トップ :: A 生活必需品 :: A61 医学または獣医学;衛生学




【発明の名称】 赤血球内に生物学的活性薬剤をカプセル内封入する方法およびそのための装置
【発明者】 【氏名】マウロ・マグナーニ

【氏名】イーヴォ・パンツァーニ

【氏名】レオナルド・ビギ

【氏名】アンドレア・ツァネラ

【要約】 【課題】赤血球(RBCs)内に生物学的に活性な薬剤をカプセル内封入するための方法および装置であって、得られたキャリヤーRBCsは、生理条件下で、長期間安定であり、さらに、患者に治療上有効な量の一つまたはそれより多くの生物活性薬剤を組織的に配達するあるいは標的に配達するために用いることができる、上記の方法および装置を開発する。

【解決手段】個々の患者より赤血球を収集し、その赤血球を部分的に溶解し、部分溶解された赤血球を濃縮し、濃縮された部分溶解赤血球を一つまたはそれより多くの生物学的に活性な薬剤と接触させ、そして、部分的に溶解された赤血球を封入することによって、赤血球内に少なくとも一つの生物活性薬剤をカプセル内封入する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも一つの生物学的に活性な薬剤を赤血球サンプル内にカプセル内封入する方法であって、a) 一容量の赤血球を提供すること;
b) 赤血球を少なくとも部分的に溶解すること;
c) 少なくとも部分溶解された赤血球を濃縮すること;
d) 濃縮された、少なくとも部分溶解された赤血球を、一つまたはそれより多くの生物学的に活性な薬剤と接触させること;およびe) 少なくとも部分的に溶解された赤血球を密封し、それによって少なくとも赤血球の一部分内に生物学的に活性な薬剤をカプセル内封入すること:を含む、上記のカプセル内封入方法。
【請求項2】 赤血球を溶解段階の前に膨潤させる、請求項1記載の方法。
【請求項3】 少なくともある程度の赤血球を完全に溶解する、請求項1記載の方法。
【請求項4】 少なくとも一つの生物学的に活性な薬剤を赤血球サンプル内にカプセル内封入する方法であって、a) 第一の低張溶液に赤血球を晒して、赤血球を膨潤させること;
b) 第二の低張溶液に赤血球を晒して、赤血球を少なくとも部分的に溶解させること;
c) 赤血球を濃縮すること;
d) 濃縮された、少なくとも部分的に溶解された赤血球を、一つまたはそれより多くの生物学的に活性な薬剤と接触させること;および、e) 少なくとも部分的に溶解された赤血球を密封溶液に晒し、それによって少なくともある程度の生物活性薬剤を少なくとも赤血球の一部分内にカプセル内封入すること:を含む、上記のカプセル内封入方法。
【請求項5】 第一の低張溶液が約6容量の生理食塩水および約4.5容量の蒸留した無菌H2Oを含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】 第二の低張溶液が約6容量の生理食塩水および約8容量の蒸留した無菌H2Oを含む、請求項4記載の方法。
【請求項7】 赤血球を血液フィルターを用いて濃縮する、請求項4記載の方法。
【請求項8】 一つまたはそれより多くの生物学的に活性な薬剤が、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ホルモン、コルチコステロイド、グルココルチコイド、非ステロイド系抗炎症剤、グルタチオン、サイトカイン、トキシン、オリゴヌクレオチドおよびその他の核酸、ならびにヌクレオシド類似体からなる群より選択される、請求項4記載の方法。
【請求項9】 一つまたはそれより多くの生物学的に活性な薬剤が、デキサメタゾン−21−ホスフェート、プレドニゾロン−21−ホスフェート、6−メルカプトプリン、アジドチミジン、ジデオキシシトシンおよびジデオキシイノシンからなる群より選択される、請求項4記載の方法。
【請求項10】 密封溶液がホスフェート−イノシン−グルコース−ピルベート−アデニン溶液を含む、請求項4記載の方法。
【請求項11】 約70−80mlの少なくとも部分的に溶解された赤血球のそれぞれのアリコートに、約5mlの密封溶液を用いる、請求項10記載の方法。
【請求項12】 密封溶液と接触させる間、少なくとも部分的に溶解された赤血球を約37゜Cに約30分間インキュベートする、請求項11記載の方法。
【請求項13】 第二の低張溶液と接触させる時点では、少なくともある程度の赤血球は、完全に溶解されている、請求項4記載の方法。
