トップ :: B 処理操作 運輸 :: B05 霧化または噴霧一般;液体または他の流動性材料の表面への適用一般




【発明の名称】 表面処理部材及び表面処理方法
【発明者】 【氏名】小林 孝

【要約】 【課題】高温もしくは低温となった金属等の高熱伝導部材に人が触れた場合に、不快感を覚えないようにする。

【解決手段】本構成は、高温もしくは低温となった部材表面に対し、断熱材や空気泡を含有させた特殊塗料又は樹脂コーティング材を塗布する。例えば、塗料6の中にあらかじめ発泡材10を混ぜて高温発泡させることで空気ボイドを作り込み、発泡材特有の復元力の低下をビーズ系塗料11でトップコーティングして補強する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 表面を有する金属部材と、部材の表面に形成され、触感温度を減少させる層を有する塗膜とを備えたことを特徴とする表面処理部材。
【請求項2】 上記塗膜は、発泡材を含む塗布材を塗布して発泡させた発泡層を有することを特徴とする請求項1に記載の表面処理部材。
【請求項3】 上記塗膜は、上記発泡層の上に、発泡層よりも硬度の高いトップコーティング層を有することを特徴とする請求項2に記載の表面処理部材。
【請求項4】 上記トップコーティング層は、ビーズを含むビーズ系塗布材により形成されることを特徴とする請求項3に記載の表面処理部材。
【請求項5】 上記塗布材は、塗料と樹脂コーティング材のいずれかであることを特徴とする請求項2に記載の表面処理部材。
【請求項6】 上記金属部材は、アルミニウム及びマグネシウム及びアルミニウム合金及びマグネシウム合金のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の表面処理部材。
【請求項7】 上記発泡層の厚さは、50〜500μmであることを特徴とする請求項2に記載の表面処理部材。
【請求項8】 上記金属部材は、ダイキャストにより成形され、上記触感温度を減少させる層は、ダイキャストによる金属部材の成形時に生ずる表面のヒケと湯じわと傷とのいずれかの目処め補完と隠蔽とのいずれかに用いられることを特徴とする請求項1に記載の表面処理部材。
【請求項9】 上記触感温度を減少させる層は、断熱材フィラーを含むことを特徴とする請求項1に記載の表面処理部材。
【請求項10】 上記触感温度を減少させる層は、粒状の断熱材を含むことを特徴とする請求項1に記載の表面処理部材。
【請求項11】 上記塗膜は、表面に凸凹を有することを特徴とする請求項1に記載の表面処理部材。
【請求項12】 金属表面を塗装することにより触感温度を低下させる表面処理方法において、発泡材を含む塗布材を塗布する工程と、塗布材を加熱乾燥させるとともに、発泡材を発泡させて、発泡層を形成する工程とを備えたことを特徴とする表面処理方法。
【請求項13】 上記表面処理方法は、さらに、発泡層の上に発泡層よりも硬度の高いトップコーティング層を形成する工程を備えたことを特徴とする請求項12に記載の表面処理方法。
【請求項14】 上記トップコーティング層を形成する工程は、ビーズを含むビーズ系塗布材を塗布する工程を有することを特徴とする請求項13に記載の表面処理方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、人が触れる可能性のある部位の表面処理に関するもので、主に金属でできた携帯型電子機器筐体表面の体感温度対策処理を主目的とした特殊塗装に関するものである。なお、本明細書では、表面処理された部材(以下、表面処理部材という)として、特に電子機器の金属筐体を中心として事例説明を行うが、本発明の表面処理部材は、人が触れる可能性のあるストーブケースや調理器具の金属ガード、建築物の壁や床部材など、一般部材全般における表面触感温度対策処理用途に対して広く応用が可能である。また、処理対象物は特に金属でなくても熱伝導率の大きい材料であれば効果があるし、高温部に限らず低温部に対して処理しても効果がある。
【0002】
