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【発明の名称】 油汚染土壌の生物的浄化方法
【発明者】 【氏名】岡村 幸治
【氏名】神戸 浩美
【氏名】村上 直樹
【氏名】沼田 耕一
【課題】油汚染土壌の新規な生物的浄化方法の提供。

【解決手段】油汚染土壌の生物学的汚染方法であって、土壌のpHを6〜8の状態でN/P比が0.5〜8.5、土壌重量に対するN量が100〜500ppm となるように、土壌中に無機N源及び/又はP源を添加することを特徴とする方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 油汚染土壌の生物的浄化方法であって、土壌のpHを6〜8の状態でN/P比が0.3〜8.5、土壌の重量に対するN量が100〜500ppm となるように、土壌に無機物N源及び/又はP源を添加することを特徴とする方法。
【請求項2】 前記N/P比が1.5〜1.9である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】 Nを提供する無機物がアンモニア態窒素化合物又は硝酸態窒素化合物である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】 Pを提供する無機物がリン酸塩、過リン酸塩、メタリン酸塩又はポリリン酸塩である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は油汚染土壌の生物的浄化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、炭化水素化合物等で汚染された土壌から汚染物質を除去する方法として、物理的処理法(焼却等)、化学的処理法(界面活性剤等による洗浄等)、生物的処理法(汚染物質の微生物分解)が実施されてきた。なかでも生物的処理法は低コスト、低エネルギーという利点から、近年大きく注目されている。油汚染土壌のバイオレメディエーションでは、汚染された土壌に栄養(窒素、リン化合物)を添加して土着微生物の有機物分解能力を高めて浄化する方法が用いられることが多い。
【0003】特表平9−501841号公報には、好気性微生物による油汚染土壌の回復方法として、土壌中の炭素量を基準としてC/N/P=約100/20/1になるように親油性のN/P型栄養素等を加える方法が記載されている。この方法においては、炭素量が多い場合は、添加される窒素・リンは比例的に増加するが、窒素・リンはそれ自体が地下水汚染などの原因となることから、可能な限り低濃度で用いることが必要である。しかしこれまでは最低必要量は検討されていない。
【0004】特表平7−507208号公報には汚染土壌中にリン酸エステルとN源を加える方法が記載されている。特表平6−500495号公報にはリン酸塩が土壌中でpH緩衝能を有することが記載されている。また、特開昭59−66882号公報には、微生物を培養するためにN及びPの栄養源を添加することが記載されている。しかしながら、土着の分解菌を活性化するために添加される無機塩は、実験者に応じて様々な組成のものが用いられているが、どの組成が最も効果的かは検討されていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明は、油汚染された土壌に無機栄養源を添加して土壌中の微生物を活性化することにより汚染土壌を浄化する方法における、最適の無機窒素源の種類及び添加量を提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課題を解決すべく種々検討した結果、土壌pHを6〜8とし、N/P比(窒素/リンの比)が0.3〜8.5となり、土壌の重量に対して窒素の量が100〜500ppm となるように無機窒素源及び無機リン源を添加することにより、土壌の油分が効果的に分解されることを見出し、本発明を完成した。従って、本発明は、油汚染土壌の生物学的浄化方法であって、土壌のpHを6〜8の状態で、N/P比が0.3〜8.5となり、土壌の重量に対するN量が100〜500ppm となるように土壌に無機窒素源及び/又はリン源を添加することを特徴とする方法を提供する。