| 【発明の名称】 |
コレステロール硫酸含有外用剤 |
| 【発明者】 |
【氏名】佐藤 純子
【氏名】傅田 光洋
【氏名】小山 純一
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| 【要約】 |
【課題】皮膚におけるデスモソームの異常分解を調整するための外用剤の提供。
【解決手段】コレステロール硫酸を有効成分として含んでなる皮膚外用剤。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 有効成分としてコレステロール硫酸を含んでなる皮膚外用剤。 【請求項2】 有効成分としてコレステロール硫酸を含んでなる、デスモソームの分解を抑制するための皮膚外用剤。 【請求項3】 有効成分としてコレステロール硫酸を含んでなる、皮膚におけるデスモソームの分解と抑制との正常なバランスを保つための皮膚外用剤。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、皮膚科用製剤、特に皮膚外用剤に関する。 【0002】 【発明の背景】従来より、ある一定の皮膚疾患の処置やみずみずしい肌を維持するために、各種の保湿剤や、コレステロールを始めとする脂質の使用が試みられてきた(例えば、コレステロールの使用については、G.Lykkesffldt ら、Lancet,1983,1337−1338参照)。 【0003】ここで、コレステロールに関連した知見を概観してみると、ステロイドサルファターゼの欠損によって惹起される魚鱗癬では、コレステロール硫酸の蓄積に伴なって角質増殖症が保持されることが知られている。また、コレステロール硫酸の局所塗布は紅斑を伴うことなく、目視できる程度の落せつをもたらすことも報告されている(M.E.Maloney ら、J.Invest.Dermatol.,83(1984),252−256)。 【0004】しかしながら、強い接着性を有する蹄では、特にコレステロール硫酸が豊富に存在する(P.M.Elias ら、J.Clin.Invest.74(1984)、1414−1421)のに対し、緊密に接着した角質層(手掌)と緩く接着した角質層(上腕)の間には、有意差がない(S.Serizawa ら、J.Invest.Dermatol.,99(1992),232−236)と報告されている。いずれにしても、コレステロール硫酸と蓄積された角質層との関係は、必ずしも明確になっているものでない。 【0005】他方、皮膚におけるデスモソームが角質細胞の接着に重要な役割を有しており、2種のセリンプロテアーゼ(トリプシン様酵素とキモトリプシン様酵素)によるデスモソームの分解が角質層の落屑をもたらすことが確認されている(例えば、Y.Suzuki ら、British J.Dermatol.,134(1996),460−464)。このような知見に基づき、本発明者の関係者は、上記2種のセリンプロテアーゼ活性を促進させることにより、角質層の形成とその生理的な剥離を調和させる手段を提案した。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】ところで、上記セリンプロテアーゼの活性が異常に高い場合には、逆にそれらの活性の抑制が皮膚の恒常性を保持する上で必要な場合も存在するであろう。 【0007】 【課題を解決するための手段】このような抑制作用を有する物質について検討してきた結果、精子の受精能獲得の実験において、それらのセリンプロテアーゼを阻害することも報告されているコレステロール硫酸が、デスモソームの酵素活性を抑制することを見い出した。 【0008】こうして、コレステロール硫酸は、例えば、デスモソームの過剰分解が生じている場合、その分解活性を抑制することに有意に使用できることを見い出した。したがってここに、上記課題を解決するために、有効成分としてコレステロール硫酸を含んでなる皮膚外用剤を提供し、そして有効成分としてコレステロール硫酸を含んでなるデスモソームの分解を抑制するための皮膚外用剤を提供する。また、別の態様の発明として、有効成分としてコレステロール硫酸を含んでなる、皮膚におけるデスモソームの分解と抑制との正常なバランスを保つための皮膚外用剤を提供する。 