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【発明の名称】 生石灰組成物、及びそれを用いた消石灰の製造方法
【発明者】 【氏名】引馬 尚子

【氏名】須崎 純一

【氏名】伊吹山 正浩

【要約】 【課題】排ガス処理等に用いて好適な高比表面積の消石灰を有機溶剤を用いることなく安価に提供する。

【解決手段】生石灰を特定の添加剤の存在下で有機溶剤を用いることなく消化する。具体的方法として、還元糖、シクロデキストリン、ポリカルボン酸、タンニン酸、EDTA、メラミンスルフォン酸のいずれか1種以上を含有する生石灰組成物を消石灰製造用の原料とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】還元糖、シクロデキストリンからなる群から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする生石灰組成物。
【請求項2】ポリカルボン酸、タンニン酸、EDTAからなる群から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする生石灰組成物。
【請求項3】メラミンスルフォン酸を含有することを特徴とする生石灰組成物。
【請求項4】請求項1、請求項2又は請求項3記載の生石灰組成物を消化することを特徴とする消石灰の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高比表面積を有し高反応性を有し、例えば、排煙等の産業廃棄物の処理に好適な消石灰を製造する方法並びにそれに用いる原料の生石灰組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】消石灰(Ca(OH)2 )は生石灰(CaO)に水を加えて、消化することにより得ることができるが、一般に塊状の生石灰を消化した場合には、得られる消石灰は10〜20m2 /g程度の粉末である。
【0003】一方、いろいろな排煙中の有害ガス、ことに塩化水素や硫酸、亜硫酸等の酸性ガスを消石灰を用いて固定化し、排ガスを浄化することは知られているが、このような用途では高比表面積を有し、反応性に富む消石灰が要望されている。
【0004】そこで、最近、反応活性に富む消石灰の製造方法として、生石灰の消化の過程でアルコール等の有機溶媒を水に含ませる方法が提案されている(特公平6−8194号公報、特開平5−193997号公報)。
【0005】しかし、これらの方法では、揮発性が高く引火性のある有機溶剤を多量に用いるので溶剤回収の工程が必要で、しかも前記溶剤回収工程や消化工程は防爆設備にしなければならず、設備費がかかるという生産上の欠点がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、上記の事情に鑑みていろいろ実験的に検討し、特定の添加剤の存在下で生石灰を消化するとき、有機溶剤を用いることなく、高比表面積で、反応性に優れる消石灰を得られるという知見を得て、本発明に至ったものである。
【0007】即ち、本発明の目的は、有機溶剤を含まない水を用いて生石灰から高比表面積の消石灰を製造する方法を提供し、例えば排ガス処理用途等に適用しえる反応性の高い消石灰を安価に提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、生石灰と特定の添加剤とからなることを特徴とする生石灰組成物であり、具体的には、還元糖、シクロデキストリンからなる群から選ばれる1種以上、カルボン酸の中でポリカルボン酸、タンニン酸、EDTAからなる群から選ばれる1種以上、又はメラミンスルフォン酸を含有する生石灰組成物である。
【0009】更に、本発明は、生石灰を前記添加剤の存在下で消化することを特徴とする消石灰の製造方法であり、前記の特定の添加剤を含有する生石灰組成物を消化することを特徴とする消石灰の製造方法である。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明者らは、上述のとおり、有機溶媒をもちいないで生石灰を消化し、しかも高比表面積の消石灰を得ることを目的にいろいろ実験的に検討し、特定の添加剤を用いるときに、従来有機溶媒なしに消化する場合には得ることが出来なかった比表面積が30m2 /g以上、好ましい条件下では35m2 /g以上の高い比表面積を有する消石灰を容易に得ることができるという知見を得て、本発明に至ったものであり、本発明においては、特定の添加剤の存在下で生石灰を有機溶剤を含有しない水を用いて消化することが本質的である。
【0011】生石灰を水のみで消化するときに、特定の添加剤が存在することで、得られる消石灰の比表面積が著しく高くなる理由は不明であるが、本発明者らは特定の添加剤の存在するときに、消化時の液相(水)中のカルシウムイオン濃度が低下することが関係しているものと推察している。従って、例えば、カルシウムイオンと錯体を形成して生石灰の消化(水和)反応を実質的に低減し、高比表面積の消石灰を生ぜしめる物質が有効であると考えられる。
【0012】本発明者らは、前記添加剤に関して上記の考えに基づき多くの実験的検討を重ねた結果、糖類、カルボン酸、スルフォン酸の中に有効なものが比較的多く含まれること、さらにその中に以下に説明するものが特に効果的であることを見出し、本発明に至ったものである。
【0013】即ち、本発明の添加剤の第1群としては、還元糖、シクロデキストリンからなる群から選ばれる1種以上である。
【0014】前記還元糖としては、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、ソルボース、アラビノース、リボース、キシロース、2−デオキシグルコース、フコース、ラムノース、ガラヘプチュロース、マンノヘプチュロース、グリセリンアルデヒド、ジオキシアセトン、マルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、メリビオース、ラクトース、ツラノース、ソホロース等が挙げられる。このうち、マルトース、ラクトースは、高比表面積の消石灰が得易いので好ましい。
