還元状態の金属である。表面が酸化されているものも内部が還元状態であれば利用可能である。粒子径は化学的還元反応の速度を支配し、粒子径が増加するのに比例して単位重量あたりの還元反応速度は低下するので注意を要する。さらに、粒子径が1mm以上である場合には金属粒子の表面が比較的厚い酸化膜で覆われる結果、中心部の還元状態の金属は利用されない可能性が大きい。また一方、粒子径が0.01mm以下である場合には非常に酸化速度が速いので、輸送中及び混合時に水分と接触して酸化されてしまう危険性が高くなる。
【0032】また、この処理を行なう場合には、中性条件を維持するためにpH調整剤を添加することができ、そのようなpH調整剤としては、アルカリ金属化合物やアルカリ土類金属化合物を用いることが好ましく、具体的には石灰石、消石灰、生石灰、硫酸カルシウム、酸化マグネシウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウム、ベントナイト、パーライト、ゼオライト等が挙げられる。さらに、汚染物の高分子有機物含量が低い及び/又は微生物が少ない場合には、各種コンポスト、堆肥化有機物を混合させることが好ましい。これらは、主として微生物添加効果や徐放性の有機態炭素供給源、水分保持に作用するものである。また、悪臭ガスの分解、除去効果も期待できるものである。
【0033】本発明による嫌気脱ハロゲン反応を実際の汚染現場に適用するに際しては何ら大規模な設備を建設する必要は無く、対象とする汚染土壌と増殖基質となる栄養剤、金属粉末を混合した後、水分蒸散や雨水混入の防止、保温の目的で浄化区域をビニルシートで覆うことで十分である。また、水分蒸散の抑制のため、必要に応じて腐葉土、コンポストもしくは粘土を土壌表層に敷き詰めることも効果的である。
【0034】本発明による還元脱ハロゲン反応の反応機構は、現時点では全ては解明されていないが本発明者らは以下のように考えている。まず、汚染物中のpH7付近の中性的還元状態を、好ましい条件である、酸化還元電位0〜−1000mVとするために、金属粉末ならびに酸化態窒素還元微生物の増殖基質となる栄養剤を汚染物に添加して、汚染物中微生物の増殖反応を利用した還元的状態を作る。この場合、汚染物中の酸化態窒素還元微生物は速やかに増殖するために、化学的脱ハロゲン反応を抑制することは殆どなく、生物的脱ハロゲン反応と化学的脱ハロゲン反応はほぼ同時に開始する。
【0035】生物的脱ハロゲン反応のメカニズムについては微生物学的、酵素反応学的に十分に追及されているものではないために明らかではないが、還元状態での呼吸反応に直接共役するか、もしくは呼吸反応の最終産物から電子を受容することにより有機ハロゲン化合物のハロゲンが水素置換され、還元脱ハロゲン化されるものと考えられる。通常の生物的還元反応においてはメタン生成微生物や硫酸還元微生物が有効に働くとされているが、本発明者らは鋭意検討の結果、酸化態窒素還元微生物を用いても金属粉末と組み合わせることにより同様の効果が得られ、かつ悪臭や着色の問題を回避できることを見い出した。すなわち、反応開始後の数日間においては酸化態窒素還元微生物が酸素及び酸化態窒素を電子受容体として消費しつつ急激に増殖する。この時点では酸化態窒素が共存しているため生物的な完全脱ハロゲン化反応は生じないが、部分的脱ハロゲン化反応(例えばテトラクロロエチレンの場合、シスジクロロエチレンまでの脱ハロゲン化)が生じる。
【0036】次いで酸化態窒素が完全に消費されると生物的な完全脱ハロゲン化反応が開始されるが、この時点で急激な増殖に必要な可溶性の低分子の有機態炭素源はほぼ消費されてしまっているため、その後もメタン発酵や硫酸還元などの反応は起こらず、増殖した酸化態窒素還元微生物は金属粉末表面で発生する水素、高分子の有機物、微生物体内に蓄積した還元力などにより穏やかな脱ハロゲン化反応を進行させるものと考える。この状態は水田の底部で脱窒反応が生じ、複雑な微生物相により還元状態が維持されて土壌中の鉄が第一鉄となって青色を呈している状態と酷似しており、水田耕作が盛んな我が国の土壌にとってなじみ深い一般的な微生物のみを利用することができる。この状態は特殊な微生物を用いる場合と比較して安定であり、微生物の安全性という観点からも適当である。
