トップ :: A 生活必需品 :: A61 医学または獣医学;衛生学




【発明の名称】 脳の老化抑制及び治療剤
【発明者】 【氏名】中村 國衛

【氏名】柿本 紀博

【氏名】秋葉 光雄

【要約】 【課題】従来技術の難点を解消し、アルツハイマー病等の脳の老化を抑制し、且つ、治療をすることのできる薬剤を提供する。

【解決手段】本発明は、式(1)
【特許請求の範囲】
【請求項1】 式(1)
【化1】

(式中、R1乃至R3は水素原子又は同一或いは異なるメチル基、エチル基等の低級アルキル基又は置換若しくは無置換のフェニル基を、Xは水酸基、O−低級アルキル基、アミノ基又はOYで表される塩[Yはナトリウム、カリウム等の金属又はリゾチーム、塩基性アミノ酸等の塩基性基を有する化合物を示す]をそれぞれ示す)で表される有機ゲルマニウム化合物を有効成分とすることを特徴とする脳の老化抑制及び治療剤。
【請求項2】 式(1)において、R1乃至R3が水素原子、Xが水酸基である有機ゲルマニウム化合物を有効成分とする請求項1に記載の脳の老化抑制及び治療剤。
【請求項3】 請求項1に記載の式(1)で表される有機ゲルマニウム化合物を有効成分とするアルツハイマー病の抑制及び治療剤。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は脳の老化抑制及び治療剤に関するものであり、更に詳しくは、特定の有機ゲルマニウム化合物を有効成分とし、アルツハイマー病等の脳の老化に対し優れた効果を示す脳の老化抑制及び治療剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】日本人の平均寿命は男女共に75才を超え、高齢者人口が増大すると共に痴呆性老人も又、急激に増加していて、1995年現在、痴呆性老人は約126万人であるが、2000年には156万人、2010年には226万人に達すると予測され、老年期痴呆の診断と治療、痴呆性老人への介護、医療供給システムの確立は、医学界のみならず、社会的にも取り組まなければならない重要課題となっている。
【0003】痴呆は、成人に起こる記憶及び知能の障害と定義されるが、その本質は神経細胞の変性並びに死による情報伝達障害である。痴呆の原因疾患は70に及ぶといわれているが、高齢者に多いのは脳血管性痴呆とアルツハイマー病で、両者によって老年期痴呆の8、9割が占めらていて、両者の比率は、男性では前者が55%、後者が22%、女性では前者が35%、後者が39%である。
【0004】上記脳血管性痴呆は、老年者に高発する脳梗塞に起因して起こる状態で、即ち、脳血管性痴呆は血管の病的な老化を介して起こる、二次的な痴呆であるとされている。
【0005】これに対しアルツハイマー型痴呆は、脳の一時的老化と関係する退行変性疾患である。アルツハイマー型痴呆の内、65才未満の早期に発症するタイプがアルツハイマー病、それ以降の老年期に発症するタイプがアルツハイマー型痴呆と呼ばれているが、両者は病理学的には同じ特徴を有することから、アルツハイマー病という名称が、広くアルツハイマー型痴呆の同義語として用いられている。
【0006】アルツハイマー病における病理学的特徴は、老人斑とアルツハイマー神経原線維変化(以下、神経原線維変化という)であり、老人斑は主としてβアミロイド蛋白の細胞外沈着によるもので、典型老人斑の構造は、βアミロイド蛋白のアミロイド核とそれを取り囲む変性神経突起からできている。
【0007】脳のアミロイド沈着に蛋白糖化反応後期段階生成物(以下、AGEという)が関与していることをVitekらが最初に示唆(Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 91:4766, 1994)して以来、多くの研究者らによってAGEやAGEの一種でその構造が明らかにされているペントシジンに対する抗体の免疫反応がアミロイド沈着部位のみならず、老人斑や神経原線維変化に認められることが報告された。これらの結果からAGEが老人斑だけでなく神経原線維変化の形成にも関与している可能性が指摘され、AGEがアルツハイマー病の病体形成に関与していることが明らかにされた。
【0008】アルツハイマー病に対しては、コリン作動薬、神経伝達改善薬、神経ペプチド系薬、脳細胞保護薬等が開発されているが、根本的な治療薬は市販されていない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記のような従来技術の難点を解消し、アルツハイマー病等の脳の老化を抑制し、且つ、治療をすることのできる薬剤を提供することを目的としてなされた。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために本発明が採用した脳の老化抑制及び治療剤の構成は、式(1)
【化2】

