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【発明の名称】 ニューキノロン系抗菌剤の抗菌性を増強させる抗菌剤
【発明者】 【氏名】鎌田 信一

【要約】 【課題】少用量で有効であり、副作用が少なく、耐性菌の出現頻度が少ない抗菌剤を提供する。

【解決手段】ニュ−キノロン系抗菌剤及びラクトフェリン類の加水分解物又はラクトフェリン類の加水分解物由来の抗菌性ペプチドを有効成分として含有する抗菌剤。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ニュ−キノロン系抗菌剤及びラクトフェリン類の加水分解物又はラクトフェリン類の加水分解物由来の抗菌性ペプチドを有効成分として含有する抗菌剤。
【請求項2】 ニュ−キノロン系抗菌剤が、スパルフロキサシン、エンロフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、エノキサシン、シプロフロキサシン、ロメフロキサシン、トスフロキサシン、フレロキサシン、レボフロキサシン又はこれらの混合物である請求項1に記載のニュ−キノロン系抗菌剤の抗菌性を増強させる抗菌剤。
【請求項3】 ラクトフェリン類の加水分解物由来の抗菌性ペプチドが、牛乳若しくは人乳由来のラクトフェリン類の加水分解物から単離されたペプチド、このペプチドと同一のアミノ酸配列を含む化学合成されたペプチド、それらの誘導体、又はこれらの2種以上の混合物である請求項1又は請求項2に記載のニュ−キノロン系抗菌剤の抗菌性を増強させる抗菌剤。
【請求項4】 ラクトフェリン類の加水分解物由来の抗菌性ペプチドが、配列番号1乃至配列番号8のいずれかに記載されたアミノ酸配列を有する請求項1乃至請求項3のニュ−キノロン系抗菌剤の抗菌性を増強させる抗菌剤。
【請求項5】 ニュ−キノロン系抗菌剤1部(重量)に対してラクトフェリン類の加水分解物が、少なくとも100部(重量)の割合で含有されている請求項1又は請求項2に記載のニュ−キノロン系抗菌剤の抗菌性を増強させる抗菌剤。
【請求項6】 ニュ−キノロン系抗菌剤1部(重量)に対してラクトフェリン類の加水分解物由来の抗菌性ペプチドが、少なくとも10部(重量)の割合で含有されている請求項1乃至請求項4に記載のニュ−キノロン系抗菌剤の抗菌性を増強させる抗菌剤。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ニュ−キノロン系抗菌剤及びラクトフェリン加水分解物又はラクトフェリン由来抗菌性ペプチドを有効成分として含有する抗菌剤に関するものであり、更に詳しくは、本発明は、ニュ−キノロン系抗菌剤と哺乳動物の主として乳汁に存在する生理活性蛋白質であるラクトフェリン類の加水分解物又はラクトフェリン類の加水分解物由来の抗菌性ペプチドとを併用することにより、従来のニュ−キノロン系抗菌剤と比較してその有効成分の使用量を顕著に低減することを可能とすると共に、少用量で強い抗菌活性が得られ、副作用が少なく、耐性菌の出現頻度を低下させることが可能な新規抗菌剤に関する。
【0002】
【従来の技術】ニューキノロン系抗菌剤は、ナリジクス酸をプロトタイプとして開発された合成抗菌剤であるキノロン系抗菌剤の欠点を補うために開発されたものであり、フッ素原子とピペラジニル基を有するキノリン誘導体である。ニュ−キノロン系抗菌剤は、体内動態の改善、抗菌力の増大及び抗菌スペクトルの拡大が図られ、耐性菌の出現率も低い抗菌薬として臨床的に広く使用されている。ニューキノロン系抗菌剤は、β―ラクタム系抗菌剤に比べ抗菌力が強く(植手鉄男著、「抗生物質選択と臨床の実際」、改訂8版、第115ペ−ジ、医薬ジャーナル、1992年)、その効果は、細菌のDNA合成阻害によるものであり、セフェム系抗菌剤耐性菌に交差耐性が無く、ペニシリン結合蛋白の変化による耐性菌に使用されている(吉川昌之介著、「医科細菌学」、第118ペ−ジ、南江堂、1989年)。
