| 【発明の名称】 |
血小板含有生体組織用接着剤 |
| 【発明者】 |
【氏名】新村 和夫
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| 【要約】 |
【課題】より高い創傷治癒促進作用を有すると共に、より高い組織接合効果をもつ生体組織用接着剤を提供する。
【解決手段】生体組織用接着剤に血小板が含有されていることを特徴とする血小板含有生体組織用接着剤。血小板が自己の血小板であることを特徴とする上記の血小板含有生体組織用接着剤。生体組織用接着剤が生分解性材料から構成されていることを特徴とする上記の血小板含有生体組織用接着剤。生体組織用接着剤がフィブリン接着剤又はゼラチン系接着剤であることを特徴とする上記の血小板含有生体組織用接着剤。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 生体組織用接着剤に血小板が含有されていることを特徴とする血小板含有生体組織用接着剤。 【請求項2】 血小板が自己の血小板であることを特徴とする請求項1記載の血小板含有生体組織用接着剤。 【請求項3】 生体組織用接着剤が生分解性材料から構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の血小板含有生体組織用接着剤。 【請求項4】 生体組織用接着剤がフィブリン接着剤又はゼラチン系接着剤であることを特徴とする請求項3記載の血小板含有生体組織用接着剤。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は生体組織用接着剤に関する。 【0002】 【従来の技術】外科手術などにおいて、皮膚、臓器、血管などの創部の閉鎖・接合は、最も基本的な手技のひとつであり、現在では、糸による縫合が一般的になっている。しかし、創部の閉鎖・接合を縫合糸を用いずに、迅速に、適度な張力に耐えうる生物学的適合性のよい接着剤にて行うことが考えられ、いくつかの生体組織用接着剤が臨床的に用いられている。従来より、臨床的に使用され、または開発されている生体組織用接着剤としては、シアノアクリレート系接着剤、ポリウレタン系接着剤、ゼラチン系接着剤、フィブリン接着剤などがある。 【0003】上記シアノアクリレート系接着剤は、瞬間接着剤として工業的にも広く使用されているが、接着剤の適用方法としては、接合しようとする組織間に直接塗布して接着する直接法と、組織同士を密着させた上から布片をおいて被膜し接着する間接法とがある。しかしながら、シアノアクリレート系接着剤は、接着速度が速い点や接着強度が大きい点では優れているが、硬化物が硬すぎるため創面の止血が不完全になり易いこと、硬化したポリマーの加水分解生成物であるホルムアルデヒドが毒性を有し組織の修復を阻害することなどの欠点がある(木村 肇:日本接着学会誌、22(2)、77頁(1986年))。このため、中枢神経や血管に直接触れる部位には使用できず、適応箇所に制限がある。また、分解速度が遅いため異物となって創傷治癒を妨げ易いという問題もある。 【0004】上記ポリウレタン系接着剤としては、硬化後の接合部の柔軟性が維持されるよな弾性接着剤として開発された反応性ウレタンプレポリマー接着剤がある。反応性ウレタンプレポリマー接着剤は、その合成原料である芳香族ジイソシアネートが生体毒性を有するという問題がある。そのため、硬化速度の多少の遅延にもかかわらず、無毒性のフッ素化脂肪族ジイソシアネートを用いることが試みられている(松田 武久:生体材料、7(1)、32頁(1989年))。 【0005】上記ゼラチン系接着剤に用いられるゼラチンは、コラーゲンを加水分解して得られる蛋白質であり、単独でも接着作用があるが、重合剤としてホルムアルデヒドやグルタルアルデヒドを加えると速やかにゲル化して収縮する。また、レゾシノールをゼラチンに添加すると接着層を疎水化し接着強度が高まる。このゼラチン系接着剤は、組織に対して有害であるホルムアルデヒドを重合剤として用いるため、術野に直接、該接着剤を塗布する場合に組織にホルムアルデヒドが触れ、生体毒性を示すという問題がある。 