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【発明の名称】 補助動力式車椅子
【発明者】 【氏名】内山 敦

【氏名】菅野 信之

【要約】 【課題】使用者個別の仕様設定を不要にでき、部品点数が増加するのを防止してコストを低減することができ、また、片手漕ぎ操作での走行性能を向上することができる補助動力式車椅子を提供する。

【解決手段】人力が入力されるハンドリム(人力入力部材)13と、該ハンドリム13に加えられた人力の方向及びその大きさを第1,第2レベルに判別して検出するポテンショメータ(人力検出手段)72と、車輪2に補助動力を供給するモータ(補助動力源)31と、該モータ31を、上記検出された人力が第1レベルにあるときは上記補助動力が人力入力方向に応じた旋回方向の駆動力となるように、上記検出された人力が第2レベルにあるときは上記補助力が人力入力方向に応じた前後進方向の駆動力となるようにそれぞれ制御するコントローラ(補助動力制御手段)100とを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 人力が入力される人力入力部材と、該人力入力部材に加えられた人力の方向及びその大きさを検出する人力検出手段と、車輪に補助動力を供給する補助動力源と、該補助駆動源を、上記検出された人力が小なるときは上記補助動力が人力入力方向に応じた旋回方向の駆動力となるように、上記検出された人力が大なるときは上記補助力が人力入力方向に応じた前後進方向の駆動力となるようにそれぞれ制御する補助動力制御手段とを備えたことを特徴とする補助動力式車椅子。
【請求項2】 請求項1において、左,右の車輪の各回転速度を検出する車輪速度検出手段と、上記検出された人力が小なるときは左,右の車輪の目標速度を人力入力方向に応じた旋回成分を有するように設定し、大なるときは左,右の車輪の目標速度を人力入力方向に応じて均等に増減する目標速度増減手段とを備え、上記補助動力制御手段は、検出された各車輪の検出速度が目標速度となるよう上記補助動力源を速度フィードバック制御することを特徴とする補助動力式車椅子。
【請求項3】 請求項2において、上記人力入力部材及び人力検出手段を上記左,右の車輪に対応して備えており、上記目標速度増減手段は、同向きの上記小なる人力が左,右両方の人力入力部材に加えられたときは一方の人力入力部材のみに加えられたときよりも上記旋回成分を小さく設定し、逆向きの上記小なる人力が左,右の人力入力部材に加えられたときは一方の人力入力部材のみに加えられたときよりも上記旋回成分を大きく設定することを特徴とする補助動力式車椅子。
【請求項4】 請求項2又は3において、上記人力入力部材及び人力検出手段を上記左,右の車輪に対応して備えており、上記目標速度増減手段は、同向きの上記大なる人力が左,右の人力入力部材に加えられたときは一方の人力入力部材のみに加えられたときよりも大きい割合で上記目標速度の増減を行い、逆向きの上記大なる人力が左,右の人力入力部材に加えられたときは上記目標速度の増減を停止することを特徴とする補助動力式車椅子。
【請求項5】 請求項2ないし4の何れかにおいて、上記目標速度増減手段は、目標速度が0以外の場合には時間経過とともに目標速度の絶対値を0に向けて漸減することを特徴とする補助動力式車椅子。
【請求項6】 請求項1ないし5の何れかにおいて、上記人力入力部材は、人力を伝達可能に駆動輪に取り付けられたハンドリムであることを特徴とする補助動力式車椅子。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、片手の操作でも車両の前後進動作が可能である補助動力式車椅子に関する。
【0002】
【従来の技術】手動車椅子と電動車椅子との中間的な存在として補助動力付き車椅子が提案されている。この補助動力付き車椅子は、左,右の車輪に間欠的に加えられる人力を検出し、該検出された人力に応じた補助動力を左,右の車輪に加えることによって歩行の不自由な使用者の肉体的な負担を軽減するものであり、使用者は手動車椅子の感覚で操作することができ、精神的苦痛も緩和される。
【0003】しかし、上記従来の補助動力付き車椅子は左,右の車輪に同等の人力が加えられることを前提にしているため、使用者が両手の操作力がアンバランスであったり、片方の手だけでしか操作が行えない場合には、上記従来の補助動力付き車椅子は操作性が低いという問題がある。
【0004】例えば、従来の補助動力付き車椅子を片方の手で操作する(以下片手漕ぎ操作と記す)場合、車椅子が蛇行しないように足で路面を蹴って進行方向を規制する必要があり、このように従来の補助動力付き車椅子は、片手漕ぎ操作では直進時の使い勝手が悪いという問題がある。
【0005】また、片手漕ぎ操作では左, 右何れかに旋回する場合は、片方の足により旋回方向を制御することが必要である。具体的には、右に曲がる時は、足を操舵手段として車椅子の前方路面を蹴って車椅子を右方に回頭させる必要であり、このように、従来の補助動力付き車椅子は、片手漕ぎ操作では旋回時の使い勝手が悪いという問題がある。
【0006】これらの問題を解決するものとして本願出願人は、一方の車輪に人力が加えられると、該人力に基づいて設定された補助動力が一方の車輪に加えられるとともに、該一方の車輪に作用する人力と補助動力との和と同等の補助動力が他方の車輪に加えられるようにしたもの(特開平7−136218号公報参照)を提案している。
