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【発明の名称】 有機ハロゲン系化合物で汚染した土壌の微生物的浄化方法
【発明者】 【氏名】織田 泰
【氏名】宮田 雅美
【氏名】中山 美香
【氏名】徳弘 健郎
【氏名】浅見 修
【課題】有機ハロゲン化物により汚染された土壌の微生物による浄化方法の提供。

【解決手段】有機ハロゲン系化合物で汚染された土壌に微生物を添加することにより該土壌を浄化する方法において、該土壌のpHを5〜9に調整することを特徴とする方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 有機ハロゲン系化合物で汚染された土壌に微生物を添加することにより該土壌を浄化する方法において、該土壌のpHを5〜9に調整することを特徴とする方法。
【請求項2】 前記有機ハロゲン系化合物がトリクロロエチレンである請求項1に記載の方法。
【請求項3】 前記微生物がMO7株(FERM BP−5624)又はN16−1株(FERM BP−5504)である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】 pHの調整をCaCO3 もしくはK2 HPO4 又はこの両者を土壌に添加することにより行う、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、有機ハロゲン系化合物、例えばトリクロロエチレンにより汚染された土壌の生物学的浄化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、有機ハロゲン化物、例えばトリクロロエチレン等による土壌汚染が問題になっており、微生物を利用した汚染土壌の浄化処理方法が提案されている。汚染土壌を微生物処理する方法としては、土壌に外部から酸素や栄養源を加えて土着の微生物を活性化させる方法(バイオスティミュレーション)や汚染土壌に汚染物質を効率よく分解する微生物を条件良く加えて浄化させる方法(バイオオーギュメンテーション)等がある。
【0003】例えば、有機塩素系化合物(トリクロロエチレン)汚染土壌の浄化に際しては、上記のバイオスティミュレーション、バイオオーギュメンテーションとも微生物の有機塩素系化合物(トリクロロエチレン)分解能力を誘導するためには、誘導剤としてフェノール等の化学物質が必須である。しかし、誘導剤として用いるフェノール等は、それ自体有毒で問題となっている。その対策技術としては、バイオオーギュメンテーションの実施において、分解微生物を予め培養タンク等で増殖させ且つ誘導剤を加えて分解酵素を誘導して、その後、集菌等の操作でフェノール等を除去して土壌に接種すること(休止菌体法)があり、よって、フェノール等による2次汚染のリスクは回避できる。
【0004】しかしながら、バイオオーギュメンテーションにおいて、使用する微生物が同一でも、土壌により浄化効果が大きく異なることが知られている。例えば、Migaelら、Journal of Industrial Microbiology Vol.12,p.397〜395(1993)には、微生物による土壌の浄化に影響を及ぼす要因として、土壌のpH、温度、水活性、通気、酸化還元電位等が挙げられている。また、特開平8−70855号公報には、アルカリ条件下で有機塩素系化合物を微生物により浄化することが記載されている。
【0005】〔関連技術〕本発明者らは、土壌中の有機ハロゲン化合物、特に有機塩素化合物、例えばトリクロロエチレンを効率的に分解する能力を有する微生物として、MO7株(FERM BP−5624)(特願平8−217456)、N16−1株(FERM BP−5504)(特願平8−100466)等を単離している。これらの微生物株は極めて高いトリクロロエチレン分解能を有するが、その効果は土壌の種類により大きく異なることが判明した。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従って本発明は、微生物による土壌の浄化における土壌の種類による浄化効率のバラツキを排し、土壌の種類に影響されず常に効率的に土壌の浄化を行うことができる方法を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するため、本発明は有機ハロゲン化合物で汚染された土壌に微生物を添加することにより該土壌を浄化する方法において、該土壌のpHを5〜9に調整することを特徴とする方法を提供する。
【0008】
【発明の実施の形態】前記のごとく、微生物による土壌の浄化の効率が土壌の種類により異なる原因としては土壌の粒径、含水率、有機物含量、温度、土壌微生物等の要因が挙げられているものの、真の要因がなにかは必ずしも明確ではなかった。本発明者は、MO7株(FERM BP−5624)及びN16−1株(FERM BP−5504)を用いて、土壌粒径、特に粘土含量、土壌粒子密度、全炭素含量(TC)、土壌微生物、土壌pHなどの要因のそれぞれについて、それらがトリクロロエチレンの分解に与える影響を試験した結果、主として土壌pHの影響が大きいことを見出した。
【0009】次に、pHの低い土壌を用い、これを種々のpHに中和した後、pHとトリクロロエチレンの分解との関係を試験し、pHが5〜9の範囲においてトリクロロエチレンの分解が効率よく行われることを見出した。従って、本発明においては、処理すべき土壌のpHを5〜9に調整する。例えばMO7株ではpH6〜9が好ましく、N16−1株ではpH5〜7が好ましい。酸性土壌のpHの調整は、任意の塩基性剤、例えばK2 HPO4 ,CaCO3 等を用いて行うことができる。これらは粉末の状態で使用するのが好ましい。他方、塩基性土壌の中和は、任意の酸性剤、例えばFeSO4 ,CaSO4 ,NaH2 PO4 等を用いて行うことができる。
【0010】本発明の方法は種々の土壌に対して応用することができ、特に限定されない。添加すべき中和剤の量は、処理すべき土壌のpH値、土壌の緩衝力などにより異なり、土壌のpHが上記の範囲に入るように適宜選択すればよい。ここで、土壌のpHは例えば、以下に示す方法で測定する。未風乾新鮮土の乾土10g相当量あるいは風乾細土10gに水25mlを加え(新鮮土の場合は、水分相当量を差し引く)、かき混ぜるか振り混ぜるかして1時間以上放置する。測定前に軽くかき混ぜて、懸濁状態とし、ガラス電極の薄膜球部を静かに液中に浸し、30秒以上経過してpH計の表示値が安定するのを待って、pHを読みとることにより行われる。(土壌標準分析、測定法、日本土壌肥料学会監修、博支社)
【0011】土壌の中和操作は、汚染土壌を耕起し、それに中和剤を添加して混合すればよい。土壌のpHを調整した後、浄化用微生物菌体を添加すればよい。本発明において使用する微生物としては、特に限定されず、トリクロロエチレン等、有機ハロゲン化物を分解し得る任意の微生物を用いることができるが、特に好ましい微生物はMO7株(FERM BP−5624)及びN16−1株(FERM BP−5504)であり、MO7株については特願平8−217456明細書に詳細に記載されており、またN16−1株については特願平8−100466明細書に詳細に記載されている。
【0012】
【実施例】次に、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
実施例1.MO7株を0.05%のイーストエキストラクト及び500ppm のフェノールを含むNMS培地(表1)で培養し、その後集菌操作により菌体を回収、NMS培地(フェノールは含まない)に再懸濁後、土壌に接種した。TCE分解試験には、11種類の物性の異なる土壌を用いた。TCE汚染土壌は、土壌にガス状のTCEを接触させることで作成した。使用した11種類の土壌の特性を下記表1に示す。
【0013】
【表1】

