| 【発明の名称】 |
磁気共鳴装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】渡邉 英宏
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| 【要約】 |
【課題】従来よりも少数の高周波磁場パルスで、 1Hと13Cとの相関スペクトルを取得することで、フリップ角誤差、高周波磁場強度分布による信号損の解消し、かつ13Cのスピンに対する狭い周波数帯域の問題の解消を実現すること。
【解決手段】 1Hの化学シフト軸の一部を選択するように周波数選択された反転高周波磁場パルスと、 1Hのスピンとスピン−スピン結合した13Cのスピンに対してその共鳴周波数に相当する高周波磁場パルスとをこの順に印加することにより、 1Hのスピンから13Cのスピンヘ分極移動を起こさせ、その後、13Cに対して高周波磁場パルスを印加し、この高周波磁場パルスと同時あるいはそれ以降に 1Hに対して高周波磁場パルスを印加して、13Cのスピンから 1Hのスピンに逆分極移動を起こさせることにより、 1Hから比較的高感度でMR信号を取得する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 第1の核種のスピンと第2の核種のスピンとが互いにスピン−スピン結合しており、該スピン−スピン結合によりJ分裂した第1の核種のスピンのスペクトルの一つのピークのみを周波数選択する第1の反転高周波磁場パルスと、第2の核種のスピンに対してその共鳴周波数に相当する第2の高周波磁場パルスとをこの順に印加することにより、第1の核種のスピンから第2の核種のスピンヘ分極移動を起こさせ、その後、第2の核種に対して第3の高周波磁場パルスを印加し、第3の高周波磁場パルスと同時あるいはそれ以降に第1の核種に対して第4の高周波磁場パルスを印加して、再び第2の核種のスピンから第1の核種のスピンに分極移動を起こさせることにより、第1の核種の磁気共鳴信号を取得することを特徴とする磁気共鳴装置。 【請求項2】 第2の高周波磁場パルスと第3の高周波磁場パルスとの期間内に、第1の核種に対する再結像パルスを印加することを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴装置。 【請求項3】 前記第1の高周波磁場パルスは、それぞれのパルスが励起する周波数範囲が異なる複数のパルスから構成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の磁気共鳴装置。 【請求項4】 前記第4の高周波磁場パルスをスライス勾配磁場パルスとともに印加することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の磁気共鳴装置。 【請求項5】 第1の核種のスピンと第2の核種のスピンとが互いにスピン−スピン結合しており、第1の核種のスピンから第2の核種のスピンに分極移動を起こさせ、第2の核種の1量子遷移で展開した後、第1の核種のスピンに再び分極を戻して第1の核種の磁気共鳴信号を観測する磁気共鳴装置において、複数の第2の核種に対応する高周波磁場パルスおよび同時に印加するスライス勾配磁場パルスにより所望のスライス領域内の1量子遷移を生起し、かつ各々の高周波磁場パルスおよびスライス勾配磁場パルスが選択する物質は異なり、かつ各々のスライス領域は略同じであることを特徴とする磁気共鳴装置。 【請求項6】 前記第2の核種の1量子遷移の後に複数の第2の核種に対応する高周波磁場パルスを印加し、続いて前記第1の核種に対応する高周波磁場パルスにより前記第1の核種のスピンに再び分極を戻す手段を具備し、前記第2の核種の1量子遷移の後に印加する前記複数の第2の核種に対応する高周波磁場パルスの間に前記スライス勾配磁場パルスと、強度の時間積分が等しくかつ極性が反転しているリフォーカス勾配磁場パルスとを印加することを特徴とする請求項5に記載の磁気共鳴装置。 【請求項7】 第1の核種のスピンから第2の核種のスピンへの分極移動及び前記第2の核種の化学シフトの1量子遷移を生起する準備期と、前記第2の核種の化学シフトを1量子遷移で展開する展開期と、前記第2の核種のスピンから前記第1の核種のスピンへ分極移動を戻して前記第2の核種の化学シフトの情報が付与された磁気共鳴信号を前記第1の核種から比較的高感度で検出する検出期とを実行する磁気共鳴装置において、前記第1の核種のスピンと前記第2の核種のスピンとは互いにスピン−スピン結合しており、前記準備期には、前記スピン−スピン結合によりJ分裂した前記第1の核種のスピンのスペクトルの一つのピークのみを反転するように周波数選択されている高周波磁場パルスが含まれていることを特徴とする磁気共鳴装置。