【0007】上記提案装置では、使用者が片方の手で一方の車輪に人力を加えると、該一方の車輪に作用する人力と補助動力との和と同等の補助動力が他方の車輪に供給されるため、片手漕ぎ操作の場合でも蛇行することなく容易に直進することができ、足による直進制御を不要にすることができる。
【0008】また、片手漕ぎ操作の場合の旋回時の使い勝手を向上するものとして、本願出願人は、使用者の旋回の意志を検出する旋回意志検出手段として機能するフートスイッチを右側のステップに設け、該スイッチにより補助力の供給先を指定して、旋回を容易にするもの(特開平7−136219号公報参照)を提案している。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記従来のフートスイッチにより補助力の供給先を設定して、旋回方向を指定するようにしたものでは、上記フートスイッチの取り付け位置を、使用者の身体的特徴に応じて個別に設定する必要があり、また、このスイッチやスイッチ操作に係る制御装置等が必要となるため、それだけ製造コストがかさむという問題がある。
【0010】また、一方の車輪に作用する人力と補助動力との和と同等の補助動力を他方の車輪に供給するものでは、ハンドリムに人力を印加中は両輪より推進力を発生するが、次のストロークのためにハンドリムを持ち替える間は両輪の推進力が消滅してしまうので、例えば右輪を漕いで坂道を直進登坂している時に、足により右旋回しようとすると左輪に供給される駆動力が登坂旋回に必要なトルクより小さくなって走行自体が不能になる場合が発生するという問題もある。
【0011】本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、使用者個別の仕様設定を不要にでき、部品点数が増加するのを防止してコストを低減することができ、また、片手漕ぎ操作での走行性能を向上することができる補助動力式車椅子を提供することを課題としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、人力が入力される人力入力部材と、該人力入力部材に加えられた人力の方向及びその大きさを検出する人力検出手段と、左,右の車輪に補助動力を供給する補助動力源と、該補助駆動源を、上記検出された人力が小なるときは上記補助動力が人力入力方向に応じた旋回方向の駆動力となるように、上記検出された人力が大なるときは上記補助動力が人力入力方向に応じた前後進方向の駆動力となるようにそれぞれ制御する補助動力制御手段とを備えたことを特徴としている。
【0013】ここで本発明において、上記小なる人力とは、例えば人力検出センサにおけるいわゆる不感帯域を示す第1しきい値から使用者の発揮し得る人力よりも十分に小さい第2しきい値までの範囲に設定可能であり、上記大なる人力とは、例えば上記第2しきい値より大きい範囲に設定可能である。従ってこの場合は、小なる人力とは人力入力部材に軽く触れる程度の人力を意味し、大なる人力とはこれよりも大きめの人力を意味する。
【0014】また、本発明における人力の検出においては、しきい値を設けることなく、人力を連続量として扱い、あるいは人力をファジー量として扱うことも可能である。
【0015】請求項2の発明は、請求項1において、上記左,右の車輪の回転速度を検出する車輪速度検出手段と、上記検出された人力が小なるときは左,右の車輪の目標速度を人力入力方向に応じた旋回成分を有するように設定し、大なるときは左,右の車輪の目標速度を人力入力方向に応じて均等に増減する目標速度増減手段とを備え、上記補助動力制御手段は、検出された各車輪の検出速度が目標速度となるよう上記補助動力源を速度フィードバック制御することを特徴としている。
【0016】ここで目標速度を人力入力方向に応じた旋回成分を有するように設定するとは、例えば左の人力入力部材に前進方向の小なる人力が入力された場合には、右側に旋回するように、左輪の目標速度を右輪の目標速度より高めに設定するとの意味である。また目標速度を人力入力方向に応じて均等に増減するとは、例えば前進方向の大なる人力が入力された場合には、左,右車輪の目標速度を同じだけ増加するとの意味である。
【0017】請求項3の発明は、請求項2において、上記人力入力部材及び人力検出手段を上記左,右の車輪に対応して備えており、上記目標速度増減手段は、上記小なる同向きの人力が左,右の人力入力部材に加えられたときは一方の人力入力部材のみに加えられたときよりも上記旋回成分を小さく設定し、上記大なる逆向きの人力が左,右の人力入力部材に加えられたときは一方の人力入力部材のみに加えられたときよりも上記旋回成分を大きく設定することを特徴としている。
【0018】請求項4の発明は、請求項2又は3において、上記人力入力部材及び人力検出手段を上記左,右の車輪に対応して備えており、上記目標速度増減手段は、上記大なる同向きの人力が左,右の人力入力部材に加えられたときは一方の人力入力部材のみに加えられたときよりも大きい割合で上記目標速度の増減を行い、上記大なる逆向きの人力が左,右の人力入力部材に加えられたときは上記目標速度の増減を停止することを特徴としている。
【0019】請求項5の発明は、請求項2ないし4の何れかにおいて、上記目標速度増減手段は、目標速度が0以外の場合には時間経過とともに目標速度の絶対値を0に向けて漸減することを特徴としている。
【0020】請求項6の発明は、請求項1ないし5の何れかにおいて、上記人力入力部材は、人力を伝達可能に駆動輪に取り付けられたハンドリムであることを特徴としている。
【0021】なお、本発明における人力入力部材には、請求項6のハンドリム以外に、使用者が操作するオンオフスイッチ、あるいは介助者が把持するグリップ等も含まれる。
【0022】
