トップ :: B 処理操作 運輸 :: B01 物理的または化学的方法または装置一般

【発明の名称】 発泡抑制剤
【発明者】 【氏名】山口 春雄
【氏名】岩永 祐介
【課題】発泡被覆材料のケミカルエンボス加工に用いられ、油性及び水性のいずれの発泡抑制組成物にも適用が可能である上、優れたエンボス効果及びその効果の持続性を有する発泡抑制剤を提供する。

【解決手段】一般式[1]
【特許請求の範囲】
【請求項1】一般式[1]
【化1】

(式中のAは炭素数1〜18のアルキル基、ニトロ基又はハロゲン原子、R1及びR2は、それぞれ炭素数4〜18のアルキル基又はアルコキシアルキル基であり、それらはたがいに同一であってもよいし、異なっていてもよい)で表されるベンゾトリアゾール誘導体からなる発泡抑制剤。
【請求項2】一般式[1]におけるR1及びR2が、それぞれアルコキシ基の炭素数が1〜14のアルコキシプロピル基である請求項1記載の発泡抑制剤。
【請求項3】一般式[1]におけるAが炭素数4〜18のアルキル基である請求項1又は2記載の発泡抑制剤。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は新規な発泡抑制剤に関し、さらに詳しくは、床、天井、壁、レザー、衣服、道路標識などに用いられる発泡被覆材料のケミカルエンボス加工に使用される発泡抑制剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、建築分野においては、床材や壁材などとして、発泡被覆材料が多用されており、そして、この発泡被覆材料においては、意匠性などを付与するために、例えば発泡膨張部に、部分的に非膨張部分を所望のパターン状に形成することがよく行われている。このような発泡膨張部に、部分的に非膨張部分をパターン状に形成する方法の1つとして、ケミカルエンボス加工が知られている。このケミカルエンボス加工は発泡抑制剤、樹脂、可塑剤、溶剤、着色剤、安定剤などを混合した発泡抑制組成物を、未発泡の発泡性被覆材料にシルクスクリーン印刷、ロータリースクリーン印刷、グラビア印刷などにより、所望のパターンを印刷したのち、発泡性被覆材料の発泡を行い、印刷された部分を非膨張部分とする方法である。上記発泡抑制組成物としては、従来、有機溶剤を含む油性のものが用いられ、そして、この油性の発泡抑制組成物用に、無水トリメリット酸系発泡抑制剤が工業的に広く使用されている。しかしながら、近年、特に公害の規制が厳しくなり、有機溶剤の毒性問題が提起され、人体に対する影響も甚大になってきている上、火災の危険性から回避するためにも有機溶剤の使用は厳しく規制され、有機溶剤を使用しない水性の発泡抑制組成物への移行が求められている。これまで、広く用いられてきた無水トリメリット酸系発泡抑制剤は、水と反応性を有することから、水性の発泡抑制組成物への適用は、非常に困難であるという欠点を有している。これに対し、トリアゾール系発泡抑制剤は、油性及び水性のいずれの発泡抑制組成物に対しても適用可能であり、例えば特公昭47−29187号公報、特表平3−500864号公報、特開平5−318612号公報などに、発泡抑制剤として、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール又はこれらの誘導体が開示されている。しかしながら、上記従来のトリアゾール系発泡抑制剤は、発泡抑制剤自体の昇華性のために、エンボス効果及び該効果の持続性が不十分であり、その改善が要望されていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような事情のもとで、発泡被覆材料のケミカルエンボス加工に用いられ、油性及び水性のいずれの発泡抑制組成物にも適用が可能である上、優れたエンボス効果及びその効果の持続性を有する発泡抑制剤を提供することを目的としてなされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記の好ましい性質を有する発泡抑制剤を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、ベンゼン環に特定の置換基を有すると共に、1位にジアルキルアミノメチル基を有するベンゾトリアゾール誘導体が、その目的に適合しうることを見い出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、(1)一般式[1]
【化2】

