トップ :: B 処理操作 運輸 :: B09 固体廃棄物の処理;汚染土壌の再生

【発明の名称】 有機ハロゲン化合物汚染物の浄化方法
【発明者】 【氏名】片岡 直明
【氏名】北嶋 宣光
【氏名】下村 達夫
【課題】低濃度から高濃度に至るまでの幅広い汚染濃度に対して高度の浄化率を達成し、低コストで、安全にしかも簡単な処理システムにて有機ハロゲン化合物汚染サイトを、無害化処理することができ、且つ浄化の過程で産業廃棄物を有効に利用することができる浄化方法を提供する。

【解決手段】有機ハロゲン化合物で汚染を受けた物質に、還元性雰囲気下でしかも中性条件下で、従属栄養型の嫌気性微生物を金属鉄とともに接触させ、有機ハロゲン化合物を脱ハロゲンさせる汚染物の浄化方法において、その金属鉄として鋳鉄を用いることを特徴とする有機ハロゲン化合物の浄化方法。鋳鉄は、平均有効径500μm以下の粉状であるとよい。特に、鋳鉄屑であるとよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 有機ハロゲン化合物で汚染を受けた物質に、還元雰囲気状態で且つ中性条件下で、従属栄養型の嫌気性微生物の少なくとも1種を金属鉄とともに接触させ、有機ハロゲン化合物を脱ハロゲンさせるにあたり、その金属鉄として鋳鉄を用いることを特徴とする有機ハロゲン化合物汚染物の浄化方法。
【請求項2】 前記鋳鉄が、平均有効径500μm以下の粉状であることを特徴とする請求項1記載の有機ハロゲン化合物汚染物の浄化方法。
【請求項3】 前記粉状鋳鉄が、鋳鉄屑であることを特徴とする請求項2記載の有機ハロゲン化合物汚染物の浄化方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、有機ハロゲン化合物で汚染を受けた土壌・地下水などの浄化方法に関し、特に化学的並びに生物学的反応を組み合わせた脱塩素反応を利用することによって、短期間で、より簡便に汚染物質の浄化を達成する有機ハロゲン化合物汚染物の浄化方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】電子機械金属部品の脱脂・洗浄剤やドライクリーニングの洗浄剤として、テトラクロロエチレン(以下、「PCE」と略す)、トリクロロエチレン(以下、「TCE」と略す)、1,1,1−トリクロロエタンなどの揮発性有機塩素化合物などが広く使用されている。そのため、近年、こうした有機ハロゲン化合物による土壌や地下水の汚染が次々と報告されており、大きな社会問題となっている。
【0003】これらの有機ハロゲン化合物は、肝障害を引き起こし、あるいは発癌性を有することが報告されてきている。しかし、これらの有機ハロゲン化合物は、自然界では一般に容易には分解されない難分解性の物質である。また、難水溶性の物質でもある。そのため、多数の汚染域において土壌中で蓄積し、あるいは地下水へ浸透して行っているという問題が生じている。こうした問題を解決するため、目下、その分解、浄化、無害化に対する技術の確立が早急に要求されている。
【0004】例えば、上記のPCE、TCEあるいはジクロロエチレン(以下,「DCE」と略す)などの有機ハロゲン化合物で汚染された土壌・地下水を浄化する方法としてはこれまでも種々の方法が実施あるいは開発がされている。例えば従来から、汚染土壌の掘削除去及び焼却などが多く行われてきた。最近では新しい技術の開発も検討されている。その中で、微生物処理法(バイオレメディエーション)についての開発研究も行われている。
【0005】浄化技術を実際の汚染サイトに応用して適用しようとする場合には、経済性や安全性などの種々の要件を満足させることが必要である。こうした点を考えれば、種々の処理技術の中では前記した微生物処理技術が比較的効果のある浄化技術であるという位置づけをすることができる。しかし、この技術にしても長時間の処理時間を必要としたり、浄化対象物質の種類や濃度が限定されることから十分満足できる汚染浄化技術とは言い難かった。