【発明の作用効果】請求項1の発明に係る補助動力式車椅子によれば、人力入力部材に入力された人力が大なるときは、上記補助動力として前後進方向の駆動力が供給されるので、車椅子が停止しているときに大なる人力が例えば前進方向に加えられると、両輪に対して前進方向の駆動力が供給され、車椅子は直進前進する。また入力入力部材に入力された人力が小なるときは、上記補助動力として旋回方向の駆動力が供給されるので、車椅子は直進中であれば曲進し、停車中であれば小さい半径で旋回する。
【0023】請求項2の発明によれば、検出された人力が小なるときは左,右の車輪の目標速度を人力入力方向に応じた旋回成分を有するように設定し、大なるときは左,右の車輪の目標速度を人力入力方向に応じて均等に増減するとともに、各車輪の検出速度が目標速度となるよう補助動力源を速度フィードバック制御するようにしたので、走行中に人力入力部材を軽く触れるように操作することにより進路を任意に修正することが可能であり、また人力入力部材に大きめの人力を加えることによりその方向の走行速度を増減でき、片手操作により任意に進路変更及び車速の調整ができる。
【0024】また人力が大なるときには走行速度を目標速度となるよう補助動力源を速度フィードバック制御するようにしたので、路面状況(坂等)による外力が作用しても目標速度が維持され、例えば登坂時に減速し過ぎたり降坂時に増速し過ぎるといった問題を回避できる。
【0025】請求項3の発明によれば、上記小なる逆向きの人力が左,右の人力入力部材に加えられたときは一方の人力入力部材のみに加えられたときよりも上記旋回成分を大きく設定したので、左,右の人力入力部材に逆向きの小さい人力を加えることにより、走行中であれば旋回速度の大きさを変えることができ、また停止中であれば定置旋回も可能となり、通常の手動車椅子の感覚での使用が可能となる。
【0026】また上記小なる同向きの人力が左,右の人力入力部材に加えられたときは一方の人力入力部材のみに加えられたときよりも上記旋回成分を小さく設定したので、使用者の違和感を回避できる。即ち、使用者は、両方の人力入力部材に同向きの人力を入力する場合は通常旋回動作を望んでいないと考えられるので、このような場合の旋回成分を小さくすることにより違和感をなくすことができる。
【0027】請求項4の発明によれば、上記大なる同向きの人力が左,右の人力入力部材に加えられたときは一方の人力入力部材のみに加えられたときよりも大きい割合で上記目標速度の増減を行うようにしたので、左,右の人力入力部材に同向きの大きめの人力を加えることにより、より素早く前進方向の速度を増加でき、通常の手動車椅子に近い感覚での使用が可能となる。
【0028】また上記大なる逆向きの人力が左,右の人力入力部材に加えられたときは上記目標速度の増減を停止するようにしたので、使用者の違和感を回避できる。即ち、使用者は、両方の人力入力部材に逆向きの人力を入力する場合は通常加減速を望んでいないと考えられるので、このような場合の目標速度の増減を停止することにより違和感をなくすことができる。
【0029】請求項5の発明によれば、目標速度が0以外の場合には時間経過とともに目標速度の絶対値を0に向けて漸減するようにしたので、人力が入力されない時は車速は徐々に減少し、最終的には停止することとなるため、入力操作の無いまま車椅子が自走することを防止できる。
【0030】請求項6の発明によれば、上記人力入力部材を、人力を伝達可能に駆動輪に取り付けられたハンドリムとしたので、該ハンドリムを不感帯領域を越える程度の人力で軽く触れることにより旋回走行ができ、ハンドリムを大きめの人力で操作することにより前後進走行ができ、通常の手動車椅子を片手又は両手により小さい人力で漕ぐといった感覚での走行が可能となる。
【0031】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。図1ないし図15は本発明の一実施形態による補助動力式車椅子を説明するための図であり、図1,図2,図3は上記車椅子の側面図,平面図,背面図、図4は上記車椅子の車輪のハブ部分のカバーを取り外した状態を示す正面図、図5は図4のV−V線断面図、図6〜図9は回転トランスを示す図、図10は上記車椅子の制御システムの全体構成図、図11は上記車椅子の制御動作を示すシステムの構成図、図12は人力検出手段の変形例を示す構成図、図13はハンドリムへの人力と入力検出手段からの検出信号との関係を示す特性図、図14は左輪への人力の検出信号と目標速度との関係を示す特性図、図15は人力の方向検出信号と補助動力制御との関係を示すマップデータである。
【0032】本実施形態に係る補助動力付車椅子1は、既存の折り畳み式手動車椅子に補助動力装置(Power Assist System) を組み付けたものである。この車椅子1は車体の左右に駆動輪としての車輪2を着脱自在に取り付けて構成され、これのパイプ枠状のフレーム3の前後部は左右一対のキャスタ4と車輪2によって移動自在に支持されている。
【0033】上記フレーム3の中央部には、乗員が着座すべき布製のシート5(図2及び図3参照)が張設されている。尚、フレーム3は図3に示すように前後一対のクロス部材3aを有しており、X字状を成す2本のクロス部材3aはその交点を軸6によって枢着されている。
【0034】上記フレーム3の後部には左右一対のハンドルアーム3bが立設されており、各ハンドルアーム3bの上端部は後方に折曲され、その折曲部には介助者用のグリップ7が取り付けられている。また上記ハンドルアーム3bの下端には、この車椅子1が後方に倒れるのを防止する補助輪8が取り付けられている。