【従来の技術】従来技術として、電子機器での対策事例をあげて説明する。例えば、携帯パーソナルコンピュータ、携帯電話、携帯ビデオカメラ、電子手帳等の携帯機器では近年、半導体素子の冷却も然る事ながら小型(薄型)化、高密度実装化に伴い筐体表面の加熱・高温対策も重要な課題となっている。一方、従来、携帯機器の筐体は、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)等の樹脂筐体とすることが多かったが、筐体の薄型/耐衝撃性強化を狙って金属筐体を用いるケースが増えている。しかし、金属筐体では、表面が50℃以上になると筐体が熱くて持てない、また、長時間触れた場合には低温やけどに至る可能性がある等の問題があり、携帯機器として安全上問題となる等、熱設計上の新たな課題が生じている。この原因は、従来ABS(熱伝導率λ=0.1W/mK程度)のような低熱伝導材料を指で触れた場合には、指の接触で奪われた部分への熱補給量が少ないため熱く感じないのに対し、一方、アルミニウム(熱伝導率λ=220W/mK程度)等の高熱伝導材では、継続的に熱源からの熱補給がなされるため手へ流れ込む熱量が大きく、不快感につながるためである。こういった触感温度に対する従来対策手法として、以下の事例がある。
【0003】例えば、図10に示すような従来対策例1では、発熱素子3のような発熱体により加熱され高温となった金属筐体1に、熱伝導率の低いフエルト4等の布を貼り付けることで、手への直接熱流量を減らすことができる。製品適用事例としては、特開平6−296655号公報のようなサウナ室内処理やプリンターサーマルヘッド周辺の高温部への対策事例が一般的である。また、布以外に、断熱材を貼り付けることで同様の対策が可能で、特開平6−26659号公報では、グリルドアハンドルに対しゴム状断熱材を、特開平4−210012号公報では、電気加温台に対しゴム状保護シートを貼り付けて対策している。
【0004】また、特開平8−74450号公報のように建築用ドアハンドルに対し、メッシュ材料を貼ることで、寒冷地や酷暑地でのドア開閉時の触感温度対策している事例がある。
【0005】また、これ以外にも図11に示す従来対策例2のように、高温面となる金属筐体1に植毛パイル5を接着処理することも一般的で、製品適用例としては、特開平6−7599号公報のアイロンやコタツのヒーター周りでの事例がある。
【0006】また、図12に示す従来対策例3のように、高温面となる金属筐体1に塗料6を塗ることも一般的である。
【0007】また、従来対策例4として、塗料に熱膨張性マイクロカプセルを含ませて、熱膨張性マイクロカプセルを加熱して発泡させる高温対策技術が開示されている。例えば、特開平6―99133号公報には、熱硬化型樹脂の硬化温度より低い温度で殻壁が軟化する熱膨張性マイクルカプセルを塗料(固体分70%)に対して、5〜30重量%配合してなる熱硬化型塗料を用いて木目状に塗装する工程と、次で焼付け乾燥する工程とを有し、該焼付け工程において前記、マイクロカプセルを膨張破裂させて塗膜を硬化させることを特徴とする木質感を有する塗膜の形成方法が開示されている。また、特開昭62―39674号公報には、熱可塑性樹脂ビヒクルとし、これに顔料、体質材、溶剤等を配合して成る塗料組成物に対し、熱膨張性マイクロカプセルを熱可塑性樹脂100重量部に対して10〜80重量部配合して成る断熱性模様塗料組成物を、任意の壁、天井、床等に塗布・乾燥した後、その表面に加熱器具を当接して乾燥塗膜を膨張せしめることを特徴とする断熱性模様塗膜の形成方法が開示されている。また、特開平2―303573号公報には、熱膨張性マイクロカプセルを、該マイクロカプセルの発泡温度より低い温度で硬化可能な塗料に分散せしめ、基材の全面もしくは一部に塗布、硬化させ、その後さらに上塗り塗料を塗布し、前記マイクロカプセルの発泡温度以上の温度に加熱することを特徴とする凸凹模様を有する塗膜の形成方法が開示されている。近年、特に、モーバイルコンピュータに代表される携帯電子機器では、小型・高性能・軽量化を実現する実装技術が製品差別化のキーポイントとなっている。このような背景から対重量強度に優れる金属ダイキャスト筐体が増えてきている。