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【発明の名称】 抗肥満剤
【発明者】 【氏名】伊勢 道仁

【氏名】佐川 悦子

【氏名】林 英雄

【要約】 【課題】経口薬として服用することにより、特別な副作用を起こさずに、肥満又は肥満症を有意に治療することが可能な、長期間連続して使用することのできる医薬製剤を提供する。

【解決手段】球形活性炭を有効成分とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 球形活性炭を有効成分とする、抗肥満剤。
【請求項2】 球形活性炭の直径が0.05〜2mmである請求項1に記載の抗肥満剤。
【請求項3】 球形活性炭を有効成分とする、食欲抑制剤。
【請求項4】 球形活性炭の直径が0.05〜2mmである請求項3に記載の食欲抑制剤。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、球形活性炭を有効成分とする抗肥満剤に関する。また、本発明は、球形活性炭を有効成分とする食欲抑制剤にも関する。
【0002】
【従来の技術】肥満には、その原因から分類して、原発性肥満(単純性肥満)と二次性肥満(症候性肥満)とがある。原発性肥満の原因としては、エネルギーの過剰摂取(例えば、過食)、エネルギーの利用不足(例えば、運動不足)、及び熱産生低下が考えられる。現在、臨床的に肥満と判定されるものの大部分は、原発性肥満である。この原発性肥満が発現し、その状態が持続すると、種々の健康障害を引き起こす原因となる。一方、二次性肥満は、何らかの基礎疾患がもとで生じる肥満である。例えば、内分泌性肥満、視床下部性肥満、遺伝性肥満、又は薬剤に基づく肥満などが挙げられ、いずれも稀なものであるが、このような原因に基づく二次性肥満は、肥満症として診断される。肥満は、健康に対する危険因子を有しており、循環器系への負担増、糖尿病を代表とする代謝疾患の発現、肝臓又は胆道系の異常、呼吸機能の低下、骨や関節系への過重、又は肥満なるがゆえの不活動性をもたらす。このように、肥満は種々の疾患の基礎に介在している。具体的には、後述するBMI(body mass index)と有病指数との関係を調べた結果も報告されており、男女ともにBMI22を越えるあたりから有病死数が上昇する(日本臨床,53,229−236,1995年特別号)。
【0003】肥満症の基本的な原因は、摂取エネルギーが消費エネルギーに対して持続的に過剰になることにあるので、これらの是正が肥満治療の第1の選択となる。従って、肥満症の治療方法としては、食事療法(減食療法、例えば、低エネルギー食療法又は超低エネルギー食療法)、及び運動療法が基本となり、その他に、行動療法、精神療法、薬物療法、又は外科療法(手術療法、例えば、胃縮小術)なども一般に行われている。食事療法は、食事内容に配慮しつつ総エネルギー摂取量を抑制する治療方法であるが、安静時代謝率が低下するため、期待どおりの体重減少が得られなかったり、減量成功例でも除脂肪体重の減少が中心になることが多いなどの問題があった。一方、運動療法によれば、消費エネルギーの増加だけでなく、安静時代謝率の改善、インスリン抵抗性の是正、及び体脂肪の減少などの効果があるとされている。しかし、1回に20分間の好気的運動を週に3回以上行うことが必要とされており、継続的に実行することは極めて困難である。また、行動療法や精神療法は、これらの食事療法や運動療法を維持するための方法であるが、充分な効果を一般的に得ることは困難である。
