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【発明の名称】 歯質接着剤セット
【発明者】 【氏名】松苗 薫

【氏名】赤羽 正治

【氏名】広田 一男

【要約】 【課題】簡便な操作で強固に且つ確実に歯科用修復物を歯質に接着させることのできる歯質接着剤セットを提供する。

【解決手段】それぞれ所定重量%の、酸性基を有し少なくとも一つの不飽和二重結合を持つメタクリレート又はアクリレートと,水溶性有機溶媒と,水とから成る一液性のセルフエッチングプライマーと、それぞれ所定重量%の、酸性基及び水酸基を有せず少なくとも一つの不飽和二重結合を持つメタクリレート又はアクリレートと,酸性基を有せず水酸基を有する少なくとも一つの不飽和二重結合を持つメタクリレート又はアクリレートと,光重合開始剤と,光重合促進剤と,フィラーとから成る一液性の歯質接着剤とで歯質接着剤セットを構成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】(A)酸性基を有し少なくとも一つの不飽和二重結合を持つメタクリレート又はアクリレート:1.0〜50重量%と、(B)水溶性有機溶媒:1.0〜98重量%と、(C)水:1.0〜90重量%とから成るセルフエッチングプライマー(i)と、(D)酸性基及び水酸基を有しない少なくとも一つの不飽和二重結合を持つメタクリレート又はアクリレート:10〜90重量%と、(E)酸性基を有せず水酸基を有する少なくとも一つの不飽和二重結合を持つメタクリレート又はアクリレート:10〜90重量%と、(F)光重合開始剤:0.1〜5.0重量%と、(G)光重合促進剤:0.1〜5.0重量%と、(H)フィラー:1.0〜60重量%とから成る歯質接着剤(ii)との組み合わせから成ることを特徴とする歯質接着剤セット。
【請求項2】 セルフエッチングプライマー(i)が、光重合開始剤を0.1〜5.0重量%含むセルフエッチングプライマーである請求項1に記載の歯質接着剤セット。
【請求項3】 セルフエッチングプライマー(i)が、酸性基を有せず水酸基を有する少なくとも一つの不飽和二重結合を持つメタクリレート又はアクリレートを含むセルフエッチングプライマーである請求項1又は2に記載の歯質接着剤セット。
【請求項4】 セルフエッチングプライマー(i)が、酸性基を有せず水酸基を有する少なくとも一つの不飽和二重結合を持つメタクリレート又はアクリレートを0.5〜4.5重量%含むセルフエッチングプライマーである請求項3に記載の歯質接着剤セット。
【請求項5】 歯質接着剤(ii)が、分子内に酸性基を含まない高分子重合体0.5〜10重量%含む歯質接着剤である請求項1から4までのいずれか1項に記載の歯質接着剤セット。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、歯質と歯科用修復材とを簡単な操作で有効に接着させるために用いられる歯質接着剤セットに関するものである。更に詳しくは、歯質のエナメル質及び象牙質に対して歯科用修復材を接着する際、レジン系接着剤の接着性を簡単な操作で強固に確実にするための歯質接着剤セットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】歯科用修復材であるコンポジットレジンの普及に伴い、歯質とコンポジットレジンとの間には、操作が簡単で、安全且つ信頼性のある強固な接着が必要とされている。従来から用いられてきている接着方法としては、歯質をリン酸やクエン酸などの酸でエッチングを行い、水洗→乾燥→プライマー処理→乾燥→接着剤塗布→重合→コンポジットレジン充填のような一連の操作が代表的な修復物の接着方法である。このような方法は、接着操作ステップが煩雑であり、実際の臨床においては時間が掛かり安定した信頼性のある接着が得られていないのが実状である。
【0003】そこで近年、このよう複雑な操作ステップを簡略化するための接着方法が検討されて来ており、例えば特開平3−240712号公報,特開平7−82115号公報等では、エッチング操作を無くしたプライマーが提案されている。これは、エッチング処理とプライマー処理とを同時に行うことができると言われているセルフエッチングプライマーで歯質を処理し、乾燥してから接着剤を塗布するものである。即ち、セルフエッチングプライマーで窩洞形成された歯質表面を処理することにより、窩洞形成によって生じたスメアー層を溶解しながら、セルフエッチングプライマーが歯質に浸透する。そこにボンディング剤を塗布することにより、セルフエッチングプライマーとボンディング剤とが一体化して硬化することにより、強固な接着層が得られるものである。
