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【発明の名称】 ライニングロールの縦弾性係数測定方法
【発明者】 【氏名】松森 保雄
【氏名】大谷 成明
【氏名】武石 芳明
【氏名】濱荻 健司
【課題】ロールコータの塗装膜厚制御の計算モデル中にライニングロールの縦弾性係数をパラメータとして含む場合に、簡便かつ容易に縦弾性係数を求める方法を提供し、制御精度を向上させること。

【解決手段】ウェット状態でロールを回転させながら、ロール間の往復押込みサイクルを行い、押込量と荷重の測定値からロール撓みを補正して真の押込量を求め、塗料の流体挙動に関する真の押込量および荷重の関係に基づいて、縦弾性係数を求める。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも1本がライニングされた2本の回転するロールが塗料で覆われた状態で、ロール間の往復押込みサイクルを行い、得られた押込量の測定値と荷重の測定値から、ロール撓みを補正して真の押込量を求め、塗料の流体挙動に関する真の押込量および荷重の関係に基づいて、縦弾性係数を求めることを特徴とするライニングロールの縦弾性係数測定方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はロールコータ型塗装装置(以下、ロールコータという)において、塗装膜厚制御の制御定数として重要なライニングロールの縦弾性係数を測定する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】図1にロールコータの概略図を示す。ロールコータは鋼帯、紙、フィルムなどの帯状体に塗料、インク、接着剤、機能剤等の液状体(部分的に固形粒子を含む場合もある)を連続的に塗装する装置として広く用いられている。以下の説明では鋼帯塗装用のロールコータを例に述べる。
【0003】ロールコータは、塗料パン1内の塗料6を引き上げる金属製のピックアップロール2と、ピックアップロール2から塗料を受け取り、鋼帯5の表面に塗料を転写して塗装するアプリケータロール3と、鋼帯5を支持する金属製のバックアップロール4より構成される。均一に塗料を転写するため、アプリケータロール3の表面には硬質ゴムのライニング7が施されている。
【0004】塗装膜厚制御ではピックアップロールとアプリケータロールとの間隙(以下この2つのロールの接触部分をニップとも言う)を調整し、アプリケータロールに移動する塗料流量(塗料厚さ×周速)を制御している。ニップの間隙調整はいずれかのロール両端の圧下ねじなどの圧下機構を駆動することによって行われる。通常は2つのロールがキスタッチしたよりもさらに締め込んだ状態で塗装するので、締め込みの量を押込量ともいう。アプリケータロールはライニングされており、ピックアップロールは金属製またはライニングされたロールであるため、ニップの間隙調整をするには、少なくとも1本のライニングロールの弾性変形を考慮しなければならない。塗装膜厚の計算機制御を行っている場合はとくにライニングロールの縦弾性係数の精度が制御精度に大きく影響する。
【0005】塗装膜厚制御では塗装膜厚制御モデルが用いられる。例えば特開平5−220441号公報に記載の塗装膜厚モデル式ではライニングの縦弾性係数(ヤング率)を押込量に依存しない定数として扱っている。
【0006】従来ライニングロールのような円筒型のゴムの縦弾性係数Eを簡便に測定する方法として、ライニングロールを研磨後、ショアー硬度を測定し、E=a・Hs−b(ただし、E:縦弾性係数、Hs:ショアー硬度、a,b:定数、である。)として求める方法がある。
【0007】しかし、円筒型のライニングロールのショアー硬度を測定するのは相当の熟練を要し、誤差も大きい。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】前記特開平5−220441号公報では塗装膜厚の制御因子として、ニップ圧を変化させる制御方法を例示している。ニップ圧制御の方式では比較的高いニップ圧、すなわち押込量が大きい状態で制御するため、縦弾性係数を定数として扱ってもあまり問題はない。しかし、厚膜塗装の場合のように低ニップ圧で操業する場合には押込量が小さく、この領域での縦弾性係数は一定ではないため、縦弾性係数を定数として扱うと制御精度が極端に悪くなると言う問題がある。
【0009】一方、ライニングのゴムは塗料に含まれる有機溶剤のため膨潤したり、塗装開始後、時間経過にともなってライニングロールの温度が変化するため、ライニングロールの縦弾性係数は刻々変化する。塗装ラインを長時間停止することなく、ライニングロールの縦弾性係数変化を的確に把握できれば、これを塗装膜厚のモデル式に取り込み、塗装膜厚の制御精度を高めることができる。しかし、前記のショアー硬度を測定して縦弾性係数を求める方法はオフラインでの測定であるため、経時変化による膨潤や温度変化には対応できない。