【0004】前記の治療方法が有効でない場合、あるいは極度の肥満に対する緊急治療の必要がある場合には、薬物療法、外科療法、又は超低エネルギー食療法などが行われる。これらの内、外科療法や超低エネルギー食療法は、患者に与える負担が非常に大きくなる。また、薬物療法に用いる肥満症治療薬としては、例えば、食欲抑制剤(例えば、マチンドール、フェンフルラミン、フルオキセチン、又はコレキストキニン)、消化吸収阻害剤(例えば、アカルボース〔acarbose〕、ボグリボース〔voglibose〕、又はリポスタチン)、脂肪蓄積阻害剤(例えば、ナフェノピン、水酸化シュウ酸、又はイミダゾールアセトフェン)、又は代謝促進剤(例えば、β3受容体刺激薬)が存在するが、これらの肥満症治療剤は、有機製剤であるために、薬剤依存性などの副作用を生じる危険性がある。また、投与した患者に、短期間で耐性が生じてしまうことがあるため、長期間連続して用いることができないなどの問題も想定される。
【0005】以上のように、従来の治療方法は、いずれも充分なものとはいえず、体重の再増加などの問題も残されている。また、従来の治療方法では、欧米での方法をそのまま我が国において実施している場合も多く、欧米と我が国とでは、肥満の程度や合併症の頻度などには一概に同一視することのできない部分もあるなどの問題点もあった。そこで、患者に負担を与えず、長期間連続して用いることができ、特別な副作用のない効果的な抗肥満剤の開発が望まれていた。
【0006】一方、特開昭62−207220号公報には、経口投与した活性炭や活性アルミナなどの吸着剤により、消化器官内で栄養分を吸着することによって体内に吸収される栄養分の量を減少させることができるとする肥満防止用吸着剤が記載されている。しかしながら、前記公報には、吸着剤による肥満防止効果を具体的に裏付けるデータは一切記載されておらず、活性炭についても肥満防止効果を具体的に裏付けるデータは一切記載されていない。また、前記公報には、活性炭に食欲抑制作用があることは全く記載されていない。更に、前記特許公報の特許出願時(昭和61年)に、経口投与可能な活性炭としては、粉末状の薬用活性炭のみが市販されていたが、粉末状活性炭は便秘を引き起こしやすいという欠点があった。
【0007】すなわち、活性炭は、前記特許公報の特許出願以前から、これを服用することにより腸疾患者の治療に効果的であることが知られ、多くの目的に用いられていた。例えば、赤痢、コレラ、腸チフス、若しくは食中毒等の細菌性感染症、消化不良、腸の張り、慢性胃炎、あるいはてんかん、めまい、萎黄病、又は炭疸病等に対して、活性炭を服用することにより治療効果のあることが報告されていた。更に、薬物や毒物等の摂取に際しても救急的に活性炭を服用することにより、解毒効果が得られることも知られていた。その他、各種の疾患に伴う代謝異常により生成する消化器系内の有害物質の除去に活性炭の服用が有効であることも知られていた。これ等の効果は、消化器系内の毒素や異常代謝物、又はこれ等の誘因物質が活性炭により吸着されると共に、活性炭自体は生体に対して全く毒性がないので、有害物を吸着・保持した活性炭が体外に排出されるためと考えられていた。
【0008】平成3年頃までは、前記の医薬的用途に用いる経口用活性炭(薬用活性炭)は全て粉末活性炭であった。この粉末活性炭をそのまま水に混ぜて服用するか、あるいは服用に適した錠剤の形状としたものもあったが、錠剤として服用しても体内で解錠され粉末状となって、上記吸着力を発現するものであった。しかし、一方では副作用として便秘現象を示し、これが大きな欠点であった。特に各種疾患に際して服用するものであるから、体力が消耗している場合が多く、この時の便秘は患者にとって著しい苦痛であるのみならず、充分な排泄力がなく、機械的に除去しなければ生命に関わる場合もあった。
