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【発明の名称】 偏極希ガスの製造装置を有する磁気共鳴イメージング 装置並びにその装置を用いる磁気共鳴イメージング測 定方法
【発明者】 【氏名】服部 峰之

【氏名】平賀 隆

【氏名】中井 敏晴

【氏名】守谷 哲郎

【氏名】ジョン エム トレーシー

【要約】 【課題】セル形状と励起光源を改良することで、安全にガスを流しながら偏極率をさらに向上させた偏極希ガスの製造装置とその製造方法、並びに連続的に偏極希ガスを発生させた後、偏極率を減少させずに短時間でMRI測定を行えるようにした磁気共鳴イメージング装置とその装置を用いた検出感度の高い測定時間の短い極微小領域での検出が可能な磁気共鳴イメージング測定方法を提供する。

【解決手段】
【特許請求の範囲】
【請求項1】 同軸多重円筒型フローセルと励起光照射手段並びに磁場印加手段とを備え、同軸多重円筒型フローセルには、内筒と外筒との間に隙間が設けられており、この隙間内には希ガスと光ポンピング用触媒の混合気体を一方向に流通させると共に、フローセル内には励起光照射手段より励起光を照射し、かつフローセルの励起光照射面に垂直に磁力線が通過するように磁場印加手段により磁場を印加するようにしたことを特徴とする偏極希ガスの製造装置。
【請求項2】 楕円面鏡の2つの焦点の一方には励起光源が、他方には内筒型フローセルが配置された請求項1記載の偏極希ガス製造装置。
【請求項3】 励起光源として直線状にレーザーダイオードアレイが配置された請求項1または2記載の偏極希ガス製造装置。
【請求項4】 同軸多重円筒型フローセルの内筒と外筒との間の隙間内に希ガスと光ポンピング用触媒の混合気体を一方向に流通させると共に、フローセル内には励起光を照射し、かつフローセルの励起光照射面に垂直に磁力線が通過するように磁場を印加することを特徴とする偏極希ガスの製造方法。
【請求項5】 楕円面鏡の2つの焦点の一方に励起光源を、他方にはフローセルを配置する請求項4記載の偏極希ガス製造方法。
【請求項6】 励起光源として直線状に配置したレーザーダイオードアレイを用いる請求項4または5記載の偏極希ガス製造方法。
【請求項7】 請求項1ないし3のいずれかに記載の偏極希ガス製造装置を備え、この装置により製造された偏極希ガスを用いるようにしたことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】 請求項7記載の磁気共鳴イメージング装置を用いることを特徴とする磁気共鳴イメージング測定方法。
【請求項9】 請求項4ないし6のいずれかの方法により製造された偏極希ガスを用いることを特徴とする磁気共鳴イメージング測定方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この出願の発明は、偏極希ガスの製造装置並びにその製造方法と、偏極希ガス製造装置を有する磁気共鳴イメージング装置並びにその装置を用いる磁気共鳴イメージング測定方法、偏極希ガスを用いる磁気共鳴イメージング測定方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】主静磁場に対する配向状態に対応する原子核の核スピンのエネルギー準位を占有するスピン数の分布が、熱平衡時におけるその分布に比べて、極端に偏っていることを「偏極している」と呼ぶことができる。そして、この「偏極している」状態にあるものとして、希ガスの例が知られている。この場合、偏極希ガスは、キセノン−129、ヘリウム−3等のスピン量子数1/2の核スピンを有する単原子分子を含む希ガスにルビジウム、セシウム等のアルカリ金属蒸気を混合した気体に、円偏光された励起光を照射することによって、ルビジウム等の基底状態準位にある電子が光吸収により励起されて励起状態準位を経由した後に基底状態準位に戻る際に、外部から印加された磁場によって磁気的に縮退が解かれた基底状態準位の内の電子準位の一方の準位に高い確率で遷移され、ルビジウム分子等の電子スピン偏極度が高い状態が作られ、この高偏極状態のルビジウム等がキセノン等の希ガスと衝突して、この過程でルビジウム等の高偏極状態がキセノン等の希ガスの核スピン系に移動することによって得られる〔W.Happer,E.Miron,S.Schaefer,D.Schreiber,W.A.van Wijngaarden,and X.Zeng,Phys.Rev.A 29,3092(1984).〕ことが知られている。この過程は、一般に光ポンピングと呼ばれている。