【0004】しかしながら、現在市販されているこの種のセルフエッチングプライマーは、セルフエッチングプライマー中の重合性成分を硬化させるための重合触媒と重合促進剤とを必要としており、保存性が良好で安定した接着性能を有するセルフエッチングプライマーを得るためには重合触媒と重合促進剤とを分離する必要がある。そのために現在市販されているセルフエッチングプライマーは、重合触媒と重合促進剤との2液性のセルフエッチングプライマーで構成されており、使用する前には必ず2液を混合する必要がある。従って、それらは必ずしも操作が簡単であるとは言い難いし、計量誤差による不安定な接着を生じる可能性もある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、歯科用修復物の歯質への接着に関して、前述した如く接着操作ステップが煩雑で時間が掛かったり、安定した接着強度が得られなかったりしていて未だ臨床的に満足できる接着剤が得られていない前記従来技術の欠点を解消し、より簡便な操作で強固に且つ確実に歯科用修復物を歯質に接着させることのできる歯質接着剤セットを提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、歯質接着剤セットとして一液性のセルフエッチングプライマーと一液性の歯質接着剤との組み合わせで構成し、更にその組成は酸性基を有し少なくとも一つの不飽和二重結合を持つメタクリレート又はアクリレートと水溶性有機溶媒と水とから成る混合不要な一液性のセルフエッチングプライマーと成し、酸性基及び水酸基を有せず少なくとも一つの不飽和二重結合を持つメタクリレート又はアクリレートと酸性基を有せず水酸基を有する少なくとも一つの不飽和二重結合を持つメタクリレート又はアクリレートと光重合開始剤と光重合促進剤とフィラーとから成る混合不要な一液性の歯質接着剤と成すことによって、より簡便な操作で歯質と歯科用修復物との強固で確実な接着が得られることを究明し、本発明をなすに至った。
【0007】なお、従来から市販されているセルフエッチングプライマーは重合開始剤と重合促進剤とを必要としているが、セルフエッチングプライマー中には酸性成分,水など重合促進剤と反応し易い成分が含まれているため、その保存性を考えるとそれらを分離する必要があり、使用前に混和を必要とする2液性のセルフエッチングプライマーとして提供されている。しかしながら、本発明におけるセルフエッチングプライマーと歯質接着剤とは親和性が非常に高いため、セルフエッチングプライマー中の重合性成分と歯質接着剤中の重合性成分,光重合開始剤及び光重合促進剤とが容易に混ざり合い光重合可能となるため、セルフエッチングプライマーと歯質接着剤とをそれぞれ一液性として、より臨床的に操作性,接着耐久性に優れた接着剤セットを提供できるものである。
【0008】そして、歯質の象牙質に対しては、本発明における混合不要の一液性のセルフエッチングプライマーで処理することによりセルフエッチングプライマー中の酸性基を有する(メタ)アクリレート単量体が歯牙の切削時の粕であるスメアー層を溶解し、歯質を脱灰しながら歯質に浸透する。次にセルフエッチングプライマー中の水溶性有機溶媒を乾燥除去した後、歯質浸透性に優れた一液性の歯質接着剤を歯面に塗布することにより、歯質に浸透したセルフエッチングプライマー中の重合性成分と歯質接着剤とが一体化し、脱灰象牙質中にレジンモノマーが確実に浸透する。この時、セルフエッチングプライマー中の重合性成分と歯質接着剤中の光重合開始剤及び光重合促進剤も均一に混ざり合い、脱灰象牙質中に充分に浸透したモノマー成分を重合し樹脂含浸層を生成させることにより、高強度の接着が得られるのである。
【0009】また、エナメル質に対しては、本発明における混和不要の一液性のセルフエッチングプライマーで処理することにより、セルフエッチングプライマー中の酸性基を有する(メタ)アクリレート単量体が歯牙の切削時の粕であるスメアー層を溶解,除去する。同時に酸性基を有する(メタ)アクリレート単量体によりエナメル質を脱灰し、エナメル小柱に基づく凹凸の形成と、エナメル質を構成するハイドロキシアパタイトの結晶構造に基づく更に微少な凹凸構造を表面に生じさせながら浸透する。そこに歯質浸透性に優れた一液性の歯質接着剤を塗布してレジンモノマーとセルフエッチングプライマー中の重合性成分とを一体化し重合硬化させることにより強固な接着を得るのである。
【0010】
【発明の実施の形態】即ち、本発明に係る歯質接着剤セットは、(A)酸性基を有し少なくとも一つの不飽和二重結合を持つメタクリレート又はアクリレート:1.0〜50重量%と、(B)水溶性有機溶媒:1.0〜98重量%と、(C)水:1.0〜90重量%とから成るセルフエッチングプライマー(i)と、(D)酸性基及び水酸基を有しない少なくとも一つの不飽和二重結合を持つメタクリレート又はアクリレート:10〜90重量%と、(E)酸性基を有せず水酸基を有する少なくとも一つの不飽和二重結合を持つメタクリレート又はアクリレート:10〜90重量%と、(F)光重合開始剤:0.1〜5.0重量%と、(G)光重合促進剤:0.1〜5.0重量%と、(H)フィラー:1.0〜60重量%とから成る歯質接着剤(ii)との組み合わせから成ることを特徴とするものである。