【0035】上記フレーム3の上記ハンドルアーム3bの中間高さ位置から車体前方に水平に延びる左右一対のアーム3cは、その前端部が略直角に折り曲げられて垂直下方に延び、その下端部に上記キャスタ4が回転自在に支持されている。また、上記アーム3cの下方に配置された左右一対のアーム3dの前側部分は、車体前方に向かって斜め下方に延出されており、その延出端(前端部)には左右一対のステップ9が取り付けられている。
【0036】上記車輪2は、使用者の手によって回転力(人力トルク)が加えられるハンドリム組立体70と、該ハンドリム組立体70から入力された人力トルクに応じたモータ駆動力(補助動力)を出力する駆動部20とを備えている。
【0037】そして上記フレーム3の車輪中心部にはボス11が螺挿され、ナット22aにより締め付け固定されている。該ボス11の軸芯部には車軸22が着脱可能に嵌合挿入されている。該車軸22は中空状のもので、その軸芯部には車輪着脱用のシャフト23が軸方向へ移動可能に挿入されている。該シャフト23の両端部には他の部分よりも大径な頭部23a,23bがそれぞれ固着されている。右側の頭部23aの内側端にはコイルバネ24が配置され、該シャフト23を車軸22に対して右側へ付勢している。また、車軸22には、複数のボール25,・・・がボス11の外端部により外周側に抜け出ないようかつ半径方向に移動可能に収容されている。各ボール25は、シャフト23の頭部23aの大径部23cによって押し拡げられることにより車軸22の外周から僅かに突出し、これにより、車軸22は、ボス11から抜けないようになっている。また、シャフト23を車軸22に対して図5の左側へ相対的に移動させることにより、頭部23aの小径部23dがボール25の位置に移動し、ボール25が内側へ移動できる状態となる。これにより、車軸22をボス11から図5の左側へ抜き出すことができ、車輪2全体をフレーム3から取り外すことができる。
【0038】上記車軸22は、略有底円筒状をなす固定プレート30の中心部を貫通してこれを支持しており、該固定プレート30には、図示しない回り止め部材が取り付けられている。回り止め部材は、フレーム3と係合することにより、固定プレート30がフレーム3に対して回転するのを阻止している。
【0039】また、上記車軸22により、略有底円筒状をなす回転側部材としてのハブ50が軸受51を介して回転自在に支持されている。このハブ50の内面には内歯ギヤ52が固定されており、該内歯ギヤ52には中間軸36に一体形成された中間ギヤ36aが噛合しており、該中間軸36は固定側部材としての固定プレート30の底面に回転自在に支持されている。該中間軸36は、これに固着された中間プーリ33,及びベルトを介して上記固定プレート30に取り付けられた駆動用モータ(補助動力源)31により回転駆動され、その結果上記ハブ50が回転する。
【0040】上記ハブ50には、上記ハンドリム組立体70が所定角度だけ相対回転可能に支持されている。このハンドリム組立体70は、使用者がハンドリム13に加える接線方向力(人力:単位kg)をハブ50に伝達するとともに、加えられる人力を検出する機能を有している。以下、使用者が加える人力を検出する構成について説明する。
【0041】図4及び図5において符号71は、ハンドリム組立体70の中心部を構成するディスクであり、該ディスク71は、内輪部71aと外輪部71bとを3本のスポーク部71cで一体的に連結した構造を有し、3本のスポークパイプ15により上記ハンドリム13に結合されている。また上記ディスク71はブッシュ55を介して上記ハブ50のボス部50aにより相対回転可能に支持されている。なお、120は上記ディスク71にスポークパイプ15を取り付けるためのボルトを示している。
【0042】上記ディスク71のスポーク部71c,71c間には、ポテンショメータ72が配置され、上記ハブ50の底部50bの外面に半径方向の位置を調整可能に取り付けられている。該ポテンショメータ72の入力軸72aは上記底部50bの内面に突出し、該突出部に長孔73aを有するレバー73が取り付けられている。該レバー73の長孔73aには、ディスク71に固定されたピン53が挿入されている。この構成のもとに、ハブ50とハンドリム組立体70との相対角度が基準位置から変化すると、ポテンショメータ72の入力軸72aが回転し、そのインピーダンスが回転角度に応じて変化する。
【0043】上記スポーク部71cに形成された矩形孔71d内にはバネガイド54が配置され、上記ハブ50の底部50bにボルト締め固定されており、該バネガイド54内にはコイルバネ56が収容配置されている。該コイルバネ56の両端部はスライダ57を介してスポーク部71cの矩形孔71dの内縁に当接している。この構成のもとに、ハンドリム組立体70を車輪2に対して相対回転させると、この相対回転角度が後述する人力検出装置によって検出される。
【0044】また符号58はハブ50とディスク71との間のガタ止めとして機能する樹脂製のダンパ部材である。このダンパ部材58は上記バネガイド54に形成された凸部54aの内側に装着されて上記ディスク71の外輪部71bに対向しており、ボルト58aを締め込むことにより上記外輪部71bに摺接し、ハブ50とディスク71間のガタを防止する。なお、符号71eは上記ポテンショメータ72等を覆うカバーであり、図4はこのカバー71eを取り外した状態を示している。
【0045】また符号100は、上記人力の方向及びその大きさ(レベル)に応じてモータ31による補助動力を制御する後述のコントローラであり、これは上記固定プレート30の底部30bの内面に配設されており、このコントローラ100のCPU126が本発明の補助動力制御手段として機能する。