【0003】このような光ポンピングの過程を利用した従来の偏極希ガス製造装置としては、光反応容器内に希ガスとアルカリ金属蒸気の混合気体を封じ込め、これに励起光の照射と磁場の印加を行うもので、例えば高密度の偏極ヘリウム−3を中性子ポーラライザーとして使用することを目的として、円筒状ガラスアンプル中にヘリウム−3ガスと窒素ガスの混合気体及びアルカリ金属を封じ込んで製造する装置が知られている〔M.E.Wagshul and T.E.Chupp.Phy.Rev.A40,4447(1989)〕。
【0004】また、キセノン−129の偏極希ガスを核磁気共鳴測定(NMR)や磁気共鳴イメージング測定(MRI)に応用したものとしては、上記と同様な円筒状ガラス容器に導入したキセノン−129とルビジウムを用いて、偏極キセノン−129のNMR信号を測定する方法やこの偏極したキセノン−129核からプロトン−1核に核オーバーハウザー効果を利用してスピン分極を転送してプロトン−1のNMR信号を測定する方法〔D.Raftery,H.Long,T.Meersmann,P.J.Grandinetti,L.Reven,and A.Pines,Phy.Rev.Lett .66,584(1991): G. Navon,Y.-Q.Song.T.Room,S.Appelt,R.E.Taylor.and A.Plnes,Science 271,1848(1996)]や、偏極キセノン−129を動物に導入して肺などの空洞の画像を測定した例がある[M.S.Albert,G.D.Cates,B.Driehuys,W.Happer,B.Saam,C.S.Springer Jr.,and A.Wishnia,Nature 370,199(1994):米国特許5545396(1996)]。
【0005】いずれも、偏極率を高めるための操作を、希ガス等を光反応容器内に滞留させた状態で、一方向から励起光を入射して行っている。偏極率が高まったところで、冷却してそのまま中性子ポーラライザーとして使用するか、偏極希ガスをガラス容器から別の容器へ移送してNMR等の測定に使用されている。一方、ガスを流しながら偏極希ガスを製造する装置としては、例えば10気圧程度のヘリウム−4ガスのバッファーガスに1%のキセノン−129を混合して円筒状ガラス容器に導入し、励起光をガスの流れに対して平行に、すなわち円筒状ガラス容器の円柱底面方向より容器内ガス出口側から導入側に向かって、照射して偏極させ、偏極混合ガスを容器内ガス出口より液体窒素で冷却したデュワー内に誘導し偏極キセノン−129を固体にして分離させ、残りのヘリウム−4ガスはベントラインから排出させる構成のものが知られている〔B.Driehuys,G.D.Cates,E.Miron, K.Saucr,D.K.Walter and W.Happer,Appl.Phys.Lett .69,1668(1996)]。この場合も、いったんデュワー内に固体分離された偏極キセノン−129は、再度加熱してガス化し、別の偏極ガス保存用容器に移送してから使用されている。
【0006】さらには、この出願の発明者らが提案している偏極希ガス製造装置として、フローセルを用いて常圧付近で安全にガスを流しながら偏極希ガスを製造し、後方に核磁気共鳴装置を配置することで連続的に偏極希ガスを発生させた後に、偏極率を減少させずに短時間でNMR測定を行えるようにしたものがある[服部峰之、平賀 隆、守谷 哲郎、第36回NMR討論会講演要旨集、P9,103(1997):特願平10−67880号]。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の手段の場合にはいずれも問題があり、たとえば円筒状ガラス容器にガス等を滞留し励起偏極させる装置では、励起光強度は入射方向の入射面からの距離に依存して指数関数で減少するという現象にともなう欠点がある。円筒状ガラス容器内でのルビジウム等の濃度は、励起光が強い部位に最適化して決定するため、入射面からの距離が離れた励起光強度が弱い部分がかなりの体積を占めることになる。