【0006】このように従来は、低濃度から高濃度に至るまでの幅広い汚染濃度に対して高度な浄化率を達成し、低コストで、安全に、しかも簡単な処理システムにて有機塩素化合物汚染サイトを無害化処理することのできる新規な浄化方法が求められていたのに対し、本発明者らは、種々の微生物が多数共存する土壌中においては、化学的並びに生物的反応を組み合わせた嫌気脱塩素反応によると、実用的な有機塩素化合物の浄化作用があることを見いだし、有機塩素化合物汚染物の浄化方法として以下の手段が有効であることを確認し、特許出願した(特願平9−25367号)。なお、有機塩素化合物において確認されたこれらの作用は、他の有機ハロゲン化合物においても同様に発現することが考えられる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】このように有機ハロゲン化合物の汚染の浄化技術においては、低コストで、安全に、しかも簡単な新規な処理システムが緊急に求められているのは明白であるが、近年地球環境問題が深刻化し、持続的な発展が可能となる資源循環型への転換が求められており、有害物質浄化技術においても例外ではない。前記した有機塩素化合物汚染物の浄化方法においては、還元雰囲気状態で金属鉄を作用する関係上、その金属鉄は還元状態にあるものとなり、代表的には還元鉄を用いることが反応を進めるために好ましいが、この還元鉄は酸化鉄粉末などを還元して得る関係でコストが高くなるという問題がある。
【0008】ここで、還元鉄とは、酸化物の還元によって製造された金属鉄の一種をいい、きわめて細かい粉末状でありきわめて酸化されやすい(化学大辞典2、化学大辞典編集委員会、共立出版株式会社)。典型的には、高温下、水素ガスで還元されたものである。酸化鉄が還元されてもよいが、酸化物は酸化鉄には限られない。還元鉄には、Feの含有量が90%以上のものがある。例えば、和光純薬工業株式会社から入手できる。本発明は、低濃度から高濃度に到るまでの幅広い汚染濃度に対して高度の浄化率を達成し、低コストで、安全に、しかも簡単な処理システムにて有機ハロゲン化合物汚染サイトを、無害化処理することができ、且つ浄化の過程で産業廃棄物を有効に利用することができる新規な浄化方法の提供を目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、上記課題を以下の手段により解決することができた。
(1)有機ハロゲン化合物で汚染を受けた物質に、還元雰囲気状態で且つ中性条件下で、従属栄養型の嫌気性微生物の少なくとも1種を金属鉄とともに接触させ、有機ハロゲン化合物を脱ハロゲンさせるにあたり、その金属鉄として鋳鉄を用いることを特徴とする有機ハロゲン化合物汚染物の浄化方法。なお、該嫌気性微生物は汚染物中に元々存在する場合もあり、その場合は特に添加の必要はない。集積するため栄養分を添加してもよい。
(2)前記鋳鉄が、平均有効径500μm以下の粉状であることを特徴とする前記(1)記載の有機ハロゲン化合物汚染物の浄化方法。
(3) 前記粉状鋳鉄が、鋳鉄屑であることを特徴とする前記(2)記載の有機ハロゲン化合物汚染物の浄化方法。
【0010】この発明の更に具体的な態様を以下に列挙する。
(4)該汚染物が土壌、底質又は汚泥であり、その含水率が少なくとも25%(wt)であることを特徴とする前記(1)記載の有機ハロゲン化合物汚染物の浄化方法。
(5)前記中性条件についてpHが5.8〜8.5であることを特徴とする前記(1)記載の有機ハロゲン化合物汚染物の浄化方法。
(6)該汚染物にアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物の少なくとも1種を含有させることを特徴とする前記(1)記載の有機ハロゲン化合物汚染物の浄化方法。
(7)該汚染物に有機質系各種コンポスト、堆肥化有機物の少なくとも1種を混合することを特徴とする前記(1)記載の有機ハロゲン化合物汚染物の浄化方法。
