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【発明の名称】 超臨界流体洗浄方法及び超臨界流体洗浄装置
【発明者】 【氏名】古川 洋一

【要約】 【課題】無機コンタミネーション等の超臨界流体中に溶け込むことのできない物質を除去できる超臨界流体洗浄方法及び超臨界流体洗浄装置を提供することを目的とする。

【解決手段】洗浄槽21内に、複数の方向に向けて超臨界流体を送液する流路形成部材1が形成されている。制御回路38は、洗浄工程中に、洗浄槽21内に超臨界流体の流れが生じるように、仕切り弁31,33及び調圧弁37を制御することで、超臨界流体の洗浄槽21内への送液と洗浄槽21から分離槽22への排液を調整する。また、制御回路38は、洗浄工程中に、洗浄槽21内の超臨界流体を分離槽22に排出することで洗浄槽21内の超臨界流体を急速減圧させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 洗浄槽内で、被洗浄物を超臨界流体に接触させて洗浄する超臨界流体洗浄方法において、1回の洗浄工程中に、前記洗浄槽内の圧力の上昇及び急速減圧を複数回繰り返すことを特徴とする超臨界流体洗浄方法。
【請求項2】 洗浄槽内で、被洗浄物を超臨界流体に接触させて洗浄する超臨界流体洗浄装置において、前記洗浄槽内に、複数の方向に向けて超臨界流体を送液する超臨界流体流路形成手段と、洗浄工程中に、前記洗浄槽内に超臨界流体の流れが生じるように、超臨界流体の前記洗浄槽内への送液と前記洗浄槽からの排液を調整する流れ調整手段と、を備えてなることを特徴とする超臨界流体洗浄装置。
【請求項3】 請求項2に記載の超臨界流体洗浄装置において、前記超臨界流体流路形成手段は、前記洗浄槽への超臨界流体の導入口に設けられ、該導入口から放射状に複数の流路を有する導入部材からなり、前記流路の超臨界流体放出側の先端が他の部分より細く形成されてなることを特徴とする超臨界流体洗浄装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、超臨界流体を用いて半導体,液晶パネルなどの精密洗浄を行う超臨界流体洗浄方法及び超臨界流体洗浄装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】超臨界流体洗浄は、超臨界流体特有の性質である粘度・密度・拡散係数を利用した湿式洗浄に近い洗浄であり、近年強く要望されている高精密洗浄を実現する一手法として、注目を集めている。
【0003】超臨界流体とは、十分な加圧を行っても液体にならない状態にある気体の総称であるが、ここでいう超臨界流体とは物質固有の臨界圧力・臨界温度を超えた1層領域にある流体のことを指す。この超臨界流体は、気体と液体の中間の粘度・拡散係数・密度・溶解力を有しており、また、元来気体である物質を圧縮したものであるため圧力を元に戻せば気体として振る舞うといった性質を有している。
【0004】超臨界流体を用いた洗浄には、上記性質を有する故、従来から行われていた湿式洗浄と比較して、微細化に対応し易い、乾燥工程が不要となる、素早い処理が可能である、無毒性のガスを使用できる、廃液が出ない、添加溶剤を加えることで溶解力を自由にコントロールできる、装置を小型化できるなどの多くの利点がある。
【0005】このような超臨界流体洗浄において使用する洗浄装置としては、従来から用いられてきた超臨界流体抽出・超臨界流体クロマトグラフィと同様な機構を有するものが知られている。図6は、この超臨界流体洗浄装置の構成を示す模式図である。この超臨界流体洗浄装置は、超臨界流体にするべき洗浄溶媒(液体)を保持するサイホン管付き液取りボンベやコールドエバポレーターからなる容器29、ポンプ26及びヒーター25、被洗浄物28を装填し洗浄する耐圧洗浄槽21、分離槽22、液化装置3、液溜器24及び仕切り弁31〜34、減圧弁35からなる。
