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【発明の名称】 汚染土壌の浄化方法
【発明者】 【氏名】神戸 浩美
【氏名】村上 直樹
【氏名】岡村 幸治
【課題】土壌浄化のための新規な方法の提供。

【解決手段】有機物で汚染された土壌に、発酵を終了した有機質材料を添加することを特徴とする、汚染土壌の浄化方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 有機物で汚染された土壌に、発酵を終了した有機質材料または実質的に発酵を行わない有機質材料を添加することを特徴とする、汚染土壌の浄化方法。
【請求項2】 前記汚染有機物が炭化水素系物質である請求項1に記載の方法。
【請求項3】 前記有機質材料が堆肥又は厩肥である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】 前記有機質材料が厩肥である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】 前記厩肥は牛糞厩肥である請求項4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、有機質材料を利用した汚染土壌の浄化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】炭化水素化合物等で汚染された土壌から汚染物質を除去する方法として、従来、物理的処理法(焼却等)、化学的処理法(界面活性剤等による洗浄等)、生物的処理法(汚染物質の微生物分解)が実施されてきた。なかでも生物的処理法は低コスト、省エネルギーに特長があり、最近、バイオレメディエーション技術として注目されている。バイオレメディエーションは、炭化水素化合物等で汚染された土壌に栄養(窒素、リン化合物)を添加し、撹拌等で土壌中に酸素を供給、水分量を制御することにより土着菌の有機物分解能力を高めて土壌を浄化する方法である。
【0003】上記の従来技術の生物学的浄化方法においては、通常、汚染土壌に窒素、リンを含む無機化合物を添加することにより土着菌に栄養を補給することによりそれを活性化して土壌中の汚染物を分解・除去する方法である(特表平7−507208号公報、特表平9−501841号公報)が、汚染土壌中に汚染物分解菌が存在しない場合や存在しても少い場合には効果が低い。また、土壌細菌の増殖に好適なpH範囲は6〜9であり(服部勉ら、「土の微生物学」(株)養質堂、p.13参照)であり、この範囲外のpHを有する土壌においては浄化が効果的でなく、あるいは、有効に土壌浄化を行うためには土壌のpH調整を行わなければならない、等の問題点があった。
【0004】特開平7−100459号公報には、汚染土壌に未完熟の有機質材料を添加して、土壌中でこれを分解させ、その分解過程で土壌中の汚染物をも平行して分解除去する方法が開示されている。しかしながら、この方法においては有機質材料が分解完熟する過程で悪臭が発生し、悪臭防止手段を別途構ずる必要があり、また有機質材料の発酵完熟のために酸素が必要であり、このために空気の供給等、コストの面で不利であった。さらに、発酵の程度で温度が上昇し、このために微生物が死滅する危険がある。
【0005】特開昭56−69291号公報及び特開昭63−201081号公報には、田畑などの土壌に有機質材料を添加して土壌に栄養及び微生物を補給することにより土壌の物理化学的及び生物的改良を行うことが記載されている。しかしこれは、土壌を改良することにより農作物の収量を増加させることを目的としており、油汚染された土壌等植物栽培に適さない土壌への添加について示唆されていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明は、pH調整の必要性や悪臭の発生を伴わないで、油などの有機物により汚染された土壌を効率よく改良するための方法を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課題を解決すべく種々検討した結果、発酵が終了し完熟した有機質材料を、有機物で汚染された土壌に添加することにより上記の課題が解決されることを見出し、本発明を完成させた。従って本発明は、有機質で汚染された土壌に、発酵を終了した有機質材料を添加することを特徴とする、汚染土壌の浄化方法を提供する。
【0008】
【発明の作用効果】発酵が終了した有機質材料には窒素化合物などの栄養分のほか多数の微生物が含まれており、また強いpH緩衝力を有している。従って、この有機質材料を土壌に添加することにより、土壌のpHが中性付近から大きくずれていた場合でも中性付近に調整され、また有機質材料から持ち込まれた微生物により土壌中の汚染物が効果的に分解・除去される。他方、発酵が終了した有機質材料は、急激に分解することがないから温度が上昇せず、また悪臭を発することもない。また本発明の方法により処理を行った土壌は植栽に適用できるという効果も有する。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明の方法は、微生物により分解され得る有機物により汚染された土壌に広く適用できるが、特に炭化水素系有機物、例えば切削油、潤滑油、重油等の油類により汚染された土壌のために特に有効である。本発明における有機質材料は、家畜などの動物の糞尿の混ざった敷わらなどに由来する厩肥、その他の有機材料を堆積して作った堆肥、排水を微生物処理する際に用いる活性汚泥等である。