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、分極の大きい、いわゆる濃厚な核種のスピンと、分極の小さい、いわゆる希薄な核種のスピンと、の相関スペクトルを、高感度で取得することが可能な磁気共鳴装置に関する。 【0002】 【従来の技術】MRI(Magnetic Resonance Imaging)は、水分子の 1Hを検出することによって、生体内の水の分布を非侵襲に画像化することのできる方法であり、磁気共鳴診断装置は現在臨床上で広く使われている診断装置である。しかし、現状の水分布の画像で得られる主な情報は形態的な情報である。 【0003】これに対して、例えば代謝物の 1H、13Cあるいは31Pを検出することによって生体内の代謝情報を非侵襲に得ることができるため、水 1H以外の核スピンの情報を得るMRS(Magnetic Resonance Spectroscopy)が注目を集めている。このうち、近年13C−MRSが特に関心を集めている。これは、13Cは天然存在比が1.1%と低いために13C標識物質の投与後の代謝の様子を追跡することが可能であり、 1Hや31Pとは異なる代謝情報を得ることができるためである。 【0004】しかしながら、従来の13C−MRSではS/Nが低いという問題があった。これを解決するために、 1Hと磁気的に結合(例えばスピン−スピン結合)した13Cの化学シフト情報を 1Hのスピンに付与して、 1Hから高感度で観測することができるいわゆる 1H観測法がこれまで提案されてきた。このうちの1つがG.BodenHausenが発明したHSQC(Heteronuclear Single Quantum CoHerence)という方法(CHem.PHys. Letters, Vol.69, p.189,1980)である。HSQCのシーケンスを図27に示す。 【0005】このHSQCシーケンスは、 1Hのように分極が大きいスピンと希薄スピン(例えば13C)の相関スペクトルをとるための方法であり、準備期、展開期(図27のt1)、検出期(図27のt2)から構成される。まず、準備期のINEPT(Insensitive Nuclei EnHanced by Polarization Transfer,J.Am.CHem.Soc.,vol.101、p760(1979))で、 1Hから13Cに分極が移動する。 【0006】続く展開期では、13Cの1量子遷移となり、13C化学シフトが展開する。展開期後のreverse INEPTにより、 1Hから13Cに逆分極移動が起き、1Hの1量子遷移となり、13C化学シフト情報が付与された 1H感度での観測が可能となる。この方法で、展開期t1の時間間隔を変化させて2次元データS(t1,t2)を収集し、再構成により、 1H−13Cの2次元相関スペクトルが取得できる。 【0007】この方法は、化合物のピークの化学シフト範囲が広い13Cを用いることが可能なため、ピーク分離能に優れており、 1H感度で観測可能なため、感度が高い。しかも、13C化学シフト情報の付与する展開期の遷移が、緩和速度の遅い13Cの1量子遷移であるため、この期での信号減衰を小さくすることが可能である。 【0008】しかし、この方法では、パルスシーケンスが6ケの 1Hパルスと4ケの13Cパルスで構成されているため、フリップ角の誤差に敏感であり、信号が劣化するという問題があった。このフリップ角と信号強度との関係は、次のようになる。但し、 1H励起パルスのフリップ角(図27の90゜パルス)をα、 1H再結像パルス(図27の180゜パルス)のフリップ角を2α、13C励起パルスのフリップ角(図27の90゜パルス)、13C反転パルス(図27の180゜パルス)のフリップ角βとする。 【0009】まず、準備期のINEPTでは、90゜( 1H)パルスと180゜( 1H)パルスにより 1H化学シフトが再結像され、第3の 1Hパルスの印加時刻では、スピンエコーが形成され、信号強度は上記フリップ角に対して、 sin4 αで表すことができる。続く 1Hパルスの役割は、それぞれ第3の 1Hパルスは励起パルス、展開期内の第4の 1Hパルスは、 1Hと13Cのスピン−スピン結合を再結像するための反転パルス、検出期内の第5の 1Hパルスと第6の 1Hパルスは準備期と同様、 1H化学シフト再結像のためのパルス列である。