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【発明の名称】 超音波診断装置
【発明者】 【氏名】今井 敏樹

【氏名】平八重 謙一

【要約】 【課題】超音波振動子部分の温度上昇を抑えることが可能な超音波診断装置を提供すること。

【解決手段】送波信号に基づいた超音波を発生すると共に受波した超音波を受波信号に変換する超音波振動子と、前記超音波振動子から送波された超音波を吸音する吸音部材とからなる超音波探触子を有し、該超音波探触子から被検体に送受波した超音波信号に基づいて当該被検体の超音波像を形成する超音波診断装置において、前記吸音部材で発生した熱を前記吸音部材から離れた位置に導く伝達手段と、前記吸音部材から離れた位置に配置され、前記伝達手段が導いた熱を放出する放出手段とを具備し、前記吸音部材の超音波振動子と対向する側の面を焦点位置が吸音部材の内部となる放物面状に形成し、前記伝達手段の吸熱部位を前記吸音部材の超音波振動子と対向する側の面の焦点位置に配置した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 送波信号に基づいた超音波を発生すると共に受波した超音波を受波信号に変換する超音波振動子と、該超音波振動子の背面側に配置され前記超音波振動子から送波された超音波を吸音する吸音部材とからなる超音波探触子を有し、該超音波探触子から被検体に送受波した超音波信号に基づいて当該被検体の超音波像を形成する超音波診断装置において、前記吸音部材で発生した熱を前記吸音部材から離れた位置に導く伝達手段と、前記吸音部材から離れた位置に配置され、前記伝達手段が導いた熱を放出する放出手段とを具備し、前記吸音部材の超音波振動子が設けられた面と対向する側の面を、前記超音波振動子から吸音部材へ向けて放射された超音波がその面で反射して集中するような焦点を有した曲面形状に形成し、前記伝達手段の吸熱部位を前記吸音部材の前記曲面に囲まれた内部の焦点位置に配置したことを特徴とする超音波診断装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、超音波診断装置に関し、特に、超音波を発生する探触子部分に超音波振動子で発生した熱を冷却するための冷却機構を有する超音波診断装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の超音波診断装置では、被検体の体表に当接し超音波を発生し送波すると共に、被検体内で反射される超音波を受波する超音波探触子と、各超音波振動子を駆動する送波信号を発生すると共に各超音波振動子が受波した受波信号から超音波画像を形成する画像形成手段、並びに、該超音波画像を表示する表示手段からなる装置本体と、超音波探触子と装置本体とを接続するケーブルとから構成されていた。
【0003】超音波探触子は、装置本体から供給される電気信号である送波信号を超音波に変換して当接する被検体に送波すると共に、被検体内から反射される超音波を受波して電気信号である受波信号に変換する超音波送受波用の振動子部を有しており、超音波探触子の用途別に、振動子部の形状およびその取り付け位置、並びに、超音波探触子本体の形状も様々のものがあった。
【0004】振動子部は、一般的には、被検体に当接する側から音響レンズ、音響整合層および圧電素子と、バッキング材とを積層して構成されていた。このとき、超音波振動子の前面側すなわち被検体側へ発せられた超音波は、音響整合層および音響レンズを介して被検体内に伝搬され、被検体内の音響インピーダンスが異なる部分でその一部が反射され、再び、超音波振動子に入射されていた。一方、超音波振動子の背面側すなわちバッキング材側に発せられた超音波は、バッキング材によって吸収・減衰され、再び、超音波振動子に戻ることがないようにされていた。
【0005】超音波探触子の内でも、特に、経食道用探触子あるいは体腔内用探触子は、超音波探触子の本体部分すなわち検者が超音波探触子を操作するグリップ部分と、この本体部分に設けた細長い棒状の挿入部と、この挿入部の先端部分に設けた振動子部とから構成されており、たとえば、挿入部を被検体の口から食道まで挿入することによって振動子部を体内に誘導し、この位置から超音波を送受波することによって、食道に近接する臓器の超音波画像を得るものであった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明者は、前記従来技術を検討した結果、以下の問題点を見いだした。一般的な超音波探触子を使用した従来の超音波診断装置では、バッキング材側に送波された超音波は、このバッキング材によって熱エネルギーに変化され、探触子本体から空気中に放出されていた。