金属筐体では従来の樹脂筐体に比べ熱伝導率が2〜3桁大きいため放熱構造面で有利となる。一方で、表面を人が触った際には集熱効果により、同一温度の樹脂筐体よりも熱く感じる課題がある。特に最近のモーバイルコンピュータではCPU(Central Processing Unit )部分での局所発熱増大に伴う筐体表面の高温化が課題であり、対策が必要となる。前述したように、金属材表面の感触温度緩和手段としてパイル植毛が一般的で、コタツやプリンターのサーマルヘッド部での対策事例がある。しかし、パイル植毛は電子機器筐体への適用に際しては意匠等が問題となる。また、樹脂系シートを貼り付ける等の対策手段もあるが形状追従性や生産性・意匠性な課題も多い。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】前述した対策手法1,2は、いずれも体感温度上は有効であるが、ラバーやメッシュ等の貼り付け対策を電子機器のように複雑な自由曲面を持つ筐体形状表面に適用しようとした場合、形状に馴染ませ貼ることが困難な課題がある。また、植毛法では、形状的に入り組んだ部分に対し均一に繊維を接着することが困難となり、許容し得る筐体サイズや形状の自由度が小さい課題がある。また、仮に処理がうまく仕上がった場合にも、汚れや摩耗といった課題が残るため意匠的に製品仕様に耐えない問題がある。また、生産性等の点での課題があり、コストも高くなる問題もある。
【0009】これらに比較すると、図12の従来対策例3に示すような金属筐体での一般外装法である塗装は、意匠、生産性、コストに優れリーズナブルである。但し、通常塗装では、塗膜厚が通常40μm程度にしかならないため、触感温度上の効果はほとんど期待できず、金属ベースの触感を和らげることはできず、対触感温度対策という効果は期待できない。
【0010】また、従来対策例4に示すように、熱膨張性マイクロカプセルを塗料に含ませて用いることにより、木質感や凹凸模様を形成したり、断熱性のある模様を形成する技術があるが、いずれの技術も触感温度対策を目的としたものではなく、金属ベースの触感温度をやわらげるための技術ではなかった。
【0011】本発明は、先の課題を解決するためになされたもので、塗装をベースとし表面処理方法に工夫をこらすことで従来塗装の持つ意匠性、各種形状への追従性/処理生産性、低コストといった利点を保ったまま、触感温度対策処理を実現することを目的とする。特に、本発明は、金属でできた携帯型電子機器の筐体表面の触感温度をやわらげるとともに、意匠的に製品仕様が向上するとともに、傷の付かない塗装を提供することを目的とする。「断熱する」ことと、発明における「触感温度をやわらげる」こととは、異なる概念である。「断熱する」というのは、熱を遮断することであり、熱を伝導させないことである。例えば、携帯型電気機器の筐体表面で「断熱する」ということは携帯型電子機器の内部で発生する熱が内部に閉じこめられてしまうことを意味し、故障の原因となってしまう。一方、「触感温度をやわらげる」というのは、携帯型電子機器の内部で発生する熱が筐体表面から外部に放熱される場合に、その放熱によって手や脂へ流れ込む伝熱量を減少させることである。すなわち、「触感温度をやわらげる」というのは、携帯型電子機器の筐体表面からの放熱を促進しなければならないということと、その放熱による人体への不快感を除去しなければならないということの2つの相反する要求を満足させるための技術である。このように、この発明は、放熱性を維持しながら、放熱による人体への影響をやわらげる塗装技術を提供するものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】この発明に係る表面処理部材は、表面を有する金属部材と、部材の表面に形成され、触感温度を減少させる層を有する塗膜とを備えたことを特徴とする。
【0013】上記塗膜は、発泡材を含む塗布材を塗布して発泡させた発泡層を有することを特徴とする。
【0014】上記塗膜は、上記発泡層の上に、発泡層よりも硬度の高いトップコーティング層を有することを特徴とする。