【0008】こうした励起効率の低い部位での偏極率の低下は、キセノン等分子が拡散によって効率の高い部位に移動することにより解消されるが、全体の励起効率を低下させる原因となっているのである。また、従来のガス等を滞留させて偏極させる装置では、連続的に偏極希ガスを発生することができず、いちいち偏極ガスを別の容器に取り出してNMR装置等まで運ぶため手間がかかり、またその間に偏極率が減少するという問題点があった。
【0009】そして、ガスを流しながら偏極希ガスを製造する装置においては、偏極キセノン−129分子間の衝突による偏極率の損失を少なくするため、高圧のバッファーガスを共に導入するのでガスの取り扱いが危険であること、また冷却デュワーに固化した偏極キセノン−129を再度加熱させて取り出させねばならず、操作も面倒で手間がかかりNMR測定までに時間を要すること、さらにこの装置で実際に偏極されたキセノン−129の量は5%程度と低いという問題点があった。
【0010】さらに、この出願の発明者らが提案したフローセルを用いて常圧付近でガスを流しながら偏極希ガスを製造する装置においては、励起光が一方向からしか入射しないため光源から離れた部位での偏極率が減少するという問題点があった。そこで、この出願の発明は、従来の技術の欠点を解消し、すでに発明者らが提案している装置に基づいて、セル形状と励起光源を改良することで、安全にガスを流しながら偏極率をさらに向上させた偏極希ガスの製造装置とその製造方法、並びに連続的に偏極希ガスを発生させた後、偏極率を減少させずに短時間でMRI測定を行えるようにした磁気共鳴イメージング装置とその装置を用いた検出感度の高い測定時間の短い極微小領域での検出が可能な磁気共鳴イメージング測定方法を提供することを課題としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】この出願は、上記のとおりの課題を解決するために、請求項1の発明として、円筒型フローセルと励起光照射手段並びに磁場印加手段とを備え、同軸多重円筒型フローセルには、内筒と外筒との間に隙間が設けられており、この隙間内には希ガスと光ポンピング用触媒の混合気体を一方向に流通させると共に、フローセル内には励起光照射手段により励起光を照射し、かつフローセルの励起光照射面に垂直に磁力線が通過するように磁場印加手段により磁場を印加するようにしたことを特徴とする偏極希ガス製造装置を提供する。
【0012】また、この出願は、前記請求項1の発明に関連し、請求項2の発明として、楕円面鏡の2つの焦点の一方には励起光源が、他方にはフローセルが配置された偏極希ガス製造装置を、請求項3の発明として、励起光源として直線状にレーザーダイオードアレイが配置された偏極希ガス製造装置を提供する。そして、この出願は、請求項4の発明として同軸多重円筒型フローセルの内筒と外筒との間の隙間内に希ガスと光ポンピング用触媒の混合気体を一方向に流通させると共に、フローセル内には励起光を照射し、かつフローセルの励起光照射面に垂直に磁力線が通過するように磁場を印加することを特徴とする偏極希ガスの製造方法を提供する。
【0013】また、前記請求項4の発明に関連し、請求項5の発明として、この出願は、楕円面鏡の2つの焦点の一方に励起光源を、他方にはフローセルを配置する偏極希ガスの製造方法を、請求項6の発明として、励起光源として直線状に配置したレーザーダイオードアレイを用いる偏極希ガスの製造方法も提供する。さらにまた、この出願は、前記の請求項1ないし3のいずれかの偏極希ガス製造装置を用いた磁気共鳴イメージング装置を請求項7の発明として、そしてこの装置を用いるイメージング測定方法を請求項8の発明として提供し、請求項4ないし6のいずれかの方法により製造された偏極希ガスを用いる磁気共鳴イメージング測定方法を請求項9の発明として提供する。
【0014】
【発明の実施の形態】以上のとおりの特徴を有するこの出願の発明について、以下、図面を使って、この発明の実施の形態を説明する。図1は、この発明に係る偏極希ガス製造装置を備えた磁気共鳴イメージング装置の全体の構成図である。ここで、希ガスは、核スピンを有する気体ならばいずれも用いることができるが、特にスピン量子数が1/2の核スピンを持つガス、例えばキセノン−129、ヘリウム−3等が好ましい。