【0015】前記シクロデキストリンとしては、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン等が挙げられる。このうち、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリンは、高比表面積の消石灰が得易いので好ましい。
【0016】本発明の添加剤の第2群としては、ポリカルボン酸、タンニン酸、EDTAからなる群から選ばれる1種以上である。
【0017】前記ポリカルボン酸としては、スーパー100PHX、スーパー200(以上、デンカグレース社製)、オロタン731SD、プライマル850、オロタン901、オロタン960(以上、ローム・アンド・ハース・ジャパン社製)、パイオニンA−98、パイオニンA−98−P(以上、竹本油脂社製)、デイスペックスN−40、デイスペックスA−40(以上、協和産業社製)、カヤキレーター−C−1000、カヤキレーター−C−500(以上、日本化薬社製)、SDA−40N、SDA−40K、SDA−40F(以上、ソマール社製)、Disperbyk、BYK−P104/P105、BYK−P104S/P240S、Lactimon、BYK−405、Lactimon−WS(以上、ビックケミー・ジャパン社製)、ブレノールP−8(吉村油化学社製)、ニッカソルトCP−22(日華化学社製)等が挙げられる。
【0018】前記EDTAとしては、エチレンジアミン、エチレンジアミン二酢酸塩、二酢酸エチレンジアミン−N,N’−二プロピオン酸、エチレンジアミン一水和物、硫酸エチレンジアミン、酒石酸エチレンジアミン、重酒石酸エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸バリウム、エチレンジアミン四酢酸カルシウム、エチレンジアミン四酢酸コバルト、エチレンジアミン四酢酸銅、エチレンジアミン四酢酸二アンモニウム、エチレンジアミン四酢酸二リチウム、エチレンジアミン四酢酸二カリウム、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸鉄、エチレンジアミン四酢酸ランタン、エチレンジアミン四酢酸マグネシウム、エチレンジアミン四酢酸マンガン、エチレンジアミン四酢酸ニッケル、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸三カリウム、エチレンジアミン四酢酸三ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸亜鉛等が挙げられる。
【0019】本発明の添加剤の第3群としては、メラミンスルフォン酸が挙げられる。
【0020】本発明において、第1群、第2群、第3群に群分けした添加剤は、群の中の物質同士を2種以上同時に用いることは勿論、異なる群に区分けされる物質同士を2種以上用いても差し支えない。
【0021】本発明において、添加剤の最適の添加量は、液相中のカルシウムイオン濃度を適当な値に制御することを念頭に、得ようとする消石灰の目標比表面積値、また添加剤を構成する物質の分子量等により変更することができる。通常は、生石灰と添加剤との合計100重量%に対して0.1〜10重量%であり、好ましくは1〜6重量%である。0.1重量%未満では、本発明の効果を得ることができない場合があるし、10重量%を越えると、得られる消石灰中に多量の添加剤が残留し消石灰純度が低下すること、更に、添加剤が一般に高価なので実用上得策でなくなるからである。両面を考慮して、前記の好ましい範囲が選択される。
【0022】次に、予め添加剤を加えた生石灰組成物を用いて、これを水のみで消化する方法を例に、本発明における消化の条件について説明する。
【0023】生石灰としては、石灰石をロータリーキルン、ベッケンバッハ炉等で加熱処理後、ボールミル等で乾式粉砕し、いろいろなサイズに分級されて得られた生石灰を用いることができ、例えば平均粒径が4μm程度、比表面積が4m2 /g程度の従来公知のものを用い、これに0.1〜10重量%の添加剤をリボンブレンダー、ヘンシェルミキサー等の乾式混合機中で混合し、生石灰組成物を得る。
【0024】次に、前記生石灰組成物に水を加えて消化するが、このときの生石灰組成物と水との割合は1/0.35〜1/1.5の重量比率が好ましく、温度は40〜80℃の範囲で略一定に保持することが好ましい。又、消化反応が完了するまでの間、前記生石灰と水との混合物は、その配合条件、消化の進み具合等に応じて、スラリー状態〜湿潤した粉末状態を示すので、それに応じた混合機を用いる。
【0025】更に、消化反応を終えて得られる消石灰は、通常未反応の水を含むので、乾燥し蒸発させるが、このとき粉末が凝集し塊状となることがある。その場合は、前記の乾燥、粉砕の操作を同時に行うことが好ましい。
【0026】以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明を更に詳細に説明する。
【0027】
【実施例】
〔実施例1〕比表面積4.0m2 /gの生石灰(電気化学工業(株)製「生石灰」)100重量部に対して、マルトースを6重量部加え、乳鉢を用いて乾式で混合し生石灰組成物を得た。
【0028】前記生石灰組成物106重量部に水100重量部を加え、60℃で1時間保持し、消化反応を完了させた。この消化反応の間、撹拌を行った。得られた消石灰を、120℃に加熱し乾燥した後、解砕し、消石灰粉末を得た。
【0029】前記消石灰粉末について、BET法により比表面積を測定したところ、30m2 /gという高い比表面積値を示した。この結果を表1に示す。
【0030】
【表1】