すなわち、信号強度は、順番に、 sinα、 cos(2・α)、 sin4 αで表すことができる。以上より、lHパルスに対しては、 sin9 α・ cos(2・α)で表せる。同様に、13Cに対しては、第1、第3の13Cパルスは反転パルス、第2、第4の13Cパルスは励起パルスであり、信号強度は、 sin2 β・ cos2 (2・β)で表せる。また、 1Hと13Cのフリツプ角をα=βとした時、信号強度は sin11α・ cos3 (2・α)で表せる。これらの関係を図28、図29、図30に示す。これらの図のように、例えば、80%の信号強度を得るためには、約±15゜と約30゜の誤差範囲でフリップ角を設定する必要がある。このため、高精度の高周波磁場パルスのパワー調整(フリップ角の調整)が要求され、かつ非常に均一な高周波磁場強度分布を有するプローブが必要であった。 【0010】また、従来のHSQC法では、180゜(13C)パルスが必要である。人用のマシンでは、プローブ径が大きいため、この180゜(13C)パルスの出力のために、プローブエレメント上に大電流を流す必要がある。しかし、プローブを構成するコンデンサーの耐圧限界のために、許容電流が決まってしまい、パルスの時間幅を長くすることで、180゜(13C)パルスを出す必要が生ずる。しかし、パルスの時間幅を長くすると周波数帯域が狭くなってしまい、この結果、化合物の化学シフト範囲が広く、周波数範囲の広い13Cでは、対象の化合物の13Cを全て反転させることができないという問題があった。また、複数の180゜(13C)パルスを用いると、相乗的にさらに周波数範囲が狭くなるという問題があった。 【0011】 【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、少ない数の高周波磁場パルスで、濃厚スピン(例えば 1H)と希薄スピン(例えば13C)の相関スペクトロスコピーを行うことが可能で、かつ分極の大きい方のスピンの感度で観測することが可能な磁気共鳴装置を提供することにある。 【0012】 【課題を解決するための手段】本発明は、第1の核種のスピンと第2の核種のスピンとが互いにスピン−スピン結合しており、該スピン−スピン結合によりJ分裂した第1の核種のスピンのスペクトルの一つのピークのみを周波数選択する第1の反転高周波磁場パルスと、第2の核種のスピンに対してその共鳴周波数に相当する第2の高周波磁場パルスとをこの順に印加することにより、第1の核種のスピンから第2の核種のスピンヘ分極移動を起こさせ、その後、第2の核種に対して第3の高周波磁場パルスを印加し、第3の高周波磁場パルスと同時あるいはそれ以降に第1の核種に対して第4の高周波磁場パルスを印加して、再び第2の核種のスピンから第1の核種のスピンに分極移動を起こさせることにより、第1の核種の磁気共鳴信号を取得することを特徴とする。 【0013】また、本発明は、第1の核種のスピンと第2の核種のスピンとが互いにスピン−スピン結合しており、第1の核種のスピンから第2の核種のスピンに分極移動を生起し、第2の核種の1量子遷移で展開した後、第1の核種のスピンに再び分極を戻して第1の核種の磁気共鳴信号を観測する磁気共鳴装置において、複数の第2の核種に対応する高周波磁場パルスおよび同時に印加するスライス勾配磁場パルスにより所望のスライス領域内の1量子遷移を生起し、かつ各々の高周波磁場パルスおよびスライス勾配磁場パルスが選択する物質は異なり、かつ各々のスライス領域は略同じであることを特徴とする。 【0014】(作用)本発明ではJ分裂(Jは、第1核種(例えば 1H)と第2核種(例えば13C)のスピン−スピン結合定数を表し、J分裂とはスピン−スピン結合によるスペクトル分離を示す)により分離したスペクトルの一方に周波数選択された第1の反転高周波磁場パルスを印加後、第2の核種に対する第2の高周波磁場パルスの印加により、第1の核種のスピンから第2の核種のスピンへの分極移動を生成することができる。この後、第2の核種のスピンの1量子遷移が展開し、第2の核種に対する第3の高周波磁場パルスおよび第1の核種に対する第4の高周波磁場パルスにより、第1の核種のスピンの1量子遷移が生成され、第1の核種のスピンの感度での観測が可能となる。 【0015】また、本発明では、高周波磁場パルスとスライス勾配磁場パルスの同時印加により、測定対象の一部の領域からの信号観測が可能となる。 