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【発明の名称】 簡易姿勢補助具
【発明者】 【氏名】奥田 勝博

【氏名】海原 義公

【氏名】大川 敦子

【要約】 【課題】従来の姿勢補助具は大がかりでサイズ的にも大きい為に持ち運びできない。また着脱が煩雑である。そこで軽量コンパクトで、且つ着脱が容易な簡易姿勢補助具を提供することを目的とする。

【解決手段】補助具10は、使用者の胸部乃至腹部から両脇面側にかけて使用者の上半身を支える保持部11と、使用者の大腿部を挿入することのできる腔部13を残して門型に形成される支柱部12を設けたものである。補助具10は使用者の前側に装着され、座位姿勢を保持する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 使用者の座位姿勢を保持するための補助具であって、該補助具は、前記使用者の胸部乃至腹部から両脇面側にかけて該使用者の上半身を支える保持部と、前記使用者の大腿部を挿入することのできる腔部を残して門型に形成される支柱部を設けたものであることを特徴とする簡易姿勢補助具。
【請求項2】 前記保持部の上面が、使用者側から前方に向かって下り傾斜となっているものである請求項1に記載の簡易姿勢補助具。
【請求項3】 前記腔部が2つに分かれ、一方が右足挿通用で、他方が左足挿通用に形成されたものである請求項1または2に記載の簡易姿勢補助具。
【請求項4】 前記腔部が1つであり、両足挿入可能な広さを有する請求項1または2に記載の簡易姿勢補助具。
【請求項5】 前記簡易姿勢補助具がクッション性を有する素材で構成されたものである請求項1〜4のいずれがに記載の簡易姿勢補助具。
【請求項6】 前記簡易姿勢補助具が樹脂でコーティングされたものである請求項1〜5のいずれかに記載の簡易姿勢補助具。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、座位姿勢を自力で保持することの困難な障害者が、安定して座位姿勢を保持することを可能とする簡易姿勢補助具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】脳性麻痺等の患者は緊張が強かったり、また筋力が弱くなっている為に、自力で姿勢保持することが困難な場合がある。従って座位姿勢や立位姿勢を保持するに際しては、身体をベルト等によって縛り付ける様に補助具に固定する必要がある。
【0003】図8は従来の椅子型の姿勢補助具(以下、バケットシートと称することがある)を示す斜視図である(従来例■)。該バケットシート30は、椅子部31とヘッドレスト32及び脚部33から構成され、椅子部31のシート34及び背もたれ35の両側辺には夫々膨出部34a,35aが形成されており、使用者の体を左右側面から保持する様になっている。またシート34の前側中央にも凸部34bが形成されており、この凸部34bをはさみ付ける様に座ることで、該凸部34bと上記シート34の膨出部34aによって大腿部が把持されて固定される。加えて背もたれ35にはベルト36が取り付けられており、このベルト36によって使用者の胸部を固定する様になっている。更にヘッドレスト32にもその両側辺に膨出部32aが形成されており、頭を左右から保持する。
【0004】この様に上記バケットシート30は、膨出部34a,35a,32a,凸部34b及びベルト36によって使用者の上半身全部及び大腿部を狭い凹部に収納する様に固定して座位姿勢を保持する。
【0005】図9は従来の立位姿勢補助具を示す斜視図であり(従来例■)、該立位姿勢補助具40は使用者を前面から支えるものである。立位姿勢補助具40は、使用者を左右両側から保持する脇部クッション41と腰部クッション42を備えており、これらは夫々ベルト48を有し、該ベルト48とクッション41,42により使用者の脇部及び腰部を締め付ける様に固定する。またこの立位姿勢補助具40は、使用者の大腿部を保持する大腿把持部43を備えており、更に立ち台47に足の踵部分をガードするガイド44を有している。これらによって使用者の身体が脇部から踵まで拘束されて、立位姿勢が保持される。尚図中、45は支え脚部、46は机である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】以上の様に様々な姿勢補助具が提案されているものの、いずれも大がかりでサイズ的にも大きい為に持ち運びすることができず、その結果特定の場所での使用に限定されるという問題があり、家庭での使用に適しているとは言えない。また座位姿勢用のものでも従来例■の様に椅子型となっているものが多いから、和式生活に馴染まない。加えて上記従来例■の様なバケットシート30では全身に渡って背面から強固に保持されることになるから、反り返りの強い子供等の場合にはかなりの苦痛を伴うという問題があり、更には着脱が煩雑であるという問題もある。そこで本発明は上記不都合を解消する為になされたものであって、軽量コンパクトで、且つ着脱が容易な簡易姿勢補助具を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明に係る簡易姿勢補助具は、使用者の座位姿勢を保持するための補助具であって、該補助具は、前記使用者の胸部乃至腹部から両脇面側にかけて該使用者の上半身を支える保持部と、前記使用者の大腿部を挿入することのできる腔部を残して門型に形成される支柱部を設けたものであることを要旨とする。