【0007】一方、経食道用探触子あるいは体腔内用探触子を用いた従来の超音波診断装置では、前述するように、振動子部が被検体の体内に挿入されるてしまうので、バッキング材によって吸収された超音波は、熱エネルギーに変換され被検体を伝搬して放出されることとなる。しかしながら、被検体の体温は常温の気温よりも高い36.5℃前後もあるので、バッキング材で発生した熱は振動子部にこもってしまうこととなり、その結果として、振動子部の温度が容易に上昇してしまい被検体に違和感を与えてしまう等の問題があった。
【0008】また、従来の超音波探触子では、通常の外気温中に保管されているので、特に、冬季等では振動子部分は冷えており、このために超音波探触子を被検体に接触させた時に被検体が冷たく感じるという不快感を被検体に与えてしまうという問題があった。このために、現在では、超音波計測時に被検体に塗布するゼリー状のパラフィン等を予め温めておくことによって、被検体に与える不快感を減少させていた。
【0009】本願発明に類似する技術として、たとえば、特願平9−140706号公報(以下、「文献1」と記す)に記載の「超音波診断装置のプローブ」があった。この文献1に記載のプローブすなわち超音波探触子は、送受信1チャンネルにつき送信側の電子スイッチ回路と受信側のインピーダンス変換回路とからなる複数チャンネル分の超音波送受信回路を内蔵しており、この超音波送受信回路で発生する熱と振動子部で発生する熱とをヒートパイプで、超音波振動子を配した側と反対側のモールド樹脂部分に運び、このモールド樹脂を介して大気中に放出する構成となっていた。
【0010】しかしながら、この文献1に記載の超音波探触子では、超音波振動子を配した超音波送受部分が本体部分に直接形成されているので、熱源である超音波振動子と熱の放出部である超音波探触子本体部分とが離れて配置される経食道用探触子あるいは体腔内用探触子では、ヒートパイプの長さが長くなってしまうと共に、放熱部である超音波探触子本体部分は、超音波検査中においては、検者によって握られているので、検者の体温によって常時温められ、振動子部の冷却を十分に行うことはできないという問題があった。
【0011】本発明の目的は、超音波振動子部分の温度上昇を抑えることが可能な超音波診断装置を提供することにある。
【0012】本発明の他の目的は、超音波探触子の使用開始時における被検者の苦痛(違和感)を低減することが可能な超音波診断装置を提供することにある。
【0013】本発明のその他の目的は、検者の診断効率を向上することが可能な超音波診断装置を提供することにある。本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面によって明らかになるであろう。
【0014】
【課題を解決するための手段】本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、下記のとおりである。
(1)送波信号に基づいた超音波を発生すると共に受波した超音波を受波信号に変換する超音波振動子と、該超音波振動子の背面側に配置され前記超音波振動子から送波された超音波を吸音する吸音部材とからなる超音波探触子を有し、該超音波探触子から被検体に送受波した超音波信号に基づいて当該被検体の超音波像を形成する超音波診断装置において、前記吸音部材で発生した熱を前記吸音部材から離れた位置に導く伝達手段と、前記吸音部材から離れた位置に配置され、前記伝達手段が導いた熱を放出する放出手段とを具備し、前記吸音部材の超音波振動子が設けられた面と対向する側の面を、前記超音波振動子から吸音部材へ向けて放射された超音波がその面で反射して集中するような焦点を有した曲面形状に形成し、前記伝達手段の吸熱部位を前記吸音部材の前記曲面に囲まれた内部の焦点位置に配置した。
【0015】(2)送波信号に基づいた超音波を発生すると共に受波した超音波を受波信号に変換する超音波振動子と、該超音波振動子の背面側に配置され前記超音波振動子から送波された超音波を吸音する吸音部材とからなる超音波探触子を有し、該超音波探触子から被検体に送受波した超音波信号に基づいて当該被検体の超音波像を形成する超音波診断装置において、前記吸音部材で発生した熱を前記吸音部材から離れた位置に導く熱伝導手段と、前記吸音部材から離れた位置に配置され、前記熱伝導手段が導いた熱を放出する放出手段と、熱を所定の方向にポンピングする電子冷却手段とを具備し、熱の伝達方向が吸音部材側から放熱手段側となるように前記電子冷却手段を前記吸音部材と前記熱伝導手段との接続部分、前記熱伝導手段の一部、あるいは、前記熱伝導手段と前記放熱手段との接続部分に配置した。