(式中のAは炭素数1〜18のアルキル基、ニトロ基又はハロゲン原子、R1及びR2は、それぞれ炭素数4〜18のアルキル基又はアルコキシアルキル基であり、それらはたがいに同一であってもよいし、異なっていてもよい)で表されるベンゾトリアゾール誘導体からなる発泡抑制剤、を提供するものである。また、本発明の好ましい態様は、(2)一般式[1]におけるR1及びR2が、それぞれアルコキシ基の炭素数が1〜14のアルコキシプロピル基である第(1)項記載の発泡抑制剤、(3)一般式[1]におけるAが炭素数4〜18のアルキル基である第(1)、(2)項記載の発泡抑制剤、である。
【0005】
【発明の実施の形態】本発明の発泡抑制剤として用いられるベンゾトリアゾール誘導体は、一般式[1]
【化3】

で表される構造を有するものであって、この一般式[1]におけるAは炭素数1〜18のアルキル基、ニトロ基又はハロゲン原子を示す。ここで、炭素数1〜18のアルキル基は直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、その例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。また、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。このAとしては、特に炭素数4〜18のアルキル基が好適であり、さらに、このAのベンゼン環における導入位置については特に制限はなく、4位、5位、6位及び7位のいずれであってもよい。一方、一般式[1]におけるR1及びR2は、それぞれ炭素数4〜18のアルキル基又はアルコキシアルキル基を示し、これらは直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。炭素数4〜18のアルキル基の例としては、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。また、炭素数4〜18のアルコキシアルキル基としては、アルコキシ基の炭素数が1〜14のアルコキシプロピル基が好ましく、例えばブトキシプロピル基、オクチルオキシプロピル基、デシルオキシプロピル基などが挙げられる。このR1及びR2は、たがいに同一であってもよいし、異なっていてもよい。本発明の発泡抑制剤に使用される前記一般式[1]で表される典型的なベンゾトリアゾール誘導体を第1表に示す。なお、表におけるA、R1及びR2は、前記一般式[1]における基を表す。
【0006】
【表1】

【0007】前記一般式[1]で表されるベンゾトリアゾール誘導体の製造方法としては特に制限はなく、従来公知の方法を用いることができる。例えば目的のベンゾトリアゾール誘導体に対応する1位が無置換のベンゾトリアゾール系化合物とジアルキルアミンとを、ホルムアルデヒドの存在下に付加縮合させることにより、目的のベンゾトリアゾール誘導体を容易に製造することができる。本発明の発泡抑制剤の使用量としては特に制限はなく、状況に応じて適宜選定されるが、一般的には、発泡抑制組成物中の含有量が1〜40重量%、好ましくは5〜30重量%の範囲になるように用いるのが有利である。この含有量が1重量%未満では発泡抑制効果が十分に発揮されないおそれがあるし、40重量%を超えるとコスト的に不利になる上、発泡抑制組成物による塗布面のブロッキング性などの問題が発生するおそれがある。本発明の発泡抑制剤は、本発明の効果が損なわれない範囲で、所望により、他の発泡抑制剤と併用することができる。本発明の発泡抑制剤を適用する発泡性被覆材料としては特に限定されず、公知の材料が使用できるが、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂がこの目的には特に有効である。発泡性被覆材料における発泡剤としては、アゾジカルボンアミド及びN,N−ジニトロソペンタメチレンテトラミンが多用されている。本発明の発泡抑制剤の効果は、以下の作用により発現されるものと推測される。従来のトリアゾール系発泡抑制剤は昇華性が高く、発泡剤の分解温度までの加熱中に漸次昇華されて発泡性組成物中に拡散する量が少なくなり、ブリード又は抑制効果不足を生ずる。これに対し、本発明の発泡抑制剤は、昇華性が従来のトリアゾール系発泡抑制剤に比べて著しく低いため、発泡剤の分解温度までの加熱中に発泡性組成物中に十分拡散するその結果、本発明の発泡抑制剤は、従来のトリアゾール系発泡抑制剤と比較して少ない使用量で発泡抑制効果を示し、しかもシャープなケミカルエンボス効果を奏する。また本発明の発泡抑制剤は、発泡抑制組成物中の樹脂、可塑剤、溶剤、着色剤、安定剤などとの相溶性又は分散性に優れている。
【0008】
【実施例】次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
実施例1アクリル樹脂30重量部、トルエン25重量部、メチルエチルケトン25重量部及び発泡抑制剤として第1表に示されたNo.3の化合物20重量部をミキサーで30分間分散し、油性の発泡抑制組成物を調製した。この発泡抑制組成物を133線/インチの彫刻版にて未発泡の塩ビ壁紙用原反に部分印刷し、発泡壁紙上に部分的に発泡抑制部位を設け、90℃で1分間乾燥後、210℃で60秒間加熱して発泡させ抑制効果を評価した。結果を第2表に示す。
実施例2実施例1において、No.3の化合物の量を15重量部に変更した以外は、実施例1と同様にして実施した。結果を第2表に示す。
比較例1実施例1において、発泡抑制剤として、No.3の化合物の代わりに、ベンゾトリアゾールを使用した以外は、実施例1と同様にして実施した。結果を第2表に示す。
比較例2実施例2において、発泡抑制剤として、No.3の化合物の代わりに、ベンゾトリアゾールを使用した以外は、実施例2と同様にして実施した。結果を第2表に示す。
【0009】
【表2】