【0011】また、本発明に係る歯質接着剤セットにおいて、セルフエッチングプライマー(i)中に含有されるA成分である酸性基を有し少なくとも一つの不飽和二重結合を持つメタクリレート又はアクリレートとは、例えば、リン酸基,カルボキシル基,スルホン酸基等の酸性基を有する少なくとも一つの不飽和二重結合を持つメタクリレート又はアクリレートのモノマーである。
【0012】リン酸基を有する少なくとも一つの不飽和二重結合を持つメタクリレート又はアクリレートのモノマーとしては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、ビス[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]ハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルアシドホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシブチルアシドホスフェート、8−(メタ)アクリロイルオキシデシルアシドホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジエンホスフェート等が挙げられる。
【0013】カルボン酸基を有する少なくとも一つの不飽和二重結合を持つメタクリレート又はアクリレートのモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、4−(メタ)アクリロキシエチルトリメリット酸及びその酸無水物、6−(メタ)アクリロイルオキシエチルナフタレン−1,2,6−トリカルボン酸及びその酸無水物、1,4−ジ(メタ)アクリロイルオキシエチルピロメリット酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、11−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸、N−(メタ)アクリロイル−p−アミノ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル−o−アミノ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル−5−アミノサリチル酸等が挙げられる。
【0014】スルホン酸基を有する少なくとも一つの不飽和二重結合を持つメタクリレート又はアクリレートのモノマーとしては、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。これらのリン酸基,カルボキシル基及びスルホン酸基等の酸性基を有する少なくとも一つの不飽和二重結合を持つメタクリレート又はアクリレートのモノマーは一種又は二種以上で使用でき、これらの中でもビス[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]ハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルアシドホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジエンホスフェート、4−(メタ)アクリロキシエチルトリメリット酸及びその酸無水物、6−(メタ)アクリロイルオキシエチルナフタレン−1,2,6−トリカルボン酸及びその酸無水物、1,4−ジ(メタ)アクリロイルオキシエチルピロメリット酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸が好適である。
【0015】これらの酸性基を有する少なくとも一つの不飽和二重結合を持つメタクリレート又はアクリレートの含有量は、セルフエッチングプライマー(i)中に1.0から50重量%であり、1.0重量%未満ではスメアー層の溶解や歯質脱灰などのセルフエッチングプライマーとしての効果が弱くなり、50重量%を超えると接着強度が低下する傾向がある。
【0016】また、セルフエッチングプライマー(i)中に含有されるB成分である水溶性有機溶媒としては、酸性基を有する少なくとも一つの不飽和二重結合を持つメタクリレート又はアクリレートと水を相溶させることができ、歯質との濡れ性を向上させることができる水溶性有機溶媒が好ましく、エチルアルコール、アセトン等が特に好ましい水溶性有機溶媒として挙げられる。これらは必要に応じて一種又は二種以上使用することもできる。水溶性有機溶媒の含有量は1.0〜98重量%であり、1.0重量%未満では歯質へのセルフエッチングプライマーの浸透性が低下し、セルフエッチングプライマーの乾燥操作が難しくなるため、高い接着性能が得られなくなる。また、98重量%を超えるとセルフエッチングプライマーの脱灰能が低下するため、接着性が低下する。