【0037】一方、金属粉末による還元脱ハロゲン反応の原理に関しては、矢崎の報告(有機ハロゲン化合物汚染地下水の処理−金属粉末付着活性炭による低温下での処理技術、「PPM」、1995年、第5巻、64〜70頁)によれば金属表面において金属の溶出(酸化)と有機ハロゲン化合物の還元脱ハロゲン化反応が共役的に生じるという反応である。換言すれば、本発明を化学的脱ハロゲン反応の部分に注目して言えば、汚染物質の還元的環境を酸化態窒素還元微生物の作用で安定に確保することによって、金属表面における有機ハロゲン化合物の脱ハロゲン活性を高く保持することを特徴とした発明ということでもある。以上のように本発明では酸化態窒素還元微生物による生物反応と金属粉末による化学反応を組み合わせることにより、前記した脱ハロゲンの反応を完全にハロゲンを含まない有機化合物が主な生成物として得られるまで進行させることができ、かつその過程において硫黄系の悪臭や汚染物の着色、特殊な微生物の増殖を抑制することができるので、非常に好ましい結果が得られる。
【0038】
【実施例】以下に、本発明を実施例により具体的に説明する。ただしこれら実施例により本発明が限定されるものではない。
実施例1本実施例で記すテトラクロロエチレン(PCE)汚染土壌浄化実験においては表−1の酸化態窒素還元用微生物培地及び表−2のメタン生成用微生物培地を用いた。なお、表−1の培地組成中の硝酸態窒素(酸化態窒素)濃度は有機態炭素濃度の23%(重量比)に相当する。浄化試験は室温(12〜23℃)にて30日間実施し、土壌諸性質の変化状態等(表−3)を測定観測した。pHの測定は土壌:純水=1:1(Wt)に調整し、東亜電波工業製pHメータHM−5B型にて測定した。また、酸化還元電位(ORP)の測定では、土壌:無酸素水=1:1(Wt)に調整し、セントラル科学製ORPメータUK−2030にて電極を浸して30分放置後に測定した。
【0039】なお、本実施例で示す酸化還元電位は、金属電極として白金電極を、比較電極として飽和塩化銀電極を用いて測定した電位を示す。土壌中塩化エチレン類の分析は横浜国立大学で開発された方法(宮本健一ら、「土壌の低沸点有機塩素化合物含有量の測定方法」、水環境学会誌、1995年、第18巻、第6号、477〜488頁)に従い、エタノール抽出後にデカンへ転換して日立ガスクロマトグラフG-5000型、FlD検出器にて20%TCP Chromosorb WAW DMCS60-80 mesh カラムにより分析した。一方、気相中に発生したエチレン、エタンガスの測定には、日立ガスクロマトグラフG-5000型、FlD検出器にて、Porapack Qカラムにより分析した。さらに、気相中に発生した水素、炭酸ガス、メタン、窒素の測定には、GLサイエンスガスクロマトグラフGC-320型、TCD検出器にて、Active carbon 30/60またはMolecular sieve 13X を使用した。また、土壌中の硝酸態窒素、亜硝酸態窒素イオン濃度は土壌:純水=1:1(Wt)に調整した抽出水について、日立陰イオンクロマトグラフ2010iを用いて測定を行なった。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】化学工場から採取したPCE汚染土壌(汚染濃度約25mg/kg −乾燥土壌)について浄化実験を行なった。実験は、50ml容のバイアル瓶に汚染土壌30gを分取し、培地、金属粉末を以下に示す条件で混合して30日後におけるPCE分解をはじめとする土壌諸性質の変化状態等(表−3)を調べた。金属粉末としては和光純薬製の1級還元鉄粉末を使用した。なお、試料調製時にはバイアル瓶の気相部をへリウムガスで置換した。