【0046】次に、人力検出装置の構成を説明する。符号80は差動回転トランスであり、これは固定プレート30の中心のボス部30aに取り付けられたアウタートランス81と、可動プレート50の中心のボス部50aに取り付けられたインナートランス82とから構成されている。
【0047】上記アウタートランス81は、非磁性体かつ絶縁体の樹脂からなる円筒状のボビン83の外周面に2条の巻溝83a,83bを凹設し、各巻溝83a,83bに1次コイル84a,84bを巻回して構成されている。
【0048】また、上記インナートランス82は、磁性体(例えば軟鉄等の金属)からなる円筒状のコア85の外周面に2条の保持溝85a,85bを凹設し、該保持溝85a,85b内に、樹脂製で外周面に凹設された巻溝86a,87aに2次コイル89a,89bが巻回されたボビン86,87を装着して構成されている。
【0049】なお、86b,87bはボビン86,87に形成されたスリット、90はターミナルであり、各2次コイル89a,89bの端部89a′,89b′は上記スリット86b,87bを通って外部に引き出され、上記ターミナル90に巻き付けられる。
【0050】ここで上記アウタートランス81は、外部磁界を遮断する機能を有する磁性体製のコアを備えていないので、外部金属の影響による磁気的アンバランスを抑制できるように配置することが望ましい。本実施形態では、1次コイル84aからハブ50の底部50bまでの磁気的距離(磁気的影響を考慮した場合の距離)と、1次コイル84bから固定プレート30の底部30bまでの磁気的距離をできる限り均等にするために、該アウタートランス81の幅方向中心線Dを車輪の幅方向中心線Bに対し固定プレート30側に寸法Cだけ偏位させている。
【0051】即ち、一般的にはアウタートランス81の幅方向中心Dを車輪幅方向中心Bと一致させるのであるが、このようにすると1次コイル84aからハブ50の底部50bまでの距離と、1次コイル84bから固定プレート30の底部30bまでの距離との差が拡大してしまう。
【0052】上記左,右のポテンショメータ72,72により検出された左,右輪2,2への人力は左,右の回転トランス80,80を介して上記コントローラ100に入力され、該コントローラ100は所定の処理手順に従って上記人力に応じた補助動力が得られるよう上記モータ31への供給電流を制御する。
【0053】また、上記補助動力式車椅子1の右側の車輪2側には、バッテリ38が脱着可能に取り付けられており、車体(フレーム)3側には、上記バッテリ38から電源が供給されるワイヤーハーネス43が設置されている。
【0054】前述のように左右の車輪2は同一構造を有しているため、これらを車体に取り付けると、これらは車体前後方向中心廻りに点対称となる位置関係を保って配置されることとなる。同一構造の左右の車輪2をこのように配置することによって、図3に示すように、左右の車輪2の各内側方に突出する駆動モータ31が上下方向に互いに段差をもって配されることとなり、当該車椅子1を折り畳んだ際に両駆動モータ31が互いに干渉することがなく、この結果、車椅子1をコンパクトに、且つ、容易に折り畳むことができる。
【0055】上記左右の車輪2を上記要領で車体に取り付けた後は、図3に示すように、各車輪2の固定プレート30に取り付けられたカプラー37に、車体側に設置された上記ワイヤーハーネス43のカプラー43aを接続すれば、右側の車輪2に配置された上記バッテリ38から左側の車輪2に設けられた駆動モータ31やコントローラ100等への給電がワイヤーハーネス43を介してなされる。
【0056】上記左,右車輪2,2のハンドリム13,13に加えられた人力の方向とその大きさは左,右のポテンショメータ72,72によって検出され、その検出信号は上記コントローラ100, 100に入力される。
【0057】次に、上記コントローラ100の構成を図10に基づいて説明する。図10は左,右のコントローラ100の構成を示すブロック図であり、該各コントローラ100は、ハンドリム13に加えられポテンショメータ72によって検出された人力の方向及びその大きさを示す人力情報を回転トランス80を介して入力するセンサドライブI/F125と、該入力された人力と後述のモータ回転数とに基づいて補助動力の目標値(目標トルク)を演算するCPU126と、モータ31の出力及び回転数が上記演算された目標トルクとなるように該モータ31に供給される電流値をフィードバック制御するモータドライバ128と、上記左, 右のCPU126,126同士を接続する通信I/F129とを備えている。なお、Txは送信データを格納する送信レジスタ、Rxは受信データを格納する受信レジスタをそれぞれ示している。
【0058】また、上記ポテンショメータ72による人力の検出は、所定の第1しきい値(S1)と第2しきい値(S2)とに基づいて行なわれる。このしきい値S1は人力検出センサの不感帯域を示す程度の大きさに設定されており、S2は使用者の最大操作力より十分に小さい値に設定されている。具体的には図13に示すように、人力入力方向(ハンドリム操作方向)が「前進方向」の時は、操作力が第1しきい値(S1)未満であれば人力が不感帯レベルにあることを示す検出信号「0」が、第1しきい値(S1)以上で第2しきい値(S2)未満であれば人力が第1レベルにあることを示す検出信号「1」が、第2しきい値(S2)以上であれば人力が第2レベルにあることを示す検出信号「2」が出力される。