【請求項14】 赤血球サンプル内に少なくとも一つの生物活性薬剤をカプセル内封入する方法であって:a) 提供者からの赤血球のサンプルを提供すること;
b) 赤血球が第一低張溶液内に約0.04から約0.05mlの赤血球/ml溶液の濃度で存在し、赤血球を膨潤させるように、赤血球を第一の低張溶液内に懸濁すること;
c) 赤血球を少なくとも部分的に溶解させるために、第一の溶液のオスモル濃度より低い約30から約60mOsmのオスモル濃度を持つ第二の低張溶液に、赤血球を懸濁すること;
d) 得られた懸濁液を濃縮し、その結果得られた赤血球の容量が、第一の低張溶液の容量のそれの約0.01から約0.067倍であるようにすること;
e) 濃縮され、少なくとも部分的に溶解された赤血球を一つまたはそれより多くの生物活性薬剤と接触させること;および、f) 少なくとも部分的に溶解された赤血球を密封溶液に晒し、それによって少なくともある程度の生物活性薬剤を、赤血球の少なくとも一部分にカプセル内封入することであって、前記密封溶液は、得られた溶液のオスモル濃度が第一低張溶液の約1.9から約2.1倍になるような濃度の濃縮された塩類溶液を含むこと:を含む、前記カプセル内封入方法。
【請求項15】 血液フィルターを用いて赤血球懸濁液を濃縮する、請求項14記載の方法。
【請求項16】 一つまたはそれより多くの生物活性薬剤が、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ホルモン、コルチコステロイド、グルココルチコイド、非ステロイド系抗炎症剤、グルタチオン、サイトカイン、トキシン、オリゴヌクレオチド、およびその他の核酸、ならびにヌクレオシド類似体からなる群より選択される、請求項14記載の方法。
【請求項17】 一つまたはそれより多くの生物活性薬剤が、デキサメタゾン−21−ホスフェート、プレドニソロン−21−ホスフェート、6−メルカプトプリン、アジドチミジン、ジデオキシシトシン、およびジデオキシイノシンからなる群から選択される、請求項14記載の方法。
【請求項18】 さらに、少なくとも一つの生物活性薬剤を標的薬剤と共にカプセル内封入して、処理された赤血球が具体的組織または細胞型に選択的に向けられるようにする、赤血球の処理段階を含む請求項14記載の方法。
【請求項19】 標的化薬剤がZnCl2およびビススルホスクシンイミジルスベレートを含み、そして処理された赤血球がマクロファージに選択的に向けられる、請求項18記載の方法。
【請求項20】 請求項1記載の方法によって作成されたキャリヤー赤血球。
【請求項21】 請求項1記載の方法に従って作成された、少なくとも一つの生物活性薬剤をカプセル内封入した赤血球を含む医薬組成物。
【請求項22】 請求項1から19のいずれか一項に記載の方法を遂行するための装置。
【請求項23】 少なくとも部分的に溶解された赤血球の濃縮が血液フィルターを用いて成し遂げられる、請求項22記載の装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、赤血球内に生物学的に活性な薬剤を取り込ませるための方法に関する。
【0002】
【従来の技術】最近、患者の特定部位を標的として医薬品の配達方法の開発に、多くの努力が払われている。適当な標的部位に能率的に到達した場合に薬剤効力を増加させうること、および、全薬剤投与量を最少にした場合に薬剤毒性を減少させうることが、知られている。薬剤配達システムの興味は、その多くが比較的単純な有機分子である慣用的薬剤、ならびにオリゴペプチド、タンパク質および核酸等のより複雑な薬剤の両方に向けられている。最近興味を持たれている一つの領域は、患者の標的部位へ治療投与量の薬剤を配達するための赤血球[以後、赤血球およびRBCs]の使用に関連する。赤血球は、赤血球の細胞膜を溶解し、そして一つまたはそれより多くの薬剤を赤血球に加え、その後細胞膜を再密封する(reseal)方法によって、生物学的に活性な薬剤を「負荷」("loaded")することができる。そのような「負荷」または「キャリヤー」赤血球は、それらが生分解可能であるために、薬剤配達および標的化システムを、長期間、循環システム内に維持することができ、さらに、例えばマクロファージのような細胞を選択するように標的化することができるので、数多くの利益を提供する。しかしながら、薬剤配達システムとしての赤血球の使用は、多くの研究者によって研究されているが、その方法は、臨床的設置(clinical setting)に日常的に適用できる点までには、未だ開発されてはいない。