【0015】また、希ガスはボンベから供給されているが、ボンベに限らずカードル、屋外設置の大型タンクからのハウスライン、あるいは低温保存容器等公知のガス供給装置のいずれから供給されてもよい。図1の構成においては、クエンチャーガスとして窒素ガスを用いている。励起光照射で励起された光ポンピング用触媒は、自然放出で基底状態に戻る主過程のほかに、非放射遷移で基底状態に戻る副過程がある。この副過程は緩和時間が長いため、クエンチャーガスを導入することで、光ポンピング用触媒の中間準位のエネルギーをクエンチャーガスに遷移させて短時間で基底状態に戻すことができる。このクエンチャーガスはセル内に存在しなくても偏極ガスを製造することは可能であるが、存在した方がより好ましい。
【0016】クエンチャーガスには、水素、窒素などあるいは不飽和結合を有する無機ガス、あるいは不飽和結合を有する有機ガス、例えばアセチレン、ベンゼン、π電子系化合物等を用いることができるが、特に窒素が好ましい。図1の構成においては、クエンチャーガスもボンベから供給されているが、ボンベに限らずカードル、屋外設置の大型タンクからのハウスライン、あるいは低温保存容器等公知のガス供給装置のいずれから供給されてもよい。
【0017】そして、図1の構成においては、希ガス及びクエンチャーガスのほかに洗浄用ガスを接続しているが、この洗浄用ガスは希ガス及びクエンチャーガスを導入する以前にガス配管とセル内部の水分や酸素などの不純物を除去し、さらに希ガス及びクエンチャーガスを停止させている間洗浄用ガスを流して外部からの空気や内壁から徐々に脱離してくる水分を除去するためのものである。洗浄用ガスを使用しなくても実施は可能であるが、使用することがさらに望ましい。洗浄用ガスには窒素、アルゴンなどのボンベ、カードル、屋外設置の大型タンクからのハウスラインによる供給が可能である。
【0018】希ガス及びクエンチャーガスは、圧力調整器で高圧から常圧付近まで圧力を下げてからフローセルに導入される。圧力は取り扱いの簡便と安全のため大気圧から10気圧以下が望ましく、特に大気圧から3気圧の領域が好ましい。希ガス及びクエンチャーガスは圧力調整器を通過した後、マスフローコントローラー(MFc)で流量制御される。流量調節には、流量計、ニードルバルブ付き流量計、オリフィス、マスフローメーター、マスフローコントローラーなど市販のガス流量調節装置のいずれも用いることができるが、特にマスフローコントローラー(MFc)が好ましい。ガス分子間や配管壁、セル内壁への衝突による偏極希ガスの偏極率減少を防ぐため、流量は層流域または層流と乱流の混合域が用いられるが、特に層流域が好ましい。
【0019】マスフローコントローラーを通過した希ガス及びクエンチャーガスは、ガス乾燥化カラムとガス高純度化カラムを通過して不純物を除いてからセルに導入される。水分、酸素、二酸化炭素、一酸化炭素その他の不純物は、光ポンピング剤と反応して光ポンピングの効率を低下させたり、また、偏極した希ガスと衝突した際にスピン系を緩和させ希ガスの偏極率を減少するため、セル内に導入するガスはこれら不純物を取除いた高純度なものであることが望ましい。
【0020】ガス乾燥化カラムはガス中の水分を除去するためのもので、このものを使用しなくてもガス高純度化カラムのみでガスを精製することは可能だが、ガス高純度化カラムの使用寿命を延ばすことを考慮すると使用することが好ましい。ガス乾燥化カラムにはモレキュラーシーブやシリカゲル等の公知の吸着剤のいずれも用いることができるが、特にあらかじめ加熱乾燥させたモレキュラーシーブが好ましい。
【0021】ガス高純度化カラムはさらに酸素、二酸化炭素、一酸化炭素その他の反応性不純物を除くために使用するもので、ゲッター型、レジン型、金属錯体型等市販のガス精製器のいずれも本発明に使用することができる。そして、図1の構成において、ガス高純度化装置を通過した希ガス及びクエンチャーガスは、光ポンピング剤貯蔵容器から蒸発した光ポンピング剤蒸気と混合されてセルに導入される。光ポンピング剤とは、円偏光された励起光を照射することによって、基底状態準位にある電子が光吸収により励起されて励起状態準位を経由した後に基底状態準位に戻る際に、外部から印加された磁場によって磁気的に縮退が解かれた基底状態準位の内の電子準位の一方の準位に高い確率で遷移し、電子スピン偏極度が高い状態を作成し得る性質を持つ物質である。この発明では、このような光ポンピング剤としてアルカリ金属原子、例えばセシウム、ルビジウム、ナトリウム等あるいは金属原子、例えば水銀原子、鉛、カドミウムなど、あるいは準安定状態の単原子分子、例えば放電によって生成された準安定状態ヘリウム原子など、あるいは有機ラジカル、無機ラジカルなどの多原子分子を用いることができる。