【0008】該簡易姿勢補助具は使用者の前面から身体を支えて座位姿勢を保持するものであり、前面から両側面にかけて面で体幹を安定して支えることができる。前記支柱部は座面上に広い面積で載置され、簡易姿勢補助具が横転するのを防いでおり、前記保持部に使用者の体重が加わっても、簡易姿勢補助具は倒れず、使用者の座位姿勢を保持する。
【0009】上記簡易姿勢補助具は構造が簡単で、サイズ的にも従来のものより小さいから、持ち運びが簡単であり、また装着方法としては使用者を座らせてその前面に置くだけであるので着脱が容易である。
【0010】この簡易姿勢補助具は前記腔部を備えており、ここに足(大腿部)を通す様にし、これにより洋式の腰掛け状態やあぐら,横座り等の座位姿勢を採ることができる。
【0011】また本発明においては、前記保持部の上面が、使用者側から前方に向かって下り傾斜となっているものが好ましい。即ち例えば伸展痙性(身体の反り返り)のある患者は、前方へ丸まった姿勢(胎児の姿勢)をとった方が緊張が解けて反り返りを起こし難くなるが、上記の様に傾斜を設けることで、前傾姿勢を容易にとることができるので、緊張が解けるようになる。
【0012】更に本発明においては、前記腔部が2つに分かれ、一方が右足挿通用で、他方が左足挿通用に形成されたものであっても良い。この様な簡易姿勢補助具は椅子に座る際や自動車のシートに座る際に好適である。
【0013】或いは本発明においては、前記腔部を1つとして、両足挿入可能な広さを有するものであっても良い。この場合は、前記腔部内であぐらをかくこと等もでき、体幹を保持しつつ足を自由な形にして座ることができる。
【0014】加えて本発明に係る簡易姿勢補助具は、クッション性を有する素材で構成されたものであることが好ましい。この様に適度にクッション性を付与することで使用感が良くなる。尚このクッション性は柔らか過ぎると身体を支持できなくなるから、適度な硬さを有するものとするのが好ましい。例えば芯部を硬質で構成し、表面部にクッション性のある素材で被覆する構造としても良い。更に本発明に係る簡易姿勢補助具は、樹脂でコーティングされたものであることが好ましく、これによりよだれや汚れを簡単に拭き取ることができる。
【0015】
【発明の実施の形態及び実施例】
<実施例1>図1は本発明の実施例1に係る簡易姿勢補助具10を示す斜視図であり、図2の(a) はその上面図、(b) は正面図、(c) は右側面図、(d) は使用者側から見た図(背面図)、(e) は(a) 及び(b) のE−E線断面図である。また図3は使用者(子供)17が自動車のシート16に座ってこの簡易姿勢補助具10を使用している様子を表す斜視図である。簡易姿勢補助具10はチップ状のウレタンスポンジをポリ塩化ビニル系スポンジで覆ったものであり、更にこれに樹脂コーティングしてある。
【0016】そして簡易姿勢補助具10は、使用者17の上半身を支える保持部11と、座面上に載置されて使用者17及び補助具10自身が倒れない様に支える支柱部12から構成されており、該支柱部12には使用者17の大腿部を挿入することのできる腔部13が設けられている。尚上記保持部11と支柱部12は特に区別されるものではなく、連続した一体成形のものである。換言すれば該簡易姿勢補助具10は、略立方体形状の塊状に、上半身が嵌まり込む半円状の窪み部と、脚を挿入するアーチ状の窪み部分(腔部13)を設けた形と表現することができる。
【0017】使用者側に向けて扇型(半円状)に窪んだ形状(図1,図2(a) 参照)の保持部11は、使用者17の胸部乃至腹部から両脇面側にかけての前方面を、面で広く接触させて保持することができ、使用者の姿勢を安定化させることができる。尚この扇型窪み形状の大きさとしては、使用者の身体にぴったりとフィットするものでは窮屈であり、一方あまり大きくし過ぎると、特に身体の側方の保持が不安定となることから、これらの点を考慮して設定すると良く、例えば窪み幅Wを使用者の体幹幅よりも約3cm広くしたもの等が推奨される。
【0018】保持部11のうち使用者の上半身前側が接する胸当て面15は、前側(正面側)に向かって倒れる様に傾斜(図2(e) の角度β:例えば10゜)しており、また上面14は使用者側から前方に向かって下り傾斜(図2(c) の角度α:例えば20゜)している。この様に傾斜させることで使用者17は前傾姿勢をとり易く、安定感を保つ様になる。また使用者の脇部における簡易姿勢補助具10の高さTは、使用者の脇を圧迫しないように脇高さから例えば約2cm低くしたもの等が推奨される。
