トップ :: B 処理操作 運輸 :: B05 霧化または噴霧一般;液体または他の流動性材料の表面への適用一般




【発明の名称】 塗装用マスキングテープまたはシート
【発明者】 【氏名】西島 研一

【氏名】川西 道朗

【氏名】河野 直樹

【要約】 【課題】

【解決手段】オレフィン系基材の一方面側に高温時に耐溶剤性を持つ層を配し、基材の他方面側に高温時に耐溶剤性を持つ層を介し、または介することなく粘着剤層を設けた塗装用マスキングテープまたはシート。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 オレフィン系基材の一方面側に高温時に耐溶剤性を持つ層を配し、基材の他方面側に高温時に耐溶剤性を持つ層を介し、または介することなく粘着剤層を設けた塗装用マスキングテープまたはシート。
【請求項2】 基材および高温時に耐溶剤性を持つ層を積層した支持体の23℃×65%RHにおける10%モジュラスが0.3〜4.0kg/mm2 であることを特徴とする請求項1記載の塗装用マスキングテープまたはシート。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、塗装用マスキングテープまたはシートに関するもので、とくに自動車のバンパーやオートバイのタンクのような複雑な湾曲面での塗装作業時の見切り線出しに有用な塗装用マスキングテープまたはシートに関するものである。なお、本発明はテープおよびシートに関するが、以下の記載においては、便宜上テープを代表させて説明する。
【0002】
【従来の技術】従来自動車等の塗装の際に色の境目には見切り用マスキングテープが使用されており、とくに自動車のバンパーやオートバイのタンクのような複雑な湾曲面での塗装作業時の見切り線出しに使われるマスキングテープの基材には柔軟性に優れた軟質塩化ビニルを用いた基材が多用されている。
【0003】しかし、軟質塩化ビニルフィルムを用いた基材は、その柔軟性を持たせるために可塑剤が配合されているため、塗膜を汚染すること、基材面の平滑性に劣り、粘着剤層表面を平滑にすることが困難であり、マスキングテープが十分に圧着されないため塗装時に塗料侵入、跡つき等を引き起こすこと、使用後に廃棄する際、燃焼すると塩素ガスが発生し、公害問題を生起すること等の種々の問題点を有する。
【0004】一方、例えばポリオレフィン系フィルムは、柔軟性に優れているので、複雑な形状に追従するという点では塗装用マスキングテープの基材として適している。ところが、塗装用マスキングテープは、通常有機溶剤を含んだ塗料がそのテープ上に塗布され、高温で乾燥されるという環境下に置かれるが、ポリオレフィン系フィルムはかかる環境下においては、剥離が困難となりかつ見切り線が凸凹になる、糊残りが起こる、また軟質塩化ビニルフィルムと同様にフィルム面の平滑性に劣り、粘着剤層の表面を平滑にすることが困難である等の問題があり、塗装用マスキングテープの基材としては適していない。
【0005】また、ポリエステルフィルムは高温時の耐溶剤性があり、平滑性が高いが、柔軟性に劣るという点で塗装用マスキングテープの基材として適さない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】かかる技術的背景の下に、本発明者らは種々研究を重ねたところ、ポリオレフィン系フィルムにおける上記「剥離が困難となりかつ見切り線が凸凹になる、糊残りが起こる」問題点は、高温時においてポリオレフィン系フィルムに塗料の溶剤が侵入し、該フィルムが膨潤することに起因して起こるのであり、かかる高温時に耐溶剤性のない基材に、高温時に耐溶剤性を持つ層を配することによって塗装用マスキングテープの基材の耐溶剤性、それに起因する諸問題が解決されることを見いだした。さらに、塗装用マスキングテープとしては、上記のことを含めて下記の条件を悉く満たすことが不可欠である。