【0015】上記トップコーティング層は、ビーズを含むビーズ系塗布材により形成されることを特徴とする。
【0016】上記塗布材は、塗料と樹脂コーティング材のいずれかであることを特徴とする。
【0017】上記金属部材は、アルミニウム及びマグネシウム及びアルミニウム合金及びマグネシウム合金のいずれかであることを特徴とする。
【0018】上記発泡層の厚さは、50〜500μmであることを特徴とする。
【0019】上記金属部材は、ダイキャストにより成形され、上記触感温度を減少させる層は、ダイキャストによる金属部材の成形時に生ずる表面のヒケと湯じわと傷とのいずれかの目処め補完と隠蔽とのいずれかに用いられることを特徴とする。
【0020】上記触感温度を減少させる層は、断熱材フィラーを含むことを特徴とする。
【0021】上記触感温度を減少させる層は、粒状の断熱材を含むことを特徴とする。
【0022】上記塗膜は、表面に凸凹を有することを特徴とする。
【0023】この発明に係る表面処理方法は、金属表面を塗装することにより触感温度を低下させる表面処理方法において、発泡材を含む塗布材を塗布する工程と、塗布材を加熱乾燥させるとともに、発泡材を発泡させて、発泡層を形成する工程とを備えたことを特徴とする。
【0024】上記表面処理方法は、さらに、発泡層の上に発泡層よりも硬度の高いトップコーティング層を形成する工程を備えたことを特徴とする。
【0025】上記トップコーティング層を形成する工程は、ビーズを含むビーズ系塗布材を塗布する工程を有することを特徴とする。
【0026】
【発明の実施の形態】電子機器筐体で要求される意匠性・量産性・低コスト化から塗料改良による対策処理が有望となる。以下1〜3を対策コンセプトとした対策塗装法を試作検討した。
【0027】1.塗装皮膜の断熱性向上異なった温度の半無限固体どうしが接触した場合、式(1)により接触部中間温度Tm が概算できることが知られている。つまり、手を半無限固体と考えた場合、β2 の小さい材料に接触した場合ほどTm 値が相手物体温度の影響を受けにくくなる。この原理を応用し、第1の試作指針として“塗装皮膜の物性改良(断熱性の向上)”を検討した。ここでいう「断熱性の向上」とは、「断熱する」ことを意味しているのではない。この「断熱性の向上」とは、塗装皮膜から手への伝熱量を減少させることを意味している。
Tm =(β11 +β22 )/(β1 +β2 )(1)
β1 =λ1 /√α1β2 =λ2 /√α2 (2)
ここで、α1 :人体の熱拡散率(m2 /S)
β1 :人体の熱浸透率(W(√S)/(m2 K))
α2 :接触物体の熱拡散率(m2 /S)
β2 :接触物体の熱浸透率(W(√S)/( m2 K))
λ1 :人体の熱伝導率(W/(mK))
λ2 :接触物体の熱伝導率(W/( mK))
1 :人体の温度(K)
2 :接触物体の温度(K)
【0028】2.塗装皮膜の厚膜化促進塗膜内の熱通過率は以下(3)式で計算され、上述1の物性値的改善以外に厚膜化することで手の熱通過を抑制できる。このことから塗膜の“厚膜化”を第2の試作指針として検討した。
U=λ/d (3)
U:塗膜の熱通過率(W/m2 K)
d:塗膜の厚さ(m)
【0029】3.塗装皮膜表面の凸凹化促進第3の対策指針として表面を凸凹化することにより指との真実接触面積を減らす方法を検討した。つまり、皮膜表面での接触熱抵抗が増し、手への伝熱量を減らすことが期待できる。
【0030】上記1〜3の対策指針に基づく各種塗装例を以下に説明する。
【0031】実施の形態1.この発明に係る体感温度処理方法を施した表面処理部材の実施の形態を図1に示す。なお、図1中の楕円枠部分は、その直下に実装された発熱素子3から加熱されて高温化した筐体表面部位である。図2は、図1の斜視図におけるA−Aの断面部を示す筐体実装断面図である。金属筐体1として、例えば、マグネシウム又はマグネシウム合金を用いる。又は、アルミニウム又はアルミニウム合金を用いてもよい。又は、その他密度が4.0g/cm3 以下又は5.0g/cm3 以下の軽金属を用いてもよい。一般塗装では、厚膜塗装を施すことが困難なので、事前に樹脂コーティング材7により下地を形成して表面処理層の厚さを増して、触感温度特性を改善する。