【0011】(8)前記従属栄養型嫌気性微生物がメタン生成菌、硫酸還元菌の中から選ばれたものであることを特徴とする前記(1)記載の有機ハロゲン化合物汚染物の浄化方法。
(9)前記従属栄養型嫌気性微生物として2種以上の微生物を用いることを特徴とする前記(1)記載の有機ハロゲン化合物汚染物の浄化方法。
(10)前記嫌気性雰囲気状態として酸化還元電位(ORP)が0〜−600mVである条件とすることを特徴とする前記(1)記載の有機ハロゲン化合物汚染物の浄化方法。
【0012】本発明は、化学的並びに生物学的反応を組み合わせた嫌気脱ハロゲン反応を利用することによって、短時間でより簡便に当該汚染物質の浄化を達成し、かつ浄化の過程で産業廃棄物として出る鋳鉄屑を有効に利用することができる有機塩素化合物汚染物の新規な汚染浄化方法である。本発明は、本発明者らが先に出願した前記発明(特願平9−25367号)と同様に、化学的脱塩素反応の部分に関しては、土壌中の生物反応を用いて汚染土壌の中性的嫌気的環境の安定確保を行うことにより、鉄表面上で有機塩素化合物をはじめとする有機ハロゲン化合物の脱ハロゲン活性を高く保持する技術に係るものである。
【0013】本発明者らは、前記したように、種々の微生物が多数共存する土壌中においては、化学的並びに生物学的反応を組み合わせた嫌気脱ハロゲン反応によると、実用的な有機ハロゲン化合物の浄化作用があることを見いだした。化学的反応と生物学的反応の2種の反応の内、生物学的反応に関しては、前記のように、有機性廃水・廃棄物を前記従属栄養型嫌気性微生物の栄養源として添加すると良い。
【0014】
【発明の実施の形態】今回、前記の化学的反応に主要な役割を果たしている金属鉄に関し、その材料として、安全で取り扱いが容易であり、且つ高い浄化率を達成できる鉄含有産業廃棄物を求めて鋭意検討を行った結果、いわゆるヅクと呼ばれる鋳物製品の削り屑(鋳鉄屑)が有効であることを見いだし、本発明に至った。これにより、化学的並びに生物学的反応を組み合わせた嫌気脱ハロゲン反応を利用し、短時間でより簡便に当該汚染物質の浄化を達成し、かつ浄化の過程で産業廃棄物を有効に利用することが可能になった。
【0015】一般に、鉄鉱石を還元して製造される銑鉄から、さらに不純物を除いて産業利用される鉄のうち、炭素濃度が約2%(重量)以下のものを鋼、これ以上の炭素を含む物を鋳鉄という(「理化学辞典」第4版 1987年、第411頁)。鋼は機械的性質に優れているため、多くの工業製品に加工利用されている。その際に放出される鋼の削り屑を、有機ハロゲン化合物で汚染を受けた物質の浄化方法に用い得るかを検討したところ、その切削加工には油を用いるため、鋼製品の削り屑には油が含まれている。これを用いて本発明の有機ハロゲン化合物汚染物の浄化方法を行なおうとすれば、油による2次汚染を引き起こすおそれがある。これに対し、鋳物用に用いられる鋳鉄は、切削加工時に油を使用しないので、鋳物製品削り屑(鋳鉄屑)は前記鋼製品削り屑のような2次汚染を引き起こすおそれがない。
【0016】本発明者らが出願した前記発明(特願平9−25367号)明細書中にも述べた通り、金属鉄による嫌気脱塩素反応の反応機構は、還元鉄の反応について述べた先崎の報告(「有機塩素化合物汚染地下水の処理−金属鉄付着活性炭による低温下での処理技術」、PPM、1995年、第26巻、第5号、第64〜70頁)によれば、還元鉄表面に有機塩素化合物の吸着が起こり、同時に還元鉄表面において金属側と環境側の条件の差異によってアノードとカソードの分極が生じ、これによって電子の流れ(発生)が生じて鉄の溶出と還元作用(脱塩素反応)が生じるという反応である。
【0017】一方、鋳鉄は前記のように炭素濃度2%以上のものを言うが、一般には重量で3〜3.5%、容量では13〜14%の多量の炭素をグラファイトとして含有している。いわゆるヅクと呼ばれる鋳物製品削り屑(鋳鉄屑)は、廃棄物として排出される前に、一般にミルで粉砕されている。その粉砕時に一部のグラファイトは、離脱して鋳鉄粉の表面に付着する。このためこの鋳鉄粉が水膜で覆われるとグラファイトがカソードとして作用し、前記のような電子の流れ(発生)が生じて鉄の溶出と還元作用(脱塩素反応)が生じると考えられる。
