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【発明の名称】 微生物による油汚染土の分解除去方法
【発明者】 【氏名】辻 博和
【氏名】四本 瑞世
【課題】油汚染土内の油分、特に多環芳香族炭化水素も含めて分解除去する。

【解決手段】本発明の微生物による油汚染土の分解除去方法においては、油汚染土内に存在する微生物の分解活性が高まるように該油汚染土を所定の期間管理する(ステップ101)。一方、おがくず状等の木材を担体とし、該担体に担子菌の一種である白色腐朽菌を栄養培地とともに添加して該白色腐朽菌を別途増殖させる(ステップ102)。次に、油汚染土内の土着菌が十分に衰退した時期を見計らって、上述したような白色腐朽菌の増殖過程で生じたリグニン分解酵素を白色腐朽菌及びその担体とともに該油汚染土内に添加する(ステップ103)。次に、油汚染土の炭素量(T―C)と窒素量(T―N)とをそれらの比(C/N比)で100以上となるように調整する(ステップ104)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 油汚染土内に存在する微生物の分解活性が高まるように該油汚染土を所定の期間管理し、前記油汚染土内の易分解性炭化水素が分解消費されて前記微生物が衰退した後、白色腐朽菌の増殖過程で生じたリグニン分解酵素を前記油汚染土内に添加することを特徴とする微生物による油汚染土の分解除去方法。
【請求項2】 前記リグニン分解酵素を前記白色腐朽菌及びその担体とともに前記油汚染土に添加し、該油汚染土の炭素量(T―C)と窒素量(T―N)との比(C/N比)を、前記白色腐朽菌から新たなリグニン分解酵素が生成されるように調整する請求項1記載の微生物による油汚染土の分解除去方法。
【請求項3】 油汚染土内に存在する微生物の分解活性が高まるように該油汚染土を所定の期間管理し、前記油汚染土内の易分解性炭化水素が分解消費されて前記微生物が衰退した後、白色腐朽菌及びその担体を前記油汚染土内に添加し、該油汚染土の炭素量(T―C)と窒素量(T―N)との比(C/N比)を、前記白色腐朽菌からリグニン分解酵素が生成されるように調整することを特徴とする微生物による油汚染土の分解除去方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、微生物による油汚染土の分解除去方法に関する。
【0002】
【従来の技術】最近、微生物によって汚染物質を分解し無害化する、いわゆるバイオレメディエーションなる手法が注目されている。
【0003】バイオレメディエーションとは、細菌やかびなどの微生物の分解能力を利用して汚染物質を分解し、無害化する方法であり、汚染物質が含まれた土壌などを微生物の活動に最適な水分・栄養・通気などの環境に調整して微生物の活性を向上させることにより、自然状態よりも効率よく汚染物質の分解を行うことができる。
【0004】かかるバイオレメディエーションは、物理処理や化学処理のように薬剤を一切使用しないので、低コストであるとともに安全性も高く、今後ますます適用範囲が拡がっていくものと期待されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ここで、例えば原油で汚染された土壌をバイオレメディエーションで浄化しようとする場合、原油の主成分である炭素原子数5〜40程度の各種炭化水素化合物は、分子構造のタイプによって、パラフィン系、オレフィン系などのいわゆる脂肪族炭化水素と、芳香族炭化水素に概ね大別され、脂肪族炭化水素や比較的簡単な構造の芳香族炭化水素といった易分解性の炭化水素については、土中に含まれている細菌類で比較的容易に分解することができる。
【0006】一方、複雑な構造の多環芳香族炭化水素のような難分解性炭化水素については、このような土中菌では分解することができず、さりとて、かかる多環芳香族炭化水素を分解可能な特別に選抜(スクリーニング)された細菌を使用しても、たいていは土中菌と競合し、本来の分解作用を発揮できないまま、衰退してしまうという問題を生じていた。