【0006】上記フィブリン接着剤は、高濃度のヒトフィブリノーゲンを基材とし、フィブリノーゲンをフィブリンに転換する酵素であるトロンビン、フィブリンを安定化させる因子である血液凝固第XIII因子、これらの反応に必要なカルシウムイオンおよび生成したフィブリン塊をプラスミンやトリプシンなどの線溶系酵素による分解から保護して接着力を持続させるための線維素溶解活性阻害物質であるアプロチニンが配合されている。フィブリン接着剤は、使用時に、これらの物質を混合し、使用局所でフィブリン塊を生成させるようになっている。このフィブリン接着剤は、異物となり難く、毒性もなく、創面の創傷治癒過程を阻害せず、むしろ促進的に働くなどの利点も多いが、しかしながら、柔軟であるため固定力および接着力が弱いという問題がある。また、副作用としてフィブリン糊が細菌の培地となりうるため感染の危険がある。また、調製時間が長いため手術時間が長くなるという問題もある。 【0007】このように、シアノアクリレート系接着剤、ポリウレタン系接着剤、ゼラチン系接着剤などの生体組織用接着剤は、生体組織に対し生体毒性を有し、組織の創傷治癒を妨げるという問題点がある。また、フィブリン接着剤は、創面の創傷治癒過程を阻害せず、むしろ促進的に働くが、固定力および接着力が弱いという問題がある。現状ではより積極的に創傷治癒を促進する作用を有する生体組織用接着剤はなく、創傷治癒を促進させ、より接着力の高い生体組織用接着剤が望まれている。 【0008】近年、創傷治癒過程においても様々なサイトカインや細胞増殖因子が重要な役割をもっていることが明らかとなってきた。最近では、創傷治癒促進のため線維芽細胞増殖因子の投与などが臨床応用されている。しかしながら、サイトカインや細胞増殖因子においては複雑なネットワークを形成しているため、単独のサイトカインや細胞増殖因子を生体に高容量投与することは副作用の増大をもたらす。また、白血球や血小板、骨髄細胞などは主要なサイトカインの産生細胞であるが、これらの細胞を局所に移植しても、目的とする患部に滞留せず、拡散し、効果の減少と副作用の増大を引き起こす可能性がある。細胞外マトリックスであるコラーゲン等の投与は、高齢者等の生体の創傷治癒力が衰えている場合には十分な治癒促進作用が発揮されない。人工皮膚においても、創傷治癒の初期過程である白血球の浸潤、肉芽形成の後では有効であるが、創傷初期からの治癒促進には強い効果が発揮されない。 【0009】このように、創傷治癒においては、より強く創傷治癒を促進する生体組織用接着剤が望まれている。このような創傷治癒作用を有するものとして、特表平7−505076号公報には、血小板因子に富む生物接着剤が提案されている。しかしながら、これは血小板に富む血漿を開始原料血漿として用いて、生物接着剤の構成要素となる寒冷沈殿物を回収して生物接着剤を調製するものであり、調製過程で血小板含有の細胞増殖因子などが失われる、又は失活する恐れがあるという問題がある。 【0010】 【発明が解決しようとする課題】本発明は上記問題点を解決するものであり、その目的は、より高い創傷治癒促進作用を有すると共に、より高い組織接合効果をもつ生体組織用接着剤を提供することにある。 【0011】 【課題を解決するための手段】血小板中には、血小板由来成長因子(PDGF)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、上皮成長因子(EGF)など種々の細胞増殖因子が含まれていることが知られており、血小板は創傷治癒過程において、これらの因子を介して重要な役割をもっていることが知られてきている。本発明者は、血小板を従来の生体組織用接着剤に含有させることにより、より高い創傷治癒促進作用を有すると共に、より高い組織接合効果をもつ生体組織用接着剤が得られることを見出し、本発明を完成させた。 【0012】すなわち、請求項1記載の発明は、生体組織用接着剤に血小板が含有されていることを特徴とする血小板含有生体組織用接着剤である。 【0013】請求項2記載の発明は、血小板が自己の血小板であることを特徴とする請求項1記載の血小板含有生体組織用接着剤である。 【0014】請求項3記載の発明は、生体組織用接着剤が生分解性材料から構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の血小板含有生体組織用接着剤である。 【0015】請求項4記載の発明は、生体組織用接着剤がフィブリン接着剤又はゼラチン系接着剤であることを特徴とする請求項3記載の血小板含有生体組織用接着剤である。 