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【発明の名称】 角膜手術装置
【発明者】 【氏名】藤 実

【氏名】杉村 正広

【要約】 【課題】ガイド機構に起因する手術中断の可能性を無くし、患者眼に負担を掛けることなく、患者眼の状況に応じて良好な手術を行う。

【解決手段】患者眼角膜をブレードによって層状に切開する角膜手術装置において、第1モータの回転によってブレード移動軸を進退させてブレードを進退させ、第2モータの回転によってブレード移動軸を回転させてブレードを横振動させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 患者眼角膜をブレードによって層状に切開する角膜手術装置において、進退可能で且つ回転可能に支持された軸であって該軸を進退することによって前記ブレードを進退させ該軸を回転することによって前記ブレードを横振動させるブレード移動軸と、第1モータを持ち該第1モータの回転によって前記ブレード移動軸を進退させる第1駆動手段と、第2モータを持ち該第2モータの回転によって前記ブレード移動軸を回転させる第2駆動手段と、を有することを特徴とする角膜手術装置。
【請求項2】 請求項1の角膜手術装置において、前記第1駆動手段は、前記第1モータの回転によって回転される送りネジ部と、該送りネジ部と噛み合い前記ブレード移動軸を回転可能に保持する連結部材と、を備えることを特徴とする角膜手術装置。
【請求項3】 請求項1の角膜手術装置において、前記第2駆動手段は、前記ブレード移動軸をその進退方向に滑動自在に保持すると共に前記第2モータの回転によって前記ブレード移動軸を回転させる回転伝達部材を備えることを特徴とする角膜手術装置。
【請求項4】 請求項3の角膜手術装置において、前記ブレード移動軸はその断面が円形の部分と非円形の部分を持つスプライン軸であり、前記回転伝達部材に対して前記ブレード移動軸の非円形の部分が滑動することを特徴とする角膜手術装置。
【請求項5】 請求項1の角膜手術装置は、さらに、前記ブレードが所定の移動速度で進退するように前記第1モータを制御し、前記ブレードが所定の振動数で振動するように前記第2モータを制御する制御手段を有することを特徴とする角膜手術装置。
【請求項6】 請求項5の角膜手術装置は、さらに、前記移動速度及び前記振動数の少なくともいずれかを可変設定するための設定手段を有することを特徴とする角膜手術装置。
【請求項7】 請求項1の角膜手術装置は、さらに、前記ブレードの位置を検知する位置検知手段と、該位置検知手段によって得られた位置情報に基づいて前記第1駆動手段によるブレードの移動速度及び前記第2駆動手段によるブレードの振動数の少なくともいずれかを制御する制御手段と、を有することを特徴とする角膜手術装置。
【請求項8】 請求項1の角膜手術装置は、さらに、前記第1駆動手段によるブレードの移動速度及び前記第2駆動手段によるブレードの振動数の少なくともいずれかを手術の進行度合いに対応させて切換える切換え手段を有することを特徴とする角膜手術装置。
【請求項9】 請求項1の角膜手術装置は、さらに、患者眼に当接させるサクションリングと、該サクションリングを患者眼に固定するためにサクションリングと患者眼との間に形成される空隙の空気を吸引する吸引手段と、該吸引手段の吸引によって変化する前記空隙の空気圧を検知する圧力検知手段と、該圧力検知手段によって検知された圧力情報に基づいて前記第1駆動手段及び前記第2駆動手段の少なくともいずれかを制御する制御手段と、を有することを特徴とする角膜手術装置。
【請求項10】 請求項9の角膜手術装置は、さらに、前記圧力検知手段によって検知された圧力情報に基づいて前記吸引手段を制御する吸引制御手段を有することを特徴とする角膜手術装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は角膜屈折矯正手術等の際に患者眼角膜を層状に切開する角膜手術装置に関する。
【0002】
