トップ :: B 処理操作 運輸 :: B05 霧化または噴霧一般;液体または他の流動性材料の表面への適用一般




【発明の名称】 塗膜の形成方法
【発明者】 【氏名】中山 俊介

【氏名】石田 則之

【氏名】松田 充弘

【氏名】藤井 聡

【要約】 【課題】耐擦り傷性、耐摩耗性、耐候性、特に耐汚染性にすぐれた塗膜の形成方法を提供することにある。

【解決手段】合成樹脂基材上に、ハードコート層を設け、該層上に平均粒径0.05〜0.2μmの酸化チタン微粒子、加水分解性珪素化合物又は該珪素化合物の加水分解物及び/又は加水分解性珪素化合物の部分縮合物並びに溶媒からなるクリア塗料を塗布することよりなる塗膜の形成方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 合成樹脂基材上に、ハードコート層を設け、該ハードコート層上に平均粒径0.05〜0.2μmの酸化チタン微粒子、加水分解性珪素化合物又は該珪素化合物の加水分解物及び/又は加水分解性珪素化合物の部分縮合物及び溶媒からなるクリア塗料組成物を塗布することを特徴とする塗膜の形成方法。
【請求項2】 クリア塗料の酸化チタン及び珪素の重量比が各々TiO2 及びSiO2 への換算値で85/15〜30/70であることを特徴とする請求項1記載の塗膜の形成方法。
【請求項3】 上記ハードコート層がアルコキシシラン、金属アルコキシド及びシランカップリング剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む組成物からなる請求項1記載の塗膜の形成方法。
【請求項4】 上記酸化チタン微粒子が分散媒体中に分散させた状態にある請求項1記載の塗膜の形成方法。
【請求項5】 上記クリア塗料組成物におけるTiO2 及びSiO2 として換算した酸化チタン及びシリカの合計量の固形分濃度が5〜30重量%である請求項1記載の塗膜の形成方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は耐擦り傷性、耐摩耗性、耐候性、特に耐汚染性に優れた塗膜の形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に合成樹脂と呼ばれる各種重合体又は共重合体からなる樹脂は、種々の優れた性質を有し、自動車部品、OA機器部品、建材等として広く日常生活に活用されている。例えば、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレートに代表される透明合成樹脂は軽く、機械的に比較的強靱であり加工性が良好であるため、広汎な範囲で利用されているが、その反面、硬度不十分で傷がつきやすい。光により劣化し着色するなどの欠点があり、遮音、防音材などの道路資材や屋外曝露用途などへの適用は制限されてきた。
【0003】これらの欠点を改良しようとする試みは数多く提案されている。耐擦り傷性を向上させるため合成樹脂基材の表面にポリオルガノシラン系ハードコート膜を設ける方法(特開昭59−155437号)、ハードコート膜にシリカ微粉末など無機微粒子を添加する方法(特開昭59−78240号、特開昭59−89368号)などの方法がとられている。
【0004】一方、耐候性を向上するためには、基材や前述のハードコート膜に酸化防止剤や紫外線吸収剤などの安定剤を添加する方法や、特定の酸化チタン粒子を入れて紫外線を吸収させる方法(特公平7−64941号)などが提示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】以上の方法により耐擦り傷性や耐候性が向上し、遮音、防音壁などの道路資材用途に広く用いられるようになったが、自動車の排気ガスによる汚れの付着が著しく、数ヵ月で透明性が損なわれるため、除去清掃に多大の工程数と費用がかかっているのが現状であり、この作業の回数を減らすことが望まれている。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、基材上にハードコート層を設け、さらに光触媒作用を有する酸化チタンを含有するクリア塗料を塗布することにより、自然光(太陽光)により付着した汚れを分解、除去し、透明性を保ち、かつ高い表面硬度、耐候性を有する塗膜が得られることを見出した。本発明は、このような新規な知見に基づいてなされたものである。