【0003】生理溶液内に負荷細胞の懸濁液を調製する方法は、ドイツ特許第2326244号およびドイツ特許出願Nos.(OS)2326161および2495199に開示されており、それらの特許中で、赤血球細胞膜は、それぞれ、浸透圧あるいは電場によって溶解される。
【0004】米国特許第4,224,313号(Zimmermannら)は、浸透圧または電気場、またはその両方を外部から導入することを通して、細胞膜の透過率を増加させることによって、溶液内に懸濁された負荷細胞集団を調製する方法について、開示している。負荷される物質には、細胞内に取り込まれた場合に、細胞膜を成熟前に破壊する能力を持つ医薬品、および、細胞膜と医薬品の反応を阻害する能力を持つ安定化剤が含まれる。
【0005】米国特許第4,269,826号(Zimmermannら)は、負荷細胞内に磁気物質を取り込み、この負荷細胞を外部磁場の適用によって生体の特定の部分に配置することができる、方法について開示している。
【0006】米国特許第4,289,756号(Zimmermannら)は、生体の脾臓および肝臓内に負荷細胞を優先的に蓄積する方法を、開示している。
【0007】米国特許第4,478,824号(Francoら)は、細胞膜を通過することができ、拡散によって細胞に入ることのできるDMSOおよびグリセロールのような化学薬品の作用によってRBCsの内部浸透圧を変化させることによって、赤血球内に物質を取り込む方法を開示している。
【0008】米国特許第4,652,449号(Roparsら)は、浸透圧を用いて赤血球内に物質を取り込む方法および装置を開示している。方法および装置は、大容量の血液でのみ用いられ試験され、このことは、多くの適用を、相同な血液、即ち、多くの個体起源からプールした血液、の使用に限定する。米国特許第4,931,276号(Francoら)は、赤血球内に非イオン性薬剤をカプセル内封入する方法を開示している。この方法は、取り込まれるに望ましい薬剤が、アニオンでないか、またはアニオンあるいはポリアニオンであるが細胞を破壊することなく細胞透過率の必要な増加を引き起こす原因となる充分な濃度の等張に近い水性媒質内には存在しないという有効性に限りのある方法である。
【0009】Heubschら、J.Cell Physiol.,122:266−272(1985)は、細胞骨格の解離が浸透圧で膨張した細胞内で起こること、および大きさの極端な変化に伴い、二重層膜が正常条件下で存在する変形抑圧(deformational constraint)から解放されることを、証明している。
【0010】細胞内に物質を取り込む方法の概説は、Francoら、Life Science,32:2763−2768(1983)、Am.J.Hematol.,17:393−400(1984)およびJ.Cell Physiol.,129:221−229(1986)に示されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明の分野の仕事が広範囲にわたって行われているにもかかわらず、赤血球の内因性内容物を希釈または損失することなく、受け入れ可能な生理濃度で、RBCs内への一つまたはそれより多くの生物活性薬剤の導入を提供する方法は、従来技術では未だ知られていない。本発明の主要な目的は、この必要性を満たす方法を提供することにある。即ち、本発明の方法は、キャリヤーRBCsの完全性、生活能力および寿命を不本意にも減少させる、細胞内容物の本質部分の希釈または損失を伴わずに、望ましい生理濃度で、赤血球内への一つまたはそれより多くの生物学的に活性な薬剤[即ち、薬剤(drugs)]の導入を提供する。
【0012】より特別には、本発明の目的は、小容量の血液を用い、そうすることによって自己由来のキャリヤーRBCsを個々の患者で調製でき、かつ方法のいかなる段階でも血液を冷却する必要がない、そのような方法を提供することにある。
【0013】本発明のさらなる目的は、前述されたキャリヤーRBCsより長い期間、哺乳動物の生理的条件下で、生物学的に活性な薬剤を保持する、および遊離する、能力を持つ、キャリヤー[即ち薬剤負荷(durg-loaded)]赤血球を提供することにある。本発明に記載の方法に従って作成されたキャリヤーRBCsは、RBCsから外への拡散によって、または赤血球細胞膜を越えての能動輸送によって、カプセル内封入された生物活性薬剤を放出する。