【0009】薬用活性炭として、前記の粉末活性炭以外の経口用活性炭が薬価収載されたのは、平成3年11月に薬価収載された球形炭素質吸着剤(クレメジン:呉羽化学工業株式会社製)が最初である。この球形炭素質吸着剤は、前記の副作用を示さずに、前記の吸着力及び解毒作用を維持するので、各種の疾病の治療、例えば、進行性の慢性腎不全における尿毒症症状の改善及び透析導入の遅延に効果のある医薬品として臨床の場に供されている。しかしながら、この球形炭素質吸着剤が、肥満に有効であることや、食欲抑制作用を有することは、従来、全く知られていなかった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明者は、副作用などの薬害が少なく、抗肥満効果を発揮し、長期間連続して使用可能な抗肥満剤を提供する目的で、鋭意研究を重ねたところ、医療用球形活性炭には、正常な実験動物に対しては体重減少効果や食欲抑制効果を示さないにもかかわらず、自然発症性肥満実験動物(マウス)に対しては体重減少効果や食欲抑制効果を示す作用があり、しかも重篤な副作用も示さないことを見出した。本発明は、こうした知見に基づくものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は、球形活性炭を有効成分とする、抗肥満剤に関する。また、本発明は、球形活性炭を有効成分とする、食欲抑制剤にも関する。本明細書において「抗肥満剤」とは、肥満の治療又は予防を目的とする医薬であり、肥満症の治療又は予防を目的とする「抗肥満症剤」を含む。以下、本明細書において、本発明に係る前記「抗肥満剤」、及び本発明に係る前記「食欲抑制剤」を、集合的に「本発明の医薬製剤」と称する。
【0012】なお、「肥満症」とは、肥満と判定されたもののうち、肥満に起因する合併症を既に有するか、あるいは減量しなければその発症が予測されるものをいい、医学的に減量治療が必要な病態であるとして一般的に定義されており、本明細書においてもその一般的な定義と同様の意味として「肥満症」という用語を使用する。また、「肥満」とは、体内に脂肪組織が過剰に蓄積した状態を意味する。肥満の判定には、例えば、国際的に広く使用されているBMI(body massindex)を尺度として使用する方法がある。BMIは、体重(kg)を身長(m)の二乗で除した数値である。BMIを利用して、日本人の成人の標準体重(理想体重)を、以下の式標準体重(kg)=身長(m)2 ×22から計算することが提唱されており、実測体重が標準体重(計算値)の120%を超える状態を肥満とする例がある〔内科,第75巻第4号(1995−4)75:563−567〕。もっとも、標準体重(理想体重)は、性別、年令、あるいは生活習慣の差異などにより、個々人ごとに相違するので、肥満か否かの判定も個々人ごとに相違する。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳述する。本発明の医薬製剤の有効成分である球形活性炭としては、医療用に内服使用することが可能な球形状の活性炭であれば特に限定されない。この球形活性炭は吸着能に優れていることが好ましい。そのため、前記球形活性炭は、好ましくは直径0.05〜2mm、より好ましくは0.1〜1mmの球形活性炭である。また、好ましくは比表面積が500〜2000m2 /g、より好ましくは700〜1500m2 /gの球形活性炭である。また、好ましくは細孔半径100〜75000オングストロームの空隙量が0.01〜1ml/g、より好ましくは0.05〜0.8ml/gの球形活性炭である。なお、上記の比表面積は、自動吸着量測定装置を用いたメタノール吸着法により測定した値である。空隙量は、水銀圧入ポロシメータにより測定した値である。
【0014】従来、解毒剤として医療に用いられている粉末状活性炭は、副作用として便秘を引き起こし易く、病態時の便秘は特に危険であることから、この点が大きな欠点であった。前記球形活性炭は、粉末活性炭に比べ、服用時に飛散せず、しかも、連続使用しても便秘を惹起しない点で有利である。直径が0.05mm未満の場合は、便秘などの副作用の除去に充分な効果がなく、2mmを超える場合は、服用し難いだけでなく、目的とする薬理効果も迅速に発現されない。球形活性炭の形状は、本発明の効果を得るために重要な因子の1つであり、実質的に球状であることが必要である。球形活性炭の中では、後述の石油系ピッチ由来の球形活性炭が真球に近いため特に好ましい。
