| 【発明の名称】 |
表面状態解析方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】金子 治
【氏名】川口 由起子
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| 【要約】 |
【課題】皮膚表面の色素沈着の度合いを、その構成因子との関連において数値的に解析する。
【解決手段】400nm,550nm,700nmについて撮影した画像の各画素の輝度から、各画素について主成分分析における主成分の得点を計算し、各画素の得点を輝度で表現した画像を再構成することにより、基底層周辺およびその上層に存在するメラニンの分布を明らかにする。再構成画像内に所定の関心領域を定め、その領域内の得点の頻度分布からそれに含まれる主成分の得点を計算して呈色のプロファイルを決定する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 同一の対象物について複数の波長帯域の画像を生成することによって対象物の画像を構成する各画素について複数の波長帯域における画素の輝度を決定し、各画素について、該複数の波長帯域における画素の輝度から、対象物からの反射光のスペクトルに含まれる主成分の成分得点を計算し、各画素の成分得点を輝度で表現した画像を再構成する各ステップを具備する表面状態解析方法。 【請求項2】 前記再構成された画像内の特定の関心領域内での輝度の頻度分布から該頻度分布に含まれる主成分の成分得点を計算するステップをさらに具備する請求項1記載の方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、対象物の表面の状態を解析する表面状態解析方法、特に、皮膚表面の色素沈着の度合いを数値的に解析する方法に関する。 【0002】 【従来の技術】偏光板をかけたCCDカメラで得られる色素沈着画像の画素ごとのR,G,BをL* ,a* ,b* に変換して色素沈着度合いを数値化する方法(渋江ゆう子他、第7回色彩工学コンファレンス論文集、3−3,1990,pp.55−58)や、Gの値に着目して色素沈着の色の濃さを表現する方法(原憲子他、第31回SCCJ研究討論会講演要旨集、1991,pp.36−42)が報告されている。またTVカメラをとおして得られた原画像とそれを平滑化した画像の画素ごとの色差dEの総平均値を用いた色素沈着の評価(●田勇二他、粧技認、28,1994,pp.147−152)や色素沈着部の紫外画像に着目した数値化(新井清一他、粧技認、23,1989,pp.31−42)も試みられている。 【0003】また、本願出願人は、特開平7−19839号公報において、主波長400nm,550nm,700nmの分光画像の2値画像の組み合わせから、皮膚表面から深さ方向に存在する場所が異なるメラニン像を抽出すると共に色素沈着部の色の濃さや色素沈着面積などを数値化している。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら上記したいずれの方法も、色素沈着部の色の構成因子を明確に特定することなく当該画素の濃度を数値化し色素沈着部の色の濃さとしているが、本来的にはメラニンのみによる呈色画像を再構成し、数値化の対象とすべきである。 【0005】したがって本発明の目的は、色素沈着部の色の構成因子を特定してメラニンのみによる呈色画像を再構成することによって、皮膚表面の色素沈着の度合いをその構成因子との関連において数値的に解析することを可能にする方法を提供することにある。 【0006】 【課題を解決するための手段】本発明によれば同一の対象物について複数の波長帯域の画像を生成することによって対象物の画像を構成する各画素について複数の波長帯域における画素の輝度を決定し、各画素について、該複数の波長帯域における画素の輝度から、対象物からの反射光のスペクトルに含まれる主成分の成分得点を計算し、各画素の成分得点を輝度で表現した画像を再構成する各ステップを具備する表面状態解析方法が提供される。 【0007】前記の方法は、前記再構成された画像内の特定の関心領域内での輝度の頻度分布から該頻度分布に含まれる主成分の成分得点を計算するステップをさらに具備することが好適である。 