【0006】次に、図6の超臨界流体洗浄装置の洗浄方法を説明する。まず、耐圧性の洗浄槽21内部に洗浄しようとするワークを入れる。次に、容器29から仕切り弁32を介して洗浄溶媒(液体)を送液し、この洗浄溶媒を高圧ポンプ26により圧縮するとともにヒータ25により加熱する。これにより洗浄溶媒は臨界圧力及び臨界温度を超え超臨界状態となる。そして、この超臨界状態となった洗浄溶媒(超臨界流体)を仕切り弁31を介して耐圧洗浄槽14内に導入し、ワーク(被洗浄物)28と接触させ、超臨界流体の特性である高い溶解度と高い拡散係数を利用し洗浄を行う。洗浄が終わると仕切り弁33を開け、洗浄を行った後の汚れた超臨界流体を分離槽22に導く。分離槽22では、圧力を減少させて、洗浄溶媒をガス相と汚れ相とに分離する。汚れの分離された気体状態の洗浄溶媒は、再利用のために、減圧弁35を介して液化装置2で液化された後、液瘤器24に貯蔵される。洗浄槽21内の被洗浄物は、洗浄槽21内を大気圧に戻した後に取り出し、交換する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上記したように、超臨界流体洗浄装置においては、超臨界流体自身の洗浄性能が極めて高いため被洗浄物の洗浄を高清度に行うことができる。しかしながら、超臨界流体の洗浄要素は超臨界流体中に汚染物質を溶かし込むという高い溶解力を利用するものであるため、超臨界流体に溶解させられないものは基本的に除去できない。
【0008】従来の湿式洗浄もやはり洗浄溶媒の溶解力を利用するものであるため、それだけでは無機コンタミネーション等の溶解させることのできないものは除去できない。このため、洗浄溶媒の溶解力による洗浄に併せて、超音波、揺動などの物理力を加えることで、無機コンタミネーション等の除去を図っている。
【0009】しかしながら、超臨界洗浄装置においては内部が高圧になるために、槽内に物理力を与える動作機器を持ち込むことはできない。また、その高圧に耐えうる肉厚の槽構造で減衰されるため超音波など間接的に力を与えることも実際不可能であろう。さらに、洗浄性の向上のためにも内部に回転機構などの摺動部はないのが望ましい。
【0010】本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、無機コンタミネーション等の超臨界流体中に溶け込むことのできない物質を除去できる超臨界流体洗浄方法及び超臨界流体洗浄装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の超臨界流体洗浄方法は、洗浄槽内で、被洗浄物を超臨界流体に接触させて洗浄する超臨界流体洗浄方法において、1回の洗浄工程中に、前記洗浄槽内の圧力の上昇及び急速減圧を複数回繰り返すものである。
【0012】請求項2に記載の超臨界流体洗浄装置は、洗浄槽内で、被洗浄物を超臨界流体に接触させて洗浄する超臨界流体洗浄装置において、前記洗浄槽内に、複数の方向に向けて超臨界流体を送液する超臨界流体流路形成手段と、洗浄工程中に、前記洗浄槽内に超臨界流体の流れが生じるように、超臨界流体の前記洗浄槽内への送液と前記洗浄槽からの排液を調整する流れ調整手段と、を備えてなるものである。
【0013】請求項3に記載の超臨界流体洗浄装置は、請求項2に記載の超臨界流体洗浄装置において、前記超臨界流体流路形成手段は、前記洗浄槽への超臨界流体の導入口に設けられ、該導入口から放射状に複数の流路を有する導入部材からなり、前記流路の超臨界流体放出側の先端が他の部分より細く形成されてなるものである。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明の超臨界流体洗浄装置では、洗浄溶媒である超臨界流体の流れを利用することで、被洗浄物表面のパーティクルをはじめ汚染物の除去を図るものである。以下、図面に基づいて本発明の超臨界流体洗浄装置について説明する。
【0015】図1は、本実施の形態の超臨界流体洗浄装置の構成図である。この超臨界流体洗浄装置は、超臨界流体にするべき洗浄溶媒(液体)を保持するサイホン管付き液取りボンベやコールドエバポレーターからなる容器29、ポンプ26及びヒーター25、被洗浄物28を装填し洗浄する耐圧洗浄槽21、分離槽22、液化装置3、液溜器24及び仕切り弁31〜34、減圧弁35、超圧弁37、制御回路38からなる。なお、ここでは、図6で示した超臨界流体と同一部分については同一符合を付している。