【従来技術】近年、角膜屈折矯正治療のために、角膜の一端(ヒンジ)を残して角膜上皮から実質に至る厚さ150μmほどの部分を層状に切開することによってフラップを形成し、その後エキシマレーザ光によって実質を矯正屈折量分切除し、再びそのフラップを戻すというLASIK手術(Laser in Situ Keratomileusis)が注目されている。このLASIK手術においては、角膜を層状に切開するために、マイクロケラトーム(Microkeratome)と称される角膜手術装置が使用されている。
【0003】マイクロケラトームとしては、サクションリングを角膜輪部から結膜の表面にかけて吸着固定させ、角膜押え部材によって角膜を平坦に押圧し、ブレード(刃)を横振動させながらサクションリング上に設けられたガイド機構に沿ってヒンジ方向に直進移動させることにより、角膜を略一様な厚さで層状に切開するものが知られている。ガイド機構としては、サクションリング上にラックを、ブレード側にラックに噛み合う回転ギアを設け、回転ギアを回転することによってラックにガイドされてブレードが移動する構成のものや、サクションリング上に設けられた案内溝に沿ってブレードが移動する構成のものが知られている。
【0004】また、ブレードの横振動とヒンジ方向への直進移動とを1つのモータによって行うものも案出されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、サクションリング上にガイド機構やギア機構を持つものは、手術中に患者の睫毛をガイド機構で噛んでしまい、ブレードの直進移動が停止してしまうことがある。この場合、睫毛を取り除いた後に再び手術を継続する必要があるが、これは患者眼に負担を掛けることになる。また、再手術による等厚の層状切開が期待できない。さらに、ガイド機構では摩耗紛が発生するが、ガイド機構がサクションリング上に設けられていると、摩耗粉が患者眼に入る可能性がある。
【0006】また、患者眼によっては角膜や眼圧などの特性が異なるが、ブレードの横振動と移動とを1つのモータによって行うものは、切開面を良好な平滑面とするための送り移動と横振動の関係を最適化することが困難である。
【0007】本発明は、上記問題点を鑑み、ガイド機構に起因する手術中断の可能性を無くし、患者眼に負担を掛けることなく、患者眼の状況に応じて良好な手術が可能な角膜手術装置を提供することを技術課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0009】(1) 患者眼角膜をブレードによって層状に切開する角膜手術装置において、進退可能で且つ回転可能に支持された軸であって該軸を進退することによって前記ブレードを進退させ該軸を回転することによって前記ブレードを横振動させるブレード移動軸と、第1モータを持ち該第1モータの回転によって前記ブレード移動軸を進退させる第1駆動手段と、第2モータを持ち該第2モータの回転によって前記ブレード移動軸を回転させる第2駆動手段と、を有することを特徴とする。
【0010】(2) (1)の角膜手術装置において、前記第1駆動手段は、前記第1モータの回転によって回転される送りネジ部と、該送りネジ部と噛み合い前記ブレード移動軸を回転可能に保持する連結部材と、を備えることを特徴とする。
【0011】(3) (1)の角膜手術装置において、前記第2駆動手段は、前記ブレード移動軸をその進退方向に滑動自在に保持すると共に前記第2モータの回転によって前記ブレード移動軸を回転させる回転伝達部材を備えることを特徴とする。
【0012】(4) (3)の角膜手術装置において、前記ブレード移動軸はその断面が円形の部分と非円形の部分を持つスプライン軸であり、前記回転伝達部材に対して前記ブレード移動軸の非円形の部分が滑動することを特徴とする。
【0013】(5) (1)の角膜手術装置は、さらに、前記ブレードが所定の移動速度で進退するように前記第1モータを制御し、前記ブレードが所定の振動数で振動するように前記第2モータを制御する制御手段を有することを特徴とする。
【0014】(6) (5)の角膜手術装置は、さらに、前記移動速度及び前記振動数の少なくともいずれかを可変設定するための設定手段を有することを特徴とする。