【0007】即ち、本発明の塗膜の形成方法は、合成樹脂基材上に、ハードコート層を設け、ハードコート層上に平均粒径0.05〜0.2μmの酸化チタン微粒子、加水分解性珪素化合物又は該珪素化合物の加水分解物及び/又は、加水分解性珪素化合物の部分縮合物並びに溶媒からなるクリア塗料を塗布することを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明の塗膜の形成方法について詳細に説明する。
【0009】本発明で用いられる合成樹脂基材としては、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ABS樹脂、ポリスチレン、AS樹脂、メタクリル樹脂、ポリビニルアルコール、セルロース系樹脂、熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。
【0010】本発明で用いられるハードコートとしては、アルコキシシラン、金属アルコキシド及びシランカップリング剤からなる組成物が挙げられる。
【0011】アルコキシシランとしては、Si(OR1 4 で表され、R1 は低級アルキル基(炭素数1〜4)である。具体的には、Si(O−CH3 4 、Si(O−C2 5 4 等が用いられる。これらのアルコキシシランを混合して使用することも可能である。
【0012】金属アルコキシドとしては、ジルコニウムアルコキシド、チタニウムアルコキシド、アルミニウムアルコキシドなどが用いられる。
【0013】これらの金属アルコキシドは低級アルコキシ基を有する。例えば、ジルコニウムアルコキシドは、Zr(OR2 4 で表され、R2 は低級アルキル基である。具体的には、Zr(O−CH3 4 、Zr(O−C2 5 4 、Zr(O−C37 4 、Zr(O−C2 9 4 等が用いられる。2種以上のこれらのジルコニウムアルコキシドを混合して用いてもよい。ジルコニウムアルコキシドは、上記アルコキシシラン100重量部に対して10重量部以下の範囲で使用でき、好ましくは約5重量部である。10重量部を上回ると、ハードコート層中に形成される複合ポリマーはゲル化しやすく、脆性が大きくなり、その結果該ハードコート膜が剥離しやすくなる。
【0014】チタニウムアルコキシドは、Ti(OR3 4 で表され、R3 は低級アルキル基である。具体的には、Ti(O−CH3 4 、Ti(O−C2 5 4 、Ti(O−C3 7 4 、Ti(O−C4 9 4 等が用いられ得る。2種以上のこれらのチタニウムアルコキシドを混合して用いてもよい。チタニウムアルコキシドは、上記アルコキシシラン100重量部に対して30重量部以下の範囲で使用でき、好ましくは約20重量部である。30重量部を上回ると、形成される該複合ポリマーの剛性および脆性が大きくなり、その結果該コーティング膜が剥離しやすくなる。
【0015】アルミニウムアルコキシドは、Al(OR4 3 で表され、R4 は低級アルキル基である。具体的には、Al(OCH3 3 、Al(OC2 5 3 、Al(OC3 7 3 、Al(OC4 9 3 等が用いられ得る。2種以上のこれらのアルコキシドを混合して用いてもよい。アルミニウムアルコキシドは、上記アルコキシシラン100重量部に対して50重量部以下の範囲で使用でき、好ましくは約30重量部である。50重量部を上回ると、形成される複合ポリマーの剛性および脆性が大きくなり、その結果該コーティング膜が亀裂し、あるいは剥離しやすくなる。
