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【発明の名称】 微生物の汚染物質分解活性の維持方法、及び環境修復方法
【発明者】 【氏名】古崎 眞也
【氏名】今村 剛士
【氏名】矢野 哲哉
【氏名】大久保 幸俊
【氏名】東家 良行
【氏名】三原 知恵子
【課題】微生物の分解活性をより長く維持させ、微生物と汚染物質との接触頻度を向上させにくい環境においても、環境修復の効率をより一層向上させる。

【解決手段】汚染物質で汚染された環境の微生物を用いた修復方法において、該汚染物質の分解活性を有する微生物を含む、汚染物質で汚染された環境中の汚染物質の量を測定し、その測定結果に応じて該環境の温度を、該微生物の分解活性が発現する第1の温度、及び該微生物の分解活性が発現しない第2の温度との間で制御する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 芳香族化合物およびハロゲン化脂肪族炭化水素化合物の少なくとも一方を分解可能な活性を有している微生物を、該活性が発現しない温度に保持することを特徴とする微生物の汚染物質分解活性の維持方法。
【請求項2】 該温度が0〜10℃の範囲の温度である請求項1記載の微生物の汚染物質分解活性の維持方法。
【請求項3】 該芳香族化合物が、フェノール及びクレゾールから選ばれる少なくとも一方である請求項1記載の微生物の汚染物質分解活性の維持方法。
【請求項4】 該ハロゲン化脂肪族炭化水素化合物が、ジクロロエチレン及びトリクロロエチレンの少なくとも一方である請求項1記載の微生物の汚染物質分解活性の維持方法。
【請求項5】 該微生物が、J1株FERM BP−5102である請求項1〜4のいずれか1項に記載の微生物の汚染物質分解活性の維持方法。
【請求項6】 該微生物が、JM1株FERM BP−5352である請求項1〜4のいずれか1項に記載の微生物の汚染物質分解活性の維持方法。
【請求項7】 該微生物が、TL1株FERM P−14726である請求項1〜4のいずれか1項に記載の微生物の汚染物質分解活性の維持方法。
【請求項8】 該微生物が、TL2株FERM P−14642である請求項1〜4のいずれか1項に記載の微生物の汚染物質分解活性の維持方法。
【請求項9】 汚染物質で汚染された環境の微生物を用いた修復方法において、該汚染物質の分解活性を有する微生物を含む、汚染物質で汚染された環境中の汚染物質の量を測定し、その測定結果に応じて該環境の温度を、該微生物の分解活性が発現する第1の温度、及び該微生物の分解活性が発現しない第2の温度との間で制御する工程を有することを特徴とする環境修復方法。
【請求項10】 該第1の温度が5〜40℃の範囲の温度である請求項9記載の環境修復方法。
【請求項11】 該第2の温度が0〜10℃の範囲の温度である請求項9記載の環境修復方法。
【請求項12】 該環境が水性媒体である請求項9記載の環境修復方法。
【請求項13】 該環境が土壌である請求項9記載の環境修復方法。
【請求項14】 該環境が気体である請求項9記載の環境修復方法。
【請求項15】 該汚染物質が芳香族化合物である請求項9記載の環境修復方法。
【請求項16】 該芳香族化合物が、フェノール及びクレゾールから選ばれる少なくとも一方である請求項15記載の環境修復方法。
【請求項17】 該汚染物質がハロゲン化脂肪族炭化水素化合物である請求項9記載の環境修復方法。
【請求項18】 該ハロゲン化脂肪族炭化水素化合物が、ジクロロエチレン及びトリクロロエチレンの少なくとも一方である請求項17記載の環境修復方法。
【請求項19】 該微生物がJ1株FERM BP−5102である請求項9記載の環境修復方法。
【請求項20】 該微生物がJM1株FERM BP−5352である請求項9記載の環境修復方法。
【請求項21】 該微生物がTL1株FERM P−14726である請求項9記載の環境修復方法。
【請求項22】 該微生物がTL2株FERM P−14642である請求項9記載の環境修復方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、微生物の汚染物質分解活性の維持方法、及び環境修復方法に関する。特に、芳香族化合物やハロゲン化脂肪族炭化水素化合物によって汚染された環境の修復に有効な生物的修復浄化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、生体に対して有害でありかつ難分解性である有機塩素化合物による環境汚染が大きな問題となってきている。特に、国内外のIC工場等のハイテク産業地域の土壌中にはテトラクロロエチレン(PCE)やトリクロロエチレン(TCE)、ジクロロエチレン(DCE)等の有機塩素化合物による汚染がかなりの範囲で拡がっていると考えられており、実際に環境調査等で検出された事例が多数報告されている。これらの有機塩素化合物は、土壌中に残留したものが雨水等により地下水中に溶解して周辺地域一帯に拡がるとされている。このような化合物は発癌性や生殖毒性の疑いがあり、また環境中で非常に安定であるため、特に飲料水の水源として利用されている地下水の汚染は大きな社会問題とされている。
【0003】このようなことから、有機塩素化合物の分解・除去による土壌の修復浄化は、環境保全の視点から重要な課題であり、浄化に必要な技術の開発が行われてきている。
【0004】例えば、TCE等の有機塩素化合物の、微生物を用いた分解は、その実用化に向けて種々の研究がなされている。この微生物を用いた分解処理は、用いる微生物を選択することで有機塩素化合物を無害な物質に分解できること、基本的に特別な薬品が不要であること、メンテナンスにかかる労力やコストを軽減できること等の利点がある。