(式中、R1乃至R3は水素原子又は同一或いは異なるメチル基、エチル基等の低級アルキル基又は置換若しくは無置換のフェニル基を、Xは水酸基、O−低級アルキル基、アミノ基又はOYで表される塩[Yはナトリウム、カリウム等の金属又はリゾチーム、塩基性アミノ酸等の塩基性基を有する化合物を示す]をそれぞれ示す)で表される有機ゲルマニウム化合物を有効成分とすることを特徴とするものである。
【0011】而して、アルツハイマー病を特徴づける構造物は、老人斑と神経原線維変化であるが、特に老人斑は、アミロイドβ蛋白沈着物であり、アルツハイマー病の本質的異常を示すと考えられていて、更に沈着アミロイドにAGEが存在していることが免疫組織学的に証明され、AGEのアルツハイマー病の病態形成への関与の機序として、AGEにより生成された活性酸素による神経細胞障害と、AGEにより生成された活性化した各種サイトカインによる細胞障害の二つが提唱されている。
【0012】本発明の発明者らは、多年にわたり有機ゲルマニウム化合物の生理活性作用について研究を行っており、その結果、有機ゲルマニウム化合物は効果的に蛋白糖化反応を抑制或いは改善することができ、しかも長期間投与に際しても安全性の高い薬剤であることを発見し、すでに特許出願をしている(特願平4−91685号)が、本発明の発明者らは更に有機ゲルマニウム化合物の有する蛋白糖化反応阻害作用に着目して更に研究を進めたところ、特定の有機ゲルマニウムを投与することが、脳の老人斑の発症を顕著に抑制することを発見し、本発明を完成させるに至ったものである。
【0013】
【発明の実施の態様】以下に本発明を詳細に説明する。
【0014】本発明の脳の老化抑制及び治療剤は、上記の式(1)で表わされる特定の有機ゲルマニウム化合物を有効成分としているので、まずこの化合物について説明すると、これは置換基R1乃至R3と酸素官能基OXとを有するプロピオン酸誘導体とゲルマニウム原子とが結合したゲルミルプロピオン酸を基本骨格とし、当該基本骨格におけるゲルマニウム原子と酸素原子とが2:3の割合で結合したものである。
【0015】上記置換基R1乃至R3は、同一或いは異なっており、それぞれ水素原子や、メチル基,エチル基,プロピル基,ブチル基等のいわゆる低級アルキル基、置換され若しくは置換されていないフェニル基を、置換基Xは水酸基,O−低級アルキル基,アミノ基又はOYで表わされるカルボン酸の塩をそれぞれ示している。尚、Yはナトリウム、カリウム等の金属(但し、一価のものに限られない)、又は、リゾチーム、或いはリジン等の塩基性アミノ酸に代表される塩基性を有する化合物を示している。
【0016】而して、上記構造の有機ゲルマニウム化合物はすでに公知の化合物であり、様々な方法により製造することができるが、その一例を置換基R1乃至R3が水素原子、置換基Xは水酸基の化合物について示せば、下記反応式に示すように、トリクロルゲルミルプロピオン酸等のトリハロゲルミルプロピオン酸を加水分解すれば良いのである。
【化3】

【0017】尚、上記有機ゲルマニウム化合物を表わす式(1)は、それを結晶として単離した状態に相当するもので、水溶液中ではゲルマニウム−酸素結合が加水分解を受け、例えば置換基R1乃至R3が水素原子、置換基Xは水酸基の化合物では、【化4】