【0016】本超臨界流体洗浄装置では、まず、耐圧性の洗浄槽21内部に洗浄しようとするワークを入れる。次に、容器29から仕切り弁32を介して洗浄溶媒(液体)を送液し、この洗浄溶媒を高圧ポンプ26により圧縮するとともにヒータ25により加熱する。これにより洗浄溶媒は臨界圧力及び臨界温度を超え超臨界状態となる。そして、この超臨界状態となった洗浄溶媒(超臨界流体)を仕切り弁31を介して耐圧洗浄槽21内に導入し、ワーク(被洗浄物)28と接触させ、超臨界流体の特性である高い溶解度と高い拡散係数を利用し洗浄を行う。この洗浄工程については後述する。洗浄が終わると仕切り弁33を全開し、洗浄を行った後の汚れた超臨界流体を分離槽22に導く。分離槽22では、圧力を減少させて、洗浄溶媒をガス相と汚れ相とに分離する。分離槽22内の洗浄溶媒は、調圧弁37を介して排出されるか、または、再利用のために、減圧弁35を介して液化装置2で液化された後、液溜器24に貯蔵される。洗浄槽21内の被洗浄物は、洗浄槽21を大気圧に戻した後に取り出し、交換する。なお、以上の洗浄工程は制御回路38が仕切り弁31,33、調圧弁37を制御することで行われる。
【0017】以上説明したように、本超臨界流体洗浄装置(方法)は、従来技術で説明した超臨界流体装置(方法)と略同様であるが、洗浄槽21の構成が相違しており、また、洗浄槽21内への超臨界流体の導入、及び、洗浄槽21内での洗浄動作が相違している。以下、これらについて説明する。
【0018】まず、洗浄槽21の構成について、図2乃至図4を用いて説明する。図2は、洗浄槽21の構成を説明する拡大図である。この図に示すとおり、洗浄槽21内には複数のワーク28が載置されている。
【0019】超臨界流体は、配管6の導入口6aの周囲であって、ワーク28の洗浄面直上にあたる壁面に設けられた流路形成部材1(請求項における超臨界流体流路形成手段及び導入部材)を介して、洗浄槽21内部に送液されるようになっている。また、上記導入口6aと対局する部分に設けられた排出口9aから排出されるようになっている。
【0020】図3,図4は流路形成部材1の構成を説明する図であり、図3(a)は分解図、図3(b),(c)は流路形成部材1を構成する第1遮蔽物2,第2遮蔽物3それぞれの上面図である。また、図4は第1遮蔽物2と第2遮蔽物3を重ね合わせることによりできる流路形成部材1の(a)側面図,(b)底面図である。
【0021】図3に示すように、第1遮蔽物2は、配管6の導入口6aを中心として設けられており、第2周囲3は第1遮蔽物2と対向して設けられている。第2遮蔽物3には、第1遮蔽物2との対向する側の表面に溝4が形成されている。なお、第1遮蔽物2,第2遮蔽物3は超臨界流体が直接的ワーク28に向かわないように設定される。ワーク28のダメージを与えることを避けるためである。
【0022】このような第1,第2遮蔽物2,3は図4のように重ね合わせられることにより、超臨界流体の流路(溝4)を形成する。したがって、本構成により、導入口6aから送液される超臨界流体は、溝4を通って導入されることとなる。ここで、溝4は図3(a),(c)に示すように中央から放射状に形成されているため、洗浄槽21内に渦流を引き起こす。これにより、ワーク28周辺で超臨界流体の流れが生じ、洗浄槽21内を回転機構等で撹拌しているのと同様の効果を得ることができる。
【0023】このように、本実施の形態の超臨界流体洗浄装置によれば、通常の超臨界流体洗浄では実行できなかった物理力の印加を行え、無機コンタミネーション等の除去を可能とする。よって、より高清度な洗浄を実現できる。
【0024】なお、溝4は図3(a),(c)のように出口部分5を細く形成しておけば、超臨界流体の導入速度を上げることができ、無機コンタミネーション等の除去効果をより向上できる。
【0025】次に、超臨界流体導入工程及び洗浄工程について、図5に示す圧力図を用いて、説明する。
【0026】■超臨界流体の導入は、ワーク28を格納し洗浄を行う洗浄槽21内に、ワーク28の直上方向より仕切り弁31を開として、導入する。このとき、同時に仕切り弁33を開き、調圧弁37を起動する(図5のO点)。調圧弁37は洗浄槽14より低い圧力に設定しており、洗浄槽14から分離槽16に流れを発生させる。導入された超臨界流体は遮蔽物2と遮蔽物3で構成された流路(溝4)を通り、出口に向かいに従い細く絞った出口部分5において加速する。