【0010】本発明の有機質材料、例えば上記の厩肥、堆肥等は発酵が終了して完熟したものでなければならない。なお、発酵においては、有機質が微生物の作用により分解し、特に蛋白質は分解されて有機窒素は無機化する。この過程で大量の熱と悪臭が発生するが、発酵終了後には分解が緩慢となりもはや多量の熱や悪臭を発生しない。また、活性汚泥は実質的に発酵を行わないので厩肥、堆肥と同等の効果を有する。
【0011】本発明においては、汚染物質の種類、汚染の程度、有機材料の種類等により異るが、通常、汚染土壌に対して、5〜50重量%、好ましくは5〜10重量%の発酵済有機質材料を添加する。処理温度は例えば10〜30℃のごとく地上の常温でよい。分解時間は、汚染物の種類、汚染の程度(汚染物の濃度)等により異るがおよそ1〜10週間である。
【0012】実際の作業としては、例えば汚染土壌を耕して、それに有機質材料を混入し、混合すればよい。土壌の種類、有機質材料の混入量によっては処理途中の耕起は必ずしも必要でない。
【0013】
【実施例】次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。
実施例1.有機質資材の栄養としての添加効果潤滑油で汚染した土壌について厩肥(例えば牛糞厩肥)又は下水コンポストを添加して土着菌を活性化させることにより、油分を浄化させた例を図1のAに示す。この時の実験条件は6mmメッシュの篩をかけ礫等を除いた土壌200gに、潤滑油を噴霧しながら混合して均一に汚染させ(約5000ppm に調製)、厩肥又は下水コンポストを各々10wt%量添加し、30℃のインキュベーター内で4週間培養した。含水量調整試験体の総重量を測定し、その減少分に相当する無菌水の補充を2回/週(総重量法)、スパーテルを使った撹拌を1回/週実施した。またこの時土壌はステンレス丸型ポット(径10cm×高さ6cm、フタ付)に入れて実験した。
【0014】土壌中の油分定量は各土壌サンプル中より約6gずつ3点、サンプリングし乾燥させた後、粉砕し、n−ヘキサンにより抽出しn−ヘキサンを留去して80℃の恒温槽内で8時間乾燥させた後の残渣の重量をはかり油分量とした。図1のAより厩肥、下水コンポストを添加することより油分残存率が低下することがわかった。
【0015】排水処理場から採取した活性汚泥を遠心機(6000rpm ×2min )にかけ上清を捨てて残った汚泥を汚染土壌に対して10%量(湿重量)添加し均一になるように撹拌して混ぜて上記と同様に培養、土壌中の油分定量を行った結果を図1のBに示す。活性汚泥は3箇所の工場の排水処理場から入手した。図1のBより活性汚泥を添加した場合にも浄化は進んだ。
【0016】以上より、有機質材料を汚染土壌へ添加した場合には土着菌を活性化させ汚染土壌を浄化できるだけの栄養の添加効果が得られる。
実施例2.他の土壌への適用性実施例1は全て同じ土壌(表1中のA土壌)を用いて実験した結果であるが、他の種類の異なる土壌(表1参照)に厩肥(牛糞厩肥)を添加した場合について検討した結果を図2〜4に示す。実験方法は上記の実施例と同様である。
【0017】
【表1】

【0018】図2〜4より今回検討したいずれの土壌においても、厩肥を添加することにより良好に浄化が進むことがわかった。
実施例3.他の汚染物質に対する適用性実施例1及び2では潤滑油で汚染された土壌について検討したが、実施例3では他の汚染物質、例えばC重油で汚染された土壌についての適用性を示す。土壌をC重油で汚染させ上記と同様に厩肥(牛糞厩肥)を添加し、培養後、各土壌よりサンプリングし、乾燥、粉砕後、ジクロロメタンにより油分抽出を行い、残存油分の経時変化を調べた結果を図5に示す。これよりC重油で汚染された土壌を浄化する場合についても有効である。
【0019】実施例4.土壌pHの調整効果潤滑油で汚染した酸性土壌に栄養として無機塩、又は厩肥(牛糞厩肥)を添加した場合について残存油分の経時変化を図6に示す。実験条件は上記と同様であり、無機塩についてはリン酸塩、NH4 Clの混合物(K2 HPO4, KH2 PO4, NH4 Clを18:12:40の割合で混合し、土壌に対して窒素量として250ppm 添加した)を添加した場合について示した。
【0020】図6より、無機塩を添加した場合には浄化は全く進まなかったが、厩肥を添加した場合には順調に浄化が進んだ。この原因としては土壌pHの不適正が考えられたために調査した結果を表2に示す。表2より、厩肥を添加することにより土壌pHが4.3から6.1まで上昇していることがわかる。これは培養4週経過後まで維持されていた。したがって、厩肥にはpH緩衝効果があるので無機塩を添加する場合に比べpHを調整する手間及びコストを省くことができる。