具体的下地材としては、塩化ビニール樹脂等を用いれば良く、およそ100ミクロン以上の厚さがあれば効果がある。この例は、異なる種類の塗布材(塗料6と樹脂コーティング材7)を多層構造で配置し、表面処理層の厚さを増して、触感温度特性を改善するものである。また塩化ビニール樹脂の代わりに、高分子化合物(ポリマー)を用いれば良く、例えば、アクリル樹脂、フッ素系樹脂、ビニール樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリエチレン、ゴム、尿素樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、珪素樹脂、ポリアミド等であり、このポリマーを単独もしくは2種類以上を混合して用いても良い。
【0032】実施の形態2.図3は、塗料6の中に繊維状の断熱材フィラー8を混ぜた塗料を塗布して断熱層構造を作り込んだ事例の筐体断面図であり、断熱材フィラー8による塗膜内の有効熱伝導率を下げる効果により、触感温度を下げることができる。具体的には、断熱材フィラー8としては、熱伝導率が低く、断熱効果が大きい雲母やパーライトを用いる。雲母、パーライトの他、珪藻土(SiO2+H2O )、アルミナ(Al2O3・nH2O)粉末、炭酸カルシウム(CaCO3)、チタニア(TiO2)等の無機粒子もしくは牛の皮、合皮等の粉砕物でもよい。断熱材フィラー8は、増量材としての働きもあるので塗装膜厚を増す効果がある。断熱材フィラー8を樹脂コーティング材7に混ぜるようにしても構わない。
【0033】実施の形態3.図4は、塗料の中に粒状の断熱材9を多数混入させた塗料を塗布した事例の筐体断面図である。具体的材料としては、熱伝導率が低く、断熱効果が大きいコルク粉や球内部が空洞となっている空気ビーズ材が適しており、実効的に塗膜内の有効熱伝導率が下がる効果で触感温度を和らげることができる。また、増量材としての働きもあるので塗装膜厚を増す効果がある。また、粒状の断熱材9を樹脂コーティング材7に混ぜるようにしても構わない。空気ビーズ材のかわりに、カーボンバルーン、アクリル及びスチレンの玉、珪素塩鉱物、シリカアルミナ繊維、ガラス等でも良く、空気ビーズ材及びカーボンバルーン等を単独もしくは2種類以上混合して用いても良い。
【0034】実施の形態4.図5は、塗料の中にあらかじめ発泡材10を混ぜて高温発泡させることで空気ボイドを作り込んだ発泡層を有する表面処理構造の筐体断面概念図である。発泡材10の具体例としては、通常塗料の中に発泡材として、低沸点炭化水素等の熱膨張性マイクロカプセルを混合すればよい。塗料を加熱・発泡させることで塗膜内に多孔質構造を作り込むことができ、塗膜内の有効熱伝導率を下げることで触感温度を下げることができる。また、増量材としての働きもあるので、塗装膜厚を増す効果がある。発泡材10を樹脂コーティング材7に混ぜるようにしても構わない。また。発泡材10として泡ガラス、発泡コンクリート、発泡ウレタン、発泡スチレン、発泡ポリプロピレン、発泡PET(ポリエチレンテレフタラート)等を、単独もしくは2種類以上を混合して用いても良い。また、発泡材10の代わりに、アルミナ(Al2O3 ・nH2O)粉末、炭酸カルシウム(CaCO3 )、チタニア(TiO2)、珪素塩鉱物、ガラスの玉、スチレンの玉、アクリルの玉等の素材を塗料6又は樹脂コーティング材7に含有させ、その塗料6又は樹脂コーティング材7を延伸又は塗布してもよい。その際、素材がスペーサーとなり、素材の両側に空隙ができる。また、例えば、発泡材10として塗料6又は樹脂コーティング材7とは異なる蒸気圧を持ったモノマーを単独もしくは2種類以上混合したものを用いてもよい。塗布時に発泡材10として混合したモノマーが揮発して空隙をもったポリマーが形成される。なお、ある高温金属面を触った際の人の温冷感を支配する触感温度Tsと発泡塗膜厚さの関係の一例は、図6に示す通りであり、約50μm以上の厚さをとれば触感温度は顕著に下がってきており、約300μm以上又は500μm以上となれば塗膜厚さに関係なく、ほぼ同等の温冷感となる。よって、実用上は50〜500μm位までの厚さで処理を行えば、最も効率が良い。