【0007】本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、多環芳香族炭化水素を分解除去可能な微生物による油汚染土の分解除去方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明に係る微生物による油汚染土の分解除去方法は請求項1に記載したように、油汚染土内に存在する微生物の分解活性が高まるように該油汚染土を所定の期間管理し、前記油汚染土内の易分解性炭化水素が分解消費されて前記微生物が衰退した後、白色腐朽菌の増殖過程で生じたリグニン分解酵素を前記油汚染土内に添加するものである。
【0009】また、本発明に係る微生物による油汚染土の分解除去方法は、前記リグニン分解酵素を前記白色腐朽菌及びその担体とともに前記油汚染土に添加し、該油汚染土の炭素量(T―C)と窒素量(T―N)との比(C/N比)を、前記白色腐朽菌から新たなリグニン分解酵素が生成されるように調整するものである。
【0010】また、本発明に係る微生物による油汚染土の分解除去方法は請求項3に記載したように、油汚染土内に存在する微生物の分解活性が高まるように該油汚染土を所定の期間管理し、前記油汚染土内の易分解性炭化水素が分解消費されて前記微生物が衰退した後、白色腐朽菌及びその担体を前記油汚染土内に添加し、該油汚染土の炭素量(T―C)と窒素量(T―N)との比(C/N比)を、前記白色腐朽菌からリグニン分解酵素が生成されるように調整するものである。
【0011】請求項1の発明に係る微生物による油汚染土の分解除去方法においては、まず、油分を含んだ油汚染土に対し、該油汚染土内に存在する微生物の分解活性が高まるように所定の期間、栄養、通気、水分、温度などの管理を行う。
【0012】油分には、主として、パラフィン系、オレフィン系などのいわゆる脂肪族炭化水素と、芳香族炭化水素とが含まれているが、上述したように微生物の分解活性を高めてやると、これらのうちの易分解性炭化水素、すなわち、脂肪族炭化水素のほとんどと芳香族炭化水素のうちの比較的簡単な構造のものとが油汚染土内の微生物の作用によって分解除去される。これを一次分解と呼ぶこととする。
【0013】次に、かかる一次分解が進行して易分解性炭化水素が消費されてくると、微生物側から見ればその活動の源となるエネルギー源が欠乏することになるので、微生物は徐々に衰退する。
【0014】そこで、かかる段階を見計らって、白色腐朽菌の増殖過程で生じたリグニン分解酵素を油汚染土内に添加する。
【0015】このようにすると、添加されたリグニン分解酵素は、すでに衰退している微生物と競合することなく、その分解活性を発揮し、油汚染土内に残っている難分解性の炭化水素を速やかに分解する。
【0016】微生物としては、主として細菌、特に土中に自然に存在するシュードモナスやロドコッカスといった土着菌を使用することができるが、このような土着菌以外の細菌や、放線菌、糸状菌、担子菌といった細菌以外の微生物でもよい。
【0017】多環芳香族炭化水素には、ベンゼン環を複数、特に3環以上もつ、例えばフェナントレン、ピレンなどの物質が含まれる。
【0018】ここで、前記リグニン分解酵素を前記白色腐朽菌及びその担体とともに前記油汚染土に添加し、該油汚染土の炭素量(T―C)と窒素量(T―N)との比(C/N比)を、前記白色腐朽菌から新たなリグニン分解酵素が生成されるように調整するならば、最初に添加されたリグニン分解酵素に加えて新たなリグニン分解酵素を油汚染土内で白色腐朽菌から発生させることが可能となる。
【0019】請求項3の発明に係る微生物による油汚染土の分解除去方法においても、請求項1の発明と同様、まずは、油分を含んだ油汚染土を一次分解する。
【0020】次に、かかる油汚染土内に白色腐朽菌及びその担体を添加し、該油汚染土の炭素量(T―C)と窒素量(T―N)との比(C/N比)を、前記白色腐朽菌からリグニン分解酵素が生成されるように調整する。
【0021】このようにすると、油汚染土内で生じたリグニン分解酵素は、すでに衰退している微生物と競合することなく、その分解活性を発揮し、油汚染土内に残っている難分解性の炭化水素を速やかに分解する。
【0022】微生物並びに多環芳香族炭化水素に関する説明については、請求項1の発明と同じであるので、ここではその説明を省略する。
【0023】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る微生物による油汚染土の分解除去方法の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。なお、従来技術と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0024】(第1実施形態)図1は、第1実施形態に係る微生物による油汚染土の分解除去方法の手順を示したフローチャートである。同図でわかるように、本実施形態の分解除去方法においては、まず、油分を含んだ油汚染土に対し、該油汚染土内に存在する微生物の分解活性が高まるように所定の期間、栄養、通気、水分、温度などの管理を行う(ステップ101)。