【0008】 【発明の実施の形態】本願発明者らは“粧技認、1997,pp.44−51”において、多数の被験者の皮膚の分光反射率のデータに、多変量解析法の1つである「なまの平方和・積和行列」を用いた主成分分析を適用した結果得られる第1主成分の成分得点M1 が基底層周辺に存在するメラニンによる呈色度合いを、第2主成分の成分得点M2 が基底層より上層にあるメラニンによる呈色度合いを、それぞれ反映していることをあきらかにした。 【0009】すなわち、多数の被験者の皮膚の分光反射率R(λ)に関する「なまの平方和・積和行列」の固有ベクトルV1 (λ),V2 (λ),V3 (λ)で任意の被験者の皮膚の分光反射率R(λ)を R(λ)=M1 V1 (λ)+M2 V2 (λ)+M3 V3 (λ) (1) と表わすとき、M1 は基底層周辺に存在するメラニンによる呈色の度合いを反映し、M2 は基底層より上層にあるメラニンによる呈色度合いを反映していることが明らかになった。 【0010】本発明では、この手法を皮膚の画像を構成する画素の1つ1つに適用することによって、基底層およびその上層に存在するメラニンの二次元的な分布をまず明らかにする。すなわち、例えば前述の特開平7−19839号公報に開示されたトリスペクトラルカメラを用いればλ=400nm,550nm,700nmのときの反射光の画像を得ることができる。この画像を構成する各画素値から換算したR(λ)(λ=400,550,700)の値と固有ベクトルV1 (λ),V2 (λ),V3 (λ)のλ=400nm,550nm,700nmの値を(1)式に代入して得られる3元連立方式を解けば、各画素ごとにM1 ,M2 の値を得ることができる。 【0011】最初に、固有ベクトルV1 (λ),V2 (λ),V3 (λ)を決定するために、日立カラーアナライザー607で測定した白人75人、黒人12人、黄色人(日本ならびに東南アジア)63人、計150人の女性(20代〜50代)の頬の分光反射率データから400nm〜700nm,10nm間隔、31波長点の分光反射率データをぬきだし波長間なまの平方和・積和行列の固有値と累積寄与率を計算した。得られた固有値と累積寄与率を表1に、固有ベクトルを図1に示す。表2には固有ベクトルの400nm,550nm,700nmの値を示す。 【0012】 【表1】
【0013】 【表2】
【0014】累積寄与率からみて、皮膚分光反射率R(λ)の大きさは、式(1)によってほぼ完全に記述できる。従って、400nm,550nm,700nmの皮膚分光反射率が得られれば、連立方程式を解くことによってM1 ,M2 ,M3 が算出できる。試作したトリスペクトラルカメラで色素沈着部を撮影すると、主波長400nm,550nm,700nmの分光画像の個々の画素の輝度I2 が得られる。 【0015】特開平7−19839号公報に記載された輝度校正用タイルを用いて個々の画素の輝度I2 を分光反射率R2 に変換する方法を、主波長400nmの場合を例に記す。事前に測定した輝度校正用タイルGRAY NO.1000,GRAYNO.3000の分光反射率がそれぞれ7.4%,27.0%であり、校正時の輝度がそれぞれ40,250である場合、これらの値を用いて個々の画素の輝度I2 と、分光反射率R2 との関係を表す式(2)をつくる。 【0016】 【数1】
【0017】I2 =250,R2 =27.0を、式(2)に代入してαを求め、式(3)をつくる。以後、得られた分光画像の個々の画素の輝度I2 を式(3)に代入し、画素ごとの分光反射率R2 を求める。 【0018】 【数2】