【0059】また、人力入力方向(操作方向)が「後進方向」の時は、操作力が第1しきい値(S1)未満のとき「0」が、第1しきい値(S1)以上で第2しきい値(S2)未満のとき「−1」が、第2しきい値(S2)以上のとき「−2」が出力される。なお、図16において、人力入力方向,検出信号は前進方向を正としている。
【0060】また、上記CPU126には、図15に示す人力の入力方向と大きさを示す検出信号と補助動力の制御目標との関係を示すマップデータが記憶されており、上記検出された人力の入力方向と大きさ(レベル)信号に基づいて該マップデータに示す制御が行われる。
【0061】また、本実施形態の左, 右の通信I/F129,129同士はシリアルケーブル130で接続されており、上述のように入力された左右の人力の大きさやモータ回転数はこの通信I/F129,129を介して左右のコントローラ100,100に互いに伝達されるようになっている。
【0062】次に、上記実施形態装置の補助動力制御について説明する。まず、上記ハンドリム13を介して入力された人力の入力方向及びその大きさが上記ポテンショメータ72により検出され、方向検出信号FL,FRが出力される。この方向検出信号FL,FRは、具体的には図13に示すように、前進方向の操作力が入力されるとその大きさに応じて+1, +2を、後進方向に操作力が入力されると同様に−1, −2を、また、所定の大きさの前, 後進操作力が入力されない時は0を、それぞれ示すこととなる。なお、人力入力方向の検出は、図12に示すように人力が前進方向,行進方向に入力されたときそれぞれオンする前進方向SW,行進方向SWを設け、該スイッチからのオンオフ信号により入力方向を検出するようにしてもよい。
【0063】そして、上記左車輪のハンドリム13に入力された人力の向き,大きさ(不感帯レベル,第1レベル,第2レベルの何れか)を示す検出信号FLが人力検出手段として機能する左側のポテンショメータ72から左側のコントローラ100に入力され、また右輪のハンドリム13に入力された人力の検出信号FRが右側のコントローラ100から上記レジスタTx,Rxを介して入力され、この両検出信号FL,FRに基づいて、上記図15に示すマップデータより制御方法が設定される。
【0064】この場合、上記コントローラ100の目標速度増減手段により、上記検出された人力FL,FRに基づいて設定された前後進速度増分ΔVが加算されて目標重心車速ωm※が速度リミッタでの制限内で設定される。また、上記コントローラ100の時間的減衰手段としての機能により、車速目標値が0でない時は目標重心車速ωm※の絶対値が時間経過とともに0に向けて漸減するように設定され、これにより人力供給の停止後長時間補助動力走行が継続されるのを防止している。
【0065】また、上記コントローラ100の車両速度検出手段としての機能により上記左,右の駆動モータ31の回転数が車両の実質的走行速度として上記モータの起電力情報に基づいて検出される。
【0066】具体的には、図11に示すように、巻線抵抗R,LPF(ローパスフィルタ),1/K×τ演算回路等からなる回転数検出回路100aによりモータ電流値i,電圧Emに基づいて左,右のモータ回転数ωL,ωRが算出され、この各回転数が速度FBとされる。
【0067】そして、上記設定された目標重心車速ωm※,旋回速度成分θz※と、上記検出された速度FBとの差に基づいて駆動モータ31への供給電流値が設定される。即ち、上記設定された目標重心車速ωm※及び旋回速度成分θz※と検出重心速度FBとの差と速度ゲインGとにより電流リミッタの制限内で電流指令i※が求められ、モータ31への供給電流iがこの電流指令i※となるようにフィードバック制御される。このように各輪はそれぞれの速度目標値ωL※,ωR※に基づいてフィードバック制御されているので外乱に対して頑強である。
【0068】ここで、上記左,右輪から検出された方向検出信号と、補助力制御の内容との関係を図15に基づいて具体的に説明する。なお、以下の説明では、人力が入力されない場合に時間とともに重心目標車速が漸減する制御の説明は省略している。
【0069】I. 左,右輪何れのハンドリムも操作されない場合(図15中の領域■)は、左,右の方向検出信号がともに「0」となり、Δv(制御の前後における前後進方向の速度変化量)=0、θz(左,右何れかに向きを変える旋回トルク)=0とされ、同速度で前後直進運動を続けるように制御される。II. 左,右輪の何れか一方のみに前進方向又は行進方向に第1レベルの人力が入力された場合(領域■)は、入力された側の車輪の方向検出信号のみが「1」又は「−1」で他方は「0」となり、Δv=0として前後進方向の速度変化はなく、θz=cw又はccwとして小トルク差で右旋回又は左旋回するように制御される。III. 左,右輪の両方に同じ方向の第1レベルの人力が入力された場合(領域■)は、両輪の方向検出信号が「1」又は「−1」となり、Δv=P又はΔv=Nとして前進方向又は後進方向に大きく増速し、θz=0として旋回しないように制御される。
【0070】IV. 左,右輪に逆向きの第1レベルの人力が入力された場合(領域■)は、方向検出信号が「1」と「−1」となり、Δv=0として前,後進方向の速度変化はなく、θz=Cw又はCCwとして大トルク差で右旋回又は左旋回するように制御される。
【0071】V. 左,右輪の何れか一方のみに前進方向又後進方向に第2レベルの人力が入力され、他方は操作されない場合(領域■)は、入力側の車輪の方向検出信号のみが「2」又は「−2」で、他方は「0」となり、Δv=p又はΔv=nとして前進方向又は後進方向に少し増速し、θz=0として旋回しないように制御される。