【0009】さらなる別の態様の発明として、有効成分としてコレステロール硫酸を含んでなる、皮膚における積極的な落屑をもたらし、角質層の更新を促進するための皮膚外用剤を提供する。 【0010】本発明で使用するコレステロール硫酸(すなわち、コレステロール3−硫酸エステル)は、生体由来のものでも、また半合成および全合成によって得られたものであってもよい。これらは市販されており、当業者に容易に入手できるものを使用すればよい。 【0011】コレステロール硫酸は化粧料または医療用外用剤として常用されている希釈剤または助剤と共に使用することができるが、これらの希釈剤等は、コレステロール硫酸の作用に悪影響を及ぼすものであってはならない。希釈剤または助剤の代表的なものとしては、アルコール、水、緩衝剤、キレート剤、尿素、界面活性剤等を挙げることができる。 【0012】コレステロール硫酸は、剤形、具体的な使用目的に応じて、外用剤中への含有量を変動させることができるが、ローション、クリーム剤、等の場合には、総組成物重量当り、約0.005〜20重量%、好ましくは0.5〜5重量%含めることができる。また、それらの調製は、各種皮膚外用剤の調製法として周知の方法に従って実施することができる。 【0013】こうして得られる本発明の外用剤は、例えば、有効成分としてのコレステロール硫酸がデスモソーム中のトリプシン様酵素およびキモトリプシン様酵素による両活性を拮抗阻害的に抑制するので、デスモソームの形成と分解を皮膚状態に応じてバランスさせることが可能である。 【0014】 【実施例】以下、実施例により、本発明およびその作用効果をさらに具体的に説明する。 (局所塗布の影響) 実験コレステロール硫酸は Sigma 社から入手したものを使用し、ヘアレスマウス(HR−1)は、8週齢雄を一群3匹使用した。 【0015】ヘアレスマウスの背部に、1日1回、ジメチルスルホキシド(DMSO)中10mMのコレステロール硫酸(以下、CS)溶液80μLを塗布した。3日後、角質層をテープストリッピングにより採集した。また生検もあわせて行った。 【0016】<組織学的観察>生検試料を10%ホルマリンで固定し、パラフィンに包埋した。切片をヘマトキシリン−エオシン染色した。画像解析システムを備えた光学顕微鏡(オリンパス XL−10)で表皮の厚さを測定した。 【0017】生検試料は、カルノフスキーの固定液で固定し、還元1.0%四酸化オスミウムで処理し、樹脂に包埋した。超薄切片をクエン酸鉛と酢酸ウランで電子染色した後、電子顕微鏡(H7100、日立製作所)で観察した。ブライド法により角質層を数えた。 【0018】結果マウスへのCSの局所塗布による表皮および角質層の変化(1) CSの塗布後3日目にマウスの背部全体に目に見えるスケールが発生した。 【0019】(2) 表皮の厚さは、基剤であるDMSO処理と、CS処理の間には差が認められなかった。 【0020】(3) 電子顕微鏡下での角質層の層数は、DMSO処理に比べ、CS処理により約1.5倍に増えていた。 【0021】(角質層のデスモソームの検出) 実験デスモソームのタンパク質を、テープストリッピングして採取した角質層から、0.1M Tris HCl (pH9)、9M尿素、2%SDSおよび1%メルカプトエタノールを含有する緩衡液(角質層2mg当り緩衡液200μL)で、15時間37℃で抽出した。抽出物を Laemmli のサンプル緩衡液(Laemmli ら、Nature 227(1970)680−685)と混合し、10分間湯浴上で加熱した。遠心後、上清をSDS−PAGE(10%ゲル)で分析した。電気泳動ゲルをPVDF膜(Applied Biosystems)に移し、デスモグレインIに対する抗体を用いたウェスタンブロット法によってデスモソームタンパク質を検出した。 結果CS処理マウスの角質層中のデスモグレインIの含有量は、基剤DMSO処理より高くなっていた。この結果は、デスモソームの分解がCSの局所塗布により抑制されることを示す。具体的には、図1を参照されたい。 