【0014】本発明のさらなる目的は、本発明の方法を有効に且つ再現できるように実行することのできる装置を提供することにある。より特別には、本発明の目的は、自己由来のキャリヤーRBCsを、個々の患者からの小容量の血液から時間内に調製することのできる装置を提供することにある。
【0015】このように、本発明は、内因性赤血球内容物および/または赤血球内に取り込まれる薬剤の許容しえない希釈なしには、以前には成し遂げることのできなかった、哺乳動物赤血球内への治療上有効な生物活性薬剤の広範囲な取り込みに関する。より特別には、本発明の方法は、ポリペプチド含む様々な薬剤の、赤血球内への導入または取り込みを可能にする。これらおよびその他の生物活性薬剤は、単独またはその他のそのような薬剤との組み合わせのいずれかで、赤血球内にカプセル内封入することができ、そうすることによって赤血球は薬剤のキャリヤー赤血球となる。キャリヤー赤血球を用いると、キャリヤー赤血球を後に哺乳動物に導入する場合、カプセル内封入された生物活性薬剤を所望のようにゆっくりと継続的に分配することができる。さらに、本発明は、比較的少量の血液サンプルからのそのようなキャリヤー赤血球の迅速な調製を提供し、それによって、個々の患者からの自己由来のキャリヤー赤血球の調製が可能になる。本発明の方法は、本明細書中に記載されたような装置と共に用いた場合に、特に有用である。
【0016】上記の目的は、本発明に従って、哺乳動物の赤血球(RBCs)内に少なくとも一つの望ましい薬剤を導入する方法であって、この方法は、カプセル内封入される一つまたはそれより多くの生物活性薬剤を加える前に、溶解したまたは部分溶解した赤血球材料を濃縮することを含み、またカプセル内封入効率を有意に改善する、前記の方法で達成される。溶解されたまたは部分溶解された赤血球材料の濃縮は、限外ろ過効率の高い中空糸透析器のような高流量の血液透析器を用いる、血液ろ過を含む様々な手段で行うことができる。好ましい実施態様では、血液ろ過のディスポーザブルカートリッジを、本発明の方法の濃縮手段として用いる。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明の方法は、哺乳動物の赤血球内への少なくとも一つの所望の薬剤の導入を提供する。方法は、カプセル内封入される一つまたはそれより多くの生物活性薬剤を加える前に溶解したまたは部分溶解した赤血球材料を濃縮することを含み、カプセル内封入収率の有意の改善が認められた。本明細書中に用いられる、「カプセル内封入収率」とは、キャリヤーRBCs内にカプセル内封入される生物活性薬剤のフラクションをさし、通常、カプセル内封入過程の間に加えられた薬剤の全体量に対するカプセル内封入された薬剤の百分率(%)として表される。赤血球材料は、高速限外ろ過の中空糸透析器のような高流量の血液透析器を用いる、血液ろ過を含む様々な手段によって濃縮することができる。望ましい実施態様では、ディスポーザブルの血液フィルターカートリッジが、本発明の方法の濃縮手段として用いられる。
【0018】本明細書中に用いられる用語「キャリヤーRBCs」は、一つまたはそれより多くの生物学的に活性な薬剤をカプセル内封入する赤血球をさす。いくつかの場合、加えられた生物活性薬剤を含むキャリヤーRBCsは、具体的な薬剤に関して、本明細書中に記載されている。例えば、”d−21PキャリヤーRBCs”は、溶解され、薬剤デキサメタゾン−21−リン酸(dexamethasone−21−phosphate)(d−21P)を負荷され、デキサメタゾンを放出する、赤血球をさす。単独または組み合わせのいずれかで、様々なそのような薬剤を含むキャリヤー赤血球は、本発明の方法によって調整することができる。
