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【発明の名称】 自動車用消火装置
【発明者】 【氏名】笹田 隆穂

【要約】 【課題】自動車のエンジンルーム内での火災を防止するための消火装置を、実用性の高い状態で提供する。

【解決手段】
【特許請求の範囲】
【請求項1】ガス状の消火剤を圧縮して充填したボンベと、当該ボンベから消火剤を噴出させるための手動式操作具とを備えた消火器を、室内とエンジンルームとを仕切る隔壁に、ボンベがエンジンルーム内に位置し操作具が室内に臨む状態で取付けて成る自動車用消火装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車のエンジンルームでの火災を防止又は消火するための装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】自動車用のエンジンルームでの火災を防止又は消火する装置としては、■事故の衝撃や火災の熱によって消火器を自動的に作動させて消化剤を噴出させるもの(例えば特開昭50- 8393号公報や特開昭53-14209号公報、特開昭62-234766 号公報など参照)、■運転者が室内からレバー等を手動操作して消火剤を噴出させるもの(例えば実開昭57-33556号公報参照) 、■自動的な噴出と手動による噴出とを兼ね備えたもの(例えば実開昭55-91344号公報や実開昭62-27655号公報参照)、が提案されている。
【0003】■の消火剤を自動的に噴出させるものは、一見すると理想的のように思えるが、作動の確実性の問題や、衝撃や熱等を感知してボンベから消火剤を噴出させるための機構が複雑になる問題、或いは、火災の危険がない事故の場合も消火剤が噴出してしまう等の問題があった。他方、■の自動噴出と手動操作による噴出とを併有したものは、消火装置としての機能の点から見たら理想的であると言えるが、構造が著しく複雑になるため、スペースの面から設置しずらい問題がある。
【0004】これに対して■の手動操作式のものは、運転者が必要に応じて作動させることができ、しかも構造が簡単になるため、現実的である言える。しかし、前記実開昭57-33556号公報に開示された消火装置は、ボンベを室内(或いは運転席)に設け、ノズルだけをエンジンルームに向けたものであるため、ボンベが邪魔になると共に体裁も悪いという問題があり、特に乗用車には不向きであった。
【0005】以上のような様々の問題のため、エンジンルームでの火災を防止又は消火するための装置は、必要性が求められながら普及していないのが実情であった。本発明は、このような実情を改善すべく成されたものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者は、運転者(場合によっては同乗者)が室内から操作して消火剤をエンジンルーム内に噴出させる手動タイプの消火装置の簡便さに着目し、その利点を保持しつつ従来品の欠点を克服すべく研究を重ね、本発明を完成させるに至った。
【0007】すなわち本発明に係る自動車用消火装置は、ガス状の消火剤を圧縮して充填したボンベと、当該ボンベから消火剤を噴出させるための手動式操作具とを備えた消火器を、室内とエンジンルームとを仕切る隔壁に、ボンベがエンジンルーム内に位置し操作具が室内に臨む状態で取付けた構成になっている。
【0008】
【発明の奏する効果】このように構成すると、消火器の外に作動機構を必要としないため、装置全体をコンパクト化することができる。そして、ボンベはエンジンルーム内に配置されており、自動車用の室内には操作具が露出しているに過ぎないため、ボンベが邪魔になることはないと共に体裁も良い。このため実用性が高く、特に乗用車の消火装置として好適である。
【0009】
【発明の実施形態】次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1〜図5は第1実施形態を示しており、このうち図1はエンジンルーム2をボンネット3で塞いだフロントエンジンタイプの自動車1の平面図、図2は図1のII−II視断面図である。図1の符号4はエンジンを、符号5はフロントガラスを、符号6はハンドルをそれぞれ示す。