【0022】(角質層シートからの細胞の分散) 実験角層シート1mgを、カナマイシン60μg含有洗浄剤混合液[8mMのジメチルドデシルアミンオキサイド(DMDAO)および2mMドデシル硫酸ナトリウム(SDS)]1ml中で、37℃、24時間インキュベートした。それぞれ、CS(1mM、5mM)、DMSOおよびプロテアーゼ阻害剤(0.25mMキモスタチンおよび0.25mMロイペプチン)を含めて行ったインキュベーション後、角層シートをボルテックスミキサーで2秒間撹拌した。洗浄剤混合液中に遊離してきた細胞の数を血球計で計測した。 【0023】結果細胞の分散は、DMSOを添加したときに比べ、CSを1mMで添加すると51.9%に、5mMで添加すると19.6%に抑制され、濃度依存的に細胞の分散が抑制されることが判明した。なお、タンパク質阻害剤の添加では、細胞の分散は1.3%に抑えられた。 【0024】(CSのトリプシンおよびキモトリプシンに対する作用) 実験結晶ブタ膵臓トリプシン(和光)および結晶ウシ膵臓キモトリプシン(Sigma)を使用して、CSの阻害挙動を調べた。なお、これらのプロテアーゼは、それぞれデスモソームのトリプシン様酵素およびキモトリプシン様酵素とアミノ酸配列の相同様が極めて高いことから選んだ[上述の Suzuki らの文献および Skyttら、Biochem. Biophys. Res. Comm., 211(1995)、586-589参照]。 【0025】トリプシン活性およびキモトリプシン活性は、基質として、それぞれBoc−Phe−Ser−Arg−MCA(3107−V)およびSuc−Leu−Len−Val−Tyr−MCA(3120−V)(ペプチド研究所)を使用して測定した。アッセイは、すべて0.1M Tris HCl(pH8.0)中、37℃で行った。 【0026】結果CSは、トリプシン、キモトリプキンのどちらに対しても拮抗阻害を示し、阻害定数はトリプシンに対して5.5μM、キモトリプシンに対して2.1μMであった。 【0027】以上をまとめると、CSは角質層中のプロテアーゼに対して阻害作用を示すことが予想され、in vivo ではデスモソームの分解を抑制し、角質層を厚くするとともにスケールを生じさせることが確認される。 【0028】 (処方例) 組成 (重量%) ステアリルアルコール 6.0 ステアリン酸 2.0 水添ラノリン 4.0 スクワラン 9.0 オクチルドデカノール 10.0 コレステロール硫酸 1.0 1,3−ブチレングリコール 6.0 ポリオキシエチレングリコール1500 4.0 ポリオキシエチレン(25)セチルアルコール 3.0 モノステアリン酸グリセリン 2.0 防腐剤 適量 酸化防止剤 適量 香料 適量 精製水 54.0調製精製水に保湿剤を加え70℃に加熱調整する。油分を加熱溶解後、コレステロール硫酸、界面活性剤、防腐剤、酸化防止剤、香料を加え70℃に調整する。これを先の水相に加えて、ホモミキサーにて乳化粒子を均一にして、脱気、濾過、冷却してクリームを得た。 【0029】 【発明の効果】以上のCSの作用から理解されるように、CSを有効成分として含めた皮膚外用剤は、過剰なデスモソームの分解がみられるとき使用すれば、それを正常な状態に復帰させることが予想され、デスモソームの分解と抑制との正常なバランスを保つのに利用できるであろう。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000001959 【氏名又は名称】株式会社資生堂
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| 【出願日】 |
平成9年(1997)7月30日 |
| 【代理人】 |
【弁理士】 【氏名又は名称】小田島 平吉 (外1名)
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| 【公開番号】 |
特開平11−5742 |
| 【公開日】 |
平成11年(1999)1月12日 |
| 【出願番号】 |
特願平9−218288 |
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