【0035】以下に、本実施の形態の効果の度合を熱通過率Uを指標として概算評価する。前述したように、この発明の「感触温度をやわらげる」というのは、携帯電子機器の内部で発生する熱が接触した手や指に流れ込む熱流量を減らすことを意味している。ここで、金属筐体を人が触れた際の熱流状況を模式的に表すと図17のようになる。図17において、λp :塗膜の熱伝導率(W/(mK))
λAl:アルミニウムの熱伝導率(W/(mK))
λa :空気の熱伝導率(W/(mK))
αp :塗膜の熱拡散率(m2 /S)
αAl:アルミニウムの熱拡散率(m2 /S)
αa :空気の熱拡散率(m2 /S)
p :塗膜(表面処理層)の温度(K)
Al:アルミニウム筐体の温度(K)
a :空気の温度(K)
p :塗膜厚dAl:アルミニウム筐体の厚さqs :熱流量である。アルミニウム等の金属筐体では、手が触れて温度が下がった箇所に対し、周囲からの広範な水平面内熱補給が起こるが、アルミニウムの熱伝導率に対して、塗料の熱伝導率のオーダーが3桁程度悪いため(1000分の1程度であるため)、水平面内での熱補給量が小さい。よって、手への熱流経路は、図17のように太い矢印で示した垂直方向の熱流の影響が支配的と考えられ、手への熱流量の大小は下式で計算される塗膜内の垂直1次元方向の熱通過率Uを指標に概算評価することができる。
U=λp /dp (4)
【0036】本仮定をもとに1次元モデルでの表面処理部材の垂直方向の熱通過率(熱の通り易さを現すパラメータ)を以下に試算する。
【0037】まず、比較の対象として、発泡材を用いない通常塗装処理の場合を概算する。通常塗装に用いる塗料の熱伝導率λp1は、エポキシやアクリル樹脂の熱伝導率と同オーダーと考え、0.15(W/mK)とする。また、塗膜厚dp1として膜厚40μmを用いると、熱通過率は下式から3750(W/m2 K)である。
1 =λp1/dp1=0.15/40×10-6=3750(W/m2 K)
【0038】次に、発泡塗装とした場合の効果を概算する。発泡層の有効熱伝導率λp2は、上述した熱伝導率が0.15(W/mK)の塗料と空気(熱伝導率λa を0.025(W/mK)とする)が50%ずつ混在していると仮定し、並列熱抵抗から逆算した合成熱伝導率0.088(W/mK)とする。また、塗膜厚dp2は、膜厚200μmを用いる。下式の計算結果から熱通過率は、440(W/m2 K)である。
2 =λp2/dp2=0.088/200×10-6=440(W/m2 K)
【0039】以上の結果のように、発泡塗装時には熱伝導率の小さい空気が多数含有されることで、合成熱伝導率が下がる効果と、発泡層により塗膜が厚くできる効果により、通常塗装時と比べ、熱通過率のオーダーが約1桁(約10分の1に)小さくなる。これが、アルミニウムから手への熱流量減少効果として、即ち、通常塗装と発泡塗料との両者の触感特性差として現れる。つまり、手から見た場合、アルミニウム金属面と指との間の熱通過率が支配的な伝熱パラメータとなるが、この発泡層により大幅に熱通過率を抑制することで手への熱流量が緩和される。本発泡塗料を施したことで、通常塗装時に3750(W/m2 K)だった塗膜の熱通過率は、440(W/m2 K)となり、筐体内部の熱も通過しにくくなるため、携帯電子機器内部の熱こもりが懸念される。しかし、携帯電子機器での自然空気冷却時の筐体表面からの熱通過率は、10(W/m2 K)以下程度と小さく、塗膜の熱通過率が440(W/m2 K)に低下したところで、全体放熱系においては、筐体表面の自然空気冷却分の熱通過率10(W/m2 K)の方が明らかに大きな断熱的効果を持っているため、本塗膜の厚さが増えたことによる筐体内部の温度上昇は無視できる程度であり問題ない。
【0040】実施の形態5.図7は、ビーズ系塗料11を層状に何度か重ね塗りし、塗膜厚を増した事例であり、塗膜内に多量の空気を含んだ多孔質構造を作り込んだもので、同様の効果を奏する。ビーズ系樹脂コーティング材及び複層板ガラスを用いても構わない。