【0031】〔実施例2〜6〕実施例1のマルトースに変えて、いろいろな添加剤を用いたこと以外は、実施例1と同一の操作を行い、いろいろな消石灰粉末を得て、それらの比表面積値を測定した。この結果を表1に示す。
【0032】〔実施例7〕β−シクロデキストリン6重量部を水100重量部に分散させた消化水をビーカーに準備し、更に、比表面積4.0m2 /gの生石灰を100重量部投入し、攪拌しながら60℃で1時間保持することで消化反応を生起させた。そして、得られた消石灰を、120℃に加熱し乾燥した後、解砕し、消石灰粉末を得て、比表面積値を測定した。この結果を表1に示す。
【0033】〔実施例8〕実施例7のβ−シクロデキストリンの量を変えたこと以外は実施例7と同一の操作を行い、消石灰粉末を得て、その比表面積値を測定した。この結果を表1に示す。
【0034】〔比較例1〕マルトースを用いなかったことを除いては、実施例1と同一の操作をして得た消石灰粉末について比表面積を測定した。この結果を表1に示す。
【0035】〔比較例2〕実施例1のマルトースに変えて、還元糖、シクロデキストリンのいずれにも該当しない糖であるサッカロースを用いたこと以外は、実施例1と同一の操作を行い、消石灰粉末を得て、比表面積値を測定した。この結果を表1に示した。
【0036】〔比較例3〕実施例1のマルトースに変えて、ポリカルボン酸、タンニン酸、EDTAのいずれにも該当しないカルボン酸であるオレイン酸を用いたこと以外は、実施例1と同一の操作を行い、消石灰粉末を得て、比表面積値を測定した。この結果を表1に示した。
【0037】
【発明の効果】本発明によれば、有機溶剤を用いることなく、高比表面積の消石灰が容易に得ることができるので、排ガス処理用途等に適用可能な、反応性の高い消石灰粉末を安価に提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000003296
【氏名又は名称】電気化学工業株式会社
【出願日】 平成9年(1997)9月25日
【代理人】
【公開番号】 特開平11−90167
【公開日】 平成11年(1999)4月6日
【出願番号】 特願平9−259677