【0016】(3)送波信号に基づいた超音波を発生すると共に受波した超音波を受波信号に変換する超音波振動子と、該超音波振動子の背面側に配置され前記超音波振動子から送波された超音波を吸音する吸音部材とからなる超音波探触子を有し、該超音波探触子から被検体に送受波した超音波信号に基づいて当該被検体の超音波像を形成する超音波診断装置において、前記吸音部材で発生した熱を前記吸音部材から離れた位置に導くあるいは前記吸音部材に熱を導く熱伝導手段と、前記吸音部材から離れた位置に配置され、前記熱伝導手段に導いた熱を放出する放出手段と、熱を所定の方向にポンピングする電子冷却手段とを具備し、熱の伝達方向が放熱手段側から吸音部材側となるように前記電子冷却手段を前記吸音部材と前記熱伝導手段との接続部分、前記熱伝導手段の一部、あるいは、前記熱伝導手段と前記放熱手段との接続部分に配置した。
【0017】(4)送波信号に基づいた超音波を発生すると共に受波した超音波を受波信号に変換する超音波振動子と、該超音波振動子の背面側に配置され前記超音波振動子から送波された超音波を吸音する吸音部材とからなる超音波探触子を有し、該超音波探触子から被検体に送受波した超音波信号に基づいて当該被検体の超音波像を形成する超音波診断装置において、前記吸音部材で発生した熱を前記吸音部材から離れた位置に導くあるいは前記吸音部材に熱を導く熱伝導手段と、前記吸音部材から離れた位置に配置され、前記熱伝導手段に導いた熱を放出する放出手段と、熱を所定の方向にポンピングする電子冷却手段と、該電子冷却手段の熱の伝達方向を吸音部材側から放熱手段側もしくはその逆方向となるように制御する伝導方向制御手段を具備し、前記電子冷却手段を前記吸音部材と前記熱伝導手段との接続部分、前記熱伝導手段の一部、あるいは、前記熱伝導手段と前記放熱手段との接続部分に設けた。
【0018】(5)前述した(2)ないし(4)の内のいずれかに記載の超音波診断装置において、前記吸音部材の超音波振動子と対向する側の面を焦点位置が吸音部材の内部となる放物面状に形成し、前記吸音部材で発生した熱を前記吸音部材から離れた位置に導く熱伝導手段と、前記吸音部材から離れた位置に配置され、前記熱伝導手段が導いた熱を放出する放7出手段とを具備し、該熱伝導手段の吸熱部位を前記吸音部材の超音波振動子と対向する側の面の焦点位置に配置した。
【0019】(6)前述した(1)ないし(5)の内のいずれかに記載の超音波診断装置において、前記熱伝導手段は、柔軟性を有する金属もしくはヒートポンプからなる。
【0020】(7)前述した(2)ないし(6)の内のいずれかに記載の超音波診断装置において、前記電子冷却手段としてペルチェ素子を用いる。
【0021】前述した(1)もしくは(5)の手段によれば、吸音部材の超音波振動子が配置される側と対向する側の面を、超音波振動子から吸音部材へ向けて放射された超音波がその面で反射して集中するような焦点を有した曲面形状とし、その曲面形状の焦点位置に熱伝導手段を配置することによって、吸音部材に入射する超音波を減衰させる過程において発生する熱を効率よく吸熱し、放熱部材に伝達することができるので、超音波振動子部分を効率よく冷却することができる。また、超音波振動子部分の冷却効率を向上することによって、さらに長時間の超音波診断(超音波計測)を行うことができるので、医師等の診断効率を向上することができる。なお、振動子部で発生する熱を効率良く吸熱する手段における原理については、後述の原理の項に詳述する。
【0022】このとき、熱伝導手段と放出手段との間に熱を所定の方向にポンピングする電子冷却手段とを設けることによって、熱伝導手段の放熱性能を向上することができるので、超音波振動子部分をさらに効率よく冷却することができる。
【0023】前述した(2)もしくは(4)の手段によれば、電子冷熱手段の熱ポンピング作用によって、効率的に熱伝導手段の放熱部側を冷却することができるので、この熱伝導手段の吸熱部側の吸熱効率を向上することができる。この結果、超音波振動子で発生する熱を効率良く冷却することができるようになるので、超音波振動子部分の温度上昇を防止することができる。