【0016】シランカップリング剤としては、既知の反応性有機基を含有するオルガノアルコキシシランを包含する。特に、エポキシ基を含有するオルガノアルコキシシランが好適である。具体的には、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどがある。このようなシランカップリング剤の2種以上を混合して用いてもよい。シランカップリング剤は、上記アルコキシシラン100重量部に対して10〜50重量部の範囲で使用できる。50重量部を上回ると、形成される該複合ポリマーの硬度が低下する。
【0017】本発明のハードコートは、アルコキシシラン、金属アルコキシド及びシランカップリング剤からなるが、必要に応じて、塩基触媒、鉱酸、水、及び有機溶剤を添加することができる。
【0018】塩基触媒は、主としてハードコート層の形成に際し構成成分の重縮合用触媒として作用し、水に実質的に不溶であり、かつ有機溶媒に可溶である第3アミンを包含する。その例としては、N,N−ジメチルベンジルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミンがあり、特にN,N−ジメチルベンジルアミンが好適である。塩基触媒は、該アルコキシシラン、該金属アルコキシド及び該シランカップリング剤の合計量100重量部あたり0.1〜1重量部であり、好ましくは約0.3重量部である。
【0019】鉱酸は、アルコキシシランや金属アルコキシドの加水分解を進めるための酸触媒として作用するとともに、アルミニウムアルコキシドを溶解させる働きを有する。その例としては、硫酸、塩酸、硝酸などがある。鉱酸は、アルコキシシラン、金属アルコキシド及びシランカップリング剤のアルコキシド部分(OR1 、OR2 、OR3 またはOR4 に相当する部分)100重量部に対し1〜10重量部であり、好ましくは約5.0重量部である。
【0020】本発明のハードコートは、アルコキシシラン及び金属アルコキシドの合計100重量部に対して、1〜30重量部の水が用いられる。水の量が30重量部を上回ると、アルコキシシランや金属アルコキシドの加水分解が過剰に進むため、該加水分解物が重縮合して得られる複合ポリマーは、高度に架橋し、多孔質で密度の低いポリマーとなる。その結果、基材の表面硬度を向上させることが出来ない。水の量が1重量部未満の場合、加水分解反応が進行しにくくなる。
【0021】本発明で用いられるハードコートに必要に応じて添加される有機溶剤は、本発明の基材として使用する合成樹脂基材の種類により、周知の溶剤から適宜選択し、合成樹脂が侵されない種類の溶剤が用いられる。溶剤は、150℃以下、好ましくは130℃以下で実質的に蒸発するものが望ましい。
【0022】たとえば、ポリカーボネートは、ハロゲン化炭化水素、環状エーテルなどに侵されやすく、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレンは、エステル、ケトン、ハロゲン化炭化水素、有機酸などに、また塩化ビニルは環状ケトン、環状エーテル、ハロゲン化炭化水素などに侵されやすい。
【0023】これらの点を考慮し、溶剤としては、アルコール系のものを用いるのが好ましい。通常炭素数1〜6、好ましくは2〜5のアルコールを用いる。具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、第三級ブタノール、アミルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等を挙げることができる。勿論これらの溶剤を混合して使用することもできる。
【0024】また、合成樹脂基材が侵されない範囲内において、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、エチルエーテル、酢酸など他の溶剤を併用してもよい。
【0025】ハードコートは、前記アルコキシシラン、前記金属アルコキシド及び前記シランカップリング剤とからなり、適宜の塗装方法で使用し、塗装後は5〜10分間室温で放置して乾燥する。かくして得られた塗膜は、50〜150℃、好ましくは110〜130℃程度の温度で30分〜10時間程度加熱(焼付)処理して、三次元網状に硬化した被膜とすることもできる。この際、加熱温度は、合成樹脂の軟化温度であることが望ましく、加熱温度が高ければ短時間、低ければ長時間の焼付を行なえばよい。
