トップ :: B 処理操作 運輸 :: B01 物理的または化学的方法または装置一般




【発明の名称】 重金属含有吸着剤中の油分の回収方法
【発明者】 【氏名】坂本 宗由

【氏名】長井 明久

【氏名】村上 忠彦

【氏名】福田 一之

【要約】 【課題】天然ガスコンデンセート等の炭化水素油に含有される水銀、砒素等の重金属の吸着除去に使用され、重金属および油分を含有する吸着剤中の油分のみを選択的かつ効率的に回収する方法を提供すること。

【解決手段】重金属および油分を含有する吸着剤を吸着塔内において温度100℃以上、特に110℃以上のスチームと接触させることにより、重金属を吸着剤から脱離させることなく、油分のみをパージし高収率で回収する方法および特定の細孔分布を有する活性炭を用いることによりさらに重金属の脱離を抑制した油分回収方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 炭化水素油中の微量重金属の吸着処理に用いられた吸着剤であて、重金属および油分を含有する吸着剤をスチームと接触させることを特徴とする重金属含有吸着剤中の油分の回収方法。
【請求項2】 前記吸着剤とスチームとの接触が重金属含有炭化水素油を該吸着剤の充填層を設けた吸着処理帯域に通過させた後、重金属および油分を含有する吸着剤の充填層にスチームを供給することからなる請求項1記載の重金属含有吸着剤中の油分の回収方法。
【請求項3】 前記スチームの温度が100℃〜400℃である請求項1または2記載の重金属含有吸着剤中の油分の回収方法。
【請求項4】 前記吸着剤が活性炭である請求項1〜3のいずれかの項記載の重金属含有吸着剤中の油分の回収方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、炭化水素油中の微量重金属の吸着処理に用いられた吸着剤に含有する油分の回収方法に関し、詳しくは、ナフサ、天然ガスコンデンセート等の炭化水素油中の微量重金属の吸着処理に用いられた使用済み吸着剤をスチームと接触させることによる吸着剤に残存する油分の回収方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】石油製品の混合基材として用いられるナフサ、天然ガスコンデンセート等の炭化水素油または石油化学原料として使用される天然ガス、エチレン、プロピレン等の炭化水素ガス中には原油等の産地により、水銀、砒素等の如き重金属を含有するものがある。炭化水素油、炭化水素ガス中にこれらの重金属が含まれると石油精製工程で使用される貴金属系触媒、例えば、白金、パラジウム、イリジウム等が容易に被毒され活性が阻害されるため触媒の取替え等を余儀なくされる。また、水銀は多くの金属とアマルガムを形成する性質があり、装置材料として、特にアルミニウムベースの合金を用いた場合アマルガム腐蝕を誘発するという問題がある。
【0003】従って、従来から炭化水素油中の微量重金属の除去方法が検討され、活性炭、ゼオライト、アルミナ等またはこれらの固体吸着剤に重金属との反応性化合物を担持した多孔性吸着剤を用いる吸着除去方法が提案されている。
【0004】しかしながら、炭化水素油中の重金属の吸着除去に前記の如き多孔性吸着剤を用いた場合、吸着剤中には吸着された重金属以外に油中に存在する多数の吸着性物質と共に相当量の油分が残存する。このような油分は、吸着剤の再生または廃棄および重金属の回収に際しては除去しておくことが必要である。
【0005】吸着剤中の油分の回収については、有機溶媒による抽出、窒素ガス等の不活性ガスによるパージ等の方法が提案されているが、油分の回収の際に吸着剤中の重金属を回収する油分に混入させないことが重要であり、有機溶媒による抽出および不活性ガスパージによる除去の方法によれば吸着剤中の油分、特に吸着剤の細孔内に吸着された油分が十分除去されないにも拘らず、吸着剤からの重金属の脱離等が生ずるので、重金属の油分および溶媒への混入が生じ、重金属と油分等との分離操作がさらに必要となるなど、なお解決すべき点が多く、操作簡便で、かつ、効率的な油分回収方法が切望されてきた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明は、炭化水素油中の重金属の吸着除去に用いられ、重金属および油分を含有する使用済み吸着剤中の油分のみを選択的に回収する方法を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、微量の重金属を含有する炭化水素油の吸着処理に用いられた吸着剤であって、重金属が吸着され油分が残存する吸着剤をスチームと接触させることにより、吸着剤から油分のみが高収率で回収でき、油分を除去した使用済みの重金属含有吸着剤を提供できることを見いだし、これらの知見に基いて本発明の完成に到達した。