【0024】このとき、電流制御手段を設けて電子冷却手段における熱のポンピング方向を制御することによって、たとえば、超音波探触子の使用開始時においては熱のポンピング方向を放熱手段から熱伝導手段の側とすることによって、超音波振動子を加温することができるので、使用開始時における被検者の苦痛となる違和感を低減することができる。
【0025】また、超音波振動子部分の冷却効率を向上することによって、さらに長時間の超音波診断(超音波計測)を行うことができるので、医師等の診断効率を向上することができる。
【0026】前述した(3)の手段によれば、電子冷熱手段の熱ポンピング作用によって、超音波探触子の使用開始時においては熱のポンピング方向を放熱手段から熱伝導手段の側とすることができる、すなわち、超音波振動子を容易に加温することができるので、使用開始時における被検者の苦痛(違和感)を低減することができる。
【0027】(原理)図7はバッキング材の形状を放物線状に形成することによる当該バッキング材内における熱分布状態を説明するための図であり、3はバッキング材、5は超音波振動子(圧電素子)、6は第1および第2のマッチング層、7は音響レンズを示す。この図7は超音波探触子の配列方向(z軸方向)と垂直をなす断面図である。
【0028】この場合、超音波振動子5で発生した超音波は、図中のy軸と平行な方向に放射されるので、超音波振動子5で発生した超音波の内、y軸方向側に送波された超音波は、第1および第2の整合層6並びに音響レンズ7を伝搬して図示しない被検体内に伝搬する。
【0029】超音波振動子5で発生した超音波の内、y軸方向と逆の側に送波された超音波は、バッキング材3中をy軸方向と平行に伝搬しつつ、その振幅エネルギーが徐々に熱エネルギーに変換されるので、超音波が減衰することになる。このとき、バッキング材3の端部すなわち放物線に沿う形状とした側に到達した超音波は、この端部でその大部分が反射されることとなるが、本願発明では、この端部の形状がy軸とその軸が平行となる放物線に沿う形状となっているので、y軸と平行にバッキング材3に入射した超音波は、反射点の接線(接平面)における入射角と出射角とが等しくなる。このために、端部で反射された超音波はFで示される放物線の焦点に向かうこととなり、この焦点Fの付近に発生する熱が最も多くなる。
【0030】一方、従来のバッキング材3では、たとえば、図8に示すように、超音波探触子5と対向する側の面の形状は超音波振動子5の配列方向と平行に形成されていた。よって、超音波振動子5で発生した超音波の内、y軸方向と逆の側に送波された超音波は、バッキング材3中をy軸方向と平行に伝搬しつつ、その振幅エネルギーが徐々に熱エネルギーに変換されることによって超音波が減衰され、バッキング材3の端部に到達した超音波は、この端部でその大部分がy軸と平行に反射され、超音波振動子5に達するまでの間に減衰されていた。したがって、従来の超音波探触子では、バッキング材3中における熱分布は、ほぼ均等になっていたので、バッキング材3に単に熱伝導手段を設けたのでは、熱伝導手段による吸熱効率が低かった。
【0031】したがって、本願発明では、バッキング材3の放物線形状の焦点位置Fに熱伝導手段を配置し、バッキング材3で発生した熱を吸熱させることにより、振動子部で発生する熱を効率良く冷却させることが可能となる。
【0032】
【発明の実施の形態】以下、本発明について、発明の実施の形態(実施例)とともに図面を参照して詳細に説明する。なお、発明の実施の形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【0033】図1は本発明の一実施の形態の超音波診断装置の概略構成を説明するためのブロック図であり、101は超音波探触子、102は送受切り換え手段、103は送波手段、104は受波信号処理手段、105は加算手段、106は信号処理手段、107は表示手段を示す。
【0034】図1において、超音波探触子101は、たとえば、経食道用探触子と呼ばれる、当該超音波探触子の本体部分すなわち検者が超音波探触子を操作するグリップ部分と、この本体部分に設けた柔軟性を有する周知の細長い棒状の挿入部と、この挿入部の先端部分に設けた振動子部とから構成される超音波探触子であり、詳細については後述する。
【0035】送受切り換え手段102は、周知の切り換え回路からなり、たとえば、図示しない制御手段の制御出力に基づいて、振動子部の図示しない各超音波振動子に送波手段103からの駆動信号を伝達する系と、各超音波振動子からの受波信号を受波信号処理手段104に伝達する系とを切り換える。