【0072】VI. 左,右輪の何れか一方に第2レベルの人力が、他方に第1レベルの人力が同じ方向に入力された場合(領域■)は、方向検出信号は「2」,「1」又は「−2」,「−1」となり、Δv=P又はΔv=Nとして前進方向又は後進方向に大きく増速し、θz=0として旋回しないように制御される。
【0073】VII. 左,右輪の何れか一方に第2レベルの人力が、他方に第1レベルの人力が逆方向に入力された場合(領域■)は、方向検出信号は「2」,「−1」又は「−2」,「1」となり、Δv=p又はΔv=nとして前進方向又は後進方向に少し増速し、θz=cw又はccwとして小トルク差で右旋回又は左旋回するように制御される。
【0074】VIII. 左,右輪の両方に第2レベルの人力が同方向に入力された場合(領域■)は、方向検出信号は「2」,「2」、又は「−2」,「−2」となり、Δv=P又はΔv=Nとして前進方向又は後進方向に大きく増速し、θz=0として旋回しないように制御される。
【0075】IX .左,右輪の両方に第2レベルの人力が逆方向に入力された場合(領域■)は、方向検出信号は「2」,「−2」、又は「−2」,「2」となり、Δv=0として前,後進方向に速度変化を与えず、θz=Cw又はCCwとして大トルク差で右旋回又は左旋回するように制御される。
【0076】このように本実施形態では、左,右車輪のハンドリム13,13に入力された人力の入力方向及び大きさを第1,第2レベルに判別して検出し、該検出信号に基づいて前後進方向の速度調整を行うとともに旋回動作を行うようにしたので以下の効果がある。
【0077】(a)左,右輪何れのハンドリム13,13も操作しない場合(領域■)は、前後進方向の速度変化及び旋回動作を行わず、また左,右輪の何れか一方のみに前進方向又は行進方向に第1レベルの人力を入力した場合(領域■)は、前後進方向の速度変化は与えずに小トルク差で右旋回又は左旋回するようにし、さらに左,右輪の何れか一方のみに第2レベルの人力を入力した場合(領域■)は、前後進方向に少し増速するとともに旋回しないようにしたので、何れか一方のハンドリム13のみを軽く操作することにより進路を変更でき、大きめに操作することにより前後進速度を調整でき、片手漕ぎ動作での走行を容易に行うことができる。
【0078】(b)左,右輪の両方に第1レベルの人力を同じ方向に入力した場合(領域■)は、前進方向又は後進方向に大きく増速するとともに旋回動作は与えないようにし、左,右輪の両方に第2レベルの人力を同方向に入力した場合(領域■)は、前進方向又は後進方向に大きく増速するとともに旋回しないようにしたので、左,右両方のハンドリムを軽く又は大きめに同方向に操作することにより前後進速度を大きい割合で調整できる。
【0079】(c)左,右輪に第1レベルの人力を逆向きに入力した場合(領域■)は、前,後進方向の速度変化は与えずに大トルク差で右旋回又は左旋回するようにし、左,右輪に第2レベルの人力を逆方向に入力した場合(領域■)は、前,後進方向の速度変化は与えずに大トルク差で右旋回又は左旋回するようにしたので、両方のハンドリムを逆向きに操作することにより小径での旋回動作を行うことができる。
【0080】(d)左,右輪の何れか一方に第2レベルの人力を、他方に第1レベルの人力を同じ方向に入力した場合(領域■)は、前進方向又は後進方向に大きく増速するとともに旋回しないようにし、左,右輪の何れか一方に第2レベルの人力を、他方に第1レベルの人力を逆方向に入力した場合(領域■)は、前進方向又は後進方向に少し増速するとともに、小トルク差で右旋回又は左旋回するようにしたので、両方のハンドリムを異なる大きさで同方向に操作することにより変速でき、逆方向に操作することにより進路変更ができる。
【0081】次に、使用者が左輪のハンドルリム13に人力を供給した場合の制御を図17に基づいて具体的に説明する。図17は、左輪のハンドリム13への人力の方向検出信号と目標重心車速との関係を示す特性図である。
【0082】例えば左輪のハンドリム13に破線Aに示す比較的大きい操作力(人力)が加えられると、実線Bに示す方向検出信号(+2)が出力され、実線Cに示す目標重心車速ωm※が設定されて走行速度がこの目標重心車速ωm※となるようにモータへの供給電流が制御される。
【0083】より詳細には、上記人力(操作力)が破線A1で示すように上記ポテンショメータ72の第2しきい値S2を前進方向に越える程度(第2レベル)のものである場合には、方向検出信号は+2となり、目標重心車速は実線C1で示すようにその入力時間に比例して増加する。そして人力が破線A2で示すように上記しきい値S2を後進方向に越える程度(第2レベル)のものである場合には方向検出信号は−2となり、目標重心車速は実線C2で示すように入力時間に比例して減少する。そして上記操作力が入力されない場合は上記目標重心速度は実線C3で示すように徐々に減少する。
【0084】また、上記ポテンショメータ72の第1しきい値S1以上第2しきい値S2未満の範囲(第1レベル)の小さな操作力A3が左輪のハンドリム13に前進方向に入力された時は、方向検出信号は+1となり、該左輪の目標速度はD1に示すように増大されて車両は右側に旋回することとなり、また小さな操作力A4が左輪のハンドリム13に後進方向に入力されたときは、方向検出信号は−1となり、該左輪の目標速度はD2に示すように減少され、車両は左側方向に旋回することとなる。