【0015】球形活性炭の製造には、任意の活性炭原料、例えば、オガ屑、石炭、ヤシ殻、石油系若しくは石炭系の各種ピッチ類又は有機合成高分子を用いることができる。球形活性炭は、例えば、原料を炭化した後に活性化する方法によって製造することができる。活性化の方法としては、水蒸気賦活、薬品賦活、空気賦活又は炭酸ガス賦活などの種々の方法を用いることができるが、医療に許容される純度を維持することが必要である。
【0016】球形活性炭としては、炭素質粉末からの造粒活性炭、有機高分子焼成の球形活性炭及び石油系炭化水素(石油系ピッチ)由来の球形活性炭などがある。炭素質粉末からの造粒活性炭は、例えば、タール、ピッチ等のバインダーで炭素質粉末原料を小粒球形に造粒した後、不活性雰囲気中で600〜1000℃の温度に加熱焼成して炭化し、次いで、賦活することにより得ることができる。賦活方法としては、水蒸気賦活、薬品賦活、空気賦活又は炭酸ガス賦活などの種々の方法を用いることができる。水蒸気賦活は、例えば、水蒸気雰囲気中、800〜1100℃の温度で行われる。
【0017】有機高分子焼成の球形活性炭は、例えば、特公昭61−1366号公報に開示されており、次のようにして製造することが可能である。縮合型又は重付加型の熱硬化性プレポリマーに、硬化剤、硬化触媒、乳化剤などを混合し、撹拌下で水中に乳化させ、室温又は加温下に撹拌を続けながら反応させる。反応系は、まず懸濁状態になり、更に撹拌することにより熱硬化性樹脂球状物が出現する。これを回収し、不活性雰囲気中で500℃以上の温度に加熱して炭化し、前記の方法により賦活して有機高分子焼成の球形活性炭を得ることができる。石油系ピッチ由来の球形活性炭は、直径が好ましくは0.05〜2mm、より好ましくは0.1〜1mm、比表面積が好ましくは500〜2000m2 /g、より好ましくは700〜1500m2 /g、細孔半径100〜75000オングストロームの空隙量が好ましくは0.01〜1ml/gである。この石油系ピッチ由来の球形活性炭は、例えば、以下の2種の方法で製造することができる。
【0018】第1の方法は、例えば、特公昭51−76号公報(米国特許第3917806号明細書)及び特開昭54−89010号公報(米国特許第4761284号明細書)に記載されているように、まず、溶融状態で小粒球形状としたピッチ類を酸素により不融化した後、不活性雰囲気中で600〜1000℃の温度に加熱焼成して炭化し、次いで、水蒸気雰囲気中で850〜1000℃の温度で賦活する方法である。第2の方法は、例えば、特公昭59−10930号公報(米国特許第4420433号明細書)に記載されているように、まず、溶融状態で紐状としたピッチ類を破砕した後、熱水中に投入して球状化し、次いで、酸素により不融化した後、上記の第1の方法と同様の条件で炭化、賦活する方法である。
【0019】本発明において有効成分の球形活性炭としては、(1)アンモニア処理などを施した球形活性炭、(2)酸化及び/又は還元処理を施した球形活性炭なども使用することができる。これらの処理を施すことのできる球形活性炭は、前記の石油系ピッチ由来の球形活性炭、炭素質粉末の造粒活性炭、有機高分子焼成の球形活性炭のいずれであってもよい。
【0020】前記のアンモニア処理とは、例えば、球形活性炭を、1〜1000ppmのアンモニアを含有するアンモニア水溶液で、アンモニア水溶液と球形活性炭の容量比を2〜10として、10〜50℃の温度で、0.5〜5時間処理することからなる。前述の石油系ピッチ由来の球形活性炭にアンモニア処理を施した活性炭としては、特開昭56−5313号公報(米国特許第4761284号明細書)に記載の球形活性炭を挙げることができる。例えば、アンモニア処理が施された球形活性炭としては直径が0.05〜2mm、好ましくは0.1〜1mm、比表面積が500〜2000m2 /g、好ましくは700〜1500m2 /g、細孔半径100〜75000オングストロームの空隙量が0.01〜1ml/g、pHが6〜8の球形活性炭を例示することができる。