【0003】しかしながら、ニュ−キノロン系抗菌剤を菌体から排出するタンパク質が、バシルス・サチリス、スタフィロコッカス・アウレウス等のグラム陽性菌に存在することが報告されており[マイクロバイオロジカル・レビュ−ズ(Microbiological Reviews) 、第60巻、第575〜608ペ−ジ、1996年]、将来ニュ−キノロン系抗菌剤に対する耐性が問題となる可能性も指摘されている。
【0004】また、ラクトフェリンは、生体内では、涙、唾液、末梢血、乳汁等に含まれている天然の鉄結合蛋白質であり、大腸菌、カンジダ菌、クロストリジウム菌等の有害微生物に対して抗菌作用を示すことが知られている[ジャ−ナル・オブ・ペディアトリクス(Journal of Pediatrics )、第94巻、第1ペ−ジ、1979年]。ラクトフェリンは、ブドウ球菌及び腸球菌に対して、0.5〜30mg/mlの濃度で抗菌作用を有することが知られている[ジャ−ナル・オブ・デイリ−・サイエンス(Journal of Dairy Science)、第67巻、第606ペ−ジ、1984年]。
【0005】更に、ラクトフェリンとニューキノロン系抗菌剤の併用効果が検討されているが、併用効果を示すとする報告[ダイアグノスティック・マイクロバイオロジー・アンド・インフェクシャス・ディジーズ(Diagnostics Microbiology and Infectious Disease)、第20巻、第69ペ−ジ、1994年]と、併用効果を示さないとする報告[ケモセラピ−(Chemotherapy)、第39巻、第829〜835ペ−ジ、1991年]とがある。
【0006】一方、抗菌性蛋白質であるラクトフェリンの加水分解物、又はラクトフェリンに由来するペプチドが、抗菌活性及び抗真菌活性を有することが知られており(特開平5−320068号公報、及び特開平5−92994号公報)、抗生物質と、ラクトフェリン類の加水分解物又はラクトフェリン関連抗菌性ペプチドとを含む抗菌剤(特開平5−310594号公報)、アゾ−ル系抗真菌剤とラクトフェリン類の加水分解物又はラクトフェリン関連抗菌性ペプチドとを含む抗真菌剤(特開平9−165342号公報)について開示されている。
【0007】しかしながら、ニュ−キノロン系抗菌剤と、ラクトフェリンの加水分解物又はラクトフェリンに由来する抗菌ペプチドとを組み合わせることにより、抗菌活性が増強されることについてはこれまで知られておらず、報告も皆無である。
【0008】以上のように、少量の使用で殺菌的作用を有する抗菌剤、即ち、副作用が少なく、かつ強い抗菌作用を有する抗菌剤の開発が待望されていた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、前記従来技術に鑑みて、新規な抗菌剤について鋭意研究を行った結果、ニュ−キノロン系抗菌剤と、ラクトフェリンの加水分解物又はラクトフェリン由来抗菌ペプチドを併用することにより、ニュ−キノロン系抗菌剤が、従来の用量よりも極めて少用量で、強い抗菌活性を発揮することを見い出し、本発明を完成した。