【0010】図2に示すように、エンジンルーム2と室内7とは隔壁(フロントパネル)8で仕切られており、隔壁8のうちハンドル6の近傍の箇所(すなわち運転者が直ぐに手を伸ばせる箇所)に消火器9を取付けている。図では消火器9をハンドル6の左側に配置しているが、ハンドル6の右側に配置しても良い。図3は消火器9の斜視図、図4は消火器9を取付けた状態の断面図、図5は使用状態を示す断面図である。図2や図4に示すように、消火器9は、隔壁8に開けた取付穴10からエンジンルーム2に挿入したボンベ(或いはタンク)11を備えている。ボンベ11の後端にはフランジ12を一体形成しており、このフランジ12を隔壁8にねじ止め等の適当な手段で固定することにより、消火器9を隔壁8に取付けている。なお、接着やねじ込み等の他の手段で取付けても良い。
【0011】ボンベ11の後端は底板13で塞がれている一方、先端部は、有底筒状の前蓋14で塞がれている。前蓋14は、ねじ込みや溶着等の適当な手段により、ボンベ11に対してシールした状態で離脱不能に取付けられている。そして、ボンベ11内にガス状の消火剤15を圧縮して充填している。実施形態ではボンベ11は合成樹脂製としているが、金属製でも良い。合成樹脂製とする場合、エンジンルーム2は相当の高温になるので、ポリエチレンのような耐熱性のものが好ましい。ボンベ11の大きさは直径10cm、長さ15cm程度で良い。
【0012】消火剤(消火ガス)15は様々のものを使用できる。例えば、硫酸アンモン、塩化アンモン、重炭酸ソーダ、焼ミョウバン、尿素、フッ素系界面活性剤、炭酸ガスなどを混合したものを使用できる。圧縮ガスと泡消火剤とを混合したものなどでも良い。ボンベ11の底板13と前蓋14とには、シール材16を介して操作ロッド17が貫通している。操作ロッド17は請求項に記載した操作具の一例をなすもので、その後端にはプッシュボタン18を取付けている。また、操作ロッド17のうち前蓋14に挿入されている部分よりも後方の部位は小径部17aとなっており、操作ロッド17を一杯に押し切ると、図5に示すように、小径部17aが前蓋14のノズル穴19の箇所に位置して、消火剤15が前方に噴出するように設定している。
【0013】操作ロッド17は錆防止のためステンレス製とするのが望ましい。消火剤15の漏れを防止する手段としては、図示のようなゴム質等のシール材16に代えて、Oリングなどを使用しても良い。前蓋14には、操作ロッド17の摺動をガイドするための有底筒状のカバー体20をねじ込み等の適当な手段で固着している。カバー体20には、消火剤15を拡散させるための多数の小穴21が開いている。なお、カバー体20はなくても良い。
【0014】ボンベ11の後端には、プッシュボタン18を囲う筒部22を一体に形成しており、この筒部22に保護カバー23を装着している。保護カバー23は火災報知器のカバー板と同様の構造であり、環状及び放射状に延びる溝やスリット、或いはミンシ線状切り込み等の弱化線24を形成している。従って、人が指Fを当ててある程度の力で押すと保護カバー23が破れて、プッシュボタン18を押すことができる。
【0015】保護カバー23を設けると、平常時に誤って消火器9を作動させることを防止できる利点がある。この場合、保護カバー23及び筒部22を火災報知器と同じ赤色にしておくと、火災用の非常操作手段であることを運転者(或いは同乗者)に知らしめて、とっさの消火活動を誘導できる。図6では第2実施形態を示している。すなわち、この実施形態では、ボンベ11の先端部に、操作ロッド17が摺動自在に貫通したガイド体25をねじ込み又は一体成形等の適当な手段で設け、このガイド体25に前蓋14を固着する一方、操作ロッド17の先端に錐先部17bを設けている。操作ロッド17を押し込むと前蓋14が突き破られて、消火剤15がエンジンルーム2に噴出する。
【0016】この場合、錐先部17bは、前蓋14への貫通によって消火剤15が確実に噴出するように、断面星形のように多数の溝を形成しておくのが好ましい。なお、この実施形態では、ボンベ11を隔壁8に取付ける手段として、ボンベ11の外周のうち後端部に、隔壁8に引っ掛かる複数個の爪26を設け、ボンベ11を、弾性に抗して隔壁8の取付穴10に押し込むことにより、爪26とフランジ12とで隔壁8を挟み固定している。また、この実施形態では、消火器9の略全体がエンジンルーム2内に入り込んだ状態になっており、フランジ12の内側に第1実施形態と同じ保護カバー23を取り付けている。