【0025】微生物としては、油汚染土内に自然に含まれている土着菌を利用するのがよい。
【0026】ここで、油汚染土の炭素量(T―C)と窒素量(T―N)との比(C/N比)が10〜50程度、特に20前後に維持されるように、おがくずや窒素肥料等を適宜添加する。このようにC/N比を設定することにより、油汚染土内の微生物、本実施形態では土着菌の分解活性を良好に保つことができる。
【0027】このようにC/N比を設定して土着菌の分解活性を高めてやると、油汚染土内に含まれる油分のうちの易分解性炭化水素、すなわち、パラフィン系、オレフィン系といった脂肪族炭化水素と、芳香族炭化水素のうちの比較的簡単な構造のものとが土着菌によって効率よく分解除去される。
【0028】図2は、土着菌による分解作用によって油汚染土内の炭化水素が減少していく様子を示したグラフである。
【0029】ところが、同図でもわかるように、油汚染土内における炭化水素の減少割合は時間が進むにつれて徐々に小さくなり、やがてほとんど減少しなくなる。これは、土着菌で分解することができる脂肪族炭化水素や簡単な構造の芳香族炭化水素といった易分解性炭化水素が分解によって消費し尽くされ、油汚染土内には難分解性炭化水素である多環芳香族炭化水素だけが残っていくことを意味する。
【0030】このような状態になると、土着菌側から見ればその活動の源となるエネルギー源が欠乏することになるので、土着菌は徐々に衰退する。
【0031】一方、おがくず状、チップ状、フレイク状等に適宜細かくされた木材を担体とし、該担体に担子菌(キノコ)の一種である白色腐朽菌を栄養培地とともに添加して該白色腐朽菌を別途増殖させる(ステップ102)。
【0032】このようにすると、白色腐朽菌は、栄養培地に含まれるフスマや窒素肥料等を栄養として増殖するが、その増殖の程度は徐々に減少し、やがてほとんど増殖しなくなる。これは、栄養培地に含まれる窒素系の栄養分が枯渇するためであるが、かかる状態になると、白色腐朽菌は、担体(木材)中のリグニンを分解してエネルギー源を取り出すべく、リグニン分解酵素を自ら生成する。
【0033】そこで、油汚染土内の土着菌が十分に衰退した時期を見計らって、上述したような白色腐朽菌の増殖過程で生じたリグニン分解酵素を白色腐朽菌及びその担体とともに該油汚染土内に添加する(ステップ103)。
【0034】土着菌が十分に衰退したかどうかは、油汚染土内の油含有量を例えば図2のようなグラフを用いて監視し、それらの含有量がほとんど低下しなくなった時期に基づいて判断すればよい。
【0035】土着菌が衰退した油汚染土内にリグニン分解酵素を添加すると、該リグニン分解酵素は、すでに衰退している微生物と競合することなく、その分解活性を発揮し、油汚染土内に残っている多環芳香族炭化水素をいわば二次分解として分解除去する。
【0036】次に、リグニン分解酵素、白色腐朽菌及びその担体が添加された油汚染土の炭素量(T―C)と窒素量(T―N)とをそれらの比(C/N比)で例えば100以上となるように調整する(ステップ104)。調整の仕方としては、炭素量が少なければ例えばおがくずを投入すればよい。
【0037】このようにすると、最初に添加されたリグニン分解酵素に加えて別のリグニン分解酵素が新たに油汚染土内で白色腐朽菌から発生する。そして、油汚染土内に残っている難分解性炭化水素である多環芳香族炭化水素は、さらに効率的に分解される。
【0038】以上説明したように、本実施形態に係る微生物による油汚染土の分解除去方法によれば、まず、第1段階として、土着菌の分解活性を高めて易分解性炭化水素、すなわち脂肪族炭化水素及び簡単な構造の芳香族炭化水素を分解除去し、次いで、土着菌の分解対象である易分解性炭化水素の枯渇による土着菌の衰退を見計らって、第2段階として難分解性炭化水素、すなわち多環芳香族炭化水素を分解可能なリグニン分解酵素を添加するようにしたので、かかるリグニン分解酵素は、土着菌と競合することなくその分解活性によって多環芳香族炭化水素を分解することができる。