【0014】
【表2】

【0015】
【表3】

【0016】結果は図1に示すように、土壌pHとTCE分解率には相関があった。土壌pHが6〜9程度の場合は良好な分解が見られたが、6以下では分解はほとんど見られなかった。
【0017】実施例2.N16−1株を0.05%のイーストエキストラクト、500ppm のフェノールを含むNMS培地で培養し、その後集菌操作により菌体を回収、NMS培地(フェノールは含まない)に再懸濁後、土壌に接種した。TCE分解試験には、前記11種類の物性の異なる土壌を用いた。TCE汚染土壌は、土壌にガス状のTCEを接触させることで作成した。結果は図2に示すように、土壌pHが5〜7程度の場合に良好な分解が見られた。
【0018】実施例3.MO7株を0.05%のイーストエキストラクト、500ppm のフェノールを含むNMS培地で培養し、その後集菌操作により菌体を回収、NMS培地(フェノールは含まない)に再懸濁後、土壌に接種した。用いた土壌は、pHが4.5程度のMMT土壌で、TCEによる汚染は実施例1及び2と同様に実施した。MMT土壌のpHは、適量のCaCO3 あるいはK2 HPO4 を粉末状で混合することで調整した。分解試験の結果は図3に示したように、元のpH(4.5)に比べてpHを調整(7.1,8.0)してやることのみで大幅にTCE分解が促進された。
【0019】実施例4.N16−1株を0.05%のイーストエキストラクト、500ppm のフェノールを含むNMS培地で培養し、その後集菌操作により菌体を回収、NMS培地(フェノールは含まない)に再懸濁後、土壌に接種した。用いた土壌は、pHが4.5程度のMMT土壌で、TCEによる汚染は実施例1及び2と同様に実施した。MMT土壌のpHは、適量のCaCO3 を粉末状で混合することで調整した。分解試験の結果は図4に示したように、元のpH(4.5)に比べてpHを調整(7.1)してやることのみで大幅にTCE分解が促進された。
【0020】
【発明の効果】上記のごとく、本発明によれば、処理しようとする土壌のpHのみを測定し、pH値が本発明の範囲外であれば中和剤により本発明で定義するpH範囲内にすればトリクロロエチレン等を効率よく分解することができ、土壌粘土、土着微生物等、他の要因についてあらかじめ試験する必要がないから、事前調査のために時間や費用をかけることなく土壌の浄化を行うことができる。
【出願人】 【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
【出願日】 平成9年(1997)9月12日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬 (外3名)
【公開番号】 特開平11−77019
【公開日】 平成11年(1999)3月23日
【出願番号】 特願平9−248149