なる構造をとることがわかっており、更に、上記有機ゲルマニウム化合物は以下の式で表すこともできる。
【化5】

【0018】本発明の脳の老化抑制及び治療剤は、上記有機ゲルマニウム化合物を有効成分としているものであるが、その投与方法については特に制限を受けることはなく、経口的、非経口的或いは局所的に投与することができる。
【0019】剤形についても特に制限を受けることはなく、必要に応じ公知の担体等を併用して、錠剤、散剤或いはカプセル剤等の経口投与剤、又は、注射剤等の非経口剤、ローション又は軟膏等の局所適用剤に製剤されるものである。
【0020】又、本発明の脳の老化抑制及び治療剤における有機ゲルマニウム化合物の含有量は必要に応じ、例えば5〜500mg/l投与単位程度とすればよく、投与量としては、症状等に応じ、例えば1〜100mg/Kg/日程度とすればよい。
【0021】而して、本発明の脳の老化抑制及び治療剤の効果は、以下のような実験を通して確認されたものである。
【0022】即ち、ヒト血清アルブミン又はウシ血清アルブミンにグルコースを添加したinvitroの系において、 AGEの特徴である褐変化、蛍光物質産生並びにAGEの一つであるペントシジンの産生を、後述する実施例のように、本発明の脳の老化抑制及び治療剤は有意に阻害したのである。
【0023】又、72週令まで飼育したOLET-Fラット(Otsuka Long Evance Tokushima Fatty rat:自然発症肥満糖尿病ラット)並びに正常ラット(LETOラット)の脳の縦断面標本をコンゴレッドで染色し、これを偏光顕微鏡で観察して、緑色に輝く複屈析を示す部分をアミロイド(老人斑)として観察したところ、老齢OLET-Fラットの脳の縦断面標本で、中脳〜延髄部の神経線維中に老人斑が、本発明の脳の老化抑制及び治療剤非投与対照群では27匹中11匹(40.7%)に認められたが、本発明の脳の老化抑制及び治療剤投与群では22匹中3匹(13.6%)にのみ認められた。尚、正常対照群では18匹中老人斑が観察されたのは0匹(0%)であった。
【0024】以上の結果から、本発明の脳の老化抑制及び治療剤は、アルツハイマー病等の脳の老化において痴呆の程度と高い相関性が認められている老人斑の発現を、顕著に抑制することが明らかになったのである。
【0025】
【実施例】以下に本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、これは本発明をなんら制限するものではない。
【0026】実施例125mg/mlのヒト血清アルブミン又はウシ血清アルブミンに250mMグルコースを添加した反応液に、本発明の脳の老化抑制及び治療剤(置換基R1乃至R3が水素原子、置換基Xは水酸基の化合物を有効成分とするもの[以下、実施例において同じ])を、有効成分である有機ゲルマニウム化合物の濃度が50mMとなるように溶解し、6週間、37℃で培養し、蛍光強度(励起波長370nm、蛍光波長440nm)を測定した。結果を表1に示した。
【0027】
【表1】

表1に明らかなように、本発明の脳の老化抑制及び治療剤は、血清アルブミンとグルコースの反応により産生する蛍光物資の生産を顕著に抑制した。
【0028】実施例225mg/mlのヒト血清アルブミンに250mMグルコースを添加した反応液に、本発明の脳の老化抑制及び治療剤を、有効成分である有機ゲルマニウム化合物の濃度が50mMとなるように溶解し、6週間、37℃で培養し、マイクロプレートリーダーで褐変化(二波長:415nm/610nm)を測定し、吸光度をもって比較検討した。結果を表2に示した。
【0029】
【表2】

表2に明らかなように、本発明の脳の老化抑制及び治療剤は、3週目以降の反応液の褐変化を阻害した。
【0030】実施例325mg/mlのヒト血清アルブミン又はウシ血清アルブミンに250mMグルコースを添加した反応液に、本発明の脳の老化抑制及び治療剤を、有効成分である有機ゲルマニウム化合物の濃度が50mMとなるように溶解し、37℃、6週間培養した。培養液は6N塩酸で加水分解し、生成したペントシジンを高速液体クロマトグラフィー法(励起波長335nm、蛍光波長385nm)で測定した。結果を表3に示した。
【0031】
【表3】

表3に明らかなように、本発明の脳の老化抑制及び治療剤は、ペントシジンの産生を完全に抑制した。
【0032】実施例4OLET-Fラット並びにLETOラットを72週令まで飼育し、本発明の脳の老化抑制及び治療剤を25週令から72週令まで、100mg/kg(体重)投与した。屠殺したラット脳の縦断面標本をコンゴーレットで染色し、偏光顕微鏡で観察し、老人斑の発現範囲を−、±、+、++、+++の5段階で評価すると共に、発現頻度を発現動物数/動物数(%)で表示した。結果を表4に示した。
【0033】
【表4】

表4に明らかなように、本発明の脳の老化抑制及び治療剤の投与によって、老人斑の発現したラット数は、非投与群の40.7%に比較して13.6%と有意の減少が認められ、本発明の脳の老化抑制及び治療剤の老人斑の発現を顕著に抑制する効果が示された。
【出願人】 【識別番号】391001860
【氏名又は名称】株式会社ビレモサイエンス
【出願日】 平成9年(1997)7月25日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】小林 雅人 (外1名)
【公開番号】 特開平11−43432
【公開日】 平成11年(1999)2月16日
【出願番号】 特願平9−215618