■耐溶剤性に優れること、■柔軟性に優れること、さらに望ましくは■フィルム面の平滑性に優れること。従って、本発明の目的は上記■、■の条件を解決した塗装用マスキングテープを提供することであり、さらには上記■の条件をも解決した塗装用マスキングテープを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】かかる条件は、下記本発明によって解決されることを見いだした。即ち、本発明は、(1)オレフィン系基材の一方面側に高温時に耐溶剤性を持つ層を配し、基材の他方面側に高温時に耐溶剤性を持つ層を介し、または介することなく粘着剤層を設けた塗装用マスキングテープである。また、本発明は基材および高温時に耐溶剤性を持つ層を積層した支持体の23℃×65%RHにおける10%モジュラスが0.3〜4.0kg/mm2 であることを特徴とする上記(1)の塗装用マスキングテープまたはシートである。
【0008】上記「■耐溶剤性に優れること」は、オレフィン系基材の一方面側に高温時に耐溶剤性を持つ層を配することによって解決される。また、「■柔軟性に優れること」はオレフィン系基材を採用することによって解決される。さらに、「■フィルム面の平滑性に優れること」は、基材の粘着剤層を高温時に耐溶剤性を持つ層を介して配することによって解決される。
【0009】本発明に用いる基材は、柔軟性を持つポリオレフィン等のオレフィン類を一成分とする基材である。本発明に用いる柔軟性を持つ基材を構成する材料には、1)オレフィン類と不飽和カルボン酸との共重合体、2)オレフィン類と他のビニルモノマーとの共重合体、3)上記1)または2)の共重合体を中和処理して得られた中和物、4)■オレフィン類、■上記1)2)又は3)、■エチレン及びエチレンと共重合可能なモノマーよりなる共重合体のブレンド物等からなる。
【0010】上記オレフィン類としては、炭素数2〜8のもの、特に炭素数2〜4のものが好ましく、具体的にはエチレン、プロピレン、ブタジエンである。
【0011】上記不飽和カルボン酸としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等が好ましいものとして挙げられる。
【0012】上記1)のオレフィン類と不飽和カルボン酸との共重合体の具体例としては、例えばエチレン−メタクリル酸共重合樹脂(三井デュポンケミカル(株)製、ニュクレル1207C)等が挙げられる。
【0013】上記他のビニルモノマーとしては、例えば酢酸ビニル、ビニルエーテル、アクリロニトリル、アクリルアミド等が好ましいものとして挙げられる。
【0014】上記2)のオレフィン類と他のビニルモノマーとの共重合体の具体例としては、例えばエチレン酢酸ビニル共重合樹脂(住友化学工業(株)製、スミテイト)等が挙げられる。
【0015】上記1)または2)の共重合体を中和処理する際に使用される試薬としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属(例えばナトリウム、カリウム、リチウム、マグネシウム)、亜鉛、または有機塩基(例えばアンモニウム、スルホネート、サルファネート、アミン)等が挙げられる。
【0016】上記3)の上記1)または2)の共重合体を中和処理して得られた中和物の具体例としては、例えばデュポン社製のサーリンA、BFグッドリッチ社製のハイカー等が挙げられる。
【0017】上記1)〜4)の共重合体やブレンド物は、既知の方法により調製される。
【0018】本発明に用いる基材の厚さは、特に限定されないが、好ましくは15〜150μm、特に好ましくは30〜130μmである。
【0019】上記の高温時に耐溶剤性を有する層における「高温」とは、塗料の溶剤を乾燥させる際の温度をいい、具体的には80〜200℃である。また、「耐溶剤性を持つ層」とは、最終的な粘着テープの形態で、該粘着テープをSUS板に貼り合わせ、トルエン中に30分間浸漬し、該粘着テープのSUS板からの浮き、剥がれがなかったものをいう。基材の片側もしくは両側に配される高温時に耐溶剤性を持つ層(本発明においては、基材に当該層を積層したものを支持体という)としては、具体的にはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ナイロン、ポリイミド、ポリサルフォン等が挙げられる。