【0005】有機塩素化合物分解能を有する微生物が単離された例としては、例えば、TCE分解菌としては、Welchia alkenophila sero 5(USP4877736,ATCC53570)、Welchia alkenophila sero 33(USP4877736,ATCC53571)、Methylocystis sp.strain M(Agric.Biol.Chem.,53,2903(1989)、Biosci.Biotech.Biochem.,56,486(1992)、同56,736(1992))、Methylosinus trichosprium OB3b(Am.Chem.Soc.Natl.Meet.Dev.Environ.Microbiol.,29,365(1989)、Appl.Environ.Microbiol.,55,3155(1989)、Appl.Biochem.Biotechnol.,28,877(1991)、特開平02-92274号公報、特開平03-292970号公報)、Methylomonas sp.MM2(Appl.Environ.Microbiol.,57,236(1991))、Alcaligenes denitrificans ssp.xylosoxidans JE75(Arch.microbiol.,154,410(1990))、Alcaligenes eutrophus JMP134(Appl.Environ.Microbiol.,56.1179(1990))、Alcaligenes eutrophus FERM-13761(特開平07-123976号公報)、Pseudomonas aeruginosa JI104(特開平07-236895号公報)、Mycobacterium vaccae JOB5(J.Gen.Microbiol.,82,163(1974)、Appl.Environ.Microbiol.,54.2960(1989)ATCC29678)、Pseudomonas putida BH(下水道協会誌,24,27(1987))、Pseudomonassp.strain G4(Appl.Environ.Microbiol.,52,383(1986)、同53,949(1987)、同54,951(1989)、同56,279(1990)、同57,193(1991)、USP4925802,ATCC53617、この菌は初めPseudomonas cepaciaと分類されていたが、Pseudomonas sp.に変更された。)、Pseudomonas mendocina KR-1(Bio/Technol.,7.282(1989))、Pseudomonasputida F1(Appl.Environ.Microbiol.,54,1703(1988)、同54,2578(1988))、Pseudomonas fluorescens PFL12(Appl.Environ.Microbiol.,54,2578(1988))、Pseudomonas putida KWI-9(特開平06-70753号公報)、Pseudomonas cepacia KK01(特開平06-227769号公報)、Nitrosomonas europaea(Appl.Environ.Microbiol.,56,1169(1990))、Lactobacillus vaginalis sp.nov(Int.J.Syst.Bacteriol.,39,368(1989)ATCC49540)等が挙げられる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、このような微生物を用いた環境修復においては、理想的には汚染物質の分解活性がピークにある又はピークに近い状態にある微生物と汚染物質とを効率よく接触させることが、環境修復の効率化の上では好ましい。しかし、この理想的な状況を実現するには種々の問題がある。
【0007】例えば、微生物を用いた環境修復においては、通常、汚染物質を分解可能な活性を備えた微生物を所定数以上にまで増殖させる必要がある。そして、この増殖は、修復しようとする環境中で行い環境修復と並行して行うことが可能であるが、増殖の際の培養条件の制御を環境中で正確に行うことは困難である。また、環境中で増殖させる場合にはコンタミネーションを防ぐことが困難である。
【0008】これらを考慮すると、コンタミネーションの無い状況下で培養・増殖を行った後にその微生物を環境に投入する方法が考えられる。しかし、微生物の増殖過程と、この微生物の修復すべき環境中への投入との間に時間的な間隔がある場合、微生物の有している汚染物質の分解活性が低下してしまい、上記の理想条件を満たし得ないことがある。
【0009】また、微生物による環境中の汚染物質の分解には、分解活性を有している微生物と汚染物質とが必要であるが、実際の環境中では微生物の周囲に常に汚染物質が存在しているとは限らない。例えば、微生物がその存在領域の汚染物質を分解してしまった後に、その領域に周囲から新たな汚染物質の流入が無い場合がある。具体的には、汚染されている環境が、滞留している汚染された地下水の場合、この地下水中に分解活性を有する微生物を固定した担体を投入したとしても、地下水の循環が無いため、担体の周囲にある地下水に含まれる汚染物質が分解された後には、この担体の周囲には新たな汚染物質が移動して来ず、微生物の周囲に汚染物質が存在しないという状況が生じる。そして、汚染物質が周囲にない場合であっても、微生物の分解活性は経時的に低下する。これらから、効率的な環境修復のためには、このような状況が解消されるように、攪拌などの物理的擾乱をこの環境に加えて微生物と汚染物質との接触頻度を向上させることが好ましいが、実際の環境ではこのような擾乱を加えられない状況がほとんどである。