【0016】以下、本発明を詳細に説明する。本発明の血小板含有生体組織用接着剤は、生体組織用接着剤に血小板が含有されている。上記の含有とは、例えば、生体組織用接着剤に血小板が埋入又は付着されていることを指す。 【0017】本発明で用いられる生体組織用接着剤としては、従来から生体組織用接着剤として使用されてきたもののいずれも使用可能であり、特に限定されず、例えば、従来技術の項で詳細に説明したフィブリン接着剤、ゼラチン系接着剤、シアノアクリレート系接着剤が挙げられる。特に、接着剤基材が生分解性材料である場合には、組織接合が進行した後も剥がすなどによる接着剤除去の必要がないために、より組織接合にとって有用であり好ましい。このような接着剤基材としては、フィブリン、ゼラチン(コラーゲン)、キチン、キトサンなどが挙げられる。また、接着剤基材がフィブリン、コラーゲン、キチン、キトサンなどのような場合には、それ自身が治癒を促進する効果を発揮するため、治癒促進は相乗的に発揮される。 【0018】本発明で用いられる血小板としては、ヒト、動物由来のものなど、特に限定されない。血小板は公知の方法で採取、分離することができる。例えば、クエン酸ナトリウム採血した血液から、遠心分離法、密度勾配液中での遠心分離法、ゲル濾過法などを用いて分離する方法が挙げられる。また、培養されたものでもよい。血小板としては、特に自己の血小板、すなわち、本発明の血小板含有生体組織用接着剤が適用される本人の血小板が最も好ましい。自己の血小板である場合には、移植後の血小板に対する宿主の拒絶反応もなく、安全に創傷の治癒が促進され、組織接合が良好に促進されるからである。 【0019】本発明の血小板含有生体組織用接着剤中に含有すべき血小板の量は、特に限定されず広範囲に適宜選択されるが、血小板含有生体組織用接着剤1g中に、好ましくは、103 〜1012個の範囲である。 【0020】本発明の血小板含有生体組織用接着剤中には、必要に応じて、サイトカイン、細胞増殖因子、刺激剤などを含有させてもよい。刺激剤を含有させると、血小板が容易に活性化される。 【0021】また、本発明の血小板含有生体組織用接着剤において、血小板は必要に応じて、既知の人工皮膚で用いられている線維芽細胞や表皮細胞などの細胞と混在されて使用されてもよい。 【0022】 【作用】本発明の血小板含有生体組織用接着剤においては、接合部局所において血小板から種々の細胞増殖因子などの創傷治癒促進因子が放出・産生されるので、治癒が促進される。また、血小板が生体組織用接着剤に含有されているため、局部での滞留性にも優れている。 【0023】 【発明の実施の形態】実施例17週齢のウイスター系ラットからクエン酸ナトリウムを抗凝固剤として用いて心臓採血し、その血液から遠心分離法により血小板を採取した。この血小板を1mlあたり5×107 個の濃度でカルシウム・マグネシウム不含リン酸緩衝液に浮遊させ、血小板浮遊液を作製した。フィブリノーゲン末および血液凝固第XIII因子をアプロチニン溶液に溶解したA液と、トロンビン末を塩化カルシウム溶液に溶解したB液から構成されるフィブリン糊(ヘキスト社製、商品名 ベリプラストP)に、上記血小板浮遊液を以下の方法で添加することにより、血小板含有生体組織用接着剤を得た。すなわち、上記フィブリン糊のB液に、B液1mlに対して上記血小板浮遊液が10μlの割合になるように添加混合し、次いで、得られた血小板添加B液と上記A液を混合し、本発明の血小板含有生体組織用接着剤とした。後述の性能評価においては、この血小板含有生体組織用接着剤を調製直後に切創に0.1g塗布する方法により切創に投与した。 【0024】実施例2実施例1と同様に作製した血小板浮遊液を、ゼラチン糊(E.H.S.社(フランス)製、商品名 GRFグルー)の中のゼラチン・レゾルシン混合液に、ゼラチン・レゾルシン混合液1mlに対して血小板浮遊液が10μlの割合になるように添加混合した。後述の性能評価においては、この液を切創に0.1g塗布し、その上にホルムアルデヒド添加液を数滴滴下する方法により切創に投与した。 【0025】実施例3実施例1と同様に作製した血小板浮遊液を、シアノアクリレート系生体組織用接着剤(三共社製、商品名 Aron Alpha A)に、シアノアクリレート系生体組織用接着剤1mlに対して血小板浮遊液が10μlの割合になるように混合し、本発明の血小板含有生体組織用接着剤とした。