【0010】従って、本発明の課題はライニングロールをロールコータに装着したまま短時間で、かつ容易に縦弾性係数を測定する方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】発明者らは前記のライニングロールの縦弾性係数を簡便に精度よく測定するため種々実験と検討を行い、以下の知見を得た。
【0012】(1) 塗装膜厚モデルに用いる縦弾性係数はピックアップロールのライニングの有無に関わらず、ピックアップロールとアプリケータロールとを全体で一つの弾性系として把握すればよい。
【0013】(2) ライニングロールの縦弾性係数は本来ドライ状態(ロールが塗料で覆われていない状態)で押込サイクルを実行し、押込量とロール荷重の関係から求めるべきである。ウェット状態(両ロールが塗料で覆われた状態)でロール間を押込むと、ニップに塗料が介在するため補正を行わなければならないが、ニップの塗料の挙動は流体潤滑モデルによって求めることができるので、ドライ状態への補正が可能である。
【0014】(3) ニップ直下での押込量(真の押込量)は直接は測定できず、測定できるのは圧下ねじ機構の変位量である。従って真の押込量を求めるには、押込量測定値からロール両端軸および軸受け部などの弾性変形(以下、ロール撓みという)を補正しなければならない。
【0015】以上の知見から導いた本発明の要旨は「少なくとも1本がライニングされた2本の回転するロールが塗料で覆われた状態で、ロール間の往復押込みサイクルを行い、得られた押込量の測定値と荷重の測定値から、ロール撓みを補正して真の押込量を求め、塗料の流体挙動に関する真の押込量および荷重の関係に基づいて、縦弾性係数を求めることを特徴とするライニングロールの縦弾性係数測定方法」にある。
【0016】
【発明の実施の形態】縦弾性係数測定に先立ち、アプリケータロールとピックアップロール間の基準位置を定めること、すなわち、両ロールのキスタッチ状態で押込量の表示値をゼロにリセットすることが必要である(以下、このロール間基準位置を定める作業をゼロ調と言う)。従来のゼロ調では、作業者はロールを停止し、ニップ部に例えば 100μm厚の隙間ゲージをあてがい、目視で確認しながらロールの左右のバランスをとる。その後、ロール間を 100μm押込んだ位置をキスタッチ位置として押込量表示値をゼロにリセットする作業が行われている。しかし、この作業はドライ状態で行わねばならないので、本発明の課題には一致しない。従って、佐藤らの文献(「2ロール系におけるロール接触位置検出方法の検討」、化学工学会第28回秋季大会予稿集、1995/9)に開示されているように、ウェット状態で左右の荷重をバランスさせた後、ロール間を押込んで行き、押込量対荷重の関係を2次式で回帰式化して自動ゼロ調を行うのが好ましい。
【0017】ゼロ調を行った後、本発明の縦弾性係数の測定を以下のように行う。まず、ウェット状態でピックアップロールとアプリケータロールを一定速度で回転させながら、ロール間を押込んで行き、再び開放する1往復の押込サイクルを行う。この間、データ収集計算機で荷重値Pと押込量表示値Sとを一定間隔でサンプリングし、データの組、P(i) とS(i) を保存する。ここで、iはサンプリング回数を表すインデックスである。
【0018】次いで、P(i) とS(i) とのデータの組に対して、下記の(1) 式に示すようにロール軸受け、圧下機構などの弾性変形(ロール撓み)の補正を行い、ニップ直下の真の押込量e(i) を求める。
【0019】
e(i) =S(i) +G・P(i) (1)ここで、Gはピックアップロールおよびアプリケータロールの機械系の剛性係数の逆数で、ロールコータ設備によって決まる定数である。
【0020】前記で求められた真の押込量e(i) は荷重値Pと押込量表示値Sの測定系の統計誤差を含んでいる。e(i) を以下の計算式にそのまま用いてもよいが、発明者らは統計誤差を含まない形に補正する方法を用いた。
【0021】すなわち、P(i) とe(i) のデータの組に対し、統計処理により下記(2) 式のような回帰式(例えばεの3〜5次の多項式でもよい)を求める。
P=P( ε) (2)荷重P(i) と、(2) 式によって統計誤差を補正した真の押込量ε(i) とのデータの組を保存する。