【0010】そこで本発明は、このような問題点を鑑みなされたものであり、微生物の分解活性をより長く維持させることを目的とする。また、微生物と汚染物質との接触頻度を向上させにくい環境においても、環境修復の効率をより一層向上させることのできる環境修復方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記の目的は以下の本発明によって達成される。
【0012】本発明は、芳香族化合物およびハロゲン化脂肪族炭化水素化合物の少なくとも一方を分解可能な活性を有している微生物を、該活性が発現しない温度に保持することを特徴とする微生物の汚染物質分解活性の維持方法に関する。
【0013】また、本発明は、汚染物質で汚染された環境の微生物を用いた修復方法において、該汚染物質の分解活性を有する微生物を含む、汚染物質で汚染された環境中の汚染物質の量を測定し、その測定結果に応じて該環境の温度を、該微生物の分解活性が発現する第1の温度、及び該微生物の分解活性が発現しない第2の温度との間で制御する工程を有することを特徴とする環境修復方法に関する。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を挙げて詳細に説明する。
【0015】微生物による汚染物質の分解は、微生物に分解菌として活性が存在すること、及び微生物と汚染物質が接触することが必要である。汚染物質が分解菌の存在領域に存在しない場合、例えば、分解菌がその存在領域の汚染物質をすでに分解してしまって汚染物質が分解菌の存在領域に流入してきていない場合や、汚染物質が分解菌の存在領域に流入してきていない場合などがある。分解菌に高い活性があったとしても汚染物質との接触がない状態ではその活性は分解に利用されることがなく、やがては消失してしまう。また、汚染物質が存在していても、その濃度が接触する分解菌の分解活性に比べて、あるいは汚染領域全体の汚染濃度に比べてかなり低い場合には、分解が全く行われないわけではないが、浄化効率としては非常に悪いものとなる。
【0016】具体的な例としては、例えば、汚染された媒体が移動速度の緩慢な地下水の場合、微生物の存在領域(例えば分解菌を担体に固定化したものを地下水通路に埋め込んだとき)への地下水の流入が緩慢であるため、微生物存在領域を通過する汚染物質の量が大幅に変動することがある。また、リアクター等のon−siteの浄化においても汚染物質の供給量に変動があることがある。また、汚染された媒体が土壌であって、例えば汚染物質がTCEやDCEのように揮発性物質の場合において、ポンプで土壌内の空気を循環させてこれらの揮発性汚染物質を微生物存在領域に供給するときに、土質などの影響により循環による汚染物質の移動が緩慢となり、微生物存在領域への供給速度の遅い場合が挙げられる。汚染された媒体が気体の場合は、例えば土壌から真空抽出してきた汚染空気をリアクターで処理する際に、抽出した空気中の汚染物質の含有量に変動がある場合が挙げられる。これらの例は一例に過ぎず、汚染現場の多様性を考えると、さらに様々な状況があり、またこれからも出現する可能性がある。
【0017】そこで、分解菌の活性が高いときに分解菌の存在領域に汚染物質がない場合、あるいはその濃度が低い場合には、分解菌の活性を発現させずに活性を維持させるようにし、分解菌の存在領域に汚染物質が高濃度で存在するようになったときに再び活性を復活させることによって浄化効率は高まると考えられる。
【0018】本発明の一つの実施形態は、汚染された媒体中に分解菌が存在し、汚染物質が分解浄化され得るとき(分解浄化期間中)において、分解菌の活性を発現させずに活性を維持させる温度(活性維持温度)と、実際に汚染物質の分解を行わせるために活性を発現させる温度(活性発現温度)を、分解菌の存在領域においてその領域内の汚染物質の濃度に応じて制御することによって、汚染された媒体を効率的に修復浄化する方法である。
【0019】また、分解菌の存在環境を活性維持温度に制御することは、分解菌が汚染媒体中に存在する以前においても有効である。すなわち、分解菌を培養槽において増殖させ、この分解菌を汚染媒体中に供給するにあたり、分解菌の培養と汚染媒体中への供給との間に時間的な隔たりがある場合、例えば培養槽から汚染現場までの分解菌の移送に時間がかかる場合や、分解菌を高濃度に濃縮して汚染媒体に供給する際の濃縮操作に時間がかかる場合では、汚染媒体中において分解菌が汚染物質と接触できたときには既に活性が低下してしまっている可能性がある。特に汚染媒体中で分解菌が増殖を行わず、供給した分解菌だけで汚染物質の分解を行わせる場合には、このときの分解菌の活性低下は浄化の大きな妨げになる。こうした場合には、分解菌を培養槽において増殖させて分解活性を具備させた後に、分解菌の存在環境すなわち培養液を活性維持温度に制御することによって活性の維持を行うことができ、この状態で汚染媒体中への供給を行えば、培養時からほとんど活性を低下させることなく分解菌と汚染物質との接触を実現することができる。
【0020】すなわち本発明の他の実施の形態は、分解菌を培養して分解活性を具備させた後であって、分解菌を汚染媒体中に供給して汚染物質の分解浄化をする以前(分解浄化期間前)において、分解菌の存在環境を、分解菌の活性を発現させずに活性を維持させる温度(活性維持温度)に制御することにより、汚染された媒体を効率的に修復浄化する方法である。