【0021】土壌pHの測定方法は実験書(土壌標準分析・測定法委員会編「土壌標準分析・測定法」((株)博友社)p.70〜71)に準拠して次のように行った。土壌10gを50mlの遠沈管に計り取り、25mlの蒸留水を入れる。これを振とう機(YAMATO製SA31)にかけ横方向にスピードは180s・p・mで10分間振とうする。遠沈管を1時間以上静置し、pHメータ(ベックマン製P/N123132 PHI−10)で上清の土壌懸濁液のpHを測定した。
【0022】
【表2】

【0023】実施例5.微生物相の持ち込み効果厩肥による微生物相の持ち込み効果を調査するために、厩肥(牛糞厩肥)を滅菌して添加し、未滅菌のまま添加した場合との差異をみた結果を図7に示す。実験条件は実施例1と同様である。ただし、厩肥の滅菌はオートクレーブ(121℃,1.2気圧、20分間)滅菌を1日おきに3回実施したものを用いた。この時、厩肥中の微生物数を1/100NB寒天培地を用いた希釈平板法により測定し、コロニーが生成しないことを調べ、確実に滅菌されていることを確認した。
【0024】図7より、滅菌した厩肥を添加した場合浄化がほとんど進まないのに比べ、未滅菌の厩肥を添加した場合は浄化が進むことがわかった。これより、厩肥には微生物相の持ち込み効果があり、土着菌がいない、または数が少ない汚染土壌を浄化する場合には特に有効である。
【0025】実施例6.土壌物性の改良土壌に厩肥と無機塩をそれぞれ添加してカラムに充填後4週間培養した時の油残存率を示す。厩肥と土壌約2kg(湿土重量)をステンレス製バット内で均一に混合した後、カラム(塩ビ管、径5cm×高さ50cm)に充填し(充填密度:1.11g/cm3 )30℃のインキュベーター内で培養した。なお実施例1で行ったような撹拌処理は行わなかった。油分定量する時はカラムから土壌を全部外へ抜き出し上端から5cm、中央部分を5cm、下端から5cm切り取った。それぞれの底面の中央部をコルクボーラー(φ19mm)でくり貫きそれを均一に混合した後、3等分しサンプルとした。油分分析は実施例1と同様に行った。
【0026】図8より、厩肥を添加した場合には上層部において油分の分解がみられた。これは厩肥の添加により土壌の通気性が改良され、上層部には微生物活動に必要な空気が供給されたためと考えられる。一方、無機塩を添加した場合は上層部でもあまり分解が進まなかった。本来、無機塩添加で間欠撹拌培養を行った場合には厩肥添加時と同程度に分解が進むことから今回の結果の差は厩肥添加による土壌の通気性の改良効果によると考えられる。すなわち、通常の浄化処理に必須である撹拌処理を省略または低頻度化することが可能となる。また同時に厩肥を土壌に添加することで土壌の粘性を低下させ土壌の撹拌動力の省力化効果が期待できる。
【0027】実施例74週間浄化処理した後の土壌を用いて植栽試験を行った。肥料無添加の油汚染土壌(含有油分量4500ppm 、以下無肥料土壌)と10%厩肥(牛糞厩肥)を添加して4週間浄化処理した油汚染土壌(含有油分量3300ppm 、以下厩肥土壌)をプランターに充填した。これらの土壌と林から採取した油で汚染されていない土壌(以下非汚染土壌)に市販の二十日ダイコンを播種した。播種後、2日に1度灌水を行った。また2週間目以降、週に1回微粉ハイポネックス(N:P:K=5:10:5)(HYPONEX社製)の原液を500倍に希釈して施肥した。
【0028】1週間後から発芽し始め、無肥料土壌では21個中8個しか発芽していなかったのに対し、非汚染土壌では21個中16個、厩肥土壌では19個発芽していた。その後、無添加土壌でも徐々に発芽し始め、最終的には16個発芽していた(非汚染土壌と厩肥土壌では20個)。11週間後に両者の生長を比較した。無肥料土壌は地上部乾燥重量が0.090±0.027g、地下部乾燥重量が0.100±0.031g、厩肥土壌は地上部乾燥重量が0.227±0.090g、地下部乾燥重量が0.880±0.278g、非汚染土壌は地上部乾燥重量が0.193±0.065g、地下部乾燥重量が0.685±0.241gであった。このように厩肥土壌は無肥料土壌よりも著しく生長が良く、非汚染土壌よりも僅かに生長が良かった。厩肥土壌は特に地下部が発達しており、油分の影響による生長阻害は無く、正常に発育していたと考えられる。
【0029】本実施例より厩肥添加を行って浄化処理した土壌は、浄化処理後直ちに植栽が可能であることを確認した。結果を図9に示す。
【出願人】 【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【出願日】 平成9年(1997)8月7日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬 (外3名)
【公開番号】 特開平11−47727
【公開日】 平成11年(1999)2月23日
【出願番号】 特願平9−224468