【0022】光ポンピング剤を導入する方法としては、光ポンピング剤貯蔵容器を加熱し光ポンピング剤を蒸発させながら希ガス及びクエンチャーガスと混合させることが望ましい。不均一な温度分布により光ポンピング剤が偏析するのを防ぐため、光ポンピング剤貯蔵容器のほか、下流の配管及びセル全体は均一の温度に保持することが望ましい。この温度は、光ポンピング剤の濃度を制御するために、その飽和蒸気圧を考慮して決めるのが望ましい。
【0023】この発明におけるセル、すなわち希ガスと光ポンピング用触媒の混合気体が導入されるセルは、円筒型フローセルである。この円筒型フローセルは、混合気体を一方向に流通させるようにしており、フローセル内には励起光が照射され、かつ励起光照射面に垂直に磁力線が通過するようにされている。図1には、この発明において好適に用いられる同軸円筒型フローセル(同芯円セル)の一例が示されている。これを拡大して例示したものが図2である。
【0024】この同軸円筒型フローセル(1)は、内筒(11)と外筒(12)を備え、両者の間には隙間(13)が設けられている。前記の希ガスと光ポンピング用触媒との混合気体(2)は、この隙間(13)を流れることになる。そして内筒(11)の中空部(14)には、たとえば磁場印加のための手段の一つとしての永久磁石(3)が置かれている。
【0025】たとえば以上のようなフローセルについては、励起光の照射を受けることから、<1>励起用光源の強度を生かしルビジウム等の励起状態を効率よく生成するために、受光面積を大きくすること、<2>フローセル受光面から入射した光がフローセル内のルビジウム等で吸収されて強度が減少し入射時の強度の1/20になるまでの領域のみに当該混合ガスが存在するように制限をするためにフローセルの厚みを薄くすること、<3>セル内壁に吸着されている水分子などの脱離を容易にするためにセル全体が、80℃以上に加熱可能な材質と構造にすること、<4>光の入射方向と磁力線の方向を一致させるために、磁力線の向きが放射状になるように磁石を配置することが望ましい。
【0026】フローセルの材質には、金属、例えばステンレス、アルミニウム、銅等あるいはガラス、例えば石英、パイレックス、ソーダガラスなど、あるいは樹脂、ABS樹脂、ポリエチレン、アクリル、塩化ビニル等を用いることができ、セルの一部分または全体に光入射用の窓を有する構造が望ましい。この窓には、透過性に優れたガラス例えば石英、パイレックス、ソーダガラスなど、あるいは透明な樹脂、例えばアセテート、ポリエステル、アクリル板等を使用することができ、特にセル全体が石英またはパイレックスのガラスであることが好ましい。
【0027】励起光照射については、この発明の装置として楕円面鏡の構造を採用することが考慮される。図3はこの楕円面柱鏡の構造を例示した構成図である。同軸多重円筒型フローセルと高出力レーザーダイオードアレイが楕円の2つの焦点位置の各々に置かれるように楕円面鏡を構造化している。
【0028】図4は高出力レーザーダイオードアレイの配置を例示した構成図である。励起光源には、ランプ、レーザー等を使用することができるが、特にレーザーダイオードが好ましい。励起光源の前面には1/4波長板を配置して直線偏光を円偏光に変換することが望ましい。この発明で用いられるダイオードアレイは、例えば、<1>フローセルの流れ方向の長さと同一の長さを有するリニアアレイであること、<2>フローセルの流れの方向の長さと同一の長さを有する楕円鏡の2つの焦点の内の片方にダイオードアレイの発光点を配置すること、<3>全周(360度)の受光面を有するフローセルに効率よく光を照射するために複数の楕円鏡・リニアダイオードアレイ対を配置することが望ましい。