【0026】被膜の厚さは、通常0.1〜20μ程度で充分であり、好ましくは0.2〜10μである。前記範囲よりも被膜が薄ければ、目的とする表面硬度の向上がみられず、また前記範囲よりも被膜が厚ければ、成形加工時に被膜の剥離が起こりやすく好ましくない。
【0027】また、本発明のハードコートに予め通常の酸触媒、例えば、p−トルエンスルホン酸、リン酸、塩酸、ホウ酸、蓚酸、酒石酸、無水マレイン酸などを添加しておけば、低温かつ短時間で焼付を行なうことができる。
【0028】本発明のハードコートを合成樹脂基材に塗布する前に周知の手段、例えば、洗剤、アルカリ、アルコール、重クロム酸混液などで表面で前処理することもでき、場合によってはハードコートを塗布する前にアクリル系樹脂プライマーなどを一層塗装すれば被膜の密着性に好ましい効果を与える。
【0029】本発明で用いられるクリア塗料組成物は、平均粒径0.05〜0.2μmの酸化チタン微粒子、加水分解性珪素化合物又は該珪素化合物の加水分解物及び/又は加水分解性珪素化合物の部分縮合物及び溶媒からなる。
【0030】クリア塗料組成物で用いられる酸化チタンとは、特定エネルギーを持つ光の照射で有機物の酸化還元に対して触媒作用を示すものであり、純粋な酸化チタンの他、含水酸化チタン、水和酸化チタン、メタチタン酸、オルトチタン酸、水酸化チタンと呼ばれているものを含む。二酸化チタンまたはこれより低次酸化状態にあるものが特に好ましく用いられる。二酸化チタンの結晶型は、アナターゼ型、ルチル型、フルッカイト型のいずれでも良く、またこれらの混合物でも良い。
【0031】これらの二酸化チタンは微粉末状であり、その粒径は光触媒活性の強さから見て0.05〜0.2μmのものが使用できる。この微粉末は乾燥状態の粉末として用いてもよいが、後述の加水分解性珪素化合物から誘導されるシリカバインダーと均一分散させるために予め分散媒体中に分散させた状態としておく事が望ましい。本発明において二酸化チタンが良好に分散されているか否かは塗膜を形成したときの光触媒機能に大きく影響してくる。
【0032】光触媒機能を更に向上させるために酸化チタン表面に白金、金、銀、銅、パラジウム、ロジウム、ルテニウムなどの金属、酸化ルテニウム、酸化ニッケル等の金属酸化物を被覆しても良い。
【0033】これらの酸化チタンは水などの溶媒に高度に分散させて使用される。超微粒子となっている酸化チタンを二次凝集させずに水などの溶媒と均一分散させて置くためには、酸性またはアルカリ性として保存して置くことが好ましい。酸性下に置くときはpH0.5〜4、特に1〜3.5とするのが好ましい。分散媒体としては水の他、水とアルコールの混合物を用いても良い。
【0034】本発明で用いられる加水分解性珪素化合物としては、アルキルシリケート、ハロゲン化珪素及びこれらの部分加水分解物である。アルキルシリケートとしてはメチル、エチル、イソプロピルシリケートなどが用いられる。これらのシリケートはいずれも単量体もしくは部分加水分解によって生成するオリゴマーの形で用いられ、オリゴマーとしては一般式SinOn-1 (OR)2n+2(ただしnは2〜6、RはC1〜4のアルキル基)で表わされるアルキルシリケート縮合物が特に好ましい。これらオリゴマーは混合物でも用いられる。
【0035】部分加水分解するときの触媒としては、酸、アルカリのいずれもが使用できる。酸化チタン分散体が酸性のときは酸で加水分解したアルキルシリケートが好ましい。加水分解液の分散溶媒は水または炭素数が1〜4のアルコールが用いられる。酢酸エチルなどのエステル類は、組成物液を不安定にするので好ましくない。本発明において用いられる珪素化合物及びその部分加水分解物及び/又はその部分縮合物は、酸化チタンを結合される目的で用いられるものであるので以下においてシリカバインダーと呼ぶ。