【0021】前記の酸化処理とは、酸素を含む酸化雰囲気で高温熱処理を行うことを意味し、酸素源としては、純粋な酸素、酸化窒素又は空気などを用いることができる。また、還元処理とは、炭素に対して不活性な雰囲気で高温熱処理を行うことを意味し、炭素に対して不活性な雰囲気は、窒素、アルゴン若しくはヘリウム又はそれらの混合ガスを用いて形成することができる。
【0022】前記の酸化処理は、好ましくは酸素含有量0.5〜25容量%、より好ましくは酸素含有量3〜10容量%の雰囲気中、好ましくは300〜700℃、より好ましくは400〜600℃の温度で行われる。前記の還元処理は、好ましくは700〜1100℃、より好ましくは800〜1000℃の温度で不活性雰囲気中で行われる。
【0023】前述の石油系ピッチ由来の球形活性炭に酸化及び/又は還元処理を施した例としては、特公昭62−11611号公報(米国特許第4681764号明細書)に記載の球形炭素質吸着剤を挙げることができる。その他の例としては、「クレメジン」(商品名:呉羽化学工業株式会社製)が挙げられ、そのカプセル製剤としては、「クレメジンカプセル200」(商品名:呉羽化学工業社製;200mg/cap)が挙げられる。なお、クレメジンは直径約0.2〜0.4mmの均質な多孔質炭素からなる球形微粒子状の経口吸着薬であり、進行性の慢性腎不全における尿毒症症状の改善及び透析導入の遅延に効果のある医薬品として臨床の場に供されている。
【0024】酸化及び/又は還元処理が施された球形活性炭としては、直径が0.05〜2mm、好ましくは0.1〜1mm、比表面積が500〜2000m2 /g、好ましくは700〜1500m2 /g、細孔半径100〜75000オングストロームの空隙量が0.01〜1ml/gである球形活性炭が好ましい。
【0025】前記の球形活性炭は、正常な哺乳動物(特に、ヒト)に服用させても体重減少効果を示さないが、肥満又は肥満症の哺乳動物(特に、ヒト)に服用させると体重を減少させる効果を示すので、前記の球形活性炭を有効成分として含有する本発明の医薬製剤は、ヒトをはじめとする哺乳動物における抗肥満剤又は抗肥満症剤として有用である。また、前記の球形活性炭は、正常な哺乳動物(特に、ヒト)に服用させても食欲抑制効果を示さないが、肥満又は肥満症の哺乳動物(特に、ヒト)に服用させると食欲を抑制する効果を有するので、前記の球形活性炭を有効成分として含有する本発明の医薬製剤は、ヒトをはじめとする哺乳動物における食欲抑制剤としても有用である。
【0026】なお、前記球形活性炭の投与によって体重が減少する要因の1つとして、前記球形活性炭の食欲抑制作用があることは明らかであるが、前記球形活性炭の投与によって体重が減少する作用の全体的機序は不明である。従って、本発明による抗肥満剤を、食欲抑制作用に因るもののみに限定するものではなく、食欲抑制作用以外の作用による体重減少効果に因るものを除外するものではない。また、本発明による食欲抑制剤も、肥満又は肥満症の治療又は予防への使用のみに限定されるものではない。
【0027】本発明の医薬製剤は、好ましくは経口的に投与される。その投与量は、対象(哺乳動物、特にはヒト)、年齢、個人差、及び/又は病状などに依存する。例えば、ヒトの場合の1日当たりの投与量は、球形活性炭量として、通常0.2〜30g、好ましくは1〜20g、より好ましくは3〜20gであるが、症状により、投与量を適宜増減してもよい。また、投与は1回又は数回に分けて行ってもよい。球形活性炭は、そのまま投与してもよいし、活性炭製剤として投与してもよい。球形活性炭をそのまま投与する場合、球形活性炭を飲料水などに懸濁したスラリーとして投与することもできる。