【0018】本発明において処理することができる有機ハロゲン化合物汚染物としては、有機ハロゲン化合物により汚染された土壌、底質、汚泥や水などである。これらの中、特に土壌、汚泥などがその処理が求められているものである。処理する汚染物が土壌、汚泥などの場合、それの含水率は少なくとも25%(wt)以上であることが好ましい。具体的には40〜60%(wt)が好ましい。これは微生物の増殖上、さらには土壌、汚泥などの中に空気が入りにくい状態とする上で好ましいと考えられる。なお、この含水率の定義としては、(水分重量/湿潤土壌重量)×100によって求められる値を含水率(%)として表した。また、前記汚染物が水の場合には、全部が水であるから、含水率という問題はない。
【0019】本発明において処理する際には、還元雰囲気状態であることが必要である。この条件は、その処理に微生物を用いる際、従属栄養型嫌気性微生物を用いる関係で必要である。この還元雰囲気状態を具体的にいうと、酸化還元電位が0〜−600mVの範囲ということができ、好ましくは−100〜−500mVの範囲である。この酸化還元電位は、測定方法によってかなりの幅で差があるが、本発明で示す酸化還元電位値は、金属電極として白金電極、比較電極に飽和塩化銀電極を用いて測定された場合の電位を指すものである。よって、他の測定法で得られる電位値に対しては本発明でいう酸化還元電位値に換算して比較を行う必要があることはいうまでもない。また、その処理の条件は、中性条件であることが必要であるが、その中性条件をpH値で示すと、pH5.8〜8.5であり、好ましくはpH6〜8であり、さらに好ましくはpH6.2〜7.6である。
【0020】本発明の汚染土壌等の生物学的有機ハロゲン化合物汚染物質の浄化に作用する嫌気性微生物としては、従属栄養型嫌気性微生物が好ましく、土壌中に存在する主な従属栄養型嫌気性微生物としては、メタン生成細菌(例えば、Methanosarcina属、Methanothrix属、Methanobacterium属、Methanobrevibacter属)、硫酸還元細菌(例えば、Desulfovibrio属、Desulfotomaculum属、Desulfobacterium属、Desulfobacter属、Desulfococcus属)、酸生成細菌(例えば、Clostridium属、Acetivibrio属、Bacteroides属、Ruminococcus属)、通性嫌気性細菌(例えばBacillus属、Lactobacillus属、Aeromonas属、Streptococcus属、Micrococcus属)等があげられる。
【0021】前記の従属栄養型嫌気性微生物を培養するための培地としては、当該汚染土壌の微生物特性に応じて、下記に示すメタン生成微生物用培地あるいは硫酸還元微生物培地などのいずれかを選択すればよく、その選択に際しては浄化トリータビリティテスト(浄化適用性試験)によって汚染物質の浄化効率を調べて決定するものとする。メタン生成微生物のとしては、乳酸、メタノール、エタノール、酢酸、クエン酸、ピルビン酸、ポリペプトン等に代表されるメタン生成微生物の増殖栄養源として一般に知られている栄養素でよい。また、硫酸還元微生物の増殖栄養源としては、乳酸、メタノール、エタノール、酢酸、クエン酸、ピルビン酸、ポリペプトン、糖含有有機物等に代表される硫酸還元微生物の増殖栄養源として一般に知られている栄養素でよい。さらには、従属栄養型嫌気性微生物の増殖栄養源として、メタン発酵処理の対象となっている有機性廃水・廃棄物は効果的であり、例えば、ビール醸造廃水、でん粉廃水、酪農廃水、製糖廃水や、ビール粕、オカラ、汚泥等が挙げられる。
【0022】本発明における鋳鉄の使用量は、汚染物質が土壌の場合、土壌100g当たり0.01〜20g、好ましくは0.05〜10gであり、また汚染物質が水の場合、水100ml当たり0.1〜30g、好ましくは0.2〜20gである。