【0008】すなわち、本発明は、炭化水素油中の微量重金属の吸着処理に用いられた吸着剤であって、重金属および油分を含有する吸着剤をスチームと接触させることを特徴とする重金属含有吸着剤中の油分の回収方法に関するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】以下に、本発明について詳細に説明する。
【0010】本発明の油分の回収方法において用いられる吸着剤としては、液状の炭化水素油中に微量含有する重金属の吸着処理に有効な多孔性材料であれば何ら制限されるものではなく、例えば、活性炭、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、活性白土、ゼオライト等の多孔性材料からなる吸着剤を挙げることができるが、特に、活性炭が吸着された重金属の脱離を抑制しつつ、細孔内および粒間に残存する油分のみを選択的に排出可能な吸着剤として有効である。また、これらの多孔性材料を担体として重金属との反応性物質、例えば、水銀との反応性化合物として、ナトリウム、カリウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム等の硫化物、金属ハロゲン化物、例えばヨウ化ナトリウム等のほか、塩酸、硫酸等の鉱酸を担持させたものでもよい。
【0011】吸着剤の粒径は0.5mm〜3mm、好ましくは、0.7mm〜2.3mmである。例えば、活性炭吸着剤としては、粒子集合体全重量基準で全体の95%以上の粒子が2mm以下であり、0.7mm以下の粒子が全体の5%以下であるものが好ましい。吸着剤の吸着処理帯域に対する充填率は吸着処理帯域の内容積基準で50容量%以上、特に70容量%以上が好ましい。充填率をこの範囲に設定することにより、重金属含有炭化水素油からの重金属の吸着処理および吸着処理後の油分の回収も効率よく短時間で行なうことができる。
【0012】炭化水素油中の重金属は吸着剤との接触によりこれらの吸着剤の細孔内に吸着保持され、また、前記のような硫化物等の担持物との化学反応により吸着され吸着剤中に存在する。また、炭化水素油との接触により油分も吸着剤の細孔内に侵入保持され、また、吸着剤充填層の粒子間にも残存する。本発明の重金属含有吸着剤中の油分の回収方法においては、使用済み吸着剤中の重金属の含有量が約1ppm〜5000ppmのものでも用いることができる。
【0013】活性炭としては、100m2 /g〜2500m2 /g、好ましくは、200m2 /g〜1500m2 /gの比表面積を有し、平均細孔半径2Å〜25Å、好ましくは、5Å〜20Åであり、細孔容積0.6ml/g〜1.3ml/g、好ましくは、0.8ml/g以上であり、さらに、細孔分布として、細孔半径25Å以下の細孔の容積が細孔半径100Å以下の半径の50%以上、好ましくは、70%以上のものが重金属の保持力が強く、吸着された重金属の脱離を抑制しかつ油分を選択的に排出させることを目的とする本発明の油分の回収方法には好適である。
【0014】本発明の油分の回収方法において吸着剤として用いられるシリカとしては、細孔構造を有し、550m2 /g〜700m2 /gの比表面積、0.3ml/g以上の細孔容積を有するものが好ましい。また、アルミナは、酸化アルミナを主成分としたもので、細孔構造を有し、通常、細孔容積が0.3ml/g以上、比表面積200m2 /g以上、平均細孔直径40Å〜120Åのものが用いられる。シリカ−アルミナも多孔性無機材料として本発明の油分の回収方法に用いられ、SiO2 およびAl23 からなり、シリカゲルとアルミナゲルを複合した多孔性構造を有し、シリカアルミナ中のシリカの含有量は、5重量%〜50重量%、好ましくは、10重量%〜40重量%であり、比表面積100m2 /g以上、平均細孔直径40Å〜100Åのものを用いることができる。また、ゼオライトはアルミノ珪酸塩であり、三次元骨格とその間隙に形成された細孔構造を有する物質である。天然品、合成品の何れも使用することができ、比表面積500m2 /g以上、細孔容積0.3ml/g以上が好ましい。ゼオライトは前述のように主としてアルカリ金属またはアルカリ土類金属のアルミノ珪酸塩からなり、メタン型構造のSiO2 四面体とAlO4 四面体が互いに1個づつの炭素原子を共有したかたちの、規則性を有する大きな空洞をもった三次元の骨格構造を形成し3Å〜10Åの範囲の一定した細孔直径をもち、この細孔構造に基づく吸着性および分子篩性をもっている。活性白土としては、粘土の一種である酸性白土を硫酸等で処理してさらに活性を向上させたものであり、その化学的組成はSiO2 、Al23 、Fe23 、CaO、MgO、K2 Oからなり、細孔構造を有し、比表面積500m2 /g、〜2500m2 /g、平均細孔直径50Å〜150Åを有するものを用いることができる。