【0017】また、セルフエッチングプライマー(i)中に含有されるC成分である水としては、不純物を含まないものが使用され、蒸留水,精製水,イオン交換水又は脱イオン水等が好適である。水の含有量は1.0〜90重量%であり、1.0重量%未満では歯質の脱灰が弱くなり歯質接着性が低下する。また、90重量%を超えると酸性基を有する少なくとも一つの不飽和二重結合を持つメタクリレート又はアクリレートとの相溶性が悪くなるため歯質接着性が低下する。
【0018】次に、歯質接着剤(ii)中に含有されるD成分である酸性基及び水酸基を有しない少なくとも一つの不飽和二重結合を持つメタクリレート又はアクリレートとしては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、2,2−ビス(メタクリロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールメタントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート及びこれらのアクリレート、また分子中にウレタン結合を有するメタクリレート及びアクリレート等がある。分子中にウレタン結合を有するメタクリレート及びアクリレートとしては、ジ−2−メタクリロキシエチル−2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジカルバメート及びこれのアクリレート、また下記構造式で示されるものが挙げられる。これらのメタクリレート及びアクリレートは歯科用材料としては公知のものであるので、必要に応じて単独で或いは混合して使用すればよい。
【0019】
【化1】

【0020】この酸性基及び水酸基を有しない少なくとも一つの不飽和二重結合を持つメタクリレート又はアクリレートの含有量は10から90重量%であり、10重量%未満では硬化物の強度が弱く又光重合性も低下する。90重量%を超えると歯質親和性が悪くなり、接着強度が低下する。
【0021】歯質接着剤(ii)中に含有されるE成分である酸性基を有せず水酸基を有する少なくとも一つの不飽和二重結合を持つメタクリレート又はアクリレートは、具体的に表わすと、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジメタクリロキシプロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロキシプロポキシ)フェニル]プロパン及びこれらのアクリレート等がある。2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジメタクリロキシプロパンが特に好適である。このような酸性基を有せず水酸基を有する少なくとも一つの不飽和二重結合を持つメタクリレート又はアクリレートの含有量は10〜90重量%であり、10重量%未満では歯質接着剤の歯質との親和性が悪くなり、90重量%を超えると歯質接着剤の強度が弱くなり接着性も低下する。
【0022】この酸性基を有せず水酸基を有する少なくとも一つの不飽和二重結合を持つメタクリレート又はアクリレートは、必要に応じてセルフエッチングプライマー中にも含有させることができ、その場合に歯質接着性がより安定化する効果が認められる。この場合のセルフエッチングプライマー中の酸性基を有せず水酸基を有する少なくとも一つの不飽和二重結合を持つメタクリレート又はアクリレートの含有量は0.5〜4.5重量%であることが好ましい。
【0023】歯質接着剤(ii)中に含有されるF成分である光重合開始剤としては、カンファーキノン、ベンジル、ジアセチル、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、ベンジルジ(2−メトキシエチル)ケタール、4,4´−ジメチルベンジル−ジメチルケタール、アントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−クロロアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、1−ヒドロキシアントラキノン、1−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、1−ブロモアントラキノン、チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−ニトロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2−クロロ−7−トリフルオロメチルチオキサントン、チオキサントン−10,10−ジオキシド、チオキサントン−10−オキサイド、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾフェノン、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、アジド基を含む化合物などの増感剤があり、単独もしくは混合しても使用できる。