【0015】(7) (1)の角膜手術装置は、さらに、前記ブレードの位置を検知する位置検知手段と、該位置検知手段によって得られた位置情報に基づいて前記第1駆動手段によるブレードの移動速度及び前記第2駆動手段によるブレードの振動数の少なくともいずれかを制御する制御手段と、を有することを特徴とする。
【0016】(8) (1)の角膜手術装置は、さらに、前記第1駆動手段によるブレードの移動速度及び前記第2駆動手段によるブレードの振動数の少なくともいずれかを手術の進行度合いに対応させて切換える切換え手段を有することを特徴とする。
【0017】(9) (1)の角膜手術装置は、さらに、患者眼に当接させるサクションリングと、該サクションリングを患者眼に固定するためにサクションリングと患者眼との間に形成される空隙の空気を吸引する吸引手段と、該吸引手段の吸引によって変化する前記空隙の空気圧を検知する圧力検知手段と、該圧力検知手段によって検知された圧力情報に基づいて前記第1駆動手段及び前記第2駆動手段の少なくともいずれかを制御する制御手段と、を有することを特徴とする。
【0018】(10) (9)の角膜手術装置は、さらに、前記圧力検知手段によって検知された圧力情報に基づいて前記吸引手段を制御する吸引制御手段を有することを特徴とする。
【0019】
【発明の実施の形態】<実施形態1>以下、本発明の一形態を図面に基づいて説明する。図1(a)は本発明に係る実施形態1の角膜手術装置の上方視図、図1(b)は(a)のA−A断面図及び制御系概略図を示す図である。
【0020】1はマイクロケラトーム本体であり、1aは手術中に術者が把持する把持部である。本体1の前側(図中の左側)には、患者眼に固定するためのサクション部3と、角膜を切開するブレード20(後述する)を持ちサクション部3上を直進移動するカッティング部2とが設けられている。
【0021】本体1内には、カッティング部2を切開方向へ直進移動させるための送り用モータ11と、ブレード20に横振動を与えるための振動用モータ12とが固設されている。送り用モータ11の回転軸には、カッティング部2を直進移動させる距離分のネジ部を備えた送りネジ13が連結されている。送りネジ13には、カッティング部2に連結される管状の連結部材17が固定された取付け部材14が螺合している。送り用モータ11の正逆回転により、送りネジ13及び取付け部材14を介して連結部材17が前後移動し、これによってカッティング部2が前後移動する。また、連結部材17には、回転シャフト15が回転可能かつ共に前後移動するように保持されている。回転シャフト15の先端には回転中心から偏った位置に偏心軸16が植設されており、偏心軸16はブレード20に横振動を与える(後述する)。
【0022】回転シャフト15にはいわゆるスプライン軸を使用しており、その回転機構は次のようになっている。回転シャフト15の前方部15aは円形の断面形状に形成され、連結部材17の内部で軸受けを介して回転自在になっている。一方、回転シャフト15の後方部15bは、図2(図1(b)上のB−B断面である)に示すように、非円形である小判型の断面形状で一様に形成されている。振動用モータ12の回転軸12aには駆動ギア18が取り付けられており、駆動ギア18には本体1の内部で回転可能に保持された回転ギア19が噛み合う。この回転ギア19の回転中心には、回転シャフト15の後方部15bが挿通される軸穴19aが設けられており、その軸穴19aは後方部15bと同じ小判型の断面形状に形成されている(図2参照)。この構成により、振動用モータ12の回転は駆動ギア18及び回転ギア19を介して回転シャフト15に伝達される。一方、送り用モータ11の駆動により、回転シャフト15は回転ギア19の軸穴19aを自在にスライドし、連結部材17と共に直進移動する。
【0023】このようにスプライン軸を採用したことにより、回転シャフト15は回転運動による横振動をブレード20に伝達すると共に、カッティング部2の直進移動に対して振動用モータ12を移動させることなく対処することができる。つまり、振動用モータ12を本体1に固定できるため、取付け部14に振動用モータ12の荷重が加わらず、送り用モータ11の負担を軽減することができる。