【0019】本明細書中に用いられる用語「生物学的に活性な薬剤」とは、本発明の方法を用いてカプセル内封入することのできる材料をさす。これらには、限定するわけではないが、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ホルモン、コルチコステロイド、グルココルチコイド、非ステロイド抗炎症剤、グルタチオン、サイトカイン、トキシン、オリゴヌクレオチドおよびその他の核酸、ならびに有効な治療薬として周知のヌクレオシド類似体が含まれる。これらには、免疫抑制剤および悪性の細胞増殖の阻害剤として一般に用いられている6−メルカプトプリン(6−MP)またはアザチオプリンおよびリン酸フルダラビン、ならびに、抗ウイルス剤として、特にAIDSの治療に有用な、リン酸化されたアジドチミジン(AZT)、ジデオキシシトシン(ddC)およびジデオキシイノシン(ddI)が含まれる。本発明の方法に従って作成されたキャリヤーRBCsは、生理条件下で、完全性、生活能力および寿命を強化する望ましい特性を持つ。
【0020】本明細書中に用いられる略語を以下に示す:BS3 ビススルホスクシンイミジルスベレート(bissulfosuccinimidilsuberate)
d−21P デキサメタゾン−21−ホスフェート(dexamethasone-21-phosphate)PIGPA ホスフェート−イノシン−グルコース−ピルベート−アデニン(Phosphate-Inosine-Glucose-Pyruvate-Adenine)RBCs 赤血球[red blood cell(s)、erhtyrocytes]CPD クエン酸ナトリウム二水和物−クエン酸一水和物−リン酸二水素ナトリウム二水和物−グルコース(Sodium citrate dihydrate-Citric acid monohydrate-Sodium phosphate monobasic bihydrate-Glucose)PBS(1)リン酸塩緩衝液添加塩類溶液(phosphate buffered saline)(1)生理食塩水(NaCl 0.9%w/v)を、PBSの代わりとすることができる。
【0021】一つの実施態様では、本発明の方法は、個々の患者から赤血球を集め、赤血球を濃縮し、生理食塩水の第一溶液で赤血球を洗浄し、6容量の生理食塩水溶液および4容量の蒸留された無菌H2Oからなる第二の低張液で赤血球を洗浄し、6容量のリン酸緩衝化塩類溶液(PBS)および8容量の蒸留された無菌H2Oからなる溶液で赤血球を希釈し、血液フィルターカートリッジで赤血球を濃縮し、カプセル内封入される生物活性薬剤または薬剤類を加え、密封溶液(sealing solution)を加えることによって赤血球を密封(seal)し、得られた赤血球を37゜Cで約30分間インキュベートし、そして、生理食塩水溶液で赤血球を洗浄することを含む。密封溶液は、好ましくは、約33mMのNaH2PO4;約1.606MのKCl;約0.194MのNaCl;約0.1Mのイノシン;約5mMのアデニン;約20mMのATP;約0.1Mのグルコース;約0.1Mのピルベート;および約4mMのMgCl2:を含む、ホスフェート−イノシン−グルコース−ピルベート−アデニン(PIGPA)である。好ましい実施態様では、約5mlのPIGPA溶液が、約70−90mlの容量の溶解赤血球を密封するために用いられる。
【0022】過程の間の凝集から赤血球を保護するために、赤血球は、所望であれば、収集段階の間またはその後に抗凝集剤と接触させることができる。一つの好ましい抗凝集剤溶液は、本明細書中ではCPD溶液と呼ばれ、26.3gのクエン酸ナトリウム二水和物、3.3gのクエン酸一水和物、2.5gのリン酸二水素ナトリウム二水和物、および23.2gのグルコース/1リットルの無菌水を含む。
【0023】より特別には、本発明の方法は、他の血液細胞および成分から赤血球を分離し、第一低張溶液1ml当たり約0.04から約0.05mlの赤血球濃度(第一溶液の容量および容量オスモル濃度は既知であるか、または定量される)で第一低張液に赤血球を懸濁し、それらを第二の低張液(第一溶液のそれより低い約30から約60mOsmの容量オスモル濃度を持つ)に懸濁することによって赤血球を溶解して溶解液を得、溶解液の濃度を調製してその結果その容量が第一溶液の容量の約0.1から約0.067になり、溶解液にカプセル内封入される生理活性薬剤を加え、そして、第一溶液の約1.9倍から約2.1倍の範囲に溶解液の容量オスモル濃度を調製するために、濃縮した食塩溶液を溶解液に加えることによって溶解したRBCsを密封することを含む。