この光重合開始剤の含有量は0.1〜5.0重量%であり、0.1重量%未満では確実な重合が得られず、5.0重量%を超えると物性の低下が生じる。
【0024】この光重合開始剤は、必要に応じてセルフエッチングプライマー(i)中に含有させることもでき、光硬化特性の向上効果が期待できる。その場合の光重合開始剤のセルフエッチングプライマー(i)中における含有量は0.1〜5.0重量%であることが好ましい。
【0025】歯質接着剤(ii)中に含有されるG成分である光重合促進剤としては、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、トリエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、等の3級アミンが好ましく、更にバルビツール酸、1,3−ジメチルバルビツール酸、1,3,5−トリメチルバルビツール酸、1,3,5−トリエチルバルビツール酸、5−ブチルバルビツール酸、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸、1−シクロヘキシル−5−エチルバルビツール酸などのバルビツール酸誘導体も好ましい。この光重合促進剤の含有量は0.1〜5.0重量%であり、0.1重量%未満では確実な重合が得られず、5.0重量%を超えると接着性が低下がする。なお、この光重合促進剤は歯質接着剤にのみ含有され、セルフエッチングプライマーに含有させるのは適当でない。
【0026】このようにして得られる光重合型の歯質接着剤(ii)は紫外線又は可視光線などの活性光線を照射することにより重合反応が達せられる。光源としては超高圧,高圧,中圧及び低圧の各種水銀灯、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、蛍光ランプ、タングステンランプ、キセノンランプ、アルゴンイオンレーザーなどを使用することもできる。
【0027】歯質接着剤(ii)中に含有されるH成分であるフィラーとしては、無機フィラーが好ましく、シリカ粉末,ガラス粉末(バリウムガラス粉末,フルオロアルミノシリケートガラス粉末)が特に好適である。更にこれらのフィラーは必要に応じてシランカップリング剤などの表面処理材で処理されたものも使用できる。フィラーの含有量は1.0〜60%の範囲であり、1.0%未満では歯質接着剤の液粘性が低いため接着操作性が悪く、60%を超えると歯質接着剤の歯質への浸透が悪くなり歯質接着性が低下する。
【0028】更に、歯質接着剤(ii)中には、必要に応じて分子内に酸性基を有しない高分子重合体を含有させることができる。分子内に酸性基を有しない高分子重合体としては、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸イソブチル、ポリメタクリル酸イソブチル、ポリアクリル酸n−ブチル、ポリメタクリル酸n−ブチル、及びこれらの組み合わせによる共重合体、等が挙げられる。中でも特に、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、メタクリル酸メチル/メタクリル酸エチル共重合体が接着性を向上させる効果が大きく、好適である。その濃度は歯質接着剤全体に対して0.5〜10重量%であることが好ましい。0.5重量%未満では接着性の向上が認められない。10重量%を超えると歯質接着剤の粘性が高くなり操作性,保存性を悪くすると共に歯面処理した歯質の中にモノマーが浸透し難くなり却って接着性を低下させてしまう。その他、必要に応じて微量の紫外線吸収剤,着色剤,重合禁止剤等がセルフエッチングプライマー(i)や歯質接着剤(ii)中に加えられても良いのは勿論のことである。
【0029】
【実施例】以下に具体的に例を上げて本発明に係る歯質接着剤セットを説明をするが、本本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0030】実施例1<セルフエッチングプライマー>2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンフォスフェート:20重量%、蒸留水:30重量%、エチルアルコール:50重量%を混合溶解して一液性のセルフエッチングプライマーを調製した。