【0024】また、回転シャフト15が直進移動のガイドとしての役割を兼ねるため、サクションリング31(後述する)上にガイドを設けずにすむ。さらにまた、モータ等と共に摩耗粉発生の原因となる接触部分のほとんどが本体1内に構成されているため、回転シャフト15の高速回転による摩耗粉の飛散が本体1内で処理され、摩耗粉による患者眼への影響が少ない。
【0025】次に、カッティング部2及びサクション部3の構成を図3、図4に基づいて説明する。図3(a),(b)はカッティング部2及びサクション部3に関する図1の拡大図である。図4は図3(b)のC−C断面図である。
【0026】カッティング部2は、角膜を切開するためのブレード20と、ブレード20を横振動可能に保持するブレードホルダー21a及びホルダーブロック21bと、偏心軸16によって生じる横振動をブレード20に伝える振動伝達部材22と、取付け部材23cによってホルダーブロック21bに固設された角膜押え部23とから構成される。ホルダーブロック21bの内部には回転シャフト15が挿入される回転穴が設けられ、連結部材17の先端部が固定されている。
【0027】ブレード20はステンレス、スティール等を刃先に使用した金属ブレードや、ダイヤモンド、サファイア等の鉱物を刃先に使用した鉱物ブレードが利用され、水平面に対して適当な角度でブレードホルダー21aとホルダーブロック21bとの間で横振動可能に保持されている。ブレードホルダー21a側には、ブレード20が載置される部分に浅い凹部210aが形成されており、凹部210aの横幅はブレード20の横振動による振動幅より大きくしてある。
【0028】振動伝達部材22はブレード20に固定されており、ホルダーブロック21bに形成された受け溝210b内で横方向に移動可能になっている。振動伝達部材22には偏心軸16に係合する縦溝22aが形成されており、振動用モータ12の回転駆動により回転シャフト15が回転すると、その先端に取り付けられた偏心軸16が縦溝22aに係合して横方向への駆動力が働く。これにより、振動伝達部材22と共にブレード20が横振動する。
【0029】角膜押え部23はブレード20の前側(図中の左側)に設けられており、ブレード20による切開に先立って、カッティング部2の進行に伴い患者眼角膜を平坦に押圧する。ブレード20が角膜押え部23によって平坦に押圧された角膜を切開することにより、均一な層状のフラップが形成される。
【0030】なお、ブレードホルダー21aに取り付けられたブレード20の刃先と角膜押え部23の下面との間隔は150ミクロン程度として、角膜上皮をこの厚さで層状に切開できるようにしている。
【0031】サクション部3は固設部材30、サクションリング31、サクションパイプ32から構成されており、サクションリング31は固設部材30によって本体1に固設されている。サクションリング31は断面形状がコの字型の略円筒形状をしており、患者眼に当接させるための円形の凹部31aと、凹部31aと同心円の開口部31bとが形成されている。手術の際、サクションリング31が患者眼に設置されると、患者眼角膜は開口部31bから上部に突出し、患者眼にサクションリング31の下端部と開口部31bの開口端部が当接され、その当接によって吸引用の空間Sが確保される。
【0032】サクションパイプ32はサクションリング31に植設されており、図示なきバキューム用チューブと接続され、そのバキューム用チューブはポンプ41まで伸延している。サクションパイプ32内部に設けられた吸引通路32aは、凹部31aと連通しており、ポンプ41によって吸引通路32aを介して空間S内の空気を吸引排出することにより、サクションリング31を患者眼に吸着固定する。この固定に際しては、術者が本体1の把持部1aを保持することによって開口部31bの位置決定を容易にし、装置を安定して保持することができる。