【0027】なお、出口部分5の位置は被洗浄物の外周部より外に設計されており、上記したように噴流が被洗浄物表面に直撃しないようにしている。噴出した流体は出口部分5に角度をつけているため、直下方向に流れつつ回転する流れとなる。そしてそのまま洗浄槽21、分離槽22に超臨界流体を導入していく。
【0028】■図示していない圧力検出器が、分離槽22内の圧力が目的の圧力に達したことを検出すると、図示していない制御回路(請求項における流れ調整手段)が仕切り弁33を閉じる(図5のP点)。このように分離槽22にも超臨界流体を導入するのは、分離槽22の圧力を圧力を所定値以上に設定しておかないと、後の工程(■)における洗浄槽21から分離槽22への送液の際に、圧力差が高くなり過ぎ、凝結等の問題が生じるからである。
【0029】■洗浄槽21には、制御回路38の指示に基づき、続けて超臨界流体を導入し続ける。なお、ここでの超臨界流体の導入量は可変としてもよい(この場合、仕切り弁31は調圧弁としておく必要がある)。洗浄槽21内には導入される超臨界流体によって回転渦流が生じている。
【0030】そして、図示していない圧力検出器により洗浄槽21が所定の圧力(図5のQ点)に達したことを検出すると、制御回路38が仕切り弁33を開く。その時に貯えられていた超臨界流体が分離槽22に排出される。これにより、洗浄槽21内が急速減圧されて、さらに流れを発生する。なお、この際、仕切り弁31は制御回路38の指示により閉じられていてもよい。
【0031】■排出したところ(図5のR点)、つまり、洗浄槽21と分離槽22の圧力が略同一となったところで制御回路の指示で仕切り弁33を閉じる。なお、第2の圧力は洗浄槽21内の洗浄溶媒が超臨界流体のままでいられる圧力に設定しておくことが望ましい。
【0032】■続いて、洗浄槽21の圧力を上昇させる。この間に、分離槽22内の余分な圧力分の超臨界流体を調圧弁37によって排出し、洗浄槽21より低い元の圧力に調する。
【0033】■続いて、以上説明した一連の工程(■〜■)を何度か繰り返し、洗浄工程を終了する。
【0034】このような洗浄工程では、洗浄中に急速減圧を実行する工程(上記■の工程)を何度か実行するが、この急速減圧工程では洗浄槽21内における渦流の速度,回転を激しく行うことができ、無機コンタミネーションの除去を有効に実行できる。
【0035】なお、本実施の形態では、上記したような急速減圧工程を含む洗浄工程により無機コンタミネーションの除去を可能としているが、例えば、仕切り弁33を調圧弁としておき、洗浄中、常に超臨界流体を導入しながら仕切り弁(調圧弁)33により排液を行うようにしてもよい。しかしながら、この場合には、急速減圧を行わないため超臨界流体の十分に回転させることができず、また、その速度も十分得られない。このため、上記例ほどの無機コンタミネーションの除去は行えない。
【0036】
【発明の効果】本発明の超臨界流体洗浄方法では、洗浄工程中に、洗浄槽から分離槽への超臨界流体の排出による急速減圧を行うことで、超臨界流体の流れの速度を上げることができ、洗浄効果を向上することができる。
【0037】また、本発明の超臨界流体洗浄装置によれば、超臨界流体を用いる洗浄において、洗浄槽内に超臨界流体の流れを形成することができ、無機コンタミネーション等の汚染物質をも除去することが可能とする。
【0038】更に、超臨界流体の導入路の先端部分を細く形成することで、導入する超臨界流体の速度を上げることができ、高い洗浄効果を得ることができる。
【出願人】 【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
【出願日】 平成10年(1998)1月30日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】小池 隆彌
【公開番号】 特開平11−216437
【公開日】 平成11年(1999)8月10日
【出願番号】 特願平10−18772