【0021】活性維持温度は、通常の分解菌が活性を発現しない温度、具体的には0〜10℃、より好ましくは2〜4℃の範囲である。この温度領域においては、微生物の活性を高温領域よりも特に長期にわたって維持することができる。一例としてJM1の場合は、4℃で保存した場合、3日で約60%、5日で約40%の活性が維持される。
【0022】分解浄化温度(活性発現温度)としては、通常の分解菌が活性を発現する温度であればよく、速やかに浄化を完了したい場合には至適温度に、比較的長期にわたって活性を持たせたい場合にはそれよりもやや低めの温度にする等、汚染媒体の汚染状況や温度、コスト等に応じて最適な温度を設定すればよい。通常の分解菌では具体的には5〜40℃の範囲が好ましい。
【0023】分解菌存在環境の温度の制御方法としては、どのような方法を採っても構わない。例えば、分解菌存在環境が水性媒体の場合や気体の場合は、サーモスタット付きクーラーを導入するなどにより、比較的容易に制御できる。分解菌存在環境が土壌中である場合には、冷却空気を直接的、あるいは導管を通す等の間接的に導入する方法(この場合、密閉系であればアンモニアガス等の空気以外の気体でもよい。)、冷却水を散布する方法、冷却水を直接的、あるいは導管を通す等の間接的に導入する方法(この場合、密閉系であれば冷媒や有機溶媒でもよい。)、水に溶解する際に吸熱反応を起こし得る塩類等を導入する方法などがある。
【0024】分解菌存在環境の温度制御時期を決定するには、分解菌存在領域の汚染物質濃度をモニタリングするのが最適である。モニタリングのためのサンプリング方法としては、汚染媒体が水性媒体のときは汚染水をサンプリング管から採取する。汚染媒体が土壌のときは土壌そのものを採取するか、採取できなければ埋設したサンプリング管から、揮発性の汚染物質ならばガスを、揮発性でなければ土壌水を採取する。汚染媒体が気体であれば気体そのものを採取する。採取された汚染物質は分析機器等を用いて濃度を測定すればよい。
【0025】本発明に用いる微生物としては、芳香族化合物及び/或いは有機塩素化合物を分解し得る微生物であればいかなるものでもよく、具体的にはシュードモナス(Pseudomonas)属、アシネトバクター(Acinetobacter)属、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、ビブリオ(Vibrio)属、ノカルジア(Nocardia)属、バチルス(Bacillus)属、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、アクロモバクター(Achromobacter)属、アルスロバクター(Arthrobacter)属、ミクロコッカス(Micrococcus)属、マイコバクテリウム(Mycobacterium)属、メチロシナス(Methylosinus)属、メチロモナス(Methylomonas)属、ベルキア(Welchia)属、メチロシスチス(Methylocystis)属、ニトロゾモナス(Nitrosomonas)属、サッカロミセス(Saccharomyces)属、カンジダ(Candida)属、トルロプシス(Torulopsis)属に属する微生物が挙げられ、例えば、J1株FERM BP−5102、JM1株FERM BP−5352、シュードモナス・スピーシズTL1株FERM P−14726、アルカリゲネス・スピーシズTL2株FERM P−14642等を挙げることができる。
【0026】本発明に用いる微生物を培養するために用いられる培地としては、LB培地、2xYT培地などの通常の微生物の生育に必要であって微生物が生育可能であればいかなる培地でもよく、例えばM9培地に炭素源を添加したもので培養することも可能である。M9培地の組成例として、Na2HPO4:6.2g、KH2PO4:3.0g、NaCl:0.5g、NH4Cl:1.0g(培地1リットル中、pH7.0)が挙げられる。培養は好気条件下で行なうことができ、15〜30℃程度の培養温度での液体培養が望ましい。
【0027】本発明における芳香族化合物及び/或いは揮発性有機塩素化合物の分解処理は、水性媒体中、土壌中、及び気相中の芳香族化合物及び/或いは有機塩素化合物と分解菌とを接触させることによって行なうことができる。分解菌と芳香族化合物及び/或いは有機塩素化合物との接触は、微生物が分解活性を発現し得る条件であればいかなる方法でも行なうことができ、バッチ法、半連続法、連続法などの種々の方法を用いて実施できる。分解菌は半固定状態で或いは適当な担体に固定化して用いることもできる。廃液、土壌、気相等の被処理物は、必要に応じて各種処理を行ってもよい。
【0028】本発明における水性媒体中の芳香族化合物及び/或いは有機塩素化合物の分解処理は、水性媒体中に存在する芳香族化合物及び/或いは有機塩素化合物と分解菌とを接触させることによって行なうことができる。以下に主な利用形態を述べるが、これらの形態に限定されることなく、本発明の方法はいかなる水性媒体中の芳香族化合物及び/或いは有機塩素化合物汚染の浄化処理にも利用可能である。
【0029】例えば、最も簡便な方法としては、芳香族化合物及び/或いは有機塩素化合物によって汚染された水性媒体中に直接に分解菌を導入する方法がある。この場合、水性媒体のpHや、塩濃度、温度、汚染物質の濃度等を調整することが望ましい。
【0030】また別の利用形態としては、培養槽を設けて分解菌を培養し、この培養槽に芳香族化合物及び/或いは有機塩素化合物で汚染された水性媒体を所定の流量で導入し、分解させる形態がある。水性媒体の導入および排水は連続して行ってもよいが、処理能力に応じて間欠的に、あるいはバッチ式で処理することも可能である。このような制御を芳香族化合物及び/或いは有機塩素化合物の濃度に合わせてシステム制御し最適化を図るとよい。