【0024】本発明の方法の好ましい実施態様を、図1に略図で示す。図1では、赤血球10は、多数の小さな黒丸を含む膜12として表される。小さな黒丸は、溶解されていないRBCsに固有な生物分子14を示すつもりである。最初の低浸透圧希釈後、赤血球10は膨張する(略図で20と示す)ように見える。膨張した赤血球20は、それらを全体的にまたは部分的に溶解する原因となる、第二の低浸透圧希釈に晒される。溶解されたまたは部分溶解された赤血球30は両方共、溶解されていないRBCsに固有な生物分子14を包囲し、そしてそれによって包囲されている。次の段階では、溶解されたまたは部分溶解された赤血球30を、その後、血液フィルター40で濃縮する。得られた溶解または部分溶解赤血球30を、大きな黒丸で示された生物活性薬剤50と接触させる。そうすることで、生物活性薬剤のあるものは、赤血球内にカプセル内封入される。カプセル内封入された生物活性薬剤を略図に50と示す。赤血球は、この段階で生物活性薬剤を含み、次いで、濃縮された塩類溶液に晒される。晒すことは、細胞膜12を密封する原因となり、そうすることによって細胞内に生物活性薬剤50を捕獲しそしてカプセル内封入する。次いで、そうして得られた、いわゆるキャリヤーRBCまたはキャリヤー赤血球60を、洗浄する。
【0025】上記の方法を遂行するための装置の一つの実施態様を、図2に略図で示す。図2では、好ましくは(患者から集められた)少なくとも50mlの血液を含むバッグ100を血液供給ライン102に接続する。血液を、ポンプ104によって分離ボール106に移し、好ましくは約5600rpmで回転させる。生理食塩水供給ライン108によって提供される生理食塩水溶液(NaCl 0.6%)で、ボール106に含まれる赤血球を洗浄する。好ましくは、生理食塩水は、約150ml/分の速度で供給される。洗浄処置は、血漿とその他の血液細胞を分離し、後者は廃棄物収集バック110に移される。洗浄後、赤血球を、分離ボール106から運搬バック(transfer bag)112にポンプで移す。約400mlの第一低張液(6容量の生理食塩水および4.5容量の蒸留水)を第一低張液供給ライン114を通して運搬バック112に加え、そして赤血球と混合する。次いで、得られた懸濁液を穏和に攪拌しながら室温に約5−10分間保つ。この時点で、赤血球は膨張する(参照数字、図1の20)が、それらはまだ溶解していない。次いで、第二低張液供給ライン116を通して、第二の低張液を運搬バック112内に導入する。好ましくは、第二の低張液は、6容量の生理食塩水および8容量の蒸留水を持つ約200mlの溶液である。赤血球の血液溶解が起こるのは、この段階である。室温で約15分後、得られた溶解液はポンプで血液フィルター118を通す。ろ過過程の間、クランプ120、122、124および126を開け、そしてクランプ128、130、132、134、136、138および140を閉じる。ろ過過程を強化するために、所望により、約100から約150mmHgの真空度になる真空ポンプ142を用いることができる。血液溶解液は、ろ過容量が約170から190mlの範囲になるまで、限外ろ過リザーバー144内に集められる。ひとたび、所望の容量に到達したならば、濃縮された赤血球は運搬バック112に集められる。これは、クランプ124を閉じ、クランプ128を開けることによって、成し遂げられる。次いで、生物活性物質を、運搬バック112内に導入し、その時点で、生理活性物質は、濃縮され溶解された赤血球と接触し、それによってカプセル内封入される。約10から15分間の穏和な攪拌の後、5mlのPIGPA密封溶液を運搬バック112に加え、バックを約30分間、約37゜Cのヒーター146内に置き、赤血球をインキュベートする。所望の加熱時間の完了時点で、再密封された赤血球を含む運搬バック112を再接続し、そして赤血球を分離ボール106内にポンプで戻す。いったんボール内に入ったならば、ボールを約5600rpmで回転しながら、赤血球を約2リットルの生理食塩水(約150から200ml/分で供給する)で洗浄する。最後に、洗浄された負荷赤血球を、負荷赤血球バック148内に移す。このことは、ボールから赤血球を約150ml/分の速度でポンプで移す間、クランプ122を閉じ、クランプ134を開けることによって、成し遂げられる。赤血球懸濁液は、この時点で患者に重力点滴される準備が整う。上記のように、患者は、処理された血液を供給した患者か、または別の患者かのいずれであっても良い。