【0019】腔部13は中央支柱12aを境にして2つに分かれ、夫々右の大腿部,左の大腿部を挿入する様になっており、図3に示す様に腔部13から足を出して、安定した腰掛け姿勢をとることができる。
【0020】簡易姿勢補助具10はベルト等を用いることなく、身体の前側に抱え込ませるように嵌めるという簡便な装着方法であるから、着脱が容易であり、しかもコンパクトな形状であるから、持ち運びが便利であり、様々な場所で使用することができる。加えて、本発明の簡易姿勢補助具10は身体の前側から保持する手法であるから、背側からの保持の場合とは異なって、伸展痙性を起こすことが少なくなる。
【0021】また例えば弛緩型の患者の場合は、上記従来例■のように背側から適用する姿勢補助具では、座位姿勢をとったときに前に倒れ込み頭部も前に垂れ下がる様になってしまうが、簡易姿勢補助具10を前側に抱え込ませることによって、頭がかなり持ち上げられることになり、正しい位置に頭を上げる力が少なくて済み、正しい姿勢をとり易い。更に上肢を屈曲してしまう患者に本発明の補助具10を使用すれば、上肢を前方へ出すようになるから、屈曲を抑制することができる。
【0022】更に簡易姿勢補助具10はクッション性を有しているから、使用感が良く、また樹脂コーティングされているから、補助具10の表面を汚しても容易に拭き取ることができる。
【0023】<実施例2>図4は本発明の実施例2に係る簡易姿勢補助具20を示す斜視図であり、図5の(a) はその上面図、(b) は正面図、(c) は右側面図、(d) は使用者側から見た図(背面図)、(e) は(a) 及び(b) のF−F線断面図である。また図6は使用者17が畳の上に座ってこの簡易姿勢補助具20を使用している様子を表す斜視図である。
【0024】本実施例2は腔部23が1つであり、丁度上記実施例1の中央支柱12aを取り除いた形状となっており、両足を挿入してあぐら,正座,横座り等の姿勢をとることができる十分な広さを有している。
【0025】本実施例2も前記実施例1と同様に、扇型に窪んだ保持部11によって使用者17の上半身が胸腹部から両脇面側にかけて保持され、支柱部12が座面上(畳上)に載置されて補助具20自身や使用者17が倒れない様に支えている。
【0026】また上面24は使用者17の脇部分においては水平となっているが、そこから前方に向かって下り傾斜(図5(c) の角度α:例えば20゜)している。また上記と同様に、保持部11のうち使用者の上半身前側が接する胸当て面15が前側(正面側)に向かって倒れる様に傾斜(図5(e) の角度β:例えば10゜)している。
【0027】本実施例2では腔部23内で例えばあぐらをかく等、様々な座り方ができ、畳等の平面上で座ることが可能となる。即ち仮に上記実施例1の様な腔部13が2つに分かれた補助具10の場合では、畳に座るときには足を前に真っ直ぐ伸ばして座ることになるが、この様な座り方は骨盤が後傾斜する様になって苦痛を伴うことが多い。しかし本実施例2ではあぐらをかく等、自由に膝を曲げること等ができ、苦痛がない。
【0028】また年長者等の様に身体の大きい患者の場合は、従来例■のように椅子型の姿勢補助具30では、該補助具30に患者を載せる為に抱え上げることが困難であるから、姿勢補助具を用いずに寝たきりになる傾向にあるが、本実施例2の補助具20では患者を抱え上げることなく、その場の位置で座位姿勢をとらせることができる。尚本実施例2の簡易姿勢補助具20を使用するに当たっては、後方への倒れ込みを防ぐために、使用者の背側にクッション等を当てがう様にすると良い。
【0029】<実施例3>図7は本発明の実施例3に係る簡易姿勢補助具50を示す正面図であり、上記実施例1の補助具10の支柱部12のうち中央支柱12aを残して、左右の支柱部を短くしたものである。この簡易姿勢補助具50は車椅子用のものであり、短い支柱部52b,52cを車椅子の肘かけ部分に載せて安定させ、姿勢を保持する。
【0030】以上の様に本発明に係る簡易姿勢補助具を実施例図面に基づいて具体的に説明したが、本発明はもとより図示例に限定される訳ではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。例えば上記実施例2の簡易姿勢補助具20に脚を取り付けて、和式用トイレで用いることができる様にしても良い。
【0031】
【発明の効果】本発明に係る簡易姿勢補助具は、ベルト等を用いずに容易に着脱でき、また従来のものよりもサイズ的に小さく軽量である。従って家庭内や自動車内等、色々な場所に持ち運んで使用することができる。しかも本発明の補助具を用いれば前傾姿勢をとることになるから、伸展痙性も落ち、弛緩型の患者も頭を持ち上げることが可能となる。
【出願人】 【識別番号】591052170
【氏名又は名称】川村義肢株式会社
【出願日】 平成9年(1997)8月26日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司 (外2名)
【公開番号】 特開平11−56909
【公開日】 平成11年(1999)3月2日
【出願番号】 特願平9−229789