【0022】一方、ウェット状態での測定をドライ状態に換算するために必要なニップの塗料の挙動は以下のように求める。ニップの塗料の挙動を表す式として、発明者らが用いたのは、流体潤滑理論から導出したロール間荷重(ロール反力)P、真の押込量εおよび縦弾性係数Eの関係を表す以下の関係式(実験式)である。
【0023】
P=F・B・E・Rm C1・εC2/t (3) F=ΣAk (log Ne )k (4) Ne =C3 ・μ・Vm ・t・Rm C4/(E・εC5) (5) Vm =(Vp +Va )/2 (6) Rm =2Rp ・Ra /(Rp +Ra ) (7)ここで、F :無次元化荷重数、(−)、B :ピックアップロールとアプリケータロール軸方向接触長さ(mm)
E :ライニングのゴムの縦弾性係数(kgf/cm2
t :ライニング厚さ(mm)
ε :真の押込量(mm)
Ne :無次元化弾性数(−)
m :ピックアップロールとアプリケータロールの平均周速( m/s)Vp :ピックアップロールの周速( m/s)Va :アプリケータロールの周速( m/s)Rm :ピックアップロールとアプリケータロールの平均半径(mm)Rp :ピックアップロール半径(mm)
Ra :アプリケータロール半径(mm)C1 〜C5 :定数Ak :流体潤滑モデルから導出した多項式の係数、k=1〜6である。
【0024】上記(3) 〜(7) 式は縦弾性係数Eに対して陰関数形式で表現されているため、以下のように繰り返し計算によって求める。まず、縦弾性係数Eを仮定し、前記で保存した真の押込量ε(i) を用いて(3)〜(7) によりPを求め、前記で保存したP(i) と一致するかを確認し、一致しなければEを修正し、最終的に(3) 式のPと保存したP(i) とが一致するまでEの収束計算を行う。
【0025】収束計算の結果求められた縦弾性係数Eは特定の真の押込量ε(i) に依存する値でE(i) と表記する。すなわち、関数的表現では、E=E(ε) (8)
として表現される。
【0026】図2に前記の計算によって求めた真の押込量εと縦弾性係数Eとの関係を示す。同図の曲線Aはアプリケータロール交換後、塗装開始直後、曲線Bは使用開始後2時間経過したもの、曲線Cは11時間経過後の縦弾性係数である。同図からわかるように、縦弾性係数Eは一定ではなく、押込量の範囲によって関数として扱うべきことを示しており、とくに押込量の小さな領域では大きく変化することがわかる。また、時間経過とともに、膨潤により縦弾性係数が低下することがわかる。
【0027】同図でさらに、ライニングのゴムがさほど膨潤していない使用開始後2時間程度までは、押込量0.5 mm以上の領域では縦弾性係数は一定とみなすことができるが、時間経過とともに押込量0.5 mm以上の領域でも一定ではないことがわかる。
【0028】
【実施例】本発明の効果を確認する実験を行った。表1に実験時のロールコータの設備仕様および塗装条件を示す。
【0029】
【表1】

【0030】本発明の実験は以下のようにした。複数の鋼帯の連続塗装を実施中に、鋼帯の継ぎ目ごとに塗装を中断し、本発明の方法によりアプリケータロールの縦弾性係数を測定した。測定の都度、塗装膜厚制御モデルの縦弾性係数Eの数値表を修正した。
【0031】一方、従来例の実験では、塗装膜厚制御モデルは本発明の実験と同じモデルを使用したが、モデル中で使用する縦弾性係数Eは定数として与えた。表2に本発明例と従来例の制御結果を示す。同表の初期設定誤差とは、塗装条件が変更される都度行う設定変更によって、塗装膜厚計実測値と目標塗装膜厚との誤差を表したもので、制御モデルの初期設定精度を表すものである。
【0032】
【表2】

【0033】同表からわかるように、塗装開始後15本(開始後7時間)ぐらいまでは比較的薄膜厚の製品で、本発明例と従来例との差違はあまり見られなかった。16本目以後、厚膜になると、本発明例の塗装膜厚誤差(%)は薄膜のときよりよくなったのに対し、従来例では薄膜のときとあまり変化が無いか、またはむしろ悪化した。31〜45本では再び薄膜厚になったが、塗装膜厚誤差は開始直後1〜15本目の薄膜厚のときより悪化した。
【0034】
【発明の効果】本発明により、時々刻々変化し、押込量によっても変化する縦弾性係数を必要の都度、短時間で容易に測定できるので、塗装膜厚精度を向上させることができる。
【出願人】 【識別番号】000101949
【氏名又は名称】住友金属建材株式会社
【識別番号】000002118
【氏名又は名称】住友金属工業株式会社
【出願日】 平成9年(1997)9月25日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】広瀬 章一
【公開番号】 特開平11−90291
【公開日】 平成11年(1999)4月6日
【出願番号】 特願平9−260183