【0019】主波長550nm,700nmの分光画像の個々の画素についても、同様にして変換式を求めた。ここで、主波長400nm,550nm,700nmの分光画像における個々の画素の分光反射率を、それぞれR400 ,R550 ,R700 とし、この値を表2に示した400nm,550nm,700nmの固有ベクトルの値をもちいた式(4)に代入すると、当該画素のメラニンによる呈色に対応する成分得点M1 ,M2 を算出することができる。 【0020】 R400 =0.0806M1 +0.1347M2 +0.2897M3 R550 =0.1333M1 +0.2054M2 −0.2238M3 (4) R700 =0.2757M1 −0.3031M2 −0.1417M3 今回測定の対象とした150人の女性の皮膚分光反射率から得られたM1 ,M2 の最大値は、それぞれ265.3,26.5、最小値は、91.2,−19.5であった。 【0021】M1 に関する265.3〜91.2の値を256階調にわけ、メラニンによる呈色を表わす数値とするとともに、画像によるビジュアル表示のための輝度とした。即ち、当該画素から得られたM1 を式(5)に代入し、当該画素のM1 に対応する輝度IM1を求めた。 【0022】 【数3】
【0023】同様に、M2 を式(6)に代入し、当該画素のM2 に対応する輝度IM2を算出した。 【0024】 【数4】
【0025】上記した処理を個々の画素ごとに行い、得られたIM1から基底層周辺に存在するメラニンによる呈色度合いを反映したM1 画像を、IM2から基底層より上層にあるメラニンによる呈色度合いを反映したM2 画像を再構成した。例えばカラー写真にみられるやや青黒い色素沈着部が、M1 画像中にその存在が確認できるが、M2 画像ではその痕跡が見られない。これは、この色素沈着を形成するメラニンが皮膚表面から相対的に深いところにあるからと考えられる。 【0026】次に、呈色の度合いを数値化するため、撮影画像の任意の領域に関心領域を設定する。例えば、192×192画素からなる正方形を関心領域の大きさとする。以下、M1 画像から基底層周辺に存在するメラニンによる呈色の度合いを数値化する方法を記す。M1 の画像は、個々の画素に関する成分得点M1 に対応する輝度IM1を用いて作成しているので、呈色度合いを数値化するためのパラメーターとして、個々の画素の輝度IM1を用いる。 【0027】分光光度計で肌の分光反射率を測定する場合は、積分球開口部に押し当てた肌の面積内の平均分光反射率を測定している。そこで、分光光度計による計測と同様に、関心領域内のすべての画素j個の輝度IM1,jの平均値を式(7)で算出して平均色素沈着濃度m1 とする。
この場合問題となるのは、メラニンによる平均色素沈着濃度m1 の値が同じでも、個々の輝度IM1の頻度分布が異なるケースが存在することである。 【0028】そこで、輝度IM1の頻度分布曲線の数値化を行い、メラニン濃度m1 と合わせて表示することでより精緻なメラニンによる呈色状態を表現する。以下、その方法を記す。日本人女性(20代〜50代)の頬の色素沈着部を対象に撮影した3波長の分光画像250組の関心領域内の輝度IM1を10ランクにわけ、それぞれのランクごとの頻度の平均値を求めて平均頻度分布を書くと図2が得られる。なお、ランクわけの詳細は、表3に示す。 【0029】このようにランク分けすると、色素沈着が全体として薄ければ傾斜が大きい右上りの頻度分布曲線となり、色素沈着が全体として濃ければ左上りの曲線成分が強調されたかたちとなる。実際には、こうした大きな傾向の他に、中間濃度の反映もそのかたちの中に折り込まれ、最終的な頻度分布を形成する。従って、図2の頻度分布のかたちを数値に置き換えることができれば、視覚的に捕らえられる色の濃さの構造を説明する数値が得られる。本願発明者らはこのような頻度分布曲線を数値化する方法を既に報告しているが(川口由起子、粧技認、28,1994,pp.153−162)、ここでも同じ手法を数値化のための方法として採用した。即ち、得られた250組の色素沈着部を含む分光画像から再構成したメラニンによる呈色画像についての、図2に相当する輝度IM1の頻度分布の頻度に関する頻度間なまの平方和・積和行列の固有値解析を行った。表3に輝度のランク分けと得られた固有値、固有ベクトルならびに累積寄与率を示す。 【0030】 【表3】