【0020】支持体は、インフレーション法やTダイ法等のような公知の押し出し技術を用いて共押し出しするか、または別個に押し出した個々のフィルムを熱圧着ロールで熱圧着する等のような公知の貼り合せ技術により貼り合わせて作成される。
【0021】上記支持体は23℃×65%RH(相対湿度)での10%モジュラス(引張り速度300mm/min.)が通常0.3〜4.0kg/mm2 、さらに好ましくは0.8〜2.3kg/mm2 の範囲とされる。10%モジュラスが4.0kg/mm2 を越えると、該マスキングテープまたはシートは必要な柔軟性が得られず、被着体の湾曲部や凸凹部に応じて貼り付けしにくく、目的とする見切り性が得られない。また10%モジュラスが0.3kg/mm2 未満では柔軟すぎて貼り付け時の張力によるテープ幅の寸法安定性に乏しく、目的とする見切り性が得られない。
【0022】当該10%モジュラスはJIS−0237の引張り強さ及び伸びの試験方法に準じて行ない、10%伸び時の値を測定したものである。
【0023】高温時に耐溶剤性を持つ層が基材に積層された支持体は、高温時に耐溶剤性のない柔軟な基材及び高温時に耐溶剤性を持つ層のそれぞれの厚さ、グレード等を変えることにより10%モジュラスを上記範囲内に調整することが出来る。具体的な支持体の厚さは通常0.06〜0.2mm、好ましくは0.07〜0.13mmである。
【0024】粘着剤層を構成する粘着剤としては、例えばアクリル粘着剤、天然ゴム粘着剤、スチレン・イソプレンブロック共重合体、スチレンブタジエンゴム、またはイソプレンゴム、ブチルゴムなどの合成ゴム系粘着剤、または天然ゴム系と合成ゴム系の混合系などが挙げられる。中でも高凝集性の性質を有するという点から天然ゴム系やアクリル系粘着剤が好適に使用される。粘着剤層の層厚は通常0.005〜0.1mm、好ましくは0.01〜0.05mmである。粘着剤層の層厚が0.005mm未満であると目標とする粘着力が得られず、該テープにおいて浮きや剥がれが生じやすくなり、シャープな見切りを得ることが出来なくなる。一方0.1mmを越えると粘着力が強すぎ、再剥離性が悪くなる。
【0025】上記粘着剤を支持体に塗布する方法としては、従来一般に使用されている方法が使用でき、例えば流エン法、リバースコーター法、ドクターブレード法等が使用できる。
【0026】
【実施例】以下に本発明の実施例の一部を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下に示す10%モジュラス値は、23℃×65%RHでの10%モジュラス(引張り速度300mm/min.)であり、JIS−0237の引張り強さ及び伸びの試験方法に準じて行なったものである。
〔実施例1〕ポリプロピレンとエチレン−プロピレン共重合体からなる樹脂を押し出し成型して、厚さ0.1mmの基材を作成し、その両面に0.005mmのポリエチレンテレフタレートフィルムをラミネートし、厚さ0.11mmのテープ支持体を作製した。この支持体の10%モジュラスは2.5kgf/mm2 であった。ついで、この支持体の片面に厚さ0.015mmの天然ゴム系粘着剤を塗布し、もう片面に長鎖アルキル系の背面処理剤層を形成し、塗装用マスキングテープを作製した。
【0027】〔実施例2〕エチレンメタクリル酸共重合樹脂を用い、厚さ0.07mmのフィルムを得た。このフィルムの片側に0.015mmのナイロンフィルムをラミネートし、厚さ0.085mmのテープ支持体を作製した。この支持体の10%モジュラスは2.3kgf/mm2 であった。エチレン−メタクリル酸共重合樹脂層に、厚さ0.015mmの天然ゴム系粘着剤を塗布し、もう片面に長鎖アルキル系の背面処理剤層を形成し、塗装用マスキングテープを作製した。
【0028】〔比較例1〕ポリプロピレンとエチレン−プロピレン共重合体からなる樹脂を押し出し成型して、厚さ0.1mmの基材のテープ基材を作製した。このテープ基材の10%モジュラスは1.3kgf/mm2 であった。このテープ基材の片面に厚さ0.015mmの天然ゴム系粘着剤を塗布し、もう片面に長鎖アルキル系の背面処理剤層を形成し、塗装用マスキングテープを作製した。