【0036】送波手段103は、図示しない制御手段の出力に基づいて、送波フォーカス点までの超音波の到達時間差を補正する遅延時間差で、振動子部の各超音波振動子を駆動する駆動信号を発生し出力する周知の送波手段である。
【0037】受波信号処理手段104は、各超音波振動子に対して1個づつ対応して接続されており、各超音波振動子が受波した受波信号に対して、受波の際に深度方向に可変フォーカスが形成されるように時間遅延を与えることによって、ダイナミックフォーカスを行うための受波信号処理手段である。
【0038】加算手段105は、各受波信号処理手段104から出力される超音波振動子ごとの受波信号を加算して超音波ビームを形成する周知の加算手段である。
【0039】信号処理手段106は、たとえば、フィルタリング、圧縮、エッジ強調および時間可変増幅等の周知の処理(画像処理)を行った後に、この処理後の超音波ビームを表示手段107に表示するためのビデオ信号に変換するスキャン変換を行う手段である。
【0040】表示手段107は周知の表示手段であり、たとえば、CRT(CathodeRay Tube)を用いた、いわゆるカラーCRTディスプレイ装置を用いる。
【0041】放熱制御手段108は、電流の供給方向すなわち+端子と−端子との電圧方向を逆転することができる周知の電源であり、たとえば、図示しない検者からの指示に基づいて、後述する電子冷却手段に供給する電流の方向および電流量を制御する。
【0042】このように、本実施の形態の超音波診断装置では、送受切り換え手段102で選択された振動子部の各超音波振動子が、送波手段103によって収束ビームを形成するタイミングで駆動され、図示しない被検体に超音波を送波する。被検体からの超音波エコーすなわち反射超音波は、超音波探触子101の各超音波振動子で受波され、送受切り換え手段102により、各超音波振動子に対応する受波信号処理手段104に導かれ、遅延処理が行われる。各受波信号処理手段104からの出力は、加算手段105によって加算され、整相加算出力となる。この整相加算出力は信号処理手段106によって所定の処理がなされた後に、表示手段107に出力されて、たとえば、断層像やMモード像として、表示画面上にリアルタイムに表示される。
【0043】図2は本実施の形態の超音波探触子の概略構成を説明するための側面図であり、1aは振動子部、1bは挿入部、1cはグリップ部、1dはハンドル、1eはケーブルを示す。
【0044】この図2から明らかなように、本実施の形態の超音波探触子は、当該超音波探触子の本体部分であり、図示しない検者が当該超音波探触子の操作を行うグリップ部分1cと、該グリップ部分1cに設けらた柔軟性を有する円筒形の屈曲可能な挿入部1bと、この挿入部1bの先端部分に設けられた超音波の送受波を行う振動子部1aと、挿入部1bの屈曲度合いを可変するハンドル1dと、振動子部1aの図示しない各超音波振動子と本実施の形態の超音波診断装置の装置本体部分の送受切り換え手段102とを電気的に接続するケーブル1eとからなる。
【0045】次に、図3に図2中にAで示す振動子部の振動子の配列方向(z軸方向)の断面図を、図4に図3中のC−C’線での断面図を示し、以下、図2〜4に基づいて、本実施の形態の超音波探触子の振動子部の構成を説明する。
【0046】図2〜4において、2はヒートポンプ、3はバッキング材、4はケース、5は超音波振動子(圧電素子)、6はマッチング層(整合層)、7は音響レンズ、8は断熱材、9は信号線を示す。また、図中のx,y,zはそれぞれ直交する座標系を示す。
【0047】図3から明らかなように、本実施の形態の振動子部1aは、周知の圧電素子で形成された複数個の超音波振動子5を有し、この超音波振動子5には、順番に、整合層6と音響レンズ7とが超音波の送波側となるy軸方向に設けられている。この音響レンズ7は、ハンドル1dの操作によって屈曲可能に構成された挿入部1bを形成するケース4の先端開口から外部を覗く状態で配置されている。一方、超音波振動子5の背面側すなわちy軸の逆方向には、バッキング材3が設けられており、このバッキング材3によって、超音波計測に不要となる超音波を吸音している。