【0010】本発明の目的は、少用量で有効であり、副作用が少なく、耐性菌の出現頻度が少ない抗菌剤を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決する本発明は、ニュ−キノロン系抗菌剤及びラクトフェリン類の加水分解物又はラクトフェリン類の加水分解物由来の抗菌性ペプチドを有効成分として含有する抗菌剤であり、ニュ−キノロン系抗菌剤が、スパルフロキサシン、エンロフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、エノキサシン、シプロフロキサシン、ロメフロキサシン、トスフロキサシン、フレロキサシン、レボフロキサシン又はこれらの混合物であること、ラクトフェリン類の加水分解物由来の抗菌性ペプチドが、牛乳若しくは人乳由来のラクトフェリン類の加水分解物から単離されたペプチド、このペプチドと同一のアミノ酸配列を含む化学合成されたペプチド、それらの誘導体、又はこれらの2種以上の混合物であること、ラクトフェリン類の加水分解物由来の抗菌性ペプチドが、配列番号1乃至配列番号8のいずれかに記載されたアミノ酸配列を有すること、ニュ−キノロン系抗菌剤1部(重量。以下特に断りのない限り同じ。)に対してラクトフェリン類の加水分解物が、少なくとも100部の割合で含有されていること、及びニュ−キノロン系抗菌剤1部に対してラクトフェリン類の加水分解物由来の抗菌性ペプチドが、少なくとも10部の割合で含有されていることを望ましい態様としてもいる。
【0012】次に本発明について詳細に説明する。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明に使用するニュ−キノロン系抗菌剤は、従来から医薬品として用いられているニュ−キノロン系抗菌剤のいずれでもよく、ノルフロキサシン、オフロサキシン、エノキサシン、ロメフロキサシン、スパルフロキサシン、レボフロキサシン等を例示することができる。
【0014】本発明に用いられるラクトフェリン類の加水分解物は、牛乳、人乳、その他哺乳動物の乳由来のラクトフェリン、このラクトフェリンから鉄を除去したアポラクトフェリン、アポラクトフェリンを銅等の金属で飽和した金属飽和ラクトフェリン、これらの任意の割合の混合物等(以下、これらをまとめてラクトフェリン類と記載する)を、酸又は酵素で加水分解して得られ、たとえば特開平5−320068号に記載された方法により次のとおり製造することができる。
【0015】即ち、酸により加水分解を行う場合は、ラクトフェリン類を水に溶解し、これに無機酸又は有機酸を添加し、所定温度で所定時間加熱して加水分解する。酵素により加水分解を行う場合は、ラクトフェリン類の水溶液を、使用する酵素の至適pHに調整し、これにペプシン、PD酵素等の蛋白分解酵素を添加し、所定温度に所定時間保持して加水分解し、のち常法により酵素を失活させる。酸又は酵素による加水分解で得られた分解物は、種々の分子量を有する抗菌性ペプチドの混合物である。
【0016】前記のとおり、加水分解して得られた反応液(ラクトフェリン類加水分解物の溶液)を、常法により冷却し、必要に応じて常法により中和、脱塩し、更に必要に応じて常法により分画し、得られた溶液をそのまま、濃縮した液状、又は濃縮後乾燥した粉末状の形態において、ニューキノロン系抗菌剤と混合する。
【0017】また、本発明に使用するラクトフェリン類の加水分解物由来の抗菌性ペプチドは、前記ラクトフェリン類の加水分解物から単離されたペプチド、このペプチドと同一のアミノ酸配列を含む化学的に合成されたペプチド、それらの誘導体、配列番号1乃至配列番号8のいずれかに記載のアミノ酸配列を有するペプチド、又はこれらの2種以上の混合物(以下、これらをまとめてラクトフェリン由来抗菌性ペプチドと記載する。)である。
【0018】ラクトフェリン加水分解物を配合した本発明の抗菌剤は、ニュ−キノロン系抗菌剤1部に対して少なくとも100部、望ましくは200〜800,000部の割合でラクトフェリン加水分解物が配合される。
【0019】また、ラクトフェリン由来抗菌性ペプチドを配合した本発明の抗菌剤は、ニュ−キノロン系抗菌剤1部に対して少なくとも10部、望ましくは50〜20,000部の割合でラクトフェリン由来抗菌性ペプチドが配合される。