【0023】また、この処理を行う際には、中性条件を維持するために、pH調整剤を添加することができ、そのようなpH調整剤としては、アルカリ金属化合物やアルカリ土類金属化合物を用いることが好ましく、それとしては従来無機系土壌改良材として用いられたものを用いることができる。これらは主として土壌pHの中性付近への安定化に作用するものであり、例えば、石灰石、生石灰、消石灰、硫酸カルシウム(石膏)、酸化マグネシウム、ベントナイト、パーライト、ゼオライト等が挙げられる。さらに、この処理を行う際には、反応の進行上から、各種コンポスト、堆肥化有機物などを混合させることが好ましい。これらは、主として微生物添加効果や微生物栄養源の供給、水分保持に作用するものであり、従来有機系土壌改良材として知られたものを指す。
【0024】これらは、微生物栄養源並びに嫌気的環境の確保に作用し、さらには、土壌の嫌気醗酵にともなって発生する悪臭ガス、特に硫化水素やメチルメルカプタンをはじめとする硫黄系の悪臭ガスの分解・除去にも作用するものと考える。なお、各種のコンポストが、放線菌、細菌をはじめとする種々の微生物を含有し、硫黄系悪臭物質を効率良く分解する微生物が多数存在することは従来から良く知られていることであり、各種のコンポストに有用な無臭化微生物が多数存在することは従来から良く知られていることであり、種々のコンポストより有用な無臭化微生物が多数分離されていることや、家畜糞尿処理における悪臭除去対策としてもコンポストが利用されていることからも容易に推測することができる。
【0025】
【実施例】次に本発明を実施例により、具体的に説明する。ただし、これら実施例により本発明が限定されるものではない。
【0026】本実施例で記すPCE土壌浄化実験においては、第1表に示すメタン生成用微生物培地を用いた。また、いずれの浄化試験においても室温(15〜23℃)にて実施した。pHの測定は、土壌:純水=1:1(重量比)に調整し、東亜電波工業製pHメータHM−5B型にて測定した。また、酸化還元電位(ORP)の測定では、土壌:無酸素水=1:1(重量比)に調整し、東亜電波工業製ORPメータODIC−3型にてORP複合電極PS−816型電極を浸して30分間放置後測定した。なお、本実施例で示す酸化還元電位は、金属電極として白金電極、比較電極に飽和塩化銀電極を用いて測定した電位を示す。土壌中塩化エチレン類の分析は横浜国立大学で開発された方法(宮本健一ら、「土壌の低沸点有機汚染物質含有量の測定方法」、水環境学会誌、1995年、第18巻、第6号、第477〜488頁)に従い、エタノール抽出後にデカンへ転換して日立ガスクロマトグラフG−5000型、FID検出器にて分析を行った。
【0027】一方、気相中に発生した塩化エチレン類ガスの測定には、日立ガスクロマトグラフG−5000型、FID検出器にて、20% TCP Chromosorb WAW DMCS60〜80meshカラムにより分析した。また、気相中に発生したエチレン、エタンガスの測定には、日立ガスクロマトグラフG−5000型、FID検出器にて、Porapack Qカラムにより分析した。さらに、気相中に発生した水素、炭酸ガス、メタンの測定には、GLサイエンスガスクロマトグラフGC−320型、TCD検出器にてActive carbon 30/60もしくはMolecular sieve 13X にて分析した。
【0028】
【表1】

【0029】なお、第1表中のミネラル液1、ミネラル液2、微量ミネラル液、微量ビタミン液とは以下の通りである。ミネラル液1とは、1リットルの蒸留水中に6gのK2HPO4を含有している液をいう。ミネラル液2とは、1リットルの蒸留水中に6gのKH2PO4、6gの(NH42SO4、12gのNaCl、2.6gのMgSO4・7H2Oおよび0.16gのCaCl2・2H2Oを含有している液をいう。