【0016】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下では第1の核種のスピンである濃厚なスピンを 1H、第2の核種のスピンである希薄スピンを13Cとして説明するが、勿論、他の組み合わせ、例えば、 1Hと15Nといった組み合わせであってもよい。図1は、本発明の一実施形態に関わる磁気共鳴装置の構成を示すブロック図である。同図において、静磁場磁石1とその内側に設けられた勾配コイル2及びシムコイル4により、図示しない測定対象に一様な静磁場とそれと同一方向で互いに直交するx、y、z三方向に線形傾斜磁場分布を持つ勾配磁場が印加される。勾配コイル2は、勾配コイル電源5により駆動され、シムコイル4はシムコイル電源6により駆動される。勾配コイル2の内側に設けられたプローブ3は、高周波コイルとこの高周波コイルの共振周波数を同調するための必要なチューニング要素とからなり、 1Hと13Cの両方の共鳴周波数で同調をとることができるようになっている。ここで、 1Hと13Cに対して、同一のプローブ構成であってもよいし、別々のプローブ構成であってもよい。 【0017】また、 1H送信部7は、プローブ3から 1Hの共鳴周波数に応じた周波数の高周波磁場パルスを発生させるために、当該周波数の高周波電流パルスをプローブ3に供給する。同様に、13C送信部8は、プローブ3から13Cの共鳴周波数に応じた周波数の高周波磁場パルスを発生させるために、当該周波数の高周波電流パルスをプローブ3に供給する。 1H受信部9は、測定対象内の 1Hスピンからの磁気共鳴信号をプローブ3を介して受信し、これを増幅し、また検波する。なお、プローブ3は送受信兼用でも、送信専用コイルと受信専用コイルとを別々に備えていてもよい。データ収集部11は、 1H受信部9で受信された磁気共鳴信号をディジタル信号に変換し、計算機システム12に転送する。 【0018】シーケンス制御部10は後述するような様々なパルスシーケンスを実行するために、勾配コイル電源5、シムコイル電源6、 1H送信部7、13C送信部8、 1H受信部9およびデータ収集部11を制御する。またシーケンス制御部10は計算機システム12によって制御される。計算機システム12はコンソール13からの指令により制御される。 【0019】計算機システム12は、データ収集部11からの磁気共鳴信号にフーリエ変換等の処理を施し、その結果に基づいて測定対象内の所望スピンのスペクトルデータあるいは画像データを再構成する。このデータは画像ディスプレイ14に送られ、スペクトルあるいは画像等々として表示される。 【0020】以下、従来よりも少ない数の高周波磁場パルスで、 1Hと13Cの相関スペクトルを取得できる方法を説明する。図2に、本発明の第1の実施形態であるパルスシーケンスを示す。観測対象となる 1Hスペクトルは、13Cとのスピン−スピン結合により、図3(a)のようにJ分裂しており、この一方のピークのみ、すなわち周波数選択された反転高周波磁場パルスを印加すると、図3(b)のような、一方のピークのみが反転したスペクトルが得られる。図2のパルスシーケンスでは、準備期で同様に周波数選択された 1H反転パルスを印加する。 【0021】これは、これまでに提案されているSPT(選択的分極移動;Selective Polarization Transfer)という方法である。SPTの原理を簡単に説明する。 1Hと13Cの2スピン系の場合、それぞれにα、βのエネルギー準位が存在し、図4(a)のように4つのエネルギー準位が存在する。 1Hの周波数選択パルスにより、一方のスピンの占有率を反転させると、縦スピン秩序状態(2IzSz状態)が生成され、13Cの分極が増大する(図4(b))。しかし、この方法は、照射すべき周波数が既知でなければならず、選択的に照射された 1Hを有する1つの化合物のみの情報取得に留まるため、全ての化合物の情報取得には用いることができなかった。 【0022】しかし、予め得られるスペクトルのピークがわかっており、ピークパターンが少なく、複雑ではない場合にはこの方法を用いることができる。この一例が13Cスペクトロスコピーによる代謝の動的観測である。例えば、1位標識グルコースを投与した後の 1H化学シフト軸方向のみにJ分裂があり、13C化学シフト軸方向にはJ分裂の無い脳の 1H−13C相関スペクトルパターンは、図5のようになり、ピーク数は非常に少ない。 【0023】そこで、上記の様な場合にこのSPTを応用するパルスシーケンスが本発明の図2のパルスシーケンスである。まず、準備期においてこのSPTを用いる。