【0017】図7では第3実施形態を示している。すなわちこの実施形態では、操作ロッド17の先端に大径のプラグ部17cを形成する一方、ボンベ11の先端部に固着した前蓋14に、前記操作ロッド17のプラグ部17cがきっちり嵌まるノズル穴19を設けている。この例では、操作ロッド17を押すと、プラグ部17cが一点鎖線で示すようにノズル穴19から離脱して、消火剤15がエンジンルーム2に噴出する。
【0018】図8では第4実施形態を示している。 (A)は縦断断面図、 (B)は (A)の B-B視断面図である。この実施形態では、ボンベ11は、軸心に沿って中空部28が延びる二重筒状に形成されており、内筒11aの先端部に、中空部28に連通するノズル穴19を開けている。そして、中空部28に操作ロッド17を通して、操作ロッド17の先端に形成したプラグ部17cでノズル穴19を塞いでいる。ボンベ11の先端には、消火剤15が過度に拡散するのを防止するためのガイド筒29を設けている。
【0019】この実施形態では、操作ロッド17を実線矢印で示すように押してプラグ部17cを中空部28から抜き出すか、又は、操作ロッド17を点線矢印で示すように引いてプラグ部17cを後退させるかすると、消火剤15がノズル穴19から噴出する。この実施形態では、プラグ部17cとノズル穴19との箇所のシールだけを考慮すれば良いため、シール構造が簡単になる利点がある。
【0020】上記第1実施形態〜第4実施形態では、操作ロッド17をボンベ11に内蔵した状態になっているため、全体としてコンパクトになって運搬等の取り扱いが容易であると共に、全体が一つのユニットになっているため取付けが簡単である利点がある。図9では第5実施形態を示している。この実施形態は、フランジ30a付きの筒状のケース30を隔壁8に取付けて、このケース30内にボンベ11を摺動可能に挿入し、更に、ボンベ11の先端部に小径突出部11bを形成して、この小径筒部11bの周壁にノズル穴19を開け、このノズル穴19を、ケース30の先端部に形成した筒部30bで塞いでいる。この実施形態では、室内7からボンベ11を押すと、一点鎖線で示すように小径突出部11bのノズル穴19がエンジンルーム2内に露出し、消火剤15がエンジンルーム2内に噴出する。
【0021】この実施形態では、ボンベ11はケース30を介して隔壁8に取付けられており、また、ボンベ11自体が請求項に記載した操作具の役割を兼用することになるが、このような形態も請求項の構成に含まれる。図10に示すのは第6実施形態である。この実施形態では、ボンベ11に、その軸線と直交した方向に開口するノズル穴19を設けて、これを操作ロッド17のプラグ部17cで塞いでいる。このように構成すると、ボンベ11が隔壁8から大きく突出することを防止できる利点がある。
【0022】図11に示すのは第7実施形態である。この実施形態では、噴出口31を備えた中空状のケース30を隔壁8に取り付けて、このケース30内に、ボール32でノズル穴19を内側から塞いだボンベ11を、そのノズル穴19が室内7に向けて開口する姿勢で取付け、更に、ケース30の底板30cに、前記ボール32を押すための操作ロッド17を取付けている。ボール32は、消火剤15の内圧により、ノズル穴19を塞ぐ状態に押されている。また、図では明示していないが、ボンベ11はケース30内にずれ不能に固定されている。
【0023】この実施形態では、操作ロッド17を押すと、ボール32がボンベ11内に落ち込いで、消火剤15がノズル穴19からケース30の内部に噴出し、次いで、ケース30の噴出口31からエンジンルーム2内に噴出する。以上、本発明の実施形態を幾つか説明したが、本発明の具体例は上記の実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて様々の形態に変更できる。例えばボンベは円形に限らず角形等の他の形状でも良いし、また、操作具としてはプッシュ式又は引張式の操作ロッドには限らず、レバー式や撮み式などでも良い。
【出願人】 【識別番号】598050993
【氏名又は名称】笹田 隆穂
【出願日】 平成10年(1998)4月16日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】石井 暁夫 (外2名)
【公開番号】 特開平11−299913
【公開日】 平成11年(1999)11月2日
【出願番号】 特願平10−106121