【0036】酸化チタンとシリカバインダーとの混合は、適宜に出きるが、一例を示すと酸性下にある所定量の二酸化チタン水性分散液を10〜50℃の液温に保持し、これに秤量したアルキルシリケートもしくは部分加水分解物を添加する際にこれの加水分解触媒を同時に加えても良いし、二酸化チタン分散液中に存在する酸分を利用して加水分解を進めても良い。分散媒体としてアルコール系の媒体を用いる場合は、二酸化チタンの水/アルコール混合媒体分散液と、アルコール媒体中でアルキルシリケートもしくは部分加水分解物を50〜1500%加水分解した液とを撹拌下に混合してクリア塗料組成物を得ることもできる。
【0037】クリア塗料組成物中のチタンとシリカとの割合は、各々二酸化チタンと二酸化珪素に換算した重量比(TiO2 /SiO2 )で85/15〜30/70とすることが必要である。シリカの混合割合が15%未満の場合、ハードコート層及び酸化チタン同志の接着強度が充分でなく指触や振動で容易に脱落してしまい好ましくない。逆に70%を超えた場合、酸化チタンの光触媒機能が小さくなり、実用性に乏しくなる。これは酸化チタン粒子表面を覆うシリカの割合が大きくなり、酸化チタンと酸化分解されるべき物質との接触を妨害することになると思われる。好ましくは、(TiO2 /SiO2 )で80/20〜50/50の範囲内のものが好ましい。
【0038】クリア塗料組成物中の固形分濃度は重量で30%以下である。ここで固形分とは全組成物中における酸化チタンとシリカの合計量を言い、酸化チタンは二酸化チタンに、シリカは組成物中のアルキルシリケートもしくはそのオリゴマー中の珪素(Si)分をSiO2 に換算した値を用いている。
【0039】その他の成分としては、水分及び/又は有機溶媒が主体であり、組成物を基材面上へ塗布後、乾燥により実質的に除去されるべきものである。好ましい固形分濃度は5〜20重量%であり、固形分濃度が5%未満になるとハードコート層との接着性は強固になるが、塗膜の厚さ、つまり二酸化チタン量が不十分で光触媒機能を充分発揮できる塗膜を形成することができない為好ましくない。
【0040】逆に固形分濃度が30%を超えると組成物中の固形物の分散性が悪くなり、組成物の保存安定性が著しく低下し、僅かな日数でゲル化が生じ易くなる。
【0041】また、このような高濃度になると成膜性も悪く、形成された被膜のハードコート層との接着性が大きく低下し、指触で容易に剥離してしまい好ましくない。
【0042】クリア塗料組成物には、少量のチタンアルコキシド、四塩化チタンを加えても良い。又、チタン或いはシランカップリング剤などを加えても良い。更に組成物の安定性確保及び濡れ特性を改善するために各種界面活性剤を加えても良い。また、アルコキシ基を2個以上含むアルコキシシランもしくはハイドロシランの化合物は固形分算出の際のシリカの換算に加えるものとする。
【0043】クリア塗料組成物は、ハードコート層表面に塗布され、乾燥、場合によって低温焼成されて塗膜化される。塗布方法は塗布すべき基材の形状によってスピンコーティング、スプレーコーティング、バーコート、ディップ法などが適宜に使用される。塗膜の厚さは0.1〜3μm、特に0.3〜2μmが適当である。二酸化チタンの光触媒活性は、表面に露光し酸化分解されるべき化合物と接触可能な二酸化チタンの量に関係するので本来は塗膜の厚さは関係ないが、現実には塗膜厚さに不均一があり、又粒子の分散は必ずしも理想とする均一性が得られず、余り薄くすると塗膜表面上の二酸化チタン量が少なく光触媒活性が充分でないので前記程度の厚さにすることが好ましい。このような厚さであると塗膜を透明にすることも可能であり、基材の持つ種々の構成、デザインを損なうことなく、その表面に光活性を持つ被膜を形成することが出来る。
【0044】クリア塗料の塗膜は100℃の乾燥によって爪で擦っても容易に剥離しないかなり強固な被膜を形成できるが、シリカバインダーは100℃以上の温度で乾燥することによって、より強固な塗膜を形成することができるので必要に応じ100〜300℃で乾燥もしくは低温焼成してもよい。但し、超微粒子状二酸化チタンの触媒活性は150℃以上の乾燥で徐々に低下を始め、400℃を超えると急激に低下することがあるので、塗膜強度の必要性に応じて適宜に乾燥温度を選択する必要があるが、いずれにしても480℃以下の乾燥もしくは低温焼成が好ましい。