【0010】油性系で化合物No.3は、ベンゾトリアゾールと同量で優れた効果が得られるだけでなく、ベンゾトリアゾールより少ない量でも優れた効果が得られた。
実施例3ポリアクリル樹脂エマルジョン30重量部、ポリ塩化ビニルエマルジョン30重量部、界面活性剤1重量部、水20重量部及び発泡抑制剤として第1表に示されたNo.1の化合物20重量部をミキサーで30分間分散し水性の発泡抑制組成物を調製した。この発泡抑制組成物を133線/インチの彫刻版にて未発泡の塩ビ壁紙用原反に部分印刷し、発泡壁紙上に部分的に発泡抑制部位を設け、90℃で1分間乾燥後、210℃で60秒間加熱して発泡させ抑制効果を評価した。結果を第3表に示す。
実施例4実施例3において、発泡抑制剤として、No.1の化合物の代わりに、第1表に示されたNo.5の化合物を用いた以外は、実施例3と同様にして実施した。結果を第3表に示す。
実施例5実施例3において、発泡抑制剤として、No.1の化合物の代わりに、第1表に示されたNo.10の化合物を用いた以外は、実施例3と同様にして実施した。結果を第3表に示す。
比較例3実施例3において、発泡抑制剤として、No.1の化合物の代わりに、ベンゾトリアゾールを用いた以外は、実施例3と同様にして実施した。結果を第3表に示す。
【0011】
【表3】

【0012】油性系と同様、水性系においても本発明の発泡抑制剤は優れた効果を示した【0013】
【発明の効果】本発明の発泡抑制剤は上述のように油性、水性のいずれの発泡抑制組成物にも適用が可能であり、かつシャープな凹部を有するケミカルエンボス効果及びその効果の持続性を有する。本発明の発泡抑制剤は、特に水性系で使用することにより、優れた安全性及び作業性が得られ、例えば壁紙、床材、天井材、包装紙、ブックカバー、レザーなど多岐にわたるケミカルエンボス加工の技術に広く応用することができる。
【出願人】 【識別番号】000002820
【氏名又は名称】大日精化工業株式会社
【出願日】 平成10年(1998)3月20日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】内山 充
【公開番号】 特開平11−267407
【公開日】 平成11年(1999)10月5日
【出願番号】 特願平10−71751