【0029】また、図5はこの発明において採用する磁場印加のための手段の一例としての磁石の配置を例示した構成図である。この永久磁石の配置は、図3における楕円面鏡の一つの焦点に置かれたフローセル内の永久磁石と最外部の永久磁石との配置関係に相当している。光の入射方向と対向するように磁力線の向きが放射状になるように磁石を配置してある。光ポンピングを行うためには、フローセルの励起光照射面と磁力線は垂直あるいはほぼ垂直に配置することが望ましい。この配置で、ガスを流しながら偏極率を向上させるには、ガスの流れの方向が励起光入射方向と磁力線の両者に対して垂直あるいはほぼ垂直になることが最も効果が大きい。したがって、この発明においては、フローセル内の混合気体の流通方向に垂直に励起光を照射し、フローセルの励起光照射面に垂直に磁力線が通過するように磁石を配置した構造が、特に好ましい。
【0030】たとえば以上の例を好ましい構成として要約すれば次のとおりとなる。セル形状を受光面積の大きな同軸多重円筒型のフローセルの形状にして、さらに全方向から励起光源が入射するようにセル形状及び励起光源及び配置を改良することで、フローセル内に常圧の希ガスと光ポンピング用触媒さらにクエンチャーガスの混合気体を一方向に流通させると共に、楕円面鏡の2つの焦点に励起光源とフローセルを配置して直線状に配置したレーザーダイオードアレイを用いた励起光をフローセル内に特定の条件下で照射し、かつ磁場を印加させて高い偏極率で偏極希ガスを製造した後、当該偏極希ガス製造装置の後方に配置した磁気共鳴イメージング装置を用いて磁気共鳴イメージング測定を行う。
【0031】セルで偏極された希ガスは、図1に示すように後方の磁気共鳴イメージング装置に導入され、磁気共鳴イメージング測定が行われる。ここで用いる磁気共鳴イメージング装置は、パルス方式の誘導検出型の磁気共鳴イメージング装置、RF照射下で光検出NMRを行う光学顕微鏡装置、もしくは、AFMの原理を利用した力検出型の走査型プローブ顕微鏡装置、いずれの方式でも利用することができる。
【0032】従来からの滞留式の希ガス偏極装置においてはパルス方式誘導検出法を適用したくても、緩和時間の長いキセノン−129が飽和する問題があり不適当であった。しかし、本発明における磁気共鳴イメージング装置においては、計測に関わる偏極希ガス分子が順次入れ替わっていくので、飽和の影響を受けずに磁気共鳴イメージング測定が可能である。
【0033】
【実施例】以下、実施例を示し、さらに詳しく説明する。図1の構成の装置において、希ガスは、日本酸素製の天然同位体比(キセノン−129:26.44%含有)のキセノン(純度99.95%)を、窒素ガスは日本酸素製のSグレード(純度99.9999%)用い、バルブ、マスフローコントローラ(MKS社製M−100−11C、M−310−01C)によりそれぞれの流量を制御した。その後、ラインで混合され、ガス高純度化装置を通し、ルビジウムリザーバーから放出されるルビジウム金属の蒸気を加え、ヘルムホルツコイル中に置かれた、同軸多重円筒型フローセルへ導入された。このとき、気化器からセルにかけては、恒温槽を用いて、100−150℃程度の温度に制御した。
【0034】マスフローコントローラーは、希ガスおよびフローセル内の反応制御用窒素の流量を制御するためのもので、最大流量・最小制御流量はそれぞれのガスについて、10SCCM・0.2SCCMと1.0SCCM・0.02SCCMを用いた。ガス高純度化装置は、二つの方式を併用した。前段には、水分除去用に、ステンレス鋼304製のカラムにモレキュラーシーブ(3Aサイズ)を吸着剤として充填したものに、テープヒーターを巻いて290℃まで加熱し、窒素ガスを0.8Nm3 /hで2日間流して乾燥させたものを用いた。さらに、酸素や二酸化炭素などの反応性不純物を除くために、後段にはミリポア社製のガス高純度化器(WPRV−200−SI)を用いた。