【0045】以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。
【0046】
【実施例】実施例中、「部」、「%」は重量基準で示す。
【0047】<ハードコート液Aの調製>シンナミルトリアルコキシシラン20部、プロピルトリアルコキシシラン30部、エタノール20部、イソプロピルアルコール40部のハードコート液Aを調製した。
【0048】<ハードコート液Bの調製>メチルエチルエトキシメトキシシラン50部をエタノール50部に溶解させ(溶液I)その溶液にTiブトキシド5部及びプロピオン酸7部を酢酸20部の溶液に溶解させたもの(溶液II)10部を加えたハードコート液Bを調製した。
【0049】<ハードコート液Cの調製>プロピルトリアルコキシシラン30部、テトラメトキシシラン10部、エタノール20部、イソプロピルアルコール50部からなるハードコート液Cを調製した。
【0050】<ハードコート液Dの調製>γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン25部、メタノール分散コロイダルシリカ(触媒化成工業社製;固形分濃度30%)12.5部、エチレングリコールジグリシジルエーテル8.5部およびエチルセロソルブ47.0重量部からなる溶液に、0.05規定の塩酸6.8部を徐々に滴下し、加水分解を行った。その後、過塩素酸アンモニウム0.1部を加え、撹拌して混合させた。これにシリコン系界面活性剤0.1部を加えてハードコート液Dを調製した。
【0051】<ハードコート液Eの調製>ペンタエリスリトールテトラアクリレート20部、トリメチロールプロパントリアクリレート20部、エチレングリコールジアクリレート30部、イソプロピルアルコール28部およびベンゾインメチルエーテル1部からなるモノマー組成物に、フッ素系界面活性剤1部を添加し、ハードコート液Eを調製した。
【0052】<テトラアルコキシシリケートの加水分解縮合物溶液の調製>撹拌機、温度計、還流冷却器を取り付けたセパラブルフラスコにメチルアルコール204部及びテトラエトキシシリケート(エチルシリケート40;日本コルコート社製商品名)30部を40℃で撹拌混合し、次いでこれに60%硝酸1.5部と水4.5部からなる混合物を一括添加し、40℃でさらに4時間撹拌し、SiO2 濃度が5%のテトラエトキシシリケートの加水分解縮合物を得た。
【0053】<オルガノアルコキシシランの加水分解縮合物溶液の調製>撹拌機、温度計、還流冷却器を取り付けたセパラブルフラスコにメチルトリエトキシシリケート20部とメチルアルコール177.5部を40℃で撹拌混合し、次いでこれに60%硝酸1.5部と水3部からなる混合物を一括添加し、40℃でさらに4時間撹拌し、SiO2 濃度5%のオルガノアルコキシシランの加水分解縮合物を得た。
【0054】<クリア塗料aの調製>撹拌機、温度計、還流冷却器を取り付けたセパラブルフラスコに上記のテトラアルコキシシリケートの加水分解縮合物溶液10部とイソプロピルアルコール60部を仕込み、均一に撹拌して40℃に維持する。これに粒径5μmのTiO2水分散体を所定量加えて、TiO2 /SiO2 の比を80/20(重量比)とし、40℃で1時間撹拌した。固形分濃度は10%に調製し、クリア塗料aを調製した。
【0055】<クリア塗料bの調製>前記クリア塗料aの調製と同様にして、TiO2 /SiO2 の比を70/30(重量比)とし、クリア塗料bを調製した。
【0056】<クリア塗料cの調製>前記クリア塗料aの調製と同様にして、TiO2 /SiO2 の比を50/50(重量比)とし、クリア塗料cを調製した。