【0029】〔比較例2〕厚さ0.025mmの二軸延伸ナイロンフィルム(興人製)の片面に、厚さ0.015mmの天然ゴム系粘着剤を塗布し、もう片面に長鎖アルキル系の背面処理剤層を形成し、塗装用マスキングテープを作製した。このテープ基材の10%モジュラスは8kgf/mm2 であった。
【0030】〔比較例3〕三菱化学MKV株式会社製の軟質塩化ビニルフィルム「アルトロンSSS」(厚さ0.1mm)をテープ基材に用いた。この基材の10%モジュラスは1.1kgf/mm2 であった。この基材の片面に厚さ0.015mmの天然ゴム系粘着剤を塗布し、もう片面に長鎖アルキル系の背面処理剤層を形成し、塗装用マスキングテープを作製した。
【0031】上記実施例1,2及び比較例1,2,3において作製した塗装用マスキングテープについて、100R曲面貼り付け性、見切り性、糊残り性、塗膜(被着体)汚染性を以下に示した方法で評価した。
【0032】
■100R(直径100mm)曲面貼り付け性メラミン塗装板に直径100mmの円を描き、テープを円周に沿って貼り付けていく。円周に沿って貼り付け可能でしわ、浮きがないものを○、若干のしわ、浮きが発生するものを△、円周に沿って貼り付け困難なものを×とした。
【0033】■見切り性メラミン樹脂塗料板にテープを貼り付け、メラミン系塗料を0.05mmの厚さに吹き付け、150℃にて30分乾燥、室温にて1時間冷却後、テープを剥がした。見切りがシャープに出ているものを○、線が蛇行しているもの、塗料がテープ貼り付け部に侵入しているものを×とした。
【0034】■糊残り性メラミン樹脂塗料板にテープを貼り付け、メラミン系塗料を0.05mmの厚さに吹き付け、150℃にて30分乾燥、乾燥機から取り出した直後と1時間冷却後に、室温にてテープを剥がした。取出し直後と1時間冷却後のいずれにおいても、テープを貼り付けていた塗板に糊が残っていなかったものを○、少なくともいずれかの場合に糊が残っていたものを×とした。
【0035】■塗膜汚染性メラミン樹脂塗料板にテープを貼り付け、メラミン系塗料を0.05mmの厚さに吹き付け、150℃にて30分乾燥、室温にて1時間冷却後、テープを剥がした。テープを貼り付けていた塗板に汚染が認められないものを○、汚染が認められるものを×とした。
【0036】以上の評価結果を表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】表1からも明らかなように、本発明において規定する構成を有する実施例1,2の塗装用マスキングテープは、マスキングテープとして要求される実用特性を満足していることが分かる。一方、軟質塩化ビニルフィルムまたはポリオレフィンフィルムのみを支持体としたもの、高温時に耐溶剤性の高いフィルムのみを支持体として用いた比較例1〜3では、本発明の目的を達成することが出来ない。
【0039】
【発明の効果】本発明は、優れた柔軟性が有りながら高温時の耐溶剤性が劣るため塗装用マスキングテープの基材として用いることの出来なかったポリオレフィンフィルム等の基材を塗装用マスキングテープの基材として用いることが出来るようにした画期的なものである。即ち、本発明の塗装用マスキングテープは、塗料の塗布後の高温乾燥によっても、塗料の溶剤が基材中に侵入せず、テープの膨潤を防止することができる。従って、剥離が容易であり、見切り性も良好である。また糊残りや塗膜の汚染を防止することができる。さらに、支持体面の平滑性が高く、粘着剤層表面を平滑にすることができ、塗装時の塗料侵入や跡つき等を防ぐことができる。
【出願人】 【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
【出願日】 平成9年(1997)10月21日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
【公開番号】 特開平11−123355
【公開日】 平成11年(1999)5月11日
【出願番号】 特願平9−288264