これに続き13Cの励起パルス印加を行い、13Cの1量子遷移を生成の後、13Cの1量子遷移で13C化学シフトを展開させる。この期間が展開期に相当する。そして、これに続く、13C励起パルスおよび 1H励起パルス以降が検出期となり、13Cの化学シフトの情報が付与された 1H信号を観測することができるようになる。つまり、このパルスシーケンスでは、 1H2ケ、13C2ケの計4つの高周波磁場パルスのみで 1Hと13Cの相関スペクトルを 1H感度で取得することができる。このパルスシーケンスの信号強度は、 1Hパルスに関しては、 1Hパルスのフリップ角をαとして、 sinα・ cos(2・α)、13Cパルスに関しては13Cパルスのフリップ角をβとして、 sin2 βで表せる。 【0024】また、 1Hと13Cのフリップ角をα=βとした時、信号強度は sin3 α・ cos(2・α)で表せる。図6、図7、図8には、フリップ角と信号強度の関係を示す。80%以上の信号強度を得るためには、約±30゜、すなわち60゜の範囲の誤差でフリップ角を設定すれば良く、従来のHSQCと比較して改善された2倍の誤差範囲が許される。この結果、プローブ仕様への緩和、すなわち高周波磁場強度分布の均一性に対する緩和につながる。また、本発明のパルスシーケンスでは、180゜(13C)パルスを用いる必要が無いので、プローブのコンデンサーの耐圧制限を原因とする13C周波数帯域の問題が生じず、人用のマシンの際にも、十分な周波数帯域を有する13Cパルスを用いることが可能となる。 【0025】水信号除去に関しては、図9に示すように、プリパルスとして水 1Hを周波数選択して励起した後にディフェーズするCHESSパルスの様な方法でも良いし、図10に示すように、遷移選択勾配磁場パルスを用いた方法でも良い。図10(7)場合には、各勾配磁場パルスの時間積分値G1、G2が以下の式(1)あるいは(2)を満たす様に勾配磁場パルスを設定する。但し、γ1Hは 1Hの磁気回転比、γ13C は13Cの磁気回転比を示す。 【0026】 γ13C ・G1+γ1H・G2=0 …(1) γ13C ・Gl−γ1H・G2=0 …(2) 図2のパルスシーケンスでは、展開期でスピン−スピン結合により、13C化学シフト方向にJ( 1Hと13Cのスピン−スピン結合定数)分裂する。展開期の中央に 1H再結像パルスを印加することによって、このJ分裂を再結像することができる。この実施形態を図11に示す。第1の反転パルス、第2の再結像パルス、第3の励起パルスで 1Hパルスが構成されるこのパルスシーケンスの場合、 1Hパルスのフリップ角をαとして、信号強度は sinα・cos 2 (2・α)で表せる。一方、第1、第2の13Cパルスは共に励起パルスであり、13Cパルスのフリップ角をβとして sin2 βで表せる。また、 1Hと13Cのフリップ角をα=βとした時、信号強度は sin3 α・ cos2 (2・α)で表せる。フリップ角と信号強度の関係を図12、図13、図14に示す。このパルスシーケンスの場合、80%以上の信号強度を得るためには、約±23゜、すなわち46゜の範囲の誤差でフリップ角を設定すれば良く、従来のHSQCと比較して上記発明と同様に改善された1.5倍の誤差範囲が許される。 【0027】図11のシーケンスの場合にも、上記で説明した水信号抑圧法を使用することができる。遷移選択勾配磁場パルスを使用したパルスシーケンスを図15に示す。この場合には、各勾配磁場パルスの時間積分値G1、G2、G3が以下の式(1)あるいは式(4)を満たす様に勾配磁場パルスを設定する。 【0028】 γ13C ・G1+γ13C ・G2+γ1H・G3=0 …(3) γ13C ・Gl+γ13C ・G2−γ1H・G3=0 …(4) 高周波磁場パルスの数を2つ増やすことになるが、図16のようにreverseINEPTを用いることも可能である。 【0029】図17の実施形態は、複数の化合物の信号を取得できる方法である。この方法について、図3に示したピークパターンの場合を例として説明する。この場合、1H側の周波数を図18のように2つに分ける。つまり、まず図18のΔω1の周波数範囲を有する反転 1HパルスSl1の印加により、グルタミン酸3位とグルタミン酸4位の両方のJ分裂の一方のピークを反転させる。続くΔω2の周波数範囲を有する反転 1HパルスSl2の印加により、グルコースα、グルコースβの1位J分裂の一方のピークを反転させる。