【0026】また、少なくとも一つの生物活性薬剤をカプセル内封入した赤血球を、標的化(targeting)薬剤で処理し、そうすることによって、処理された赤血球は、選択的に特定の組織または細胞型に向けられる。例えば、マクロファージによるそれらの迅速な認識を導入するために薬剤負荷赤血球を処理すべき場合、バッグ148内に負荷赤血球をポンプで移す前に、それらは、1mM ZnCl2を含む生理食塩水溶液でのさらなる洗浄段階に委ねられる。いったんZnCl2と接触させたならば、赤血球を運搬バック112に移し、そこでBS3(最終濃度1−1.5mM)と接触させる。約15分後、再度、分離エレメント106を回転させながら、おおよそ1リットルの生理食塩水を用いて、赤血球を洗浄する。次いで、それらを負荷赤血球バック149に移し、そこから、負荷赤血球を患者に注入することもできる。
【0027】負荷赤血球を、注入前、12から24時間より長く保存するつもりであるならば、最終の収集バックは、防腐剤を含むべきである。一つの好ましい防腐剤は、上記のCPD溶液である。このように、おおよそ10mlのCPD溶液を、最終の収集バック内に提供することができる。
【0028】図1および2の実施態様は、特に、室温で、即ち、全血液または任意の血液の細胞成分あるいは分子成分のいかなる加熱も冷却も必要とせずに、個々の患者の小容量(100mlより少ない)の血液から、自己由来のキャリヤーRBCsを調製するために、適している。本明細書に用いられる「個々の患者」とは、ヒトに限定されるわけではなく、キャリヤーRBCsを投与したい任意の哺乳動物をさす。さらに、本明細書に用いられる「自己由来キャリヤーRBCs」とは、インビトロで修飾されて一つまたはそれより多くの生物活性薬剤(類)をカプセル内封入された、赤血球が単離された本来の個々の患者内に再導入するつもりの、個々の患者から単離された赤血球をさす。個々の患者を治療するための自己由来キャリヤーRBCsの使用には多くの利点があり、特に、例えば、インビボでキャリヤーRBCsの生存時間を短くするであろう望ましくない免疫応答は、個々の患者から誘導された赤血球を用いることによって避けられる。
【0029】本発明の方法によって作成されたキャリヤー赤血球内に加えられた活性薬剤がより高濃度であるため、キャリヤーRBCsは、以前から知られている方法によって作成されたそれらほど、そのような薬剤が急速に涸渇することはない。さらに、溶解したRBCsから放出されるが、それにもかかわらず、本発明の方法によって、キャリヤーRBCs内に高濃度で再導入される、内在性生物分子の割合がより高いため、本発明の方法に従って作成されたキャリヤー赤血球は、以前から知られている方法によって作成されたキャリヤーRBCsほど、長期間の維持に必要とされる内在性分子を放出しない。結果として、本発明のキャリヤーRBCsは、以前に記載されていたキャリヤーRBCsより長期間、生理条件下で、活性薬剤を持続して放出する能力を持つ。
【0030】本発明のキャリヤーRBCsは、さらに巧妙に取り扱う必要なく、より長期間、哺乳動物にそのカプセル内封入された生物活性薬剤を提供するために、哺乳動物へ注射を通して投与される。系統的配達が必要とされるならば、次いで、キャリヤーRBCsを哺乳動物の循環系内に注射する。キャリヤーRBCsの標的配達は、標的の近辺に、筋肉内注射することによって達成される。
【0031】本発明のその他の実施態様では、「薬剤前駆体」("predrug")(即ち、生物活性薬剤に対する前駆体)をキャリヤーRBCs内に取り込み、次いで哺乳動物内に注射する。いくつかの薬剤前駆体では、哺乳動物の血液内に存在する内因性活性化作因が、薬剤前駆体をゆっくりとではあるが安定した速度で生物活性薬剤に変えるであろう。例として、デキサメタゾン−21−ホスフェート(d−21P)をキャリヤーRBCs内にカプセル内封入し、負荷RBCsを哺乳動物の循環系内に導入した場合、d−21Pは、ゆっくりと化学療法薬であるデキサメタゾンに変わる。デキサメタゾンは、キャリヤー赤血球の細胞膜を通過できるため(これに対してd−21Pは通過できない)、この方法は哺乳動物に、(デキサメタゾンの場合には)ある期間以上、一定レベルの生物活性薬剤を提供することが、確実である。変わりに、内在性活性化作因が存在しない薬剤前駆体では、活性化作因を、所望の時点で、哺乳動物の血液に加えることができる。活性化作因は負荷赤血球に入り、例えば、薬剤前駆体と反応させて生物活性薬剤を形成させることによって、または薬剤前駆体を転化する化学反応を触媒することによって、薬剤前駆体を活性化する。関係する実施態様では、活性化作因を、患者に導入される赤血球内にカプセル内封入し、次いで、患者に薬剤前駆体を導入することもできる。