【0033】また、サクションリング31には圧力検出用のパイプ33aが植設されており、パイプ33aは図示なきチューブによって圧力検出器33に接続されている。圧力検出器33はパイプ33aを介し、ポンプ41によって吸引された空間S内の空気圧を検出する。制御部40は圧力検出器33の検出した空気圧に基づいて装置の動作を制御する。サクションリング31と患者眼との間に隙間があったり、吸引通路32a等に異物が詰まったりして、空間S内の空気圧が十分な陰圧になっていないと、角膜剛性が適切に確保されない可能性がある。そのため、角膜剛性をある程度確保するために必要な空気圧の上限の所定値を設け、この上限の所定値よりも陽圧である場合は装置の動作(ブレード20の振動や送り)を停止する(術前においては装置の始動をロックし、術中においては装置の動作を中断する)。この場合、術者はフットスイッチ42による駆動指示信号の入力を停止し、サクションリング31の当接状態や吸引通路32a等の詰まり状態などを確認する。検出される空気圧が上限の所定値よりも陰圧となり、術者がフットスイッチ42による駆動指示信号の入力をし直すと、装置は動作を開始または再開することができる。なお、ランプや音声などの報知器46により、検出される空気圧が上限の所定値よりも陰圧になったことを術者に報知すると使い勝手がよい。例えば、検出された空気圧が上限の所定値よりも陽圧である間はブザーを鳴らし、上限の所定値よりも陰圧となるとブザーを止める(逆に、陰圧となったときに一定時間ブザーを鳴らすようにしてもよい)。また、切開の開始時には、検出された空気圧が上限の所定値よりも陰圧となったときに、装置を始動させるようにしてもよい。
【0034】逆に、吸引時間が長すぎるなどによって空間S内の空気圧が陰圧になり過ぎると、患者眼の眼圧が高くなり過ぎて好ましくない。そのため、これを防止するために空気圧の下限の所定値を設け、検出された空気圧がこの下限の所定値よりも陰圧となった場合は装置の動作を停止するようにすると、患者眼に負担をかけずに手術を行うことができる。
【0035】なお、空気圧の上限の所定値や下限の所定値などは、固定値として予め設定しておいてもよいし、図示なきスイッチ等によって術者が可変設定できるようにしてもよい。
【0036】制御部40は圧力検出器33、フットスイッチ42等と接続される。また、制御部40はモータ11、12、ポンプ41の動作を制御する。さらに、ブレード20の振動数や送り速度等を設定入力することができる入力装置43を設け、制御部40に接続してもよい。入力装置43としては、ブレード20の振動数や送り速度を決定する各モータの回転を数段階に切換えられるスイッチ等を設けたり、連続的に変更できる可変抵抗のようなものを本体1側に設けることができる。
【0037】以上のような構成を備える装置において、以下に動作について説明する。術者は予めマーカー等の器具によって患者眼角膜に付けられた印に基づき、サクションリング31(本体1)の傾き状態や瞳孔中心の位置等を確認しながら、瞳孔中心に対して開口31bの中心を位置決めしてサクションリング31を患者眼上に配置する。
【0038】サクションリング31を設置した後、術者は本体1の位置や態勢を保持した状態で、ポンプ41を作動させてサクションリング31と患者眼との間の空間Sの空気を吸引し、空気圧を低下させる(陰圧に向かわせる)。ポンプ41の作動は空間Sの空気圧が一定値まで下がると(十分な陰圧になると)、その空気圧を維持するよう制御部40によって制御される。これにより、サクションリング31は患者眼に吸引固定される。
【0039】装置の固定が完了したら術者はフットスイッチ42を操作し、送り用モータ11及び振動用モータ12を回転駆動させる。制御部40はフットスイッチ42による駆動指示信号の入力により、固定された(または、入力装置43で設定された)振動数でブレード20が横振動をするように振動用モータ12の回転を制御する。ブレード20の振動数は回転シャフト15の1回転に対して1振動するので、駆動ギア18と回転ギア19のギア比の関係により、モータ12の回転数で振動数を容易に制御できる。
【0040】また、制御部40は、固定された(または、入力装置43で設定された)送り速度にしたがって振動用モータ12の回転速度を制御し、カッティング部2をヒンジ方向へ直進移動させる。このとき、回転シャフト15はブレード20へ横振動を付与するための回転動作をしながら、カッティング部2と一体となって進行方向にスライドする。