【0031】さらに、分解菌を担体、例えば土壌粒子等に付着させ、これを反応層に充填し、この反応槽内に芳香族化合物及び/或いは有機塩素化合物汚染水性媒体を導入して分解処理を行う形態がある。この場合、使用する担体は、土壌粒子に限らずいかなるものでも利用可能であるが、微生物の保持能力に優れ、通気性を損なわないようなものがより望ましい。例えば、微生物の棲息空間を与えるような材料として、従来、医薬品工業、食品工業、廃水処理システム等で利用されているバイオリアクタで汎用されているさまざまな微生物用担体が利用できる。より具体的には、多孔質ガラス、セラミクス、金属酸化物、活性炭、カオリナイト、ベントナイト、ゼオライト、シリカゲル、アルミナ、アンスラサイト等の無機粒子状担体、デンプン、寒天、キチン、キトサン、ポリビニルアルコール、アルギン酸、ポリアクリルアミド、カラギーナン、アガロース、ゼラチン等のゲル状担体、イオン交換性セルロース、イオン交換樹脂、セルロース誘導体、グルタルアルデヒド、ポリアクリル酸、ポリウレタン、ポリエステル等が挙げられる。また天然物として、綿、麻、紙類といったセルロース系のもの、木粉、樹皮といったリグニン系のものも利用可能である。
【0032】本発明における土壌中の芳香族化合物及び/或いは有機塩素化合物の分解処理は、土壌中に存在する芳香族化合物及び/或いは有機塩素化合物と分解菌とを接触させることによって行なうことができる。以下に主な利用形態を述べるが、これらの形態に限定されることなく、本発明の方法はいかなる土壌中の芳香族化合物及び/或いは有機塩素化合物汚染の浄化処理にも利用可能である。
【0033】例えば、最も簡便な方法としては、芳香族化合物及び/或いは有機塩素化合物によって汚染された土壌中に直接に分解菌を導入する方法がある。導入の方法としては、土壌表面に散布する方法はもとより、比較的深い地層中の処理の場合には、地中に挿入した井戸から導入する方法がある。さらに、空気や水などによって圧力をかけると広範囲に分解菌が拡がり、より効果的である。この場合、土壌中の諸条件を分解菌に適するように調整する必要があるが、分解菌の多くは土壌粒子等の担体の存在下でより増殖が速められ、好都合である。さらに、通常、土壌中の平均温度とされている15℃程度でも遜色なく増殖し、十分に分解活性を維持し得る。
【0034】また、分解菌を担体に付着させ、これを反応槽に充填し、この反応槽を芳香族化合物及び/或いは有機塩素化合物で汚染された土壌の、主に帯水層中に導入し分解処理を行う形態がある。反応槽の形態はフェンス状やフィルム状のような、土壌中の広範囲を網羅できるものが望ましい。この場合、使用する担体は、いかなるものでも利用可能であるが、微物の保持能力に優れ、通気性を損なわないようなものがより望ましい。例えば、微生物の棲息空間を与えるような材料として、従来、医薬品工業、食品工業、廃水処理システム等で利用されているバイオリアクタで汎用されているさまざまな微生物用担体が利用できる。より具体的には、多孔質ガラス、セラミクス、金属酸化物、活性炭、カオリナイト、ベントナイト、ゼオライト、シリカゲル、アルミナ、アンスラサイト等の無機粒子状担体、デンプン、寒天、キチン、キトサン、ポリビニルアルコール、アルギン酸、ポリアクリルアミド、カラギーナン、アガロース、ゼラチン等のゲル状担体、イオン交換性セルロース、イオン交換樹脂、セルロース誘導体、グルタルアルデヒド、ポリアクリル酸、ポリウレタン、ポリエステル等が挙げられる。また天然物として、綿、麻、紙類といったセルロース系のもの、木粉、樹皮といったリグニン系のものも利用可能である。
【0035】本発明における気相中の芳香族化合物及び/或いは有機塩素化合物の分解処理は、気相中に存在する芳香族化合物及び/或いは有機塩素化合物と分解菌とを接触させることによって行なうことができる。以下に主な利用形態を述べるが、これらの形態に限定されることなく、本発明の方法はいかなる気相中の芳香族化合物及び/或いは有機塩素化合物気相汚染の浄化処理にも利用可能である。
【0036】例えば、培養槽を設けて分解菌を培養し、この培養槽に芳香族化合物及び/或いは有機塩素化合物で汚染された気体を所定の流量で導入し、分解させる形態がある。気体の導入法についてはなんら制限はないが、気体の導入により培養液が攪拌されエアレーションが促進される形態がより望ましい。気体の導入および排気は連続して行ってもよいが、処理能力に応じて間欠的に、あるいはバッチ式で処理することも可能である。このような制御を芳香族化合物及び/或いは有機塩素化合物の濃度に合わせてシステム制御し最適化を図るとよい。
【0037】また別の利用形態としては、分解菌を担体、例えば土壌粒子等に付着させ、これを反応層に充填し、この反応槽内に芳香族化合物及び/或いは有機塩素化合物汚染気体を導入して分解処理を行う形態がある。この場合、使用する担体は、土壌粒子に限らずいかなるものでも利用可能であるが、微生物の保持能力に優れ、通気性を損なわないようなものがより望ましい。例えば、微生物の棲息空間を与えるような材料として、従来、医薬品工業、食品工業、廃水処理システム等で利用されているバイオリアクタで汎用されているさまざまな微生物担体が利用できる。より具体的には、多孔質ガラス、セラミクス、金属酸化物、活性炭、カオリナイト、ベントナイト、ゼオライト、シリカゲル、アルミナ、アンスラサイト等の無機粒子状担体、デンプン、寒天、キチン、キトサン、ポリビニルアルコール、アルギン酸、ポリアクリルアミド、カラギーナン、アガロース、ゼラチン等のゲル状担体、イオン交換性セルロース、イオン交換樹脂、セルロース誘導体、グルタルアルデヒド、ポリアクリル酸、ポリウレタン、ポリエステル等が挙げられる。また天然物として、綿、麻、紙類といったセルロース系のもの、木粉、樹皮といったリグニン系のものも利用可能である。