【0020】ラクトフェリン類の加水分解物、ラクトフェリン由来抗菌性ペプチド、又はこれらの任意の混合物のいずれかと、ニューキノロン系抗菌剤のいずれかとの組み合わせは、使用目的によって適宜選択することができる。また、それらの混合割合は、各々の成分の種類、使用目的等によって適宜選択することができる。それらの成分を液状又は粉末状で混合することができ、適宜公知の希釈剤、賦形剤を添加してもよい。
【0021】本発明の抗菌剤は、公知の方法により経口剤、注射剤、膣剤、点眼液、トローチ剤、軟膏、ローション剤等に加工することが可能であり、これに含有されている公知の抗菌剤の投与方法と同様に、そのままヒト又は動物に投与することができる。
【0022】抗菌剤中の有効成分の含量は、ニュ−キノロン系抗菌剤が、少なくとも0.1ng/ml、望ましくは10ng/ml以上、ラクトフェリン加水分解物が、少なくとも100μg/ml、望ましくは2000μg/ml以上、ラクトフェリン由来抗菌性ペプチドが、少なくとも10μg/ml、望ましくは100μg/ml以上、である。また、投与量は、症状等により異なるが、通常体重1kg当たり1日少なくとも0.001mg、望ましくは0.01〜200mg、である。
【0023】ラクトフェリン加水分解物又はラクトフェリン由来抗菌性ペプチドは、食品の一成分であり、また食品としても利用されるもので、全く毒性を示さず、副作用が問題とされる従来の抗菌剤の使用量を低減することにより、安全な抗菌剤を提供することができる。
【0024】次に試験例を示してこの発明を詳細に説明する。
試験例11)試料の調製■ラクトフェリン加水分解物参考例1記載と同一の方法により調製したラクトフェリン加水分解物粉末を蒸留水に溶解し、滅菌フィルタ−(アドバンテック社製)で除菌した水溶液を調製した。
■ニュ−キノロン系抗菌剤ニュ−キノロン系抗菌剤として、ノルフロキサシン(シグマ社製) 、オフロキサシン(シグマ社製) 、エノキサシン(シグマ社製) 、ロメフロキサシン(シグマ社製) を使用した。また、スパルフロキサシンは、スパラ錠(「スパラ」は登録商標。大日本製薬社製) から、レボフロキサシンは、クラビット細粒(「クラビット」は登録商標。第一製薬社製) から、それぞれ常法により精製して使用した。各ニュ−キノロン系抗菌剤を力価100%(重量。以下、特に断りのない限り同じ。)換算で10mgを0.1規定水酸化ナトリウム1mlに溶解し、蒸留水で10mlに調整した。
【0025】2)試験方法凍結保存した供試菌(エシェリヒア・コリO−111は、東京大学医科学研究所から、スタフィロコッカス・アウレウスJCM2151は、理化学研究所から、それぞれ入手した。)懸濁液から1白金耳を採取し、トリプチケ−ス・ソイ寒天培地(BBL社製)に塗沫し、37℃で16時間培養し、トリプチケ−ス・ソイ寒天培地の表面に育成したコロニ−を白金耳でかき取り、試験培地であるミュ−ラ−・ヒントン・ブロス(ディフコ社製)に懸濁し、37℃で数時間培養し、3×108 /mlの菌濃度に増殖した対数期の菌液を前培養菌液とした。
【0026】前記試験培地を用いて表1及び表2に示す濃度でラクトフェリン加水分解物水溶液の2段階希釈系列を作製し、それぞれに、ニュ−キノロン系抗菌剤を最終濃度1mlあたり0μg、0.001μg、0.01μg、0.1μg、及び1 μgの割合で試験培地で希釈して添加した。各濃度のラクトフェリン加水分解物とニュ−キノロン系抗菌剤を含む試験培地に、前記供試菌の前培養菌液を最終菌濃度が1×106 /mlの割合で添加し、37℃で16時間培養した。
【0027】培養後、培地の濁りの有無より各濃度のラクトフェリン加水分解物を共存させた場合のニュ−キノロン系抗菌剤の最少発育阻止濃度(以下、MIC値と記載する。)を測定した。