【0035】ルビジウムリザーバは、一端を封じた外形寸法12mm、肉厚0.5mmのステンレス鋼304パイプにベローズシール構造のステンレス鋼304製バルブを取り付けたものを用いた。ルビジウムはフルウチ化学製(純度99.99%)を用い、ガラスアンプルのまま当該リザーバ内部に装着し、到達圧力10-7Pa代のターボモレキュラーポンプ付きの真空排気装置で到達圧力になるまで1週間程度真空排気を行なった。この時、ルビジウムリザーバのまわりにテープヒーターを装着して約100℃まで加熱を行ない、セル内壁およびガラスアンプルの外側に吸着されていた水等の不純物を除去した。ルビジウムリザーバのテープヒーターを外して室温に戻した後にステンレス鋼304製バルブを閉じ、当該ガスラインのガス高純度化装置とフローセルとの間にT字型継ぎ手を用いて取り付けた。
【0036】恒温槽は、ルビジウムリザーバからフローセルまでの間のルビジウム蒸気が存在する配管を含む部分全部の温度を均一にするためのものであり、温度調節器により設定値の±0.1℃以内に制御した。フローセル内のルビジウム蒸気圧力は温度の変化により変化するために、一部でも低温部が存在すると偏折してルビジウム蒸気圧力の制御が難しくなるため、全体を均一に保持する必要があるからである。フローセルを出た偏極された混合ガスは、自然冷却され、ルビジウム蒸気を除いた。
【0037】同軸円筒型フローセルは、図2に示すように外径10mm・内径8mmの外側に設置される石英ガラス管からなる外筒(12)と外径7mm・内径6mmの内側に設置される石英ガラス管からなる内筒(11)を組合せた構造であり、長さは110mmでレーザーダイオードの発光部分の長さより約10mmだけ長くした。1対の石英管から構成される隙間は0.5mmであり、以下に示す条件の時に内側の石英ガラス管表面で入射光量の1/10になるように、且つ隙間が100mmの長さにわたって均一になるように調整した。
【0038】図3に示した楕円面柱鏡は、フローセルの軸が一方の焦点になるように設置した。楕円面柱鏡の他方の焦点には発光部の長さ100mmのレーザーダイオードのリニアアレイアッセンブリを設置した。各アレイの前面に1/4波長板を設置して直線偏光を円偏光に変換した。円偏光は鏡面での反射で位相が180度変化するゆえにレーザーダイオードからの直接光が同軸円筒状フローセルを照射しないように、又レーザーダイオードのビーム広がり角(5.5度、35度)を生かすように配置が決定されている。
【0039】図4に示したレーザーダイオードアレイ(LD)アッセンブリは発振波長794.7nmのもので、発光部全体の長さを100mmとしたものを直径5mmの棒状ヒートシンク上に放射状に8列並べた。アッセンブリ全体での出力は22W、フロー方向に対して直交する方向のビーム広がり角度は35度である。1/4波長板は、一枚でLDの1ユニットの前面を覆う大きさ幅3mm×長さ100mmのものを全部で8枚使用した。
【0040】図5の永久磁石は、同軸円筒型フローセルを構成している内側の石英ガラス管の中に、長さ120mm・直径6mmの棒状のものを装着し、磁力線が中心から放射状に外側に向かい且つフローセルのガスフロー部分での磁場強度が0.01テスラ(T)になるようにした。こうして、生成された偏極希ガスを、図1のように、ガラス管のさらに先に配置した磁気共鳴イメージング装置を使って、キセノン−129のNMR信号強度から、その量の分布を測定した。ここで、測定に用いた、磁気共鳴イメージング装置は、静磁場用電磁石、静磁場勾配発生用コイル、RF照射用コイル、RF増幅器、NMR検出コイル、増幅器等から構成された、自作の装置を用いた。検出器の周波数は、プロトンとキセノン−129共に、7MHzになるように各部品を調節した。気体のキセノン−129は、一般にスピン−格子緩和時間が長いので、FLASHなどの、フリップ角の小さなグラジエントエコー系のイメージングシーケンスが適しており、ここでは、この方法を採用した。
【0041】次に、偏極希ガスの生成は以下の実験手順によった。まず、準備として乾燥用窒素ラインのバルブを開けて、ガス高純度化装置を通した窒素ガスを約2日間流してフローセルを含む配管内の乾燥及び高純度化を行った。このとき、ガス高純度化装置より下流のガスラインは、リボンヒーターを巻いて、約80℃に温度制御した。また、ルビジウムリサーバのステンレス鋼304製バルブを最後の4時間は開けてリザーバ内のガス置換を行った。ルビジウムリザーバの肉厚0.5mmのステンレス鋼304パイプを外側からクランプを挟んで、内部のガラスアンプルを破砕し、リザーバ内にルビジウム金属を充填した。この後、ルビジウムリザーバ及び光ポンピング用のフローセルの温度を制御する恒温槽の電源を入れて94℃で制御を開始した。ルビジウムの蒸気圧は、0℃で10-8Torr、38.89℃で約10-5Torr、94℃で約10-4Torrであり、本実施例では、94℃即ち、10-4Torrに設定した。