【0038】さらに、分解菌の保持と栄養供給を兼用できる材料としては、農林水産業関係で利用される堆肥など、その例を多く挙げることができる。すなわち、麦わら等の穀物類の藁や、大鋸屑、米糠、雪化菜、砂糖黍の絞りかす等の植物由来の乾燥物、またカニやエビの殻などの海産廃棄物などが利用できる。
【0039】汚染気体の浄化処理においては、担体になる物質を予め充填した上で分解菌を導入してもよいし、前培養してもかまわない。分解反応をより効率的に行わせるためには、先に述べた栄養素や含水比、酸素濃度などを所望の条件に保つとよい。また、反応槽内の担体と水分量の比は、分解菌の生育と通気性から、適宜選択すればよく、反応槽の形態は、処理する気体の量や濃度などにより適宜選択すればよいが、気体と担体に保持される分解菌との接触が促進されるように配慮するとよく、例えば、カラム、チューブ、タンク、箱形のものを利用することができる。さらに、このような形状のものを排気ダクトやフィルタ等とユニット化してもよいし、能力にあわせていくつかを連続させてもよい。
【0040】汚染気体は、初め担体材料に吸着する場合もあり、分解菌の利用の効果がうまく観察されない例も稀にあるが、一定期間の後には担体材料に付着した汚染物質が分解され、その汚染物質の分解した材料表面に再度汚染物質が吸着することにより、担体材料への吸着性が再生される。このようにして、汚染除去能は飽和することなく常に一定の分解が期待できる。
【0041】以上のような浄化処理における分解菌の増殖材料としては、先にも述べたようにー般に用いられる微生物培養用の培地を使用できる。例えば、ブイヨン培地、M9培地、2xYT培地、L培地、あるいはポリペフトン、酵母エキス等と糖や有機酸などの炭素源とを任意に混合した培地などが有効である。また、これらの培地は液状、あるいはアガロースを加えることによりゲル状に調製したもの等、いずれも利用可能である。
【0042】本発明の方法は、閉鎖系および開放系のいずれの廃液処理、土壌処理ならびに空気処理の方法にも適用できる。なお、微生物を担体等に固定して用いたり、生育を促進する各種の方法を併用してもよい。
【0043】
【実施例】以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらに限定するものではない。
【0044】(実施例1)JM1株による水性媒体中のTCE分解における分解浄化期間前での温度制御の効果分解菌の培養を行ってから分解菌を汚染媒体に供給するまでの間に時間を要する場合をシミュレートし、分解浄化期間前での温度制御の効果を評価した。
【0045】リンゴ酸ナトリウム1.0%含有M9寒天培地上のJM1株のコロニーを、坂口フラスコ中のリンゴ酸ナリウム2.0%含有M9培地200mlに接種し、15℃で70時間振とう培養を行ったものを4℃で保存した。経時的にその内の10mlを27.5ml容バイアル瓶に移し、ブチルゴム栓およびアルミシールで密閉した後、ガス状のTCEをTCEが液中に全てとけ込んだと仮定して10ppmとなるようにシリンジで加え、15℃で振とうし、12時間後に気相部分のTCE濃度をガスクロマトグラフィーで測定した。対照として上記4℃で行った保存を全て15℃で行ったものを用いた。
【0046】各菌液採取時間でのTCEの残存率を表1に示す。15℃で保存した菌に比べ、4℃で保存した菌は明らかに分解活性を維持していることがわかる。
【0047】
【表1】

(実施例2)JM1株による水性媒体中のTCE分解における分解浄化期間中での温度制御の効果汲み上げた地下水中の汚染物質をリアクターで処理する場合等において、地下水中の汚染物質の濃度が変化する様子をシミュレートし、そのときの温度制御の効果を評価した。
【0048】リンゴ酸ナトリウム1.0%含有M9寒天培地上のJM1株のコロニーを、坂口フラスコ中のリンゴ酸ナトリウム2.0%含有M9培地200mlに接種し、15℃で70時間振とう培養を行った。
【0049】この培養液10mlを27.5ml容バイアル瓶に移し、(1)ブチルゴム栓およびアルミシールで密閉した後、ガス状のTCEをTCEが液中に全てとけ込んだとして10ppmとなるようにシリンジで加えた。(2)バイアル瓶を15℃で12時間振とうした後、気相部分のTCE濃度をガスクロマトグラフィーで測定した。(2)次に、密栓を開放し、TCEを揮散させた後、4℃で12時間保存した。以下、(1)〜(3)の操作を繰り返した。対照として、上記4℃で行った保存を全て15℃で行ったものを用いた。
【0050】TCE添加12時間後の各回のTCE残存率を表2に示す。15℃で保存した菌に比べ、4℃で保存した菌は明らかに分解活性を維持していることがわかる。
【0051】
【表2】

(実施例3)JM1株による水性媒体中のDCE分解における分解浄化期間中での温度制御の効果汲み上げた地下水中の汚染物質をリアクターで処理する場合等において、地下水中の汚染物質の濃度が変化する様子をシミュレートし、そのときの温度制御の効果を評価した。
【0052】TCEの代わりに、cis−1,2−ジクロロエチレン(cis−1,2−DCE)、trans−1,2−ジクロロエチレン(trans−1,2−DCE)を10ppm、1,1−ジクロロエチレン(1,1−DCE)を5ppmとなるようにした以外は実施例2と同様の方法でDCE濃度を測定した。対照として上記4℃で行った保存を全て15℃で行ったものを用いた。
【0053】TCE添加4回目の各残存率を表3に示す。15℃で保存した菌に比べ、4℃で保存した菌は明らかに分解活性を維持していることがわかる。