【0028】3)試験結果この試験の結果は、表1及び表2に示すとおりである。表1及び表2から明らかなとおり、ラクトフェリン加水分解物を併用することにより、供試した全てのニュ−キノロン系抗菌剤は、単用の場合に比較してより低濃度で供試菌の発育を阻止し、ラクトフェリン加水分解物がニュ−キノロン系抗菌剤の抗菌効果を増強することが認められた。
【0029】尚、前記ラクトフェリン加水分解物以外の分解物、及びラクトフェリン由来抗菌性ペプチドについても同様の試験を行なったが、この場合もニュ−キノロン系抗菌剤の抗菌効果を増強させることが認められた。
【0030】
【表1】

【0031】
【表2】

【0032】試験例21)試料の調製■抗菌性ペプチド参考例2記載の方法により調製した抗菌性ペプチド粉末を蒸留水に溶解し、滅菌フィルタ−(アドバンテック社製)で除菌した水溶液を調製した。
■ニュ−キノロン系抗菌剤スパルフロキサシン、オフロキサシン、及びノルフロキサシンをそれぞれ試験例1の試料の調製に記載した方法により調製した。
【0033】2)試験方法スタフィロコッカス・アウレウス30株(ウシ乳房炎由来の野外株。日本獣医畜産大学獣医畜産学部獣医衛生学教室から入手した。)をそれぞれ、パ−ルコアマンニット食塩培地(栄研化学社製)により37℃で48時間培養し、のちトリプトソ−ヤブイヨン(日水製薬社製)10mlにlコロニ−を接種し、37℃で18時間培養し、感受性測定用ブイヨン「ニッスイ」(日水製薬社製)で2×106 /mlの割合に希釈した。
【0034】PYGブロス(1%バクトペプトン、1%グルコ−ス、0.05%イ−スト・エクストラクトからなる。)を用いて、ニュ−キノロン系抗菌剤の濃度が1ml当たり0.8μgからから0.00312μgまで2段階希釈した希釈液を調製して試験培地とした。
【0035】前記供試菌液5mlに、抗菌ペプチドの水溶液を最終濃度が1ml当たり12.5μgの割合に調整した液2.5mlに、前記各濃度のニュ−キノロン系抗菌剤を含む試験培地を2.5ml添加し、37℃で18〜20時間培養し、培地の濁りの有無より最終濃度12.5μg/mlの濃度の抗菌ペプチドを共存させた場合の各菌株に対するニュ−キノロン系抗菌剤のMIC値を測定した。
【0036】3)試験結果この試験の結果は、図1、図2及び図3に示すとおりである。各図の横軸は、ニュ−キノロン系抗菌剤のMIC値(μg/ml)を示し、縦軸は、横軸の該当するMIC値以下のMIC値を示す菌株数を累積し、全菌株(30株)の百分率【0037】
【外1】

スパルフロキサシンの結果を示す図1、オフロキサシンの結果を示す図2及びノルフロキサシンの結果を示す図3から明らかなとおり、ニュ−キノロン系抗菌剤と抗菌性ペプチドとを併用することにより、ニュ−キノロン系抗菌剤単用に比較して、低濃度のニュ−キノロン系抗菌剤で発育が阻止される菌株数が増加した。この結果から、抗菌ペプチドがニュ−キノロン系抗菌剤の抗菌効果を増強することが確認された。
【0038】尚、前記の抗菌性ペプチド以外の抗菌性ペプチド、及びラクトフェリン加水分解物についても同様の試験を行なったが、この場合もニュ−キノロン系抗菌剤の抗菌効果を増強させることが認められた。
【0039】次にラクトフェリン加水分解物及びラクトフェリン由来抗菌性ペプチドの製造について参考例として記載する。
【0040】参考例1ウシ・ラクトフェリン(シグマ社製)200gを精製水3.6lに溶解し、0.1規定塩酸でpHを2.5に調整し、市販のブタペプシン(シグマ社製)4gを添加し、37℃で6時間加水分解した。次いで0.1規定水酸化ナトリウムでpHを7.0に調整し、80℃で10分間加熱して酵素を失活させ、室温に冷却し、15,000rpmで10分間遠心分離し、透明な上清を得た。この上清を凍結乾燥し、ラクトフェリン加水分解物約158gを得た。