【0030】微量ミネラル液とは、1リットルの蒸留水中に1.5gのニトリロ三酢酸、3.0gのMgSO4・7H2O、0.5gのMnSO4・2H2O、1.0gのNaCl、0.1gのFeSO4・7H2O、0.1gのCoSO4もしくはCoCl2、0.1gのCaCl2・2H2O、0.1gのZnSO4、0.01gのCuSO4・5H2O、0.01gのAlK(SO42、0.01gのH3BO3及び0.01gのNa2MoO4・2H2Oを含有している液をいう。まず、ニトリロ三酢酸をKOHでpH6.5にしながら溶解させ、次いで、他のミネラルを添加する。最終的には、KOHによりpH7.0に調整されている。微量ビタミン液とは、1リットルの蒸留水中に2mgのビオチン、2mgの葉酸、10mgのピリドキシン・塩酸、5mgのチアミン・塩酸、5mgのリボフラビン、5mgのニコチン酸、5mgのDL−パントテン酸カルシウム、0.1mgのビタミンB12、5mgのp−アミノ安息香酸および5mgのリポ酸を含有している液をいう。
【0031】実施例1A工場から採取したPCE汚染土壌(汚染濃度が乾燥土壌に換算して1kgにあたる量の土壌中にPCEを25mg含む汚染土壌)について浄化実験を行った。実験では、125ml容量のバイアル瓶に汚染土壌30gを分取し、メタン生成微生物培地、還元鉄もしくは鋳鉄屑、下水汚泥コンポストを以下に示す条件で混合し、PCEの分解を調べた。土壌への還元鉄、鋳鉄屑、下水汚泥コンポストの添加量は5%(重量)で行った。鋳鉄屑は篩で分け、平均有効径500μm以下を鋳鉄屑A、500〜800μmを鋳鉄屑B、800μm以上を鋳鉄屑Cとした。土壌浄化時の土壌水分含水率は48.4〜48.9%であった。ここでいう含水率(%)とは、(水分重量/湿潤土壌重量)×100によって求めた値である。実験では、土壌中のpH、酸化還元電位、PCE減少量、並びに気相部のエチレン・エタン生成量、水素・炭酸ガス・メタン生成量について調べた。なお、試料調整時にはバイアル瓶の気相部は窒素置換した。ここで用いた還元鉄は、市販されている和光純薬社製の1級還元鉄粉末である。
【0032】実験条件■ 汚染土壌30g■ 汚染土壌30g+メタン生成培地9.0ml+還元鉄1.5g+下水汚泥コンポスト1.5g■ 汚染土壌30g+メタン生成培地9.0ml+鋳鉄屑A1.5g+下水汚泥コンポスト1.5g■ 汚染土壌30g+メタン生成培地9.0ml+鋳鉄屑B1.5g+下水汚泥コンポスト1.5g■ 汚染土壌30g+メタン生成培地9.0ml+鋳鉄屑C1.5g+下水汚泥コンポスト1.5g【0033】実施例1での試験結果を第2表、第3表に示す。培養期間は60日である。第2表は、鋳鉄屑等による土壌中PCEの浄化結果を示す。第3表は、鋳鉄屑等による土壌中PCE浄化時の発生ガスを示す。これより、還元鉄と同様に、鋳鉄屑を用いても、PCEをエチレン・エタンへと脱塩素することが可能であり、特に、鋳鉄屑Aを用いることによってPCEは非常に効率よく脱塩素することが解る。還元鉄を用いた系および鋳鉄屑Aを用いた系では、土壌中PCEは検出されないレベルにまで浄化された。
【0034】鋳鉄屑でPCE汚染土壌を浄化した場合、土壌pHは7.2〜7.3と中性であり、酸化還元電位は−225〜−375mVと還元的環境が維持された。したがって、還元鉄を用いた土壌浄化法と鋳鉄屑での土壌浄化法を比較すると、両者の土壌環境には相違はないと言える。さらに、メタン生成微生物培地を添加した系ではいずれもバイアル瓶の気相部に炭酸ガスが発生していることから、微生物増殖が起きていると言える。すなわち、鋳鉄屑は土壌微生物の生育に阻害をもたらすことのない物質であると言える。
【0035】なお、第2表中の「土壌中PCE、pH、ORP」とは、培養60日後の値を表す。第3表中の「PCEのエチレン・エタン転換率」とは、培養60日間にエチレン・エタン転換したPCEの割合を表す。「H2 、CH4 、CO2 」はその間に発生した各ガスの量を表している。
【0036】
【表2】

【0037】
【表3】