【0041】実施の形態6.図8は、上述した実施の形態4と実施の形態5を複合的にあわせたものである。発泡材特有の復元力の低下をビーズ系塗料11でトップコーティングすることで表面硬度を増し、補ったものである。内部が多孔質構造となったり、空気層ができたことにより復元力が弱く傷付きやすくなった発泡層のみの塗膜表面に対し、硬度の高い塗料をトップコーティングして塗膜強度を高め、補強したものである。ビーズ系塗料と従来塗料との大きな違いは、塗料顔料成分のブレンドの仕方にある。従来の塗料は、顔料をそのまま塗料中に分散させている。一方、ビーズ系塗料は、「顔料成分を特殊樹脂で包み微細ビーズ状にしたもの(ビーズ)」を、塗料中に多量含ませている。このビーズにより多種多様な色調を出す。径の異なる種類の着色ビーズがバランスよく組み合わされたビーズ系塗料の意匠範囲は広い。例えば、スェード調塗膜は、起毛感・粒子感が大である。粒子感小のベルベット調やバックスキン調、シモフリ調などに加え、微粉末化した天然コラーゲン繊維を入れたフラットな塗面の塗料もある。
【0042】なお、これまで述べてきた実施の形態を目的に応じて組み合わせて複合処理しても効果的で、各種の目的に適した表面処理方法を適宜実施すれば良い。以下に、上層から下層の順に記載した各種の組み合せについて例示する。
(1)第1の塗料6第2の塗料6(第1の塗料と同一種類又は異なる種類の塗料)
金属筐体板金1(2)第1の樹脂コーティング材7第2の樹脂コーティング材7(第1の樹脂コーティング材と同一種類又は異なる種類の樹脂コーティング材)
金属筐体板金1(3)塗料6(又は断熱材フィラー8又は粒状の断熱材9又は発泡材10を混ぜた塗料6)
樹脂コーティング材7(又は断熱材フィラー8又は粒状の断熱材9又は発泡材10を混ぜた樹脂コーティング材7)
塗料6(又は断熱材フィラー8又は粒状の断熱材9又は発泡材10を混ぜた塗料6)
金属筐体板金1(4)樹脂コーティング材7(又は断熱材フィラー8又は粒状の断熱材9又は発泡材10を混ぜた樹脂コーティング材7)
塗料6(又は断熱材フィラー8又は粒状の断熱材9又は発泡材10を混ぜた塗料6)
樹脂コーティング材7(又は断熱材フィラー8又は粒状の断熱材9又は発泡材10を混ぜた樹脂コーティング材7)
金属筐体板金1(5)ビーズ系塗料11断熱材フィラー8又は粒状の断熱材9又は発泡材10を混ぜた樹脂コーティング材7塗料6金属筐体板金1(6)断熱材フィラー8又は粒状の断熱材9又は発泡材10を混ぜた樹脂コーティング材7ビーズ系塗料11塗料6金属筐体板金1(7)塗料6ビーズ系塗料11金属筐体板金1(8)樹脂コーティング材7ビーズ系塗料11金属筐体板金1その他にも、種々の組み合せが可能である。また、上述した実施の形態1〜6で述べたような処理を用い、塗膜表面に意識的に凸凹形状を作り込めば手への接触面積を減らして、手への有効熱伝達率を下げる効果も加わるため、より効果的な体感温度処理が実現できる。
【0043】実施の形態7.図9は、ダイキャストによる金属筐体の成形時における表面のヒケや湯じわや傷を補完する目的で、上述した実施の形態1〜6で述べたような表面処理方法を適宜組み合わせ実施した例である。マグネシウム(Mg)やアルミニウム(Al)のダイキャストによる金属筐体では、射出成形の際に表面に小さなヒケや湯じわ12が発生し、パテによる補修を行うことが一般的である。ヒケは引け巣ともいい、鋳造時の表面の凹み欠陥のことをいう。湯じわとは鋳造時に鋳型空隙に溶融金属が流れ込んだときにできる表面のしわをいう。上述した実施の形態1〜6のような厚膜塗装法を施せば、目処め的な効果もあり、ヒケや湯じわ12が隠蔽されるので、程度の小さいものについては、改めてパテ補修を施す必要はなくなり、工程数の削減・品質向上・低コスト化に効果的である。