【0041】参考例225mlのカルボキシメチルトヨパール(商標。東ソー社製。650M)を100mM第一リン酸ナトリウム−第二リン酸ナトリウム緩衝液(pH7.8)で十分洗浄し、平衡化したスラリーに、前記緩衝液に溶解した参考例1で製造したラクトフェリン加水分解物10gを添加し、ビ−カ−中でマグネティックスターラーで攪拌しながら十分に吸着させた。ラクトフェリン加水分解物を吸着したカチオン交換体を、カラム(長さ5cm、直径3cm)に充填し、前記緩衝液を用いて洗浄液の280nmにおける吸光度が0.03以下になるまで5ml/分の流速で洗浄した。同様に、洗浄液の280nmにおける吸光度が0.03以下になるまで5ml/分の流速で100mM塩化ナトリウム、100mM第一リン酸ナトリウム−第二リン酸ナトリウム緩衝液(pH7.8)をカラムに通夜し、非特異的にゲルに吸着したペプチドを洗浄した。2M酢酸アンモニウム(pH7.8)をカラムに通夜し、配列番号1のラクトフェリン由来抗菌性ペプチドを含む溶液10mlを得た。得られた溶液を、水で平衡化した脱塩用PD10カラム(ファルマシア製)に5回に分けて注入し、ラクトフェリン由来抗菌性ペプチド溶液を取得し、この溶液を凍結乾燥し、ラクトフェリン由来抗菌性ペプチド粉末約100mgを得た。
【0042】前記ペプチドについてペプチドシーケンサーを用いて常法によりアミノ酸配列を分析し、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有することを確認した。
【0043】参考例3ペプチド自動合成装置(ファルマシアLKBバイオテクノロジ−社製。LKBBiolynx4170)を用い、シェパ−ド等による固相ペプチド合成法[ジャ−ナル・オブ・ケミカル・ソサイエティ−・パ−キンI(Journal of Chemical Society PerkinI)、第538ペ−ジ、1981年]に基づいてペプチドを次のとおり合成した。
【0044】アミン官能基を9−フルオレニルメトキシカルボニル基で保護したアミノ酸[以下Fmoc−アミノ酸又はFmoc−固有のアミノ酸の名称(例えば、Fmoc−アスパラギン)と記載することがある。]に、N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミドを添加して所望のアミノ酸の無水物を生成させ、このFmoc−アミノ酸無水物を合成に用いた。ペプチド鎖を製造するためにC−末端のセリン残基に相当するFmoc−セリン無水物を、そのカルボキシル基を介し、ジメチルアミノピリジンを触媒としてウルトロシンA樹脂(ファルマシアLKBバイオテクノロジ−社製)に固定する。次いでこの樹脂をピペリジンを含むジメチルホルムアミドで洗浄し、C−末端アミノ酸のアミン官能基の保護基を除去する。のちアミノ酸配列のC−末端から2番目に相当するFmoc−アスパラギン酸無水物を前記C−末端アミノ酸残基を介して樹脂に固定されたセリンの脱保護アミン官能基にカップリングさせた。以下同様にして順次アミノ酸を固定した。全てのアミノ酸のカップリングが終了し、所望のアミノ酸配列のペプチド鎖が形成された後、94%TFA、5%フェノ−ル、及び1%エタンジオ−ルからなる溶媒でアセトアミドメチル以外の保護基の除去及びペプチドの脱離を行ない、自然酸化によりジスルフィド結合を形成し、高速液体クロマトグラフイ−によりペプチドを精製し、この溶液を濃縮し、乾燥し、ラクトフェリン由来抗菌性ペプチドと同一のペプチド粉末約100mgを化学的に合成した。
【0045】前記ペプチドについてペプチドシーケンサーを用いて常法によりアミノ酸配列を分析し、配列番号3に記載のアミノ酸配列を有することを確認した。
【0046】次に実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0047】