【0032】本発明の方法に従って作成されたキャリヤーRBCsを用いると、その中にカプセル内封入された治療上有効な量の生物活性薬剤が、個々の患者に配達される。用語「治療上有効な量」は、本発明の目的では、計画された目的に到達するに有効な生理活性薬剤の量を指す。個々の必要性は異なるが、そのような薬剤の治療上有効な量の最適範囲の決定は、当業者の内にある。一般的には、治療上有効な量の組成物を提供するために必要とされる投薬量は、当業者が決定することができ、年齢、健康状態、身体条件、体重、個人の病気の範囲、治療の頻度および所望する効果の形態および範囲に依存して、異なるであろう。適当な場所に、治療上有効な量を、キャリヤーRBCsの多様な投与を通して、適当な期間以上、配達することができる。
【0033】本発明のキャリヤーRBCsは、慣用の補助剤、即ち、活性化合物と有害な反応を起こさない注射を通しての哺乳動物への投与に適した薬学上受容しうる有機または無機のキャリヤー物質のような、さらなる物質をも含む医薬組成物内に含ませることができる。薬学上許容しうる適当なキャリヤーには、これらに限定されるわけではないが、水、塩溶液、ポリエチレングリコール、ゼラチン等が含まれる。さらに、または代わりに、本発明のキャリヤーRBCsを含む医薬調製物は、活性化合物と有害な反応を起こさない、補助剤、例えば、潤滑剤、防腐剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響する塩、バッファー、およびその類似物等、をされに含むことができる。また、本発明のキャリヤーRBCsを含む医薬組成物は、所望により、安定化剤を含むこともできる。
【0034】本発明での使用に適したポリペプチドの一例として、8,600ダルトンの分子量を持つポリペプチドであるユビキチンが挙げられる。ユビキチンは、続いて起こるタンパク質分解への影響タンパク質(mark proteins)として知られている。典型的には、キャリヤー赤血球内にカプセル内封入することのできるポリペプチドの%(カプセル内封入収率)は、約30%である。そのような場合、初発赤血球の約40%から約60%が回収された。
【0035】本発明での使用に適した薬剤前駆体の一つの例は、d−21Pである。ポリペプチドと同様に、キャリヤー赤血球内にカプセル内封入されうるd−21Pの%(カプセル内封入収率)は、約30%である。この場合も、初発赤血球の約40%から約60%が回収された。
【0036】マクロファージ−標的化キャリヤーRBCsを得ることを所望する場合には、次のような段階を用いることができる。第一に、再構築(即ち負荷)されたRBCsを、1mM ZnCl2を含む塩類溶液で洗浄する。ZnCl2は、RBCsのトランスメンブランタンパク質のクラスター化(clustering)を誘導することによって、クラスター化薬剤として作用する。次に、1mMのビスルホスクシンイミジルスベレート(BS3)を含む溶液を加える。BS3は、ZnCl2によって誘導されたタンパク質クラスターが、ZnCl2除去時でさえ不可逆になるための架橋剤として作用する。BS3と共に、インキュベーションを約15分間続ける。その結果得られた架橋された赤血球を、次に、塩類溶液で洗浄し、慣用の方法によって濃縮する。
【0037】本発明の様々な修正および変更は、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、当業者に明らかになるであろう。本発明が、本明細書中に示した例示的実施態様および実施例によって不当に制限されることを意図するものではないこと、ならびに、そのような実施例および実施態様は、本明細書中、以下に示したクレイムによってのみ制限されることを意図する本発明の範囲でのみ、実施例として示されること、を理解すべきである。
【出願人】 【識別番号】594000181
【氏名又は名称】ディデコ・ソチエタ・ペル・アチオーニ
【出願日】 平成10年(1998)5月6日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】社本 一夫 (外4名)
【公開番号】 特開平11−5752
【公開日】 平成11年(1999)1月12日
【出願番号】 特願平10−123228