【0044】一般電子機器では、発熱素子3からの加熱により金属筐体板金1が高温化するが、前述した通り、塗料と樹脂コーティング材を多層に配置したり、塗料又は樹脂コーティング材中に断熱材料を高い割合で混入させて筐体表面に塗布することで、塗膜内に断熱層構造を作り込んだり、また、断熱材料を混入させることで、手への熱流量を減らす上で効果的である。また、発泡材を混入させ発泡構造を作り込み、塗膜表面に凸凹構造を作り込むことも接触面積を減らし、手への熱流量を減らす上で効果的である。また、高温となった金属筐体に対し、断熱材料又は空気ボイドを多数混入させた塗料又は樹脂コーティング材を塗布することにより塗膜内の有効熱伝導率を下げられ、触感温度を大幅に改善することができる。また、筐体表面に意識的に凸凹処理することで、手が触れた際の接触面積を減り、手への有効熱伝達率が下げることができる。つまり、手への熱流量が減り、金属面特有の触った瞬間に手へ流れ込んで来る熱流及びその後補給される熱流量を軽減できるため、触感温度を下げることができる。
【0045】なお、表面処理を施す部分は、部材全体でもよいし、部材の温度変化が生ずる部分(例えば、図1の楕円枠部分)のみでもよいし、部材と手が接触する可能性がある表面部分のみでもよい。
【0046】次に、図8に示した発泡塗装の効果を実験的に評価した結果を示す。
検証実験1(温度上昇特性評価)
図13に示すように、手を模擬したゴム角柱を接触させた際の温度上昇特性を測定した。なお、温度センサーはゴム模擬手内0.5mmの深さ位置に埋め込んだ。供試品は105X150X0.3mmのアルミニウム(Al)板のベースに通常エポキシ塗装したサンプルAと同じく、105X150X0.3mmのアルミニウム(Al)板のベースにこの発明の図8に示した発泡塗装したサンプルBである。サンプルは4mm下に設置したヒーターで加熱し表面を50℃一定温度とした。結果は、図14の通りで通常エポキシ塗装に比べ発泡塗装では接触温度上昇プロファイルが鈍る傾向が確認された。
【0047】検証実験2(感触温度レベル申告評価)
次に、同サンプルを実際に人が触った際の感触温度特性を9人の被験者の申告から評価した。図15に示すように、本検証では実験1で用いたサンプルA、B以外にABS樹脂板に通常塗装したサンプルCを比較対象用に追加した。サンプルは室温25℃条件下で表面温度が46℃一定となるよう実験1の装置で加熱した。サンプル3種類を手で触れた際に、熱く感じた順位・レベルを被験者に申告させた集計結果を図16に示す。サンプルAは他のサンプルB、Cに比べ明らかに熱く感じられた(A>>B,A>>C)と全員が回答した。一方、サンプルBはサンプルAと比べ触感温度が大幅に低下することが確認され、その度合いはサンプルCに近い結果であった。サンプルBとCでは区別がつきにくく、申告順位が被験者により逆転するケースも見られた(B>C,C>B,B=C)。
【0048】
【発明の効果】その効果を、以下に列挙する。従来の対策手段であった断熱材の貼り付け、植毛といったものに比べ、処理手順が容易で、従来塗装法の延長線上で対策できるので生産性が上がり、コスト低減に効果が大きい。
【0049】本特殊処理により、これまで金属筐体利用上の課題の1つとなっていた触感温度問題が緩和され、金属筐体の適用可能性が広がる。これに伴い、携帯機器製品の差別化において、重要となる小型・軽量・薄型・強固な筐体構造が実現できる。
【0050】また、表面に凸凹処理を行った場合には、金属特有の塗装面のノッペリ感がなくなり、意匠的なメリットがある。
【0051】また、本厚膜塗装を用いれば、目処め的な効果もあるので、ダイキャストによる筐体成形時にできる表面のヒケや湯じわが隠蔽されるので、程度の小さいものにについては、改めてパテ補修を施す必要はなくなり、工程数の削減・品質向上・低コスト化に効果がある。
【0052】また、本表面処理により筐体表面に多孔質皮膜が形成されるので、耐振動・耐衝撃強度が増す。また、吸音/遮音効果ももたらされるので、防音機能も出てくる。
【出願人】 【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
【出願日】 平成9年(1997)12月25日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 金雄 (外2名)
【公開番号】 特開平11−28419
【公開日】 平成11年(1999)2月2日
【出願番号】 特願平9−356607