【0015】炭化水素油中の重金属としては、如何なる種類のものでも前記吸着剤、特に活性炭を用いる本発明の油分の回収方法には支障がなく、例えば、水銀、砒素、鉛、バナジウム、ニッケル等、特に、水銀および砒素等を挙げることができる。従って、重金属含有吸着剤としては、水銀および/または砒素等を吸着した使用済み吸着剤が本発明の油分の回収方法にとって好適である。ここで「使用済み吸着剤」とは重金属の未吸着部分を約3%〜30%程度残しているいわゆる廃吸着剤である。
【0016】重金属含有吸着剤中に残留する油分の含有量は、吸着剤の種類によるが、通常、活性炭において約5重量%〜20重量%であり、特に限定されるものではない。
【0017】本発明の重金属含有吸着剤中の油分の回収方法に用いられるスチームは、通常のものでよいが、油分の回収率の点から温度100℃以上のもの、例えば、100℃〜400℃、特に、110℃〜200℃のものが好ましい。100℃未満では吸着剤中の油分が残存したままで十分回収することができない。特に110℃以上において吸着剤の細孔内に残存する油分もほぼ完全に除去することができる。
【0018】重金属含有吸着剤とスチームとの接触は、吸着剤の充填層にスチームを供給することにより行なうことができる。吸着剤の充填層が固定床の場合、スチームは吸着処理帯域の上部に供給してもよく、また、吸着処理帯域下部に供給することもできるが、油分含有吸着剤との接触効率の観点からはスチームを吸着処理帯域上部に供給し、下向流として油分含有吸着剤と接触させ残存する油分はスチームが凝縮したドレン水と共に吸着処理帯域下部から流下させることが好ましい。スチームの使用量は、吸着剤1m3 に対し20m3 〜2000m3 の割合であり、特に、100m3 〜1000m3 の割合とすることが好ましい。
【0019】また、吸着剤とスチームの接触時間は、他の条件により変動するが、2時間以下でよく、例えば、1.5時間以下でも吸着剤中の油分を1重量%以下に低減させることができる。接触時間を延長すれば油分はさらに減少するが、しかしながら、ドレン水量が増加するため、ドレン水量の増加抑制が可能な範囲にスチームの接触時間を設定することが重要である。
【0020】次に、本発明の好ましい実施の形態として■ 重金属吸着剤の充填層を設けた吸着処理帯域に重金属含有炭化水素油を通過させ、重金属の吸着処理を行なった後、油分5重量%〜20重量%および重金属を含有する吸着処理帯域充填層に100℃以上のスチームを供給し、吸着処理帯域出口から油分および凝縮水を回収することからなる重金属含有吸着剤中の油分の回収方法、■ 重金属吸着剤の充填層を設けた吸着処理帯域に重金属含有炭化水素油を通過させ、重金属の吸着処理を行なった後、油分5重量%〜20重量%および重金属を含有する吸着処理帯域充填層に110℃〜200℃のスチームを吸着剤1m3当たり20m3 〜2000m3 供給し、油分を吸着処理帯域出口からドレン水と共に回収することからなる重金属含有吸着剤中の油分の回収方法、■ 活性炭吸着剤の充填層を設けた吸着処理帯域に水銀含有炭化水素油を通過させ、水銀の吸着処理を行なった後、油分5重量%〜20重量%を含有する吸着処理帯域充填層に110℃〜200℃のスチームを吸着剤1m3 当たり20m3 〜2000m3 供給し、吸着剤中の油分を4重量%以下とし、油分を吸着処理帯域出口からドレン水と共に回収することからなる重金属含有吸着剤中の油分の回収方法 および■ 活性炭吸着剤の充填層を設けた吸着処理帯域に水銀含有炭化水素油を通過させ、水銀の吸着処理を行なった後、油分5重量%〜20重量%を含有する吸着処理帯域充填層に110℃〜200℃のスチームを吸着剤1m3 当たり20m3 〜2000m3 の割合で1時間以上供給し、吸着剤中の油分を1重量%以下とし、油分を吸着処理帯域出口からドレン水と共に回収することからなる重金属含有吸着剤中の油分の回収方法等を提供することができる。
【0021】
【実施例】実施例および比較例において吸着剤中の水銀含有量および油の含有量の測定は次の方法を用いた。また、吸着剤の比表面積および細孔半径および細孔容積を以下に示す方法で測定した。
■吸着剤中の水銀含有量の測定方法日本インスツルーメンツ社製マーキュリーSP−3D水銀測定器を用いて測定した。
■油分測定法重金属および油分を含有する活性炭を四塩化炭素で抽出した後、その四塩化炭素の一部を取り、日本分光社製IR−810測定器により、波長3.4μm付近の吸収を測定し検量線から油分濃度を算出した。