【0028】活性炭製剤における剤形としては、顆粒、錠剤、糖衣錠、カプセル剤、スティック剤、分包包装体又は懸濁剤などの任意の剤形を採用することができる。カプセル剤の場合、通常のゼラチンカプセルの他、必要に応じ、腸溶性のカプセルを用いることもできる。顆粒、錠剤又は糖衣錠として用いる場合は、体内で元の微小粒子に解錠されることが必要である。活性炭製剤中の球形活性炭の含有量は、通常1〜100%である。本発明において、好ましい活性炭製剤は、カプセル剤、スティック剤又は分包包装体である。これらの製剤の場合、球形活性炭は、そのまま容器に封入される。
【0029】
【実施例】以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を何ら限定するものではない。
製造例:球形活性炭の調製ナフサ熱分解により生成した軟化点182℃、キノリン不溶分10重量%、H/C=0.53のピッチ75kgにナフタリン25kgを、撹拌翼のついた内容積300リットルの耐圧容器に導入し、210℃に加熱溶融混合し、80〜90℃に冷却して押出紡糸に好適な粘度に調整し、径1.5mmの孔を100個有する下部の口金から50kg/cm2 の圧力下にピッチ混合物を5kg/minの割合で押出した。押出した紐状ピッチは、約40°の傾斜を有するプラスチック製の樋に沿って10〜25℃の冷却槽に流入する。樋には流速3.0m/secの水を流下することにより、押出直後の紐状ピッチは連続的に延伸される。冷却槽には径500μmの紐状ピッチが集積する。水中に約1分間放置することにより紐状ピッチは固化し、手で容易に折れる状態のものが得られる。この紐状ピッチを高速カッターに入れ水を加える。10〜30秒間撹拌すると紐状ピッチの破砕は完了し、棒状ピッチとなる。顕微鏡で観察すると円柱の長さと直径の比は平均1.5であった。
【0030】次にこの棒状ピッチを濾別し、90℃に加熱した0.5%ポリビニルアルコール水溶液1kg中に棒状物100gを投入し、溶融し、撹拌分散し、冷却して球形粒子を形成した。大部分の水を濾別した後、得られた球形粒子を抽出器に入れ、ヘキサンを通液してナフタレンを抽出除去し、通風乾燥した。次いで、流動床を用いて、加熱空気を流通して25℃/Hrで300℃まで昇温し、更に300℃に2時間保持して不融化した。続いて、水蒸気中で900℃まで昇温し、900℃で2時間保持して炭化賦活を行い、多孔質の球形活性炭を得た。得られた球形活性炭の直径は0.05〜1.0mmであり、こうして得られた球形活性炭を流動床を用いて、600℃で酸素濃度3%の雰囲気下で3時間処理した後、窒素雰囲気下で950℃まで昇温し、950℃で30分間保持して、酸化及び還元処理を施した石油系ピッチ由来の球形活性炭(以下、試料1と称す)を得た。この球形活性炭の直径は0.05〜1mmであった。
【0031】実施例1:球形活性炭投与による抗肥満作本実施例においては、球形活性炭として試料1を用いた。肥満が顕著に現れる自然発症性のマウス〔NIDDM(KK−Ay /Ta Jcl):日本クレア(株)〕(4週齢;16匹)の体重及び食事摂取量を測定し、群間に偏りのないように対照群(8匹)と球形活性炭投与群(8匹)とに分けた。これ以降10週間、対照群には通常飼料を与え、球形活性炭投与群には通常飼料中に5%球形活性炭(試料1)を含有する飼料を自由摂取させる状態で飼育した。10週目に体重及び食事摂取量を測定した。結果を表1(体重比較)及び表2(食事摂取量比較)に示す。なお、表1及び表2の数値は、平均値±標準偏差であり、群間の統計学的検定にはt検定を用いた。
【0032】
【表1】
体重(g)の比較 開始時 終了時 対照群(8匹) 18±1 51±1投与群(8匹) 18±1 48±2 統計学的有意差 なし あり(p<0.05)【0033】
【表2】