前者のΔω1の周波数範囲を有する反転 1HパルスによりJ分裂の一方のスピンは縦磁化となるため、周波数範囲が完全に分離されていれば、後者のΔω2の 1H反転パルスはこれらの上記スピンに影響を及ぼさない。装置性能により、若干の周波数範囲のオーバーラップがある場合でも、若干の分極移動損となるだけで、問題が無い。この様にして、グルタミン酸3位、4位とグルコースα、βの1位のスピンのJ分裂の一方のスピンのみが反転した後に、13C励起パルスを印加し、これらの 1Hスピンから13Cスピンへの分極移動が生ずる。この後、上記で説明した様に、展開期を経て、検出期で 1H感度での観測が可能となる。 【0030】これまで説明してきた方法を局所励起に応用することができる。図19に、この実施形態を示す。このパルスシーケンスでは、まず 1Hから13Cへの分極移動が生じ、展開期を経て、13C励起パルスを印加し、検出期で1次元方向に限定された領域内のみを選択するスライスパルスにより1次元局所励起化された領域からの信号を取得することができる。さらに、プリパルスとして、2次元を選択するパルスを印加することにより、3次元で局所化されたスペクトルを取得することが可能となる。プリパルスとして、2次元方向の領域外飽和パルスを用いた実施形態を図20に示す。 【0031】また、図21のように検出期の後に、スライス選択を行う 1Hの再結像パルスを印加することにより、2次元で局所励起化された領域からの信号を取得することができる。 【0032】図22には、高周波磁場パルスの数を必要最低限とした空間3次元の局所励起を可能とするパルスシーケンスを示す。このパルスシーケンスでは、13Cの2つの高周波磁場パルスP1,P2をスライスパルスとして用い、スライス勾配磁場パルスと共に印加し、測定化合物を限定して用いる。これらのスライスパルスP1,P2の搬送周波数は、スライス選択する位置と測定化合物の13C共鳴周波数を加味して決定する。例えば、限定した測定化合物が図5に示したグルタミン酸3位、4位の場合には、以下のようにする。これらのグルタミン酸3位、4位の13C共鳴周波数の中心周波数からのずれを、Δf[Hz]、スライス勾配磁場強度を13Cに対してfg[Hz/cm]、スライス位置を中心からx[cm]ずれた位置とする。このとき、P1とP2の搬送周波数fc を、 fc =(Δf+fg・x)[Hz] …(5) とすれば、所望のスライス位置のグルタミン酸3位、4位を励起することが可能となる。また、この際、準備期における周波数選択励起パルスの搬送周波数は、グルタミン酸3位と4位の両方のJ分裂の一方のピークを反転させるように設定する。 【0033】しかし、13Cは化学シフトが広範囲であるため、上記のように13C側でスライスを行うと、測定すべき化合物を限定しない場合には、各化合物間の位置ずれが生じる。例えば、これまで説明してきたグルコースとその代謝物に関しては、グルタミン酸3位と、グルタミン酸4位と、グルコースα1位と、グルコースβ1位では、約70ppmの13C化学シフト差があり、2Tの静磁場強度では、約1500Hzの周波数差となる。このため、通常の臨床機の最大である1G/cmのスライス勾配磁場強度ではそれぞれの化合物が励起されるスライス位置が1cmずれる。 【0034】これを解決するパルスシーケンスを図23に示す。図17の方法で説明したグルタミン酸3位、4位(Sl1が対応)と、グルコースα1位、β1位(Sl2が対応)を用いて、本発明を説明する。 【0035】まず、このパルスシーケンスでは、準備期には図17に示した方法を用いる。すなわち、2つの周波数選択反転パルスsl1、sl2により、グルタミン酸3位、4位およびグルコースα1位、β1位のそれぞれのJ分裂した一方のピークが反転し、分極移動に必要な縦スピン秩序状態が生起される。これに続く、13CスライスパルスP1a、P1bは、それぞれグルタミン酸3位、4位およびグルコースα1位、β1位に対して、図22のパルスシーケンスで説明した式(5)で計算される搬送周波数を有する高周波磁場パルスである(図24)。これらのパルスおよびスライス勾配磁場Gsa、Gsbにより所望のスライス位置内の13Cスピンが励起され、これらスピンに関して 1Hから13Cへの分極移動が生ずる。図23では、Gsa、GsbとしてGxチャンネルを用いており、x方向のスライスが可能となる。この際、グルタミン酸3位、4位およびグルコースα1位、β1位に関するスライス厚さを等しくして、同じスライスリフォーカス勾配磁場パルスでスライスリフォーカスを可能とすれば、図23のように、各々のスライスリフォーカス勾配磁場パルスGsrを印加するのみでよい。