【0042】次に、乾燥用窒素ラインのバルブを閉じて、キセノンおよび窒素のバルブを開け、マスフローコントローラーを調節して流量をそれぞれ0.1SCCM、0.2SCCMにした。混合ガスのセル中の滞在時間は、この場合、10分程度と見積もられる。磁気共鳴イメージング装置の検出器中においたファントム試料(図6(a))は、テフロンブロックから削りだして作成した。ファントムの空洞部分が当該キセノン・窒素混合ガスが到達して十分に置換が終わったのち、ダイオードレーザー(LD)の電源を入れて円偏光をフローセルに照射し、FLASHシーケンスを適応して磁気共鳴イメージング測定を行ったところ、空洞部分から大きな信号を得た(図6(b))。
【0043】次に、図6(b)中の(1)に示したボクセル(□)での信号強度を記録したところ、最大時には、3,000の値を得た。確認のために、ダイオードレーザーの電源を断続して、このボクセルの信号強度の時間変動を記録した(図7)。一方、ガラス管に磁化率が既知の水を詰め、検出器に挿入したときに得られた、このボクセルの信号強度を測定したらその値は10であった。
【0044】熱平衡時のプロトンと偏極率100%のキセノン−129での信号に寄与するスピン数の比は、1:730である。この関係を用いて、プロトンとキセノン−129の磁気回転比と同体積の水及び偏極キセノンを使った実験で得られたMRI信号強度から、キセノン−129の偏極率を見積もることができる。図7の信号強度と同体積の水における校正で得られた、1ボクセルの信号強度とから、キセノン−129の偏極率の最大値として、40%が得られた。
【0045】以上まとめると、本実施形態の偏極希ガス製造装置へ、高出力ダイオードレーザー光を図2に示すような光学系を用いて照射したところ、生成された偏極キセノンの信号強度をモニターして示す磁気共鳴イメージング装置の出力波形は図7に示すように、ダイオードレーザー光の強度の時間変化に対応して可逆的に変化した。すなわち、ダイオードレーザー光の強度の増幅または断続により偏極キセノンの生成量が制御されること、すなわち、ダイオードレーザー光の照射により、キセノン−129のMRI信号を10,000倍以上の感度増強ができることが確認された。
【0046】
【発明の効果】この出願の発明は、以上詳しく説明したことから明らかなように、以下に記載されるような効果を奏する。すなわち、同軸円筒型フローセル内に低圧の希ガスと光ポンピング用触媒の混合気体を一方向に流通させると共に、フローセル内には励起光を照射し、かつ磁場を印加することで、連続的に偏極希ガスを安全に製造することが可能である。そして、楕円面鏡の2つの焦点に励起光源とフローセルを配置させて、励起光源として直線状に配置した高出力レーザーダイオードアレイを用いてフローセル内に励起光を効率的に集光照射することで、偏極率を飛躍的に向上させることが可能である。
【0047】また、偏極希ガス製造装置を磁気共鳴イメージング装置の前方に有することで、連続的に発生した偏極希ガスを、別容器への移送による偏極率の減少を起こさずに短時間で磁気共鳴イメージング装置に導入し磁気共鳴イメージング測定することが可能である。さらに、偏極させた希ガスを検出核に用いるため、MRI信号の検出感度を向上でき、磁気共鳴イメージング測定の測定時間の大幅な短縮化や従来不可能であった検出領域の極微小化が可能である。
【出願人】 【識別番号】000001144
【氏名又は名称】工業技術院長
【識別番号】598036078
【氏名又は名称】服部 峰之
【識別番号】597007732
【氏名又は名称】平賀 隆
【識別番号】598056755
【氏名又は名称】中井 敏晴
【識別番号】597007743
【氏名又は名称】守谷 哲郎
【識別番号】598056766
【氏名又は名称】オプト パワー コーポレーション
【出願日】 平成10年(1998)4月28日
【代理人】
【公開番号】 特開平11−309126
【公開日】 平成11年(1999)11月9日
【出願番号】 特願平10−119695