【0054】
【表3】

(実施例4)J1株による水性媒体中のフェノール分解における分解浄化期間中での温度制御の効果汲み上げた地下水中の汚染物質をリアクターで処理する場合等において、地下水中の汚染物質の濃度が変化する様子をシミュレートし、そのときの温度制御の効果を評価した。
【0055】酵母エキス0.1%含有M9寒天培地上のJ1株のコロニーを、坂口フラスコ中の同組成培地200mlに接種し、22℃で24時間振とう培養を行った。
【0056】(1)この培養液にフェノールを100ppmとなるように加え、15℃で12時間振とうした後、培養液中のフェノール濃度を測定した。(2)次にこの培養液を遠心分離(8000rpm、10分、4℃)することによって集菌し、M9培地200mlに再懸濁して培養液中の残存フェノールを菌から除去し、4℃で12時間保存した。以下。(1)及び(2)の操作を繰り返した。
【0057】フェノールの定量方法としては、砂10gに10mlの滅菌水を加え、1分間攪拌抽出した上澄み中のフェノールに対し、アミノアンチピリンを用いたJIS法による検出法(JIS K0102−1993,28.1)で行った。対照として、上記4℃で行った保存を全て15℃で行ったものを用いた。
【0058】フェノール添加12時間後の各回のフェノール残存率を表4に示す。15℃で保存した菌に比べ、4℃で保存した菌は明らかに分解活性を維持していることがわかる。
【0059】
【表4】

(実施例5)TL1株による水性媒体中のクレゾール分解における分解浄化期間中での温度制御の効果汲み上げた地下水中の汚染物質をリアクターで処理する場合等において、地下水中の汚染物質の濃度が変化する様子をシミュレートし、そのときの温度制御の効果を評価した。
【0060】酵母エキス0.1%含有M9寒天培地上のTL1株のコロニーを、坂口フラスコ中の同組成培地200mlに接種し、25℃で24時間振とう培養を行った。
【0061】分解対象物としてフェノールに代わりにo−クレゾ−ル及びm−クレゾール(共に300ppm)、対照の保存温度を20℃とした以外は、実施例4と同様の方法でクレゾール濃度を測定した。
【0062】各クレゾールの定量は、フェノ−ルと同様の抽出法でp−ヒドラジノベンゼンスルホン酸を用いたJIS法による検出法(JlS K0102−1993,28.2)により行った。
【0063】各クレゾール添加3回目の残存率を表5に示す。20℃で保存した菌に比べ、4℃で保存した菌は明らかに分解活性を維持していることがわかる。
【0064】
【表5】

(実施例6)JM1株による土壌中のTCE分解における分解浄化期間前での温度制御の効果分解菌の培養を行ってから分解菌を汚染媒体に供給するまでの間に時間を要する場合をシミュレートし、分解浄化期間前での温度制御の効果を評価した。
【0065】リンゴ酸ナトリウム1.0%含有M9寒天培地上のJM1株のコロニーを、坂口フラスコ中のリンゴ酸ナトリウム2.0%含有M9培地200mlに接種し、15℃で70時間振とう培養を行った。
【0066】この培養液を遠心分離(8000rpm、10分、4℃)することによって集菌し、M9培地に再懸濁して菌濃度を5倍に高めた。この高濃度菌液を4℃に保存した。次に、68ml容バイアル瓶に佐原通し砂(末滅菌)50gを入れ、上記の菌液5mlを経時的にその砂中に加え、ブチルゴム栓およびアルミシールで密閉した後、ガス状のTCEをシリンジで加えた。このとき、バイアル瓶の溶液中のTCE濃度が50ppm(全てのTCEが水中に溶解したときの濃度)となるようにした。15℃で12時間静置した後、気相部分のTCE濃度をガスクロマトグラフィーで測定した。対照として同様に作製した高濃度菌液を15℃で保存したものを用いた。
【0067】各菌液採取時間でのTCEの残存率を表6に示す。15℃で保存した菌に比べ、4℃で保存した菌は明らかに分解活性を維持していることがわかる。
【0068】
【表6】

(実施例7)JM1株による土壌中のTCE分解における分解浄化期間中での温度制御の効果土壌中の汚染物質を空気循環によってin‐situで処理する場合等において、循環空気中の汚染物質の濃度変化によって分解菌存在領域への汚染物質の供給量が変化する様子をシミュレートし、そのときの温度制御の効果を評価した。
【0069】リンゴ酸ナトリウム1.0%含有M9寒天培地上のJM1株のコロニーを、坂口フラスコ中のリンゴ酸ナトリウム2.0%含有M9培地200mlに接種し、15℃で70時間振とう培養を行った。
【0070】次に、68ml容バイアル瓶に佐原通し砂(未滅菌)50gを入れ、上記のように培養した菌液をクエン酸ナトリウム2.0%含有M9培地4.95mlに1/100量接種した溶液5mlをその砂中に加え、綿栓をして15℃で70時間静置培養し、(1)ブチルゴム栓およびアルミシールで密閉した後、ガス状のTCEを全てのTCEが水中に溶解したときの濃度として50ppmとなるようにシリンジで加えた。(2)バイアル瓶を15℃で12時間静置した後、気相部分のTCE濃度をガスクロマトグラフィーで測定した。(3)次に密栓を開放し、TCEを揮散させた後、4℃で12時間保存した。以下、(1)〜(3)の操作を繰り返した。対照として上記4℃で行った保存を全て15℃で行ったものを用いた。
【0071】TCE添加12時間後の各回のTCE残存率を表7に示す。15℃で保存した菌に比べ、4℃で保存した菌は明らかに分解活性を維持していることがわかる。
【0072】
【表7】

(実施例8)J1株による土壌中のTCE分解における分解浄化期間中での温度制御の効果土壌中の汚染物質を空気循環によってin−situで処理する場合等において、循環空気中の汚染物質の濃度変化によって分解菌存在領域への汚染物質の供給量が変化する様子をシミュレートし、そのときの温度制御の効果を評価した。