食事摂取量(g/日)の比較 開始時 終了時 対照群(8匹) 4.7±0.7 7.1±0.8投与群(8匹) 4.7±0.4 6.2±0.5 統計学的有意差 なし あり(p<0.05)即ち、球形活性炭投与群においては、統計学的に有意に食事量及び体重が減少していた。
【0034】実施例2肥満が顕著に現れる自然発症性マウス〔C57BL/KsJ−db/db Jcl:日本クレア〕(10週齢;10匹)の体重及び食事摂取量を測定し、群間に体重の偏りがないように対照群(5匹)と球形活性炭投与群(5匹)とに分けた。これ以降3週間、対照群には通常飼料を与え、球形活性炭投与群には通常飼料中に5%球形活性炭(試料1)を含有する飼料を与え、群間で食事の量に差のない状態にて飼育した。3週目に体重及び小腸の重量を測定した。結果を表3に示す。なお、表3の数値は、平均値±標準偏差であり、群間の統計学的検定にはt検定を用いた。
【0035】
【表3】
体重(g)の比較 開始時 終了時 小腸重量(g) 対照群(5匹) 39±2 42±3 1.328±0.087投与群(5匹) 38±2 37±2 1.120±0.121統計学的有意差 なし あり(p<0.05) あり(p<0.05)【0036】すなわち、球形活性炭投与群においては、統計学的に有意に体重が減少していた。また、統計学的に有意に、小腸の重量が抑制され、肥大が抑制されていた。肥満の亢進には、小腸の肥大亢進に伴う脂質及び糖の吸収亢進が関与するといわれている。従って、上記の球形活性炭投与による小腸の肥大抑制現象は、腸管からの脂質及び糖の吸収を抑制していることを示唆する所見であり、本発明における肥満の抑制が、小腸における吸収亢進の是正に基づくものであると推察することができる。
【0037】実施例3:球形活性炭投与による急性毒性試験前記製造例で得た試料1を用いて、マウス(7若しくは9週齢;Cpb;SE;スイスランダム;体重:雄=29〜40g,雌=25〜32g)、ラット(12週齢;Cpb;WU;ウイスターランダム;体重:雄=244〜276g,雌=143〜185g)、及びイヌ(27週齢;ビーグル犬;オランダ;ザイスト;体重:雄=9.9〜11.0kg,雌=8.75〜9.4kg)における急性毒性試験を実施した。すなわち、マウス及びラットをそれぞれ1群当たり10匹(雌雄各5匹)ずつ、並びにイヌを1群当たり2匹(雌雄各1匹)ずつに分けて、種々の投与量(球形活性炭投与量/体重/日)で、試料1を2週間強制経口投与し、2週間後に生死の判定を行ってLD50値を算出する実験を行った。しかし、2週間後に死亡した動物は全く認められなかった。毒性試験法ガイドライン(薬審第118号)に基づき、最高投与量は5.0g/kgであったので、従ってLD50値は、5.0g/kgより大となった。また、それぞれの動物を解剖したところ、外観及び内臓観察において特記すべき異常所見、又は特記すべき中毒症状は認められなかった。
【0038】実施例4:球形活性炭投与による亜急性毒性試験及び回復試験(1)ラットによる亜急性毒性試験試料1を用いて、ラット(4週齢;Cpb;WU;ウイスターランダム)における亜急性毒性試験を実施した。ラット80匹をそれぞれ雌雄別々に1群当たり10匹からなる雌雄各4群ずつに分けて、試料1をそれぞれ、0.2%、1%、若しくは5%の割合で混合した飼料、又は試料1を含まない飼料(対照)を、13週間与えた。
【0039】(2)ラットによる回復試験一方、試料1を用いて、ラット(4週齢;Cpb;WU;ウイスターランダム)における回復試験を実施した。ラット40匹をそれぞれ雌雄別々に1群当たり10匹からなる雌雄各2群ずつに分けて、試料1を含まない飼料又は試料1を5%の割合で混合した飼料を13週間投与し、その後、全ての群に更に飼料1を含まない飼料を30日間与えた。前記の亜急性毒性試験及び回復試験の結果、無影響量(毒性変化を現さない量)は5%(平均4.5g/kg/日)以上と考えられた。なお、いずれの群においても死亡例はなく、一般状態、行動、生存、発育、血液学的検査、眼科的検査、剖検、及び病理組織学的検査で異常は観察されなかった。また、体重抑制や食欲抑制も見られなかった。