■比表面積および細孔分布の測定活性炭を真空脱気した後、日本ベル株式会社製BELSORP 28 SA測定器を用いて測定した吸着等温線に基づいて比表面積についてはBET法により、細孔容積および細孔分布についてはDH法(Dollimore & Heal法)により算出した。
■粒径の測定画像解析により測定した。
【0022】実施例1油分20重量%を含有し、水銀100ppm吸着した使用済み活性炭A(注1)が充填されたベンチスケール吸着塔に150℃のスチームを活性炭A 1m3あたり、40m3 /hrの割合で吸着塔上部に導入し1時間パージした。
【0023】この結果、吸着塔下部から油分と共にドレン水が20リットル流出した。活性炭中の油分が4重量%となり、ドレン水中の、水銀濃度は20ppbであった。
【0024】(注1)活性炭Aの吸着処理前の性状粒径 :0.7〜2.3mm比表面積 :1400m2 /g平均細孔半径:10Å細孔容積 :1.3ml/g細孔分布 :80%実施例2スチームのパージ時間を1時間から1.5時間に延長したこと以外すべて実施例1と同様にして油分回収処理を行なったところ、吸着剤中の油分が3重量%に低減した。結果を表1に示す。
【0025】実施例3油分20重量%を含有し、水銀1300ppm吸着した活性炭B(注2)を用いスチームパージの時間を2時間としたこと以外、すべて実施例1と同様にして油分の回収処理を行なったところ、パージ後の活性炭中の油分は1重量%となった。ドレン水40リットル流出し、ドレン水中に流出した水銀は50ppbであった。
【0026】(注2)活性炭Bの吸着処理前の性状粒径 :0.7〜2.3mm比表面積 :1400m2 /g平均細孔半径:15Å細孔容積 :1.3ml/g細孔分布 :70%実施例4スチームを吸着塔の下部に供給したこと以外すべて実施例1と同様にして油分の回収処理を行なったところ、吸着剤中の油分は4重量%となった。
【0027】実施例5〜6スチームの温度を各々、110℃および130℃としたこと以外すべて実施例1と同一の条件および操作で油分を回収した。吸着剤中の残存油分は各々、4重量%および3重量%であった。
【0028】比較例1油分20重量%を含有し、水銀100ppm吸着した使用済み活性炭Aを141リットル充填したベンチスケール吸着塔に水を1400リットル通過させた。1時間処理後の活性炭中の油分は15重量%〜19重量%であった。
【0029】比較例2スチームの代わりに窒素ガスを用い、実施例1と同様にして活性炭層を60℃に加熱し、24,000リットルの割合で1時間パージしたところ、活性炭中の油分は19重量%であった。
【0030】比較例3温度95℃のスチームを用いたこと以外すべて実施例1と同一の条件および操作により油分の回収を行なった。活性炭中の油分は十分除去できず、17重量%残存した。
【0031】比較例4油分20重量%を含有し、水銀100ppm吸着した使用済み活性炭C(注3)が充填されたベンチスケール吸着塔に150℃のスチームを活性炭C 1m3あたり40m3 /hrの割合で吸着塔上部に供給し1時間パージした。活性炭中の油分は4重量%であったが、吸着塔下部から油分と共に流出したドレン水中の水銀濃度は150ppbとなった。
【0032】(注3)活性炭Cの吸着処理前の性状粒径 :0.7〜2.3mm比表面積 :1200m2 /g平均細孔半径:23Å細孔容積 :0.8ml/g細孔分布 :40%【0033】
【表1】

実施例および比較例から、100℃、特に110℃以上のスチームを用いることにより吸着された重金属の脱離を抑制しつつ、活性炭中の油分を効果的に除去できるのに対し、95℃のスチームでは活性炭の細孔内吸着された油分の排出除去を行なうことができず、相当量の油分が残存することが明らかである。また、特定の細孔分布を有する活性炭を用いることにより重金属の脱離を抑制することができる。
【0034】
【発明の効果】以上説明したように、本発明は、炭化水素油中の微量重金属の吸着処理に用いられた重金属含有吸着剤に高温のスチームを供給することにより、油分のみを選択的かつ高収率で回収することができる。スチームパージの際に生ずるドレン水に流出する重金属は微量であり、重金属の再利用および環境保全の観点から、本発明の油分回収方法は極めて有用である。
【出願人】 【識別番号】596165305
【氏名又は名称】太陽エンジニアリング株式会社
【出願日】 平成9年(1997)7月11日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】久保田 耕平
【公開番号】 特開平11−28305
【公開日】 平成11年(1999)2月2日
【出願番号】 特願平9−202124