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明は、油汚染されている種々の土壌、例えば砂質土、細粒土等に対して適用することができる。実験の方法としては、例えば無機添加物を加えた土壌を耕す撹拌(耕起)培養法(Landfarming)、無機添加物を加えてそのまま静置し、場合によっては通気等を行う装置を付加する静置培養法(Pilng)、土壌を水に懸濁して培養を行う半液体(スラリー)培養法(Slurry)、及び土壌を大量の水に懸濁して培養を行う液体培養法(Liquid culture)等の方法があり、土壌の性状、処理すべき土壌の量、汚染の程度、などを考慮して選択される。
【0008】N/Pの比率(元素としての重量比)としては、0.3〜8.5が好ましく、1.5〜1.9がさらに好ましい。例えばN/P比はおよそ1.7が最適である。この比率が低すぎる(すなわちリン成分が相対的に少ない)と、油の浄化能力が低下し、またこの比率が高すぎる(すなわちリン成分が相対的に多い)と、リンによる土壌汚染の可能性がある。次に、窒素の量は、土壌重量に対して100〜500ppm 程度であることが好ましく、特に約250ppm が好ましい。これより多くても害は生じないが、量に依存して浄化効果は上昇しないから、経済的に好ましくない。
【0009】窒素源としては、土壌中の微生物により資化されるものであればよいが、アンモニア態窒素例えば塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム等又は硝酸態窒素例えば硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等が好ましく、特にアンモニア態窒素、例えば塩化アンモニウムが好ましい。無機リン酸化合物としては、土壌中の微生物が資化できるものであればよく、例えばリン酸塩、過リン酸塩、メタリン酸塩、ポリリン酸塩等が挙げられ、これらは同等な浄化促進効果を有する。
【0010】具体的には、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、メタリン酸カリウム、ピロリン酸カリウム、トリポリリン酸カリウム等が挙げられ、これらの内、リン酸二水素カリウムやリン酸水素二カリウムが経済的観点から好ましい。本発明の方法において、無機窒素源やリン源の添加効果を生じさせるためには、土壌のpHが6〜8にあることが必要であり、土壌が酸性である場合には、塩基性剤により中和することが必要であり、塩基性剤としては例えば炭素カルシウムが好ましい。炭酸カルシウムの添加量は、土壌の酸性度によっても異るが、例えば1%程度である。土壌が塩基性の場合は、例えば硫酸第1鉄、硫酸カルシウム等の添加により中和することができる。
【0011】
【発明の効果】含有油分濃度の異なる土壌で効果を検証した結果、本発明の栄養塩混合物を同一量添加すれば、炭素量の多少(3000〜35000ppm )に関わらず高い浄化効率が得られる。従来知見によると30000ppm の炭素に対し3000〜6000ppm の窒素が必要とされるが、本発明では500〜100ppm の窒素で浄化が可能である。従って、本発明の方法では窒素源の多量添加による二次汚染のおそれが少ない。
【0012】
【実施例】次に、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
実施例1潤滑油で汚染させた土壌を6mmメッシュの篩で礫等を除いた後、2mmメッシュの篩を用いて分画し、通過画分を供試土壌とした。本実験には、5000ppm の油分を含む土壌の他、50000ppm の油分を含む高濃度汚染土壌を供試した。試験系は100ml容テフロンボトルに土壌5gおよび培養液5mlを添加したスラリー系で2rpm で回転旋回培養した。培養は20℃に制御した恒温室内で行った。培養液の組成として、下記の表1に示すZS,NP−S及びYM−A、並びに対照として水を用いた。
【0013】
【表1】