【0085】このように本実施形態では、片方のハンドリム13に第2レベルの人力が入力されると補助動力として前後進方向の駆動力を供給し、第1レベルの人力が入力されると旋回方向の駆動力を供給するように構成したので、例えば使用者が左のハンドリム13を前進方向に比較的大きめの人力で前進方向に操作することにより車椅子を直進前進させることができ、このとき両輪は速度的に制御されているので大きめの人力を片輪に入力しても車両が旋回してしまうことがない。また左のハンドリム13を軽い人力で前進方向に操作することにより車椅子を直進中であれば右側に曲進させることができ、走行中にハンドリムへ軽い入力を加えることで方向修正が可能となるとともに、停車中であれば小さい半径で旋回させることができる。このように片方のハンドリム13への大きめの人力の入力に対して両輪よりほぼ均等な速度を発生し、比較的小さい人力の入力により両輪に速度差が発生するようにモータ出力を供給するようにしたので、片手漕ぎの時の直進性能を向上することができ、左, 右の操作力に差のあるユーザの使用感を向上することができる。
【0086】また例えば左のハンドリム13への入力が第2レベルにあるときは上記左,右車輪の目標速度を均等に増減することにより、左,右車輪の実質的走行速度が目標重心速度となるよう上記補助動力源を速度フィードバック制御するようにしたので、走行中にハンドリムを大きめの力で操作することによりその方向の走行速度を増減でき、任意の走行速度に簡単に調整できる。
【0087】また実質的走行速度が目標重心速度となるよう速度フィードバック制御するようにしたので、路面状況(坂等)による外力が作用しても目標速度が維持され、例えば登坂時に減速し過ぎたり降坂時に増速し過ぎるといった問題を回避できる。
【0088】また左,右のハンドリム13,13に第1レベルの操作力が同じ向きに入力されたとき(領域■)にはΔv=P又はNとして、一方のハンドリムのみに操作力が加えられたとき(領域■,Δv=0)よりも大きな割合で目標速度を増減するようにしたので、左,右のハンドリム13,13の両方を軽く触れるように操作することにより、より素早く前後進方向の速度を増加でき、操縦者の身体的機能に応じた車両の運動性を得ることが可能となる。
【0089】また上記第1レベルで逆向きの人力が左,右のハンドリムに加えられたとき(領域■)は、Δv=0として上記目標速度の増減を停止し、かつθz=Cw又はCCwとして大きいトルク差でもって旋回運動を行うようにしたので、使用者の違和感を回避して車椅子の使用感を向上できる。即ち、使用者は、両方のハンドリムに逆向きの操作力を入力する場合は、通常加減速を望んでいるのではなく、旋回動作を望んでいると考えられるので、このような場合の目標速度の増減を停止するとともに、比較的大きいトルク差でもって旋回するようにしたので、使用者は違和感をもつことなく、通常の車椅子に近い感覚での使用が可能となる。
【0090】また、一方のハンドリムに上記第1レベルの操作力が入力されたとき(領域■)には旋回動作を行うように制御するとともに、第1レベルで逆向きの人力が左,右のハンドリムに加えられたとき(領域■)はθz=Cw又はCCwとして、単に一方のハンドリムのみに第1レベルの操作力が加えられた場合よりも左,右車輪の駆動トルクの差が大きくなるようにしたので、走行中であれば旋回速度を大きくでき、また停止中であれば定置旋回も可能となり、通常の手動車椅子の感覚での使用が可能となる。
【0091】また目標速度が0以外の場合には、時間経過とともに目標速度の絶対値を0に向けて漸減するようにしたので、人力が入力されない時は車速は徐々に減少し、最終的には停止することとなるため、入力操作の無いまま車椅子が自走を続けるといった問題の発生を防止できる。
【0092】ここで上記実施形態では、図11に示すように、左,右車輪の速度フィードバック制御を行うようにした場合を説明したが、この速度によるフィードバック制御に変えて図16,17に示すようにモータ31を電圧値制御方式で制御するようにしても良い。
【0093】この場合、上記実施形態と同様にして設定された目標重心車速ωm※と旋回速度成分θz※とに基づいて所定の目標回転速度ωL※,ωR※が設定され、この目標値に基づいてモータ31への供給電力がEmに制御される。
【0094】この構成の場合、車輪速度の維持機能は上記速度フィードバック制御の場合に劣るが、構成が簡単であり、減速比が高い場合には十分な定速走行が実現できる。
【0095】なお、上記実施形態では入力レベルにしきい値を設け、図15のマップデータを離散値として記述した例を説明したが、入力を連続量として扱い、もしくは入力をファジー量として扱いマップデータを滑らかな変化量として記述しても良い。
【0096】図18,図19は図15のマップデータ(前後進速度変化量Δv,旋回速度θz)を滑らかな変化量として記述した例である。なお、図18,19では左輪入力信号については前進方向のみを表示しており、各データは左,右輪入力がいずれも0の点を原点として点対称をなしている。
【0097】また、上記実施形態では、着座者がハンドリム13を操作して人力を入力する場合を説明したが、介助者が上記グリップ7を持って車椅子1を移動させたときの介助者の人力に基づいて補助動力が得られるように上記モータ31の出力を制御しても良く、この場合は介助者の負担を軽減でき、上記同様に直進性能,旋回性能を向上することができ、使用感を向上することができる。
【0098】
【出願人】 【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
【出願日】 平成9年(1997)8月21日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】下市 努
【公開番号】 特開平11−56918
【公開日】 平成11年(1999)3月2日
【出願番号】 特願平9−225112