【実施例】
実施例1オフロキサシン(シグマ社製)0.01mgに対して、参考例1と同一の方法により製造したラクトフェリン加水分解物粉末を20mgの割合で均一混合し、ニュ−キノロン系抗菌剤の抗菌性を増強させる抗菌剤を調製した。
【0048】実施例2注射用水(大塚製薬社製)1mlに、ロメフロキサシン(シグマ社製) 0.001mg、参考例2と同一の方法により製造した配列番号1のラクトフェリン由来の抗菌性ペプチド0.05mg、塩化ナトリウム(和光純薬社製)10mgの割合で溶解し、pHを7に調整し、濾過滅菌し、常法により1mlずつアンプルに充填し、注射用のニュ−キノロン系抗菌剤の抗菌性を増強させる抗菌剤2,000個を得た。
【0049】実施例3ノルフロキサシン(シグマ社製) 0.5mgに対して、参考例3の方法で製造した配列番号3のラクトフェリン由来抗菌性ペプチド粉末100mgの割合で均一混合し、ニュ−キノロン系抗菌剤の抗菌性を増強させる抗菌剤を調製した。
【0050】実施例4常法により、次の組成の乳房炎治療薬を製造した。
【0051】
1,2―ヒドロキシステアリン(和光純薬社製) 1.0(%)
グリセルモノステアレート(ナカライテスク社製) 0.5 ブチル化ヒドロキシアニソール(ナカライテスク社製) 0.02 落花生油(ナカライテスク社製) 96.48 実施例3の抗菌製剤 2.0【0052】
【発明の効果】以上詳細に説明したとおり、本発明は、ニュ−キノロン系抗菌剤及びラクトフェリン加水分解物又はラクトフェリン由来抗菌性ペプチドを有効成分として含有する抗菌剤であり、本発明により奏せられる効果は次のとおりである。
1)本発明の抗菌剤は、少用量で強い抗菌効果を有するので、ニュ−キノロン系抗菌剤の使用量を大幅に低減することができる。
2)本発明の抗菌剤は、広範囲の微生物に対して優れた抗菌作用を有する。
3)本発明の抗菌剤は、副作用が少なく、耐性菌の出現頻度が低い。
4)本発明の抗菌剤は、極めて安全である。
【0053】
【配列表】
配列番号:1配列の長さ:25配列の型:アミノ酸トポロジ−:直鎖状配列の種類:ペプチド配列の特徴:このペプチド、及びこのペプチドをフラグメントとして含むペプチド。下記配列において、3番のCys と20番のCys がジスルフィド結合している。
配列: Phe Lys Cys Arg Arg Trp Gln Trp Arg Met Lys Lys Leu Gly Ala Pro 1 5 10 15 Ser Ile Thr Cys Val Arg Arg Ala Phe 20 25【0054】配列番号:2配列の長さ:25配列の型:アミノ酸トポロジ−:直鎖状配列の種類:ペプチド配列の特徴:このペプチド、及びこのペプチドをフラグメントとして含むペプチド。下記配列においてCys*は、ジスルフィド結合の形成を防止するため、チオ−ル基を化学的に修飾したシステインを示す。
配列: Phe Lys Cys* Arg Arg Trp Gln Trp Arg Met Lys Lys Leu Gly Ala Pro 1 5 10 15 Ser Ile Thr Cys* Val Arg Arg Ala Phe 20 25 【0055】配列番号:3配列の長さ:25配列の型:アミノ酸トポロジ−:直鎖状配列の種類:ペプチド配列の特徴:このペプチド、及びこのペプチドをフラグメントとして含むペプチド。下記配列において、3番のCys と20番のCys がジスルフィド結合している。
配列: Thr Lys Cys Phe Gln Trp Gln Arg Asn Met Arg Lys Val Arg Gly Pro 1 5 10 15 Pro Val Ser Cys Ile Lys Arg Asp Ser 20 25【0056】配列番号:4配列の長さ:25配列の型:アミノ酸トポロジ−:直鎖状配列の種類:ペプチド配列の特徴:このペプチド、及びこのペプチドをフラグメントとして含むペプチド。下記配列においてCys*は、ジスルフィド結合の形成を防止するため、チオ−ル基を化学的に修飾したシステインを示す。