【0048】バッキング材3には、その曲面部内の焦点Fの位置に熱を伝達するためのヒートポンプ2が挿入部1bの延在方向すなわちz軸方向に設けられている。このときのヒートポンプ2の一端側すなわち吸熱部側の取り付け位置は、図4に示すように、バッキング材3の放物面の焦点位置とすることによって、前述した原理に示すように、バッキング材3で発生する熱を最も効率良くヒートパイプ2に吸熱させることができる。また、ヒートポンプ2は、挿入部1b内を通りその他端側すなわち放熱部側がグリップ部1cの内部に設けられた放熱手段である放熱板11(後述の図5を参照)に取り付けられている。なお、グリップ部1c内の放熱機構の詳細については、後述する。
【0049】超音波振動子5には、図示しない電極が設けられており、この電極に信号線9の一端が接続されており、他端がケーブル1eとして束ねられて装置本体に接続される。
【0050】このとき、ヒートポンプ2の熱を効率良くグリップ部1cに伝導するために、ケース4の内側には、信号線9およびヒートポンプ2を囲むように周知の断熱材8が円筒状にグリップ部1cに至るまで配置されている。
【0051】このように、断熱材8を配置することによって、ヒートポンプ2の熱伝導性を低下させることなく、両端部分における吸熱と放熱との効率を向上している。また、本実施の形態のヒートポンプ2としては、たとえば、宇宙開発等で用いられているフレキシブルヒートパイプ等を用いることによって、熱の伝導性を確保しつつ、ヒートポンプ2すなわち挿入部1bの柔軟性を確保している。
【0052】次に、図5に図2中にBで示す部分のグリップ部の長手方向(z軸方向)の断面図を示し、以下、図5に基づいて、本実施の形態の超音波探触子のグリップ部の構成を説明する。
【0053】図5から明らかなように、グリップ部1cの内部には、たとえば、周知の複数枚のアルミ板を組み合わせて構成した放熱板11が設けられている。この放熱板11に電子冷却素子である周知のペルチェ素子を用いたいわゆる電子冷却ユニットと呼ばれる電子冷却手段10を設け、該電子冷却手段を介してヒートポンプ2の他端側が接続する。このように、ヒートポンプ2と放熱板11との間に電子冷却手段を設け、放熱制御手段108から電子冷却手段10に供給する駆動電流の方向および電流量を制御することによって、ヒートポンプ2の放熱部側での放熱効率を向上すると共に、ヒートポンプ2と放熱板11とにおける熱の伝導方向を制御する。
【0054】次に、図2〜5に基づいて本実施の形態の超音波診断装置における振動子部の放熱動作および加熱動作を説明する。
【0055】超音波の送波時においては、超音波振動子5から背面側に送波された超音波が伝搬され、バッキング材3中で振動エネルギー(超音波エネルギー)が減衰しつつ熱エネルギー変換される。このとき、バッキング材中における減衰過程では、超音波振動子5から入射された超音波が減衰される分と、バッキング材3の背面側すなわち超音波振動子5が配置される側と対向する側にまで到達し、反射された超音波が再びバッキング材3中を伝搬しながら減衰されていく分とがある。このとき、本実施の形態では、バッキング材3の背面側を放物線に沿う形状としているので、バッキング材3の背面で反射された超音波はこの放物線の焦点位置Fに集中することとなるので、バッキング材3の中で最も温度が上昇することになる。
【0056】このとき、本実施の形態では、この位置すなわち焦点位置Fにヒートポンプ2を配置しているので、このバッキング材3で発生する熱を効率良く吸熱することができる。このヒートポンプ2に吸熱された熱エネルギーは、ヒートポンプ2の熱伝導性によって効率良くグリップ部1cの側に伝導されることとなる。
【0057】一方、グリップ部1cの側においては、電子冷却手段10による熱のポンピング(汲み上げ)作用によって、ヒートポンプ2の熱が放熱板11の側にポンピングされていくので、ヒートポンプ2の他端側であるグリップ部1cの側では、冷却されることとなり、ヒートポンプ2全体すなわちバッキング材3を効率良く冷却することが可能となる。したがって、グリップ部1cが検者の手等で温められている場合であっても、バッキング材3すなわち振動子部1aを効率良く冷却することができる。したがって、被検体に不快感を与えることなく超音波診断を行うことが可能となる。また、振動子部1aの温度上昇を防止することが可能となることによって、振動子部1aの温度上昇による診断の中止を考慮する必要がなくなるので、診断効率を向上することが可能となる。
【0058】また、放熱制御手段108から電子冷却手段10に供給する電流の向きを反転させることによって、熱のポンピング方向を逆転させる、すなわち、放熱板11側の熱をヒートポンプ2の側にポンピングさせることによって、ヒートポンプ2の他端側であるグリップ部1c側から一端側であるバッキング材3の側に、放熱板11からポンピングした熱