図25に示すGsraのように、各々のスライス勾配磁場パルスGsa、Gsbに対して別のスライスリフォーカス勾配磁場パルスを印加することも可能である。スライスパルスP1a、P1bに続いて、 1H反転パルスを印加し、その後、スライスパルスP2b、P2aを印加する。これらP2b、P2aの搬送周波数fcは、それぞれグルコースα1位、β1位およびグルタミン酸3位、4位に対して、スライス勾配磁場強度を13Cに対してfg[Hz/cm]、スライス位置を中心からy[cm]ずれた位置とすると、次の式(6)で計算される周波数とする。 【0036】 fc=(fg・y)Hz …(6) これらのパルスおよび図23では、Gyチャンネルに示すスライス勾配磁場により所望のスライス位置の13Cスピンが励起され、再び縦スピン秩序の状態が生起される。これらに続く 1Hスライスパルスにより、第3番目のスライス選択が行われ、図23にパルスシーケンスにおいて、グルタミン酸3位、4位の13Cに対しては、P1aからP2aの期間(t1a)で13Cの1量子遷移が展開する。一方、グルコースα、β1位に対しては、P1bからP2bの期間(t1b)で13Cの1量子遷移が展開する。すなわち、グルタミン酸3位、4位に関しては、GxではGsbがデフェーズとして働くため、これをリフォーカスする必要がある。このため、P2b印加により、グルコースα、β1位に関して縦スピン秩序となり、 1H、13C共に縦磁化の状態となるP2b以降に、Gsbと、強度の時間積分が等しく、且つ極性が反転しているリフォーカス勾配磁場パルスGrを印加する。P2a、P2bと共に印加するGyに関しても、同様な印加手順を行う。すなわち、図24では、P1aとP2aとの間に、P2b用のスライス勾配磁場パルスと、強度の時間積分が等しく、且つ極性が反転しているGyを印加している。 【0037】また、以上で説明してきた局所励起のパルスシーケンスに、特願平8−304561号に記載の発明を応用することが可能である。この実施形態を図26に示す。これは、展開期後、すなわち第2番目の13Cパルス後には、スピンの状態が1H、13C共に縦磁化である縦スピン秩序状態(2IzSz)になっており、緩和時間が長いことを利用する方法である。この方法により、1次元方向にマルチスライスが可能となる。 【0038】本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、種々変形して実施可能である。 【0039】 【発明の効果】本発明により、少ない数の高周波磁場パルスで、第1の核種のスピンの分極を移動して第2各種のスピンの1量子遷移を経た後の 1H信号を取得することができる。この結果、フリップ角の誤差に強くなり、上記誤差による信号損を防ぐことができる。さらに、プローブの高周波磁場分布均一性の仕様を緩和することができる。 【0040】かつプロープのコンデンサーの耐圧制限により第2の核種に相当する高周波磁場パルスの周波数帯域が問題となる場合にも、低い電圧で印加可能な高周波磁場パルスのみの使用とすることができ、広い周波数範囲に化学シフトを有する化合物の信号を取得することができるようになる。 【0041】また、本発明により、少ない高周波磁場パルスで、空間的に局所化された領域からの第1の核種のスピンの分極を移動して第2各種のスピンの1量子遷移を経た後の 1H信号を取得することができる。 【0042】さらに、本発明により、空間3次元の所望の局所領域から少ない高周波磁場パルスで、空間的に局所化された領域からの第1の核種のスピンの分極を移動して第2の核種のスピンの1量子遷移を経た後の 1H信号を取得することができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】590002404 【氏名又は名称】技術研究組合医療福祉機器研究所
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| 【出願日】 |
平成10年(1998)5月27日 |
| 【代理人】 |
【弁理士】 【氏名又は名称】鈴江 武彦 (外4名)
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| 【公開番号】 |
特開平11−332849 |
| 【公開日】 |
平成11年(1999)12月7日 |
| 【出願番号】 |
特願平10−145408 |
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