【0014】油分測定土壌中油分の分析は、十分乾燥させた土壌を粉砕し、h−ヘキサンにより抽出を行い、抽出物の蒸発残査の重量を測定する方法で行った。なお、図中のerror barは標準誤差(いずれもn数は3)を表す。結果を図1に示す。水では低、高濃度汚染土壌ともに浄化は全く進行しなかった。しかし、ZSでは低、高濃度汚染土壌ともに最も高い浄化速度がみられた。NPS培地では、低濃度土壌に対しては2週間まで浄化作用を示したが、4週間以後の浄化作用はわずかであり、また高濃度汚染土壌ではほとんど浄化作用を示さなかった。改変YM培地もNPSと同様の浄化速度を示した。なお、図1において「High」の記号を付したものは、油分50000ppm の高濃度汚染土壌についての結果を示す。
【0015】実施例2 無機塩、無機肥料の効果ステンレス鋼製丸形ポット(直径10cm×高さ6cm、フタ付)を培養器として使用し、潤滑油で汚染させた6.5mmメッシュの篩にかけ、礫等を除いた供試土壌約110g(湿土重量)を入れた。この培養器をインキュベーター(ヤマト製IC600,Lo−Temp Chamber IH16)に入れて静置することにより培養した。供試土壌の含水率は、20%に調整した。含水率の調整、週2回位重量を測定し、乾燥により減少した重量と同じ量の蒸留水を補充することにより行った。週に1回、土壌をカップの底面からすくい上げるようにして均一に混合することにより撹拌した。添加物の添加は、添加物を容器に加えた後、スパーテルブ撹拌て土壌と均一に混合することにより行った。
【0016】サンプルは培養開始時、2週間後、4週間後、及び8週間後に行った。各培養器につきの3ヶ所から約6gずつの湿土壌(乾土壌重量約5%(4.5〜5.53)ずつ採取した。また実験土壌の初期油分濃度は約5000ppm であった。供試土壌へは下記の培地に含まれる塩のみを添加した。塩の添加量を変えることにより、土壌に対する窒素の重量比が50,100,250又は500ppm となるようにした。
【0017】(1)ZS培地(前記表1参照のこと)
(2)ZS(N,P);上記ZS培地中の、K2HPO4,KH2PO4及びNH4Cl のみからなるもの(3)ZS(NO3-N);上記ZS培地中のNH4Cl を等モル量のKNO3に変えたもの結果を図2に示す。図2に示す通り、窒素量としては土壌に対して250ppm 程度がよく、また培地としてはZS(N,P)培地が最もよかった。
【0018】実施例3 ZS(N,P)培地を用いたカラム実験土壌の採取および調整潤滑油で汚染させた土壌を6mmメッシュで篩い、小石等を取り除いた。篩い掛け土壌と、篩い掛けせずに大きな礫を取り除いただけの未篩い掛け土壌を実験に供試した。供試土壌の含水率は20%に調整した。水分調節時に重量を確認し減水分の水を補給する重量法によって週に1または2回含水率の調整を行った。培養終了後、土壌カラムの上層、中層、下層各5cmの土壌を採取し油分を測定した。
【0019】供試土壌へは、実施例2と同様に、250ppm 相当の窒素源を含むZS(N,P)を添加し、直径5cmのカラムに800gの土壌を軽く詰めた。この時、土壌深度は35cmであった。培養は30℃、無撹拌で4週間行った。また実験土壌の初期油分濃度は約4000〜5000ppm であった。
結果カラム実験での浄化効果を図3に示す。カラム上部においては油分が60%まで除去されており、下部(深部)においても油分が70%まで除去されていた。
【0020】実施例4実施例1と同様に調整した土壌を供試した。本土壌は、粘土質で含水率は約10〜15%、初期油分濃度は約5000ppmであった。ガラス製の300mlスクリューキャップ付き三角フラスコに土壌5g(fresh weight)とNPS培地50mlを添加して20℃100回/分で2週間往復しんとう培養した。ただし、培養時にスラッジが器壁にこびりついてくるので、1日1回程度手動で撹拌してスラッジを落とした。
【0021】第1の実験ではNPS培地の窒素成分を10倍にしたもの(X10N),窒素成分を除いたもの(−N)を供試した。その結果、窒素成分量を10倍にしてもNPS培地と同様の効果しか見られないが、除くと著しく阻害された。従って窒素成分は浄化に必須であり、そしてNPS培地に含まれる量がほぼ最適値であると考えられた。
【0022】次に、第2の実験では窒素成分のみ添加したもの(N)とNPS培地中の窒素成分をNのモル数で換算して全てアンモニア態(硫酸アンモニウム)のみに置換したもの(NH4)、同様に全て硝酸態(硝酸カリウム)に置換したもの(NO3)を比較した(図4)。その結果窒素成分のみでは効果は見られず、NPS培地の窒素成分以外の協調的な寄与が確認された。実施例2の結果と比較した場合、窒素成分のほかにリン成分が必要であることがわかる。硝酸態、アンモニア態共にNPS培地を越える効果は見られなかったが、硝酸態よりアンモニア態の方がわずかに有効であった。