配列: Thr Lys Cys* Phe Gln Trp Gln Arg Asn Met Arg Lys Val Arg Gly Pro 1 5 10 15 Pro Val Ser Cys* Ile Lys Arg Asp Ser 20 25 【0057】配列番号:5配列の長さ:47配列の型:アミノ酸トポロジ−:直鎖状配列の種類:ペプチド配列の特徴:このペプチド及びこのペプチドをフラグメントとして含むペプチド。下記配列において、配列の長さ36であって9番、26番、及び35番にCys を有するペプチドの、9番のCys と26番のCys とがジスルフィド結合し、上記配列の長さ36のペプチドの35番のCys が、配列の長さ11であって10番にCysを有するペプチドの10番のCys とがジスルフィド結合している。
配列: Val Ser Gln Pro Glu Ala Thr Lys Cys Phe Gln Trp Gln Arg Asn Met 1 5 10 15 Arg Lys Val Arg Gly Pro Pro Val Ser Cys Ile Lys Arg Asp Ser Pro 20 25 30 Ile Gln Cys Ile 35 Gly Arg Arg Arg Arg Ser Val Gln Trp Cys Ala 1 5 10 【0058】配列番号:6配列の長さ:47配列の型:アミノ酸トポロジ−:直鎖状配列の種類:ペプチド配列の特徴:このペプチド、及びこのペプチドをフラグメントとして含むペプチド。下記配列において、10番の Cysと46番のCys とがジスルフィド結合し、20番のCys と37番のCys とがジスルフィド結合している。
配列: Gly Arg Arg Arg Arg Ser Val Gln Trp Cys Ala Val Ser Gln Pro Glu 1 5 10 15 Ala Thr Lys Cys Phe Gln Trp Gln Arg Asn Met Arg Lys Val Arg Gly 20 25 30 Pro Pro Val Ser Cys Ile Lys Arg Asp Ser Pro Ile Gln Cys Ile 35 40 45【0059】配列番号:7配列の長さ:36配列の型:アミノ酸トポロジ−:直鎖状配列の種類:ペプチド配列の特徴:このペプチド、及びこのペプチドをフラグメントとして含むペプチド。下記配列において、9番のCys と26番のCys とがジスルフィド結合している。
配列: Val Ser Gln Pro Glu Ala Thr Lys Cys Phe Gln Trp Gln Arg Asn Met 1 5 10 15 Arg Lys Val Arg Gly Pro Pro Val Ser Cys Ile Lys Arg Asp Ser Pro 20 25 30 Ile Gln Cys Ile 35 【0060】配列番号:8配列の長さ:11配列の型:アミノ酸トポロジ−:直鎖状配列の種類:ペプチド配列の特徴:このペプチド、及びこのペプチドをフラグメントとして含むプチド。
配列:Gly Arg Arg Arg Arg Ser Val Gln Trp Cys Ala 1 5 10
【出願人】 【識別番号】000006127
【氏名又は名称】森永乳業株式会社
【出願日】 平成9年(1997)9月25日
【代理人】 【氏名又は名称】工藤 力
【公開番号】 特開平11−92375
【公開日】 平成11年(1999)4月6日
【出願番号】 特願平9−278113