【0057】<クリア塗料dの調製>撹拌機、温度計、還流冷却器を取り付けたセパラブルフラスコに上記のオルガノアルコキシシランの加水分解縮合物溶液10部とイソプロピルアルコール60部を仕込み、均一に撹拌して40℃に維持する。これに粒径5nmのTiO2 水分散体を所定量加えて、TiO2 /SiO2 の比を60/40(重量比)とし、40℃で1時間撹拌した。固形分濃度は10%に調製し、クリア塗料dを調製した。
【0058】<クリア塗料eの調製>前記クリア塗料dの調製と同様にして、TiO2 /SiO2 の比を80/20(重量比)とし、クリア塗料eを調製した。
【0059】<クリア塗料fの調製>前記クリア塗料dの調製と同様にして、TiO2 /SiO2 の比を95/5(重量比)とし、クリア塗料fを調製した。
【0060】<クリア塗料gの調製>前記クリア塗料dの調製と同様にして、TiO2 /SiO2 の比を20/80(重量比)とし、クリア塗料gを調製した。
【0061】表1にハードコート液とクリア塗料の組合せによる実施例1〜7、比較例1〜5に示した。
【0062】塗装は、ポリカーボネート樹脂基板上にハードコート液をディッピング塗装し、120℃で1時間硬化させ、ハードコート層を得た。得られたハードコート層上にクリア塗料をディッピング塗装し、120℃で1時間硬化させ、塗膜を得た。かくして得られた塗膜のサンプルを用いて以下の性能試験を行った。
【0063】<初期密着性試験>サンプルにカッターナイフで碁盤目(10mm間隔、100個)を作成し、セロハンテープで剥離する。100個の中残存せる個数を算える。
【0064】<耐候性試験>サンシャインウエザオメーターで1000時間照射後の黄変度ΔYI値をカラーコンピューター(スガ試験機社製)で測定した。テスト前後の黄変度の差ΔYI値で示した。
【0065】<耐擦り傷性試験>JIS K5400 8.9に準じ、摩耗輪CS−10F、加重500g、100回転の条件で試験前後の曇り価の差(ΔH:ベース)で示した。
【0066】<耐汚染性試験>試験片をピース(日本たばこ産業社製;20本入り)2本分の煙を充満させた密閉容器に放置してたばこのヤニを付着させる。この試験片を東芝ブラックライトにて、紫外線強度1mW/cm2 で12時間さらした後のたばこのヤニの残存状態を黙視にて判定した。
【0067】○:完全にヤニがなく、無色・透明である。
【0068】△:わずかにヤニが残っている。
【0069】×:照射前とほとんど変化がなく、ヤニが残っている。
【0070】<アセトアルデヒド減少率>塗膜の光触媒活性を数値で示すため、アセトアルデヒドと気相接触させつつ光照射したときのアセトアルデヒドの分解割合を測定して、”アセトアルデヒド減少率”で示した。減少率の数値が大きいほど塗膜の光触媒活性が高いことを示している。
【0071】(1)三ツ口セパラブルフラスコに横向きにセットし、内部に試験片を入れる。
【0072】(2)東芝製ブラックライト15Wを試験片に向けて放置して紫外線強度1mW/cm2 になるようにする。
【0073】(3)エアーポンプを用いてフラスコ内部とサンプリング用液コックをチューブで循環するように接続し、1リットル/minで循環する。
【0074】(4)フラスコの三ツ口の一つにシリコンWキャップを付けてマイクロシリンジでアセトアルデヒドを導入する。濃度は100ppmとなるようにする。サンプリング用の液コックの一つにアセトアルデヒド濃度測定用のガス検知管を取り付ける。
【0075】(5)光を照射せずにアセトアルデヒド濃度が100ppmになるように循環と導入を行う。ほぼ一定となった後、光を照射して30分、60分、120分後に検知管でアセトアルデヒド濃度を測定し、以下の式より減少率(%)を求めた。アセトアルデヒド減少率(%)=初期濃度−照射後の濃度/初期濃度×100【0076】
【表1】

【出願人】 【識別番号】000003322
【氏名又は名称】大日本塗料株式会社
【出願日】 平成9年(1997)9月17日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】山下 穣平
【公開番号】 特開平11−90327
【公開日】 平成11年(1999)4月6日
【出願番号】 特願平9−251834