【0023】実施例5実施例2と同様に調製した供試土壌に窒素源として塩化アンモニウムを窒素換算で250ppm 、リン源としてリン酸2水素カリウム+リン酸水素2カリウム(ZS(N,P))またはメタリン酸カリウムまたはピロリン酸カリウムまたはトリポリリン酸カリウムをリン換算で150ppm になるように添加した。この土壌を30℃のインキュベーター内で8週間培養した。培養中は、週に1回含水率を10%に調整すると共に撹拌を行った。土壌の初期油分濃度は約7500ppm であった。2週間後に土壌中の油分を測定したところ、どのリン供給態を用いても約50%浄化していた。結果を図5に示す。
【0024】実施例6 高濃度汚染土壌への適用実施例3と同様に調製した供試土壌に潤滑油を添加し、これを土壌に均一になるように撹拌した。こうして油分濃度が10000ppm ,20000ppm 及び35000ppm の土壌を作製した。土壌にZS(N,P)250ppm(K2HPO4: KH2PO4: NH4Cl =18:12:40の組成でN分を土壌重量に対して250ppm 添加する)を添加し、実施例2と同様に30℃のインキュベーター内で静置培養し、含水量調整は2回/週、撹拌は1回/週の割合で実施した。
【0025】各試験区から3点ずつ土壌を試料として採取し乾燥後、n−ヘキサン抽出により土壌中の残留油分量を求めた。結果を図6及び図7に示す。ZS(N,P)を添加した場合は、各図からわかるように汚染濃度を3.5%まで高くしても、浄化速度が低下することはなかった。また汚染濃度が高くなることで浄化が頭打ちになることもなかった。汚染濃度が3.5%まで浄化速度が低下しなかったことは、栄養の添加量が汚染濃度0.5%の時と同量でも十分であることを示した。
【0026】実施例7潤滑油で汚染させた様々な物性の土壌7種を用いて、実施例2と同じ方法で浄化実験を行った。供試した土壌の性状を次の表2に示す。
【0027】
【表2】

【0028】従来使用した土壌のほかに、これとは種類の異なる上記土壌7種にZSを添加した場合の油残存率の経時変化を図8及び9に示す。この時G以外の初期油分濃度は約3500〜4000ppm であり、Gの濃度は約10000ppm であった。A及びBではZSの添加効果が全くないため実験は4週目までで中断した。C,Fでは、ZSを添加したものは非常に良好な結果を示し、8週目では油の残存率が20%まで減少した。またG土壌は、ZS添加後4週目までに5000ppm 以下まで浄化することができた。
【0029】さらに、pHが油汚染土壌の浄化速度に与える影響について調べるため、A及びBにZSを添加し、さらにpHを調整するためにCaCO3 を1%量加えた場合と加えない場合とでその浄化速度の違いを調べた。この時のpHを表3に、また浄化率の経時変化を図10に示した。CaCO3 を添加することによりA及びB共に浄化が進むことがわかった。一方、CaCO3 を添加しなかった場合は浄化が全く進まないことが再現された。
【0030】
【表3】

【0031】実施例8C重油で汚染させた土壌に無機肥料ZS(N,P)を窒素換算で250ppm になるように添加し、30℃のインキュベーター内で8週間培養した。培養中は、週に1回含水率を10%に調整すると共に撹拌を行った。初期油分濃度は15000ppm であった。2週間後に土壌中の油分を測定したところ、土壌中の油分濃度が約40%減少していた。対象物質がC重油であっても、ZS(N,P)を添加することで浄化が促進されることが確認された。結果を図11に示す。
【出願人】 【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【出願日】 平成9年(1997)10月2日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬 (外3名)
【公開番号】 特開平11−104612
【公開日】 平成11年(1999)4月20日
【出願番号】 特願平9−269867