<歯質接着剤>2−ヒドロキシメタクリレート:50重量%、トリエチレングリコールジメタクリレート:7重量%、ジ−2−メタクリロキシエチル2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジカルバメート:30重量%、カンファーキノン:1.0重量%、ジメチルアミノ安息香酸イソアミル:2.0重量%、バリウムガラス粉末:10重量%を混合溶解し一液性の歯質接着剤を調製した。このようにして調製したセルフエッチングプライマーと歯質接着剤とを用いて接着強さ及び適合状態について以下に示す方法にて試験を行った。配合組成,配合量及び結果を表1に示す。
【0031】〈接着強さ測定法〉1.牛の新鮮な前歯表面を注水下#600の耐水研磨紙によってエナメル質及び象牙質面を各5個ずつ露出,研磨した。
2.研磨した象牙質面又はエナメル質面に直径3.0mmの穴を穿ったフッ素樹脂テープを貼って被接着面を規定した。この規定した被着面にセルフエッチングプライマーを塗布し、30秒間保持した後に弱圧エアーで乾燥した。次に、歯質接着剤を塗布し、ジーシー社製歯科用可視光線照射器(製品名:ジーシーニューライトVLII)にて20秒間光照射した。
4.内径5.0mmの穴を穿った厚さ2.0mmのシリコーンゴム型にて接着面にジーシー社製光重合型コンポジットレジン(製品名:エスティオLC)を築盛し、前記ジーシー社製歯科用可視光線照射器にて40秒間光照射し、レジンを硬化させた。
5.試験体を37℃水中に1日間浸漬の後、試験体上部に引張り用アクリルロッドを装着し、島津製作所社製オートグラフにてクロスヘッドスピード1.0mm/min.にて引張接着試験を行った。エナメル質及び象牙質に対する接着測定結果より、各5個の平均値を求め接着強さとした。
【0032】〈適合状態観察法〉1.人抜去大臼歯の歯軸面にsaucer Type窩洞を形成した。
2.前述の接着強さ測定法に準じて、歯面全面に各種調製したセルフエッチングプライマー,歯質接着剤を塗布し、光重合型コンポジットレジンを窩洞内に充填硬化させた。
3.硬化後、試料を37℃の水中に24時間保管した後、窩洞中央部を歯軸に対して垂直に水平断し、断面を注水下エメリーペーパーNo.1000で平滑に仕上げた。
4.断面をリン酸溶液にて軽く酸触させた後、同面の精密レプリカを作製し、ソノレプリカ面をSEM観察してレジンと象牙質面との接合状態を観察した。
5.適合状態の判定は、レジンと象牙質との間の隙間を判定する笹崎の方法(日本歯科保存学雑誌28巻2号、452〜478頁,1985)によった。判定は同法のa〜e5段階(a:優れた適合性で隙間無し、b:極く僅かな隙間、c:5μm以下の隙間、d:5〜10μmの隙間、e:10μm以上の隙間)のスコアー評価により行った。
【0033】実施例2〜20実施例1と同様に表1,2,3,4に示す組成及び配合量にてセルフエッチングプライマー,歯質接着剤を調製し、実施例1と同様の試験を行った。
【0034】比較例1〜8次に、比較例として本発明の必要成分をそれぞれ含まない配合、またそれぞれ配合量が適正でない配合を表5,6に示す組成及び配合量にてセルフエッチングプライマー,歯質接着剤を調整し、実施例1と同様の試験を行った。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
【表3】

【0038】
【表4】

【0039】
【表5】

【0040】
【表6】

【0041】
【発明の効果】前記実施例及び比較例から明らかなように、本発明に係るセルフエッチングプライマーと歯質接着剤との組み合わせから成る歯質接着剤セットを用いることにより、エナメル質,象牙質のいずれの歯質に対しても歯科用修復物との接着強度が高くなり、簡便な操作で接着性に優れた修復が可能となることが確認された。また、人抜去歯での適合状態の観察においても、歯科用修復物と歯質との接合状態は良好で、二次カリエスの最大要因とされる接着界面における隙間は全く観察されず、辺縁封鎖性にも優れた修復が可能となることが確認された。従って、本発明に係る歯質接着剤セットは、臨床的にも簡便な操作で強固に且つ確実に歯科用修復物と歯質を接着させることができ、辺縁封鎖性にも優れ、二次カリエス等の心配のない安定した歯科修復治療を行うことが可能となり、歯科医療に貢献する価値の非常に大きなものである。
【出願人】 【識別番号】000181217
【氏名又は名称】株式会社ジーシー
【出願日】 平成9年(1997)12月24日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】野間 忠之
【公開番号】 特開平11−180814
【公開日】 平成11年(1999)7月6日
【出願番号】 特願平9−366018