後述の性能評価においては、この血小板含有生体組織用接着剤を調製直後に切創に0.1g塗布する方法により切創に投与した。 【0026】比較例1フィブリン糊(ヘキスト社製、商品名 ベリプラストP)のA液とB液を混合し、生体組織用接着剤とした。後述の性能評価においては、この生体組織用接着剤を調製直後に切創に0.1g塗布する方法により切創に投与した。 【0027】比較例2生体組織用接着剤としてゼラチン糊(E.H.S.社(フランス)製、商品名GRFグルー)を用いた。後述の性能評価においては、この生体組織用接着剤液を切創に0.1g塗布し、その上にホルムアルデヒド添加液を数滴滴下する方法により切創に投与した。 【0028】比較例3生体組織用接着剤としてシアノアクリレート系生体組織用接着剤(三共社製、商品名 Aron Alpha A)を用いた。後述の性能評価においては、この生体組織用接着剤を切創に0.1g塗布する方法により切創に投与した。 【0029】性能評価実施例1〜3の血小板含有生体組織用接着剤および比較例1〜3の生体組織用接着剤について、以下の方法により性能評価した。 【0030】10週齢のウイスター系ラットの背部を毛刈りし、背部正中線に垂直な方向に背部皮膚にメスで長さ2cmの切創を作成した。この切創部を等間隔で3ケ所で縫合した後、実施例1〜3および比較例1〜3の接着剤を前記のようにして投与処置した。処置の3日後にラットを犠牲死させ、抜糸後、切創中央部から左右に1cm幅の短冊状の皮膚切片を切り取った。レオメーターを用いて切創部の耐抗張力(g/cm)を測定した。それぞれの実施例および比較例について5匹のラットを用いて行い、耐抗張力(g/cm)はこれらラットについて得られた値の平均値を取った。結果を表1に示した。 【0031】 【表1】
【0032】表1より、実施例1の血小板含有生体組織用接着剤を投与した群では、比較例1の生体組織用接着剤を投与した群よりも、耐抗張力が大きく上昇したことが分かる。実施例2と比較例2、および実施例3と比較例3の関係においても同じことが言える。 【0033】 【発明の効果】本発明の請求項1記載の発明の構成は、上記の通りであり、本発明によれば、より高い創傷治癒促進作用を有すると共に、より高い組織接合効果をもつ生体組織用接着剤が提供される。本発明の請求項2記載の発明の構成は、上記の通りであり、本発明によれば、移植後の血小板に対する宿主の拒絶反応がなく、より一層高い創傷治癒促進作用を有すると共に、より一層高い組織接合効果をもつ生体組織用接着剤が提供される。 【0034】本発明の請求項3記載の発明の構成は、上記の通りであり、本発明によれば、組織接合が進行した後も剥がすなどによる接着剤除去の必要がないために、組織接合効果がより一層高い請求項1又は2記載の血小板含有生体組織用接着剤が提供される。 【0035】本発明の請求項4記載の発明の構成は、生体組織用接着剤がフィブリン接着剤又はゼラチン系接着剤である請求項3記載の血小板含有生体組織用接着剤であるので、本発明によれば組織接合効果がより一層高い血小板含有生体組織用接着剤が提供される。 【0036】また、請求項1〜4記載の発明は、その高い創傷治癒促進効果からみて、従来の生体組織用接着剤に見られた毒性も緩和しているものと推定される。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000002174 【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
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| 【出願日】 |
平成10年(1998)2月26日 |
| 【代理人】 |
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| 【公開番号】 |
特開平11−239609 |
| 【公開日】 |
平成11年(1999)9月7日 |
| 【出願番号】 |
特願平10−45390 |
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