【0039】すなわち、このような二段階の分解除去方法を採用することにより、油汚染土内に含まれるほぼすべての炭化水素を分解除去することが可能となり、従来のように、難分解性炭化水素である多環芳香族炭化水素だけが分解されずに油汚染土内に残ってしまうといった事態を回避することができる。
【0040】また、本実施形態によれば、リグニン分解酵素を白色腐朽菌及びその担体とともに油汚染土に添加した後、該油汚染土のC/N比を例えば100以上に調整するようにしたので、最初に添加されたリグニン分解酵素とは異なる別のリグニン分解酵素が新たに油汚染土内で白色腐朽菌から発生し、油汚染土内に残っている難分解性炭化水素である多環芳香族炭化水素をさらに効率よく分解することが可能となる。
【0041】本実施形態では、リグニン分解酵素を白色腐朽菌及びその担体とともに油汚染土に添加するようにしたが、リグニン分解酵素だけを抽出してこれを油汚染土に添加するようにしてもよい。かかる構成においては、リグニン分解酵素を添加した後の油汚染土のC/N比の調整は不要である。
【0042】また、リグニン分解酵素を白色腐朽菌及びその担体とともに油汚染土に添加する場合であっても、最初に添加されるリグニン分解酵素だけで難分解性炭化水素を十分に分解することができるのであれば、その後の油汚染土に対するC/N比の調整工程を省略してもよい。
【0043】また、本実施形態では、白色腐朽菌の増殖過程で発生したリグニン分解酵素を、一次分解が終了した油汚染土に添加するようにしたが、これに代えて図3に示すように、油汚染土の土着菌が衰退した時期を見計らって、該油汚染土内に白色腐朽菌及びその担体を添加し(ステップ112)、次に、油汚染土の炭素量(T―C)と窒素量(T―N)とをC/N比で例えば100以上となるように調整するようにしてもよい(ステップ113)。
【0044】かかる構成においては、油汚染土内で白色腐朽菌が増殖する過程において、該白色腐朽菌からリグニン分解酵素が発生する。そして、かかるリグニン分解酵素が油汚染土内に残っている難分解性炭化水素である多環芳香族炭化水素を分解する。
【0045】したがって、本変形例によっても、一次分解が終了した油汚染土内で発生したリグニン分解酵素が、土着菌と競合することなくその分解活性によって多環芳香族炭化水素を分解することが可能となる。そして、このような二段階の分解除去方法を採用することにより、油汚染土内に含まれるほぼすべての炭化水素を分解除去することが可能となり、従来のように、難分解性炭化水素である多環芳香族炭化水素だけが分解されずに油汚染土内に残ってしまうといった事態を回避することができる。
【0046】なお、ステップ111については、上述の実施形態で説明したステップ101と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0047】
【発明の効果】以上述べたように、請求項1に係る本発明の微生物による油汚染土の分解除去方法によれば、難分解性炭化水素を分解除去可能なリグニン分解酵素を、土着菌と競合させることなくその分解活性を発揮させることが可能となり、従来のように、難分解性炭化水素だけは分解されずに油汚染土内に残ってしまうといった事態を回避することができる。
【0048】また、請求項2に係る本発明の微生物による油汚染土の分解除去方法によれば、最初に添加されたリグニン分解酵素とは異なる別のリグニン分解酵素が新たに油汚染土内で白色腐朽菌から発生し、油汚染土内に残っている難分解性炭化水素である多環芳香族炭化水素をさらに効率よく分解することが可能となるという効果も奏する。
【0049】また、請求項3に係る本発明の微生物による油汚染土の分解除去方法によれば、難分解性炭化水素を分解除去可能なリグニン分解酵素を、土着菌と競合させることなくその分解活性を発揮させることが可能となり、従来のように、難分解性炭化水素だけは分解されずに油汚染土内に残ってしまうといった事態を回避することができる。
【0050】
【出願人】 【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
【出願日】 平成9年(1997)9月26日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】久寶 聡博
【公開番号】 特開平11−99381
【公開日】 平成11年(1999)4月13日
【出願番号】 特願平9−279918