【0031】第1主成分〜第5主成分を取り上げれば、画素ごとの輝度IM1の頻度分布のかたちのほぼ100%が説明できる。第1主成分はメラニンによる呈色が薄い部分の量的差異、第2主成分は濃い部分の量的差異、第3主成分は中位の呈色部分の量的差異にそれぞれ対応する。結果として、第1主成分〜第3主成分で頻度分布のかたちの98%が表現できる。残る2%は、第4〜第5主成分にかかわる固有ベクトルに対応する頻度分布のかたちにみられる量的差異で説明される。 【0032】以後、上記した第1主成分〜第5主成分であらわされるメラニンによる呈色度合いを、その成分得点ZM11 ,ZM12 ,ZM13 ,ZM14 ,ZM15 で表す。得られたZM11 ,ZM12 ,ZM13 ,ZM14 ,ZM15 が、0〜100の間の値で表示できるようにダイナミックレンジの拡大を行う。表4に、第1主成分〜第5主成分の成分得点の最大値と最小値を示す。 【0033】 【表4】
【0034】一般に、第i主成分得点の最大値をZM1i,max 、最小値をZM1i,min とし、当該画像の成分得点をZM1i とすると、ダイナミックレンジ拡大後の成分得点ZM1i,D は、式(8)から求まる。 【0035】 【数5】
【0036】先に求めたm1 と、第1主成分〜第5主成分に関するZM1i,D をもちいて図3のプロファイルを描き、色素沈着状態を示す。図3は基底層周辺に存在するメラニンによる呈色に関するプロファイルを示している。基底層より上層に存在するメラニンによる呈色についても、式(6)で得られる輝度IM2を用いて、平均色素沈着濃度m2 ならびにプロファイル作成のためのZM21,D ,ZM22,D ,ZM23,D ,ZM24,D ,ZM25,D を求めた。結果を図4に示す。表5に示すようにこの場合、第1主成分〜第5主成分で説明できる輝度IM2の頻度分布のかたちは99.94%である。 【0037】IM2の頻度分布の頻度間、なまの平方和・積和行列から得られた固有ベクトルを図5に示す。 【0038】 【表5】
【0039】上記したように、存在する場所の相対的深さが異なるメラニンによる呈色画像の再構成表示、呈色の数値化ならびに色素沈着濃度状態のプロファイル化によって、色素沈着対応化粧品の有用性や、加齢にともなう色素沈着の増加を明らかにすることができる。次に、人工光源で日焼けをおこさせた肌を対象にして、存在する相対的な深さが異なるメラニンによる呈色画像の再構成と色素沈着濃度の数値化を行い、色素沈着の回復評価に実用できるか否かを検証した。日焼けテストの実施条件を表6に示す。 【0040】 【表6】
【0041】図6に、式(6)、式(7)から求めた値から構成した基底層周辺に存在するメラニンによる呈色のプロファイルを、図7に基底層より上層のメラニンによる呈色のプロファイルを示す。実線は日焼け前、点線は日焼け1週間後、1点鎖線は1ヶ月後の状態を説明する。結果として、日焼け1週間後、1ヶ月後、日焼け前の順にメラニンによる呈色が減少している様子が画像に反映されている。また、数値化した指標を用いて作成したプロファイルにおいても、呈色の減少をみることができる。 【0042】このケースの場合は日焼けによる一過性の色素沈着であることから、基底層周辺に存在するメラニンも基底層より上層に存在するメラニンも共に減少している様子が画像と数値によって把握できることが必要となるが、結果はその要件を満たしている。以上のことは、本願で提案した方法が色素沈着の回復評価に十分実用できることを示唆している。 【0043】 【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、皮膚表面の色素沈着の度合いを、その構成因子との関連において数値的に解析することが可能になる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000001959 【氏名又は名称】株式会社資生堂
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| 【出願日】 |
平成10年(1998)5月26日 |
| 【代理人】 |
【弁理士】 【氏名又は名称】石田 敬 (外4名)
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| 【公開番号】 |
特開平11−332834 |
| 【公開日】 |
平成11年(1999)12月7日 |
| 【出願番号】 |
特願平10−144018 |
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