【0043】実験条件■汚染土壌30g■汚染土壌30g+水9.0ml十還元鉄0.07g■汚染土壌30g+酸化態窒素還元用微生物培地9.0ml+還元鉄0.07g■汚染土壌30g+メタン生成用微生物培地9.0ml+還元鉄0.07g【0044】試験結果を表−3に示す。これより、メタン生成微生物培地と同様に酸化態窒素還元菌培地を用いてもPCEをエチレン、エタンヘと脱ハロゲンすることが可能であり、かつ酸化態窒素還元培地を用いた場合には土壌の黒変やメタンガスの発生、メルカプタン系の臭気の発生を抑制できることが確認された。また、窒素ガスが発生することにより発生する水素ガスが希釈されることが見いだされた。また、土壌中に酸化態窒素、亜酸化態窒素の残留は見られなかった。
【0045】一方還元鉄と水のみを添加した系ではpHが大幅に低下し、酸化還元電位も30日後には+2mVまで上昇してしまったため十分な還元脱ハロゲン分解を行なうことができなかった。その結果PCEが一部土壌中に残留し、エチレンヘの転換率も26%に留まった。これらのことから、金属粉末等の還元剤のみを添加した系では長期間に渡って適当な還元状態を維持することは困難であり、栄養剤の添加による生物反応と共存させることにより初めて、安定した分解が可能となることが示された。さらに、金属粉末のみを添加した系ではほぼ100%の濃度の水素ガスが発生し、爆発の危険性が考えられた。これに対し酸化態窒素還元用微生物培地を添加した系では窒素が、メタン生成微生物培地を添加した系では二酸化炭素が発生して水素ガスを希釈するため、安全性が高いことが示された。ただしメタン生成微生物培地を添加した系では、臭気の発生や土壌の変色が観られた。
【0046】
【表3】

【0047】実施例2本実施例により、ハロゲン化芳香族化合物が分解できることを示す。ペンタクロロフェノール(以下、PCTと略す。)濃度10mg/kgのローム土壌6kgに金属鉄20g添加した。系2−1では、更に、表−4に示す硝酸還元性微生物用培地1リットル添加した。これに対して、系2−2では、コントロールとして、水1リットルを添加した。
【0048】
【表4】

【0049】次いで、混練後28℃に維持し、PCP濃度及び生成物濃度の変化を調べた。結果を表−5及び表−6に示す。
【0050】
【表5】

【0051】
【表6】

【0052】表−5及び6中、TeCP及びCPは、それぞれ、2,3,5,6−テトラクロロフェノール及び3−クロロフェノールを示す。また、Ehは、標準水素電極に対する標準電極電位に換算した値である。系2−1では、系2−2と比較して、ペンタクロロフェノールが速やかに分解されたことが分かる。系2−1では、ペンタクロロフェノールは、2,3,5,6−テトラクロロフェノール及び/又は3−クロロフェノールを経て、フェノールに分解されたものと思われる。また、2,3,5,6−テトラクロロフェノール及び3−クロロフェノールも最終的に脱ハロゲン化され、蓄積されなかった。なお、フェノールは、更に他の化合物に分解されたものと思われる。
【0053】
【発明の効果】以上説明したように本発明により、テトラクロロエチレンのような有機ハロゲン化合物による汚染を効率的かつ経済的に、また周辺環境に悪臭等の負荷を与えないやり方で浄化修復することが可能である。本発明は、有機ハロゲン化合物系溶剤による地下水、土壌、底質、汚泥等の汚染の浄化方法として広く利用されていくものである。
【出願人】 【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
【出願日】 平成10年(1998)8月6日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】萩野 平 (外3名)
【公開番号】 特開平11−114548
【公開日】 平成11年(1999)4月27日
【出願番号】 特願平10−223127