【0041】このようにして送り用モータ11、振動用モータ12の各モータを各々制御しながら、角膜押え部23によって順次平坦に押圧された患者眼角膜をブレード20によって切開し、手術を進行する。この切開に際しては、サクションリング上にガイド機構を設けていないので、発塵や睫を噛むことがなく、カッティング部2はスムーズに移動する。
【0042】ブレード20の先端がヒンジ部を残して切開してフラップの形成が完了したら、送り用モータ11を逆回転させカッティング部2を初期位置に戻す。この際には、振動用モータ12の回転を止めるというように各々のモータを別々に制御することにより、不必要なブレード20の振動を回避しつつフラップからブレード20を引き抜く。これにより、形成したフラップが途中で切れたりする可能性を低減することができる。
【0043】カッティング部2を初期位置に戻した後、空間Sに空気を流入させて吸着を解除して装置を取り外す。その後、レーザ光により矯正屈折量分の実質切除を行い、フラップを元に戻すことで手術を終了する。
【0044】以上説明した回転シャフト15の後方部15bの形状としては、軸方向に延びる複数の溝等を設けた断面形状としてもよく、スプライン軸の代わりにすべりキーを用いてもよい。
【0045】また、送り方向の位置を検出するセンサ44等の検出器を設け、ブレード20の位置に基づいて送り速度や振動数を制御するようにしてもよい。例えば、角膜切開開始位置では比較的切開が困難なため、送り速度を遅くしてやり、切開がある程度進行したことをセンサ44で検出し、その位置からは送り速度を速くするような制御が可能である。さらに、ブレード20の送り速度や振動数を複数段階で切り換える切換スイッチ45等を設け、手術の進行度合いに応じて術者が切り換えることにより、ブレード20の送り速度や振動数を制御するようにしてもよい。
【0046】<実施形態2>次に、本発明の変容形態を図面に基づいて説明する。図5(a)は本発明に係る実施形態2の角膜手術装置の上方視図、図5(b)は(a)のA−A断面図及び制御系概略図を示す図である。なお、以下の説明及び図面において、実施形態1と同一符号は同様の構成部であることを示している。
【0047】本体1内に固設された送り用モータ11の回転軸には、カッティング部2を直進移動させる距離分のネジ部を備えた送りネジ13が連結されている。送りネジ13には取付け部材14が螺合し、取付け部材14には振動用モータ12と、振動用モータ12及びカッティング部2が連結される連結部材17とが固定されている。送り用モータ11の正逆回転により、送りネジ13及び取付け部材14を介して振動用モータ12及び連結部材17が前後移動し、これによってカッティング部2が前後移動する。連結部材17には、回転シャフト15が回転可能に保持されている。回転シャフト15の先端には回転中心から偏った位置に偏心軸16が植設されており、偏心軸16はブレード20に横振動を与える。
【0048】このように、実施形態2では回転シャフト15にスプライン軸を採用せず、カッティング部2の直進移動に対して振動用モータ12が移動する構成としている。したがって、取付け部14に振動用モータ12の荷重が加わってしまうため、送り用モータ11の負担は実施形態1に比べ増大してしまう。しかしながら、駆動ギア18や回転ギヤ19などが不要となるなど構造が簡素化できるため、実施形態1に比べてコストを削減できるなどのメリットがある。
【0049】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、ブレードの送り機構をサクションリング上に設けることなく、簡単な構成でブレードを横振動させて切開をすることができる。また、送り機構への睫等の食い込みや、送り機構及び回転機構による摩耗粉の飛散が抑えられるので、手術をスムーズに行うことができる。さらにまた、ブレードの送りと振動とを各々制御することにより、患者眼の状況に応じて良好なフラップを形成することができる。
【出願人】 【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
【出願日】 平成10年(1998)12月22日
【代理人】
【公開番号】 特開平11−342151
【公開日】 平成11年(1999)12月14日
【出願番号】 特願平10−363687