【0040】実施例5:球形活性炭投与による慢性毒性試験試料1を用いて、ビーグル犬における慢性毒性試験を実施した。イヌ32匹を雌雄別々に1群当たり4匹からなる雌雄各4群に分けて、それぞれ試料1を、0.5g/kg/日、1.5g/kg/日、又は4.5g/kg/日の量で配合した飼料、及び試料1を含まない飼料(対照)を2年間毎日摂取させた。前記試験の結果、無影響量は4.5g/kg/日以上と考えられた。なお、いずれの群においても死亡例はなく、一般状態、体温、心拍数、呼吸数、摂餌量、摂水量、神経学的検査、眼科的検査、聴覚検査、心電図検査、血液学的検査、ミエログラム、PSP(フェノールスルホンフタレイン)試験、ICG(インドシアニングリーン)試験、尿検査、便潜血検査、剖検、臓器重量、及び病理組織学的検査で異常は認められなかった。
【0041】実施例6:球形活性炭投与による癌原性試試料1を用いて、マウス〔白色スイス系SPFマウス(CD1)〕、及びラット(ウイスター系)における癌原性試験を実施した。マウス400匹及びラット400匹をそれぞれ雌雄別々に1群当たり50匹からなる雌雄4群に分けて、試料1をそれぞれ、0.5%、1.5%、若しくは5%の割合で混合した飼料、又は試料1を含まない飼料(対照)を生涯与えた。前記試験の結果、マウス及びラットのいずれについても、総腫瘍発生、又は特定の型の腫瘍発生に対する作用は認められなかった。なお、一般状態、行動、及び生存に関しても試料1による悪影響は認められなかった。
【0042】実施例7:球形活性炭投与による生殖試験試料1を用いて、ラット(SD系)、及びウサギ(日本白色種)における生殖試験を実施した。ラットに試料1をそれぞれ、0.2%、5%、若しくは10%の割合で混合した飼料、又は試料1を含まない飼料(対照)を与える実験を、妊娠前から妊娠初期、胎児器官形成期、及び周産期から授乳期に亘って実施した。ウサギに試料1をそれぞれ、0.6g/kg/日、2g/kg/日、又は6g/kg/日の量で配合した飼料、及び試料1を含まない飼料(対照)を与える実験を、胎児器官形成期において実施した。前記試験の結果、いずれの群においても、雌雄の生殖比率の異常、新生仔に関する特記すべき異常は認められず、催奇形作用も認められなかった。
【0043】実施例8:球形活性炭投与による変異原性試験試料1を用いて、細菌による変異原性試験(組換えによるDNA修復能をもつ枯草菌とその修復能を欠く枯草菌とに対する殺菌効果の比較;サルモネラ菌におけるヒスチジン要求性から非要求性への復帰変異;大腸菌におけるトリプトファン要求性から非要求性への復帰変異)、チャイニーズ・ハムスター培養細胞による染色体試験、及びマウス(BDF;雄)による小核試験を実施した。前記試験の結果、いずれの群においても異常所見は認められなかった。
【0044】製剤調製例1:カプセル剤の調製前記製造例1で得た球形活性炭200mgをゼラチンカプセルに封入してカプセル剤を調製した。
【0045】製剤調製例2:スティック剤の調製前記製造例1で得た球形活性炭2gを積層フィルム製スティックに充填した後、ヒートシールしてスティック剤とした。
【0046】
【発明の効果】以上説明したとおり、本発明による医薬製剤を、例えば、経口薬として、肥満症患者が服用することにより、特別な副作用を起こさずに、肥満症を有意に治療することが可能である。また、本発明の医薬製剤は、長期間連続して用いることができる。
【出願人】 【識別番号】000001100
【氏名又は名称】呉羽化学工業株式会社
【出願日】 平成9年(1997)7月10日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】森田 憲一
【公開番号】 特開平11−29485
【公開日】 平成11年(1999)2月2日
【出願番号】 特願平9−200959