【0038】実施例2実施例1と同様のPCE汚染土壌に更にPCEを添加することによりPCE含有量の異なった汚染土壌の試料を調製した。これにより、乾燥土壌に換算して1kgの量の土壌に、PCEを最終的に50mgの割合で含む汚染土壌、最終的に75mgの割合で含む汚染土壌、最終的に140mgの割合で含む汚染土壌、それぞれを得て浄化試験を行った。実験は、実施例1と同様に125ml容量のバイアル瓶に種々の汚染土壌30gを分取し、メタン生成微生物培地9.0ml、平均有効径500μm以下の鋳鉄屑A1.5g、下水汚泥コンポスト1.5gを混合し、PCEの分解を調べた。実験では、室温で培養し続け、63日後に土壌中のpH、酸化還元電位、PCEの減少量、並びに気相部のエチレン・エタン生成量を調べた。なお、試料調製時にはバイアル瓶の気相部は窒素置換して行った。
【0039】実験条件■ 汚染土壌(50mg−PCE/kg−乾燥土壌)30g■ 汚染土壌(50mg−PCE/kg−乾燥土壌)30g+メタン生成培地9.0ml+鋳鉄屑A1.5g+下水汚泥コンポスト1.5g■ 汚染土壌(75mg−PCE/kg−乾燥土壌)30g■ 汚染土壌(75mg−PCE/kg−乾燥土壌)30g+メタン生成培地9.0ml+鋳鉄屑A1.5g+下水汚泥コンポスト1.5g■ 汚染土壌(140mg−PCE/kg−乾燥土壌)30g■ 汚染土壌(140mg−PCE/kg−乾燥土壌)30g+メタン生成培地9.0ml+鋳鉄屑A1.5g+下水汚泥コンポスト1.5g【0040】実施例2の試験結果を第4表に示す。これより、乾燥土壌に換算して1kgの量の土壌に、PCEを50mg、75mg、140mgの割合で含む高濃度汚染土壌においても平均有効径500μm以下の鋳鉄屑Aを用いることで、エチレン・エタンへの脱塩素化が可能であり、本土壌浄化法の有効性が示されていることが分かった。本土壌浄化実験では、PCE分解産物として気相中および土壌中にわずかなTCEとcis−DCEの発生が認められたが、塩化ビニルはほとんど検出されなかった。
【0041】また、鋳鉄屑Aを用いた高濃度PCE汚染土壌の浄化において、土壌pHは7.2〜7.3と中性、酸化還元電位は−350〜−380mVと還元的環境が安定的に維持された。第4表中の「土壌中PCE、pH、ORP」は培養63日後の値を表す。第4表中の「PCEのエチレン・エタン転換率」とは、培養63日間にエチレン・エタンに転換したPCEの割合を表す。
【0042】
【表4】

【0043】
【発明の効果】本発明は、汚染を受けた物質に嫌気性微生物を金属鉄とともに接触させる汚染物の浄化方法で、その金属鉄として鋳鉄を用いることにより、有機ハロゲン化合物の低濃度から高濃度に到るまでの幅広い汚染濃度に対して高度の浄化率を達成できる。さらに、その処理に鋳鉄、例えば鋳鉄屑を用いることにより、低コストで、安全にしかも簡単な処理システムにて有機ハロゲン化合物汚染サイトを、無害化処理することができ、且つ浄化の過程で産業廃棄物を有効に利用することもできる。
【0044】本発明によれば、溶解性の低い土壌改良剤を組み合わせることで当該汚染土壌から汚染物質が溶出することをくい止めることができる。しかも、当該汚染土壌の保水性を適度に保持すれば、既に地下で生じている有機ハロゲン化合物汚染の汚染位置から更に深い深度にまでは汚染を拡大浸透させることなく浄化を達成できる。短期間に安価で簡便なプロセスで、有機ハロゲン化合物による汚染土壌・地下水を浄化させることが可能になり、かつ浄化の過程で産業廃棄物を有効に利用することができるようになる。
【出願人】 【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
【出願日】 平成10年(1998)6月18日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】萩野 平 (外3名)
【公開番号】 特開平11−70379
【公開日】 平成11年(1999)3月16日
【出願番号】 特願平10−171709