【0073】酵母エキス0.1%含有M9寒天培地上のJ1株のコロニーを、坂口フラスコ中の同組成培地200mlに接種し、22℃で24時間振とう培養を行った。
【0074】次に、68ml容バイアル瓶に佐原通し砂(未滅菌)50gを入れ、上記のように培養した菌液をフェノール500ppm及び酵母エキス0.2%含有M9培地4.95mlに1/100量接種した溶液5mlをその砂中に加えた他は実施例7と同様の方法でTCE残存率を測定した。
【0075】TCE添加12時間後の各回のTCE残存率を表8に示す。15℃で保存した菌に比べ、4℃で保存した菌は明らかに分解活性を維持していることがわかる。
【0076】
【表8】

(実施例9)TL1株による土壌中のTCE分解における分解浄化期間中での温度制御の効果土壌中の汚染物質を空気循環によってin−situで処理する場合等において、循環空気中の汚染物質の濃度変化によって分解菌存在領域への汚染物質の供給量が変化する様子をシミュレートし、そのときの温度制御の効果を評価した。
【0077】酵母エキス0.1%含有M9寒天培地上のTL1株のコロニーを、坂口フラスコ中の同組成培地200mlに接種し、25℃で24時間振とう培養を行った。
【0078】こうして得た菌液を用いた以外は実施例7と同様にしてTCE残存率を測定した。
【0079】TCE添加12時間後の各回のTCE残存率を表9に示す。15℃で保存した菌に比べ、4℃で保存した菌は明らかに分解活性を維持していることがわかる。
【0080】
【表9】

(実施例10)TL2株による土壌中のTCE分解における分解浄化期間中での温度制御の効果土壌中の汚染物質を空気循環によってin−situで処理する場合等において、循環空気中の汚染物質の濃度変化によって分解菌存在領域への汚染物質の供給量が変化する様子をシミュレートし、そのときの温度制御の効果を評価した。
【0081】酵母エキス0.1%含有M9寒天培地上のTL2株のコロニーを、坂口フラスコ中の同組成培地200mlに接種し、25℃で24時間振とう培養を行った。実施例7と同様の方法でTCE残存率を測定した。
【0082】TCE添加12時間後の各回のTCE残存率を表10に示す。15℃で保存した菌に比べ、4℃で保存した菌は明らかに分解活性を維持していることがわかる。
【0083】
【表10】

(実施例11)JM1株による気相中TCE分解における分解浄化期間前での温度制御の効果分解菌の培養を行ってから分解菌を汚染媒体に供給するまでの間に時間を要する場合をシミュレートし、分解浄化期間前での温度制御の効果を評価した。
【0084】リンゴ酸ナトリウム1.0%含有M9寒天培地上のJM1株のコロニーを、坂口フラスコ中のリンゴ酸ナトリウム2.0%含有M9培地200mlに接種し、15℃で70時間振とう培養を行ったものを4℃で保存した。
【0085】上記培養液のうち、経時的に30mlを68ml容バイアル瓶に移し、これにTCE飽和溶液中で曝気した空気を流量20ml/分で溶液中に30分間流した後、ブチルゴム栓、アルミシールで完全密封し、15℃で振とう培養を行い(トータルで72時間)、TCEの減少をガスクロマトグラフィーで測定した。対照として同様に作製した高濃度菌液を15℃で保存したものを用いた。
【0086】各菌液採取時間でのTCEの残存率を表11に示す。15℃で保存した菌に比べ、4℃で保存した菌は明らかに分解活性を維持していることがわかる。
【0087】
【表11】

(実施例12)JM1株による気相中TCE分解における分解浄化期間中での温度制御の効果土壌から真空抽出によって回収した空気中の汚染物質をリアクターで処理する場合に、空気中の汚染物質の濃度が変化する様子をシミュレートし、そのときの温度制御の効果を評価した。
【0088】リンゴ酸ナトリウム1.0%含有M9寒天培地上のJM1株のコロニーを、坂口フラスコ中のリンゴ酸ナトリウム2.0%含有M9培地200mlに接種し、15℃で70時間振とう培養を行った。
【0089】上記培養液30mlを68ml容バイアル瓶に移し、(1)これにTCE飽和溶液中で曝気した空気を流量20ml/分で溶液中に30分間流した後、ブチルゴム栓、アルミシールで密栓し、15℃で振とう培養を行い、12時間後に気相部分のTCE濃度をガスクロマトグラフィーで測定した。(2)次に密栓を開放し、TCEを揮散させた後、4℃で12時間保存した。以下(1)及び(2)の操作を繰り返した。対照として上記4℃で行った保存を全て15℃で行ったものを用いた。
【0090】TCE添加12時間後の各回のTCE残存率を表12に示す。15℃で保存した菌に比べ、4℃で保存した菌は明らかに分解活性を維持していることがわかる。
【0091】
【表12】

【0092】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように本発明によれば、微生物の分解活性をより長く維持させることができる。また、微生物と汚染物質との接触頻度を向上させにくい環境においても、環境修復の効率をより一層向上させることができる。
【出願人】 【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
【出願日】 平成9年(1997)7月10日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】若林 忠 (外4名)
【公開番号】 特開平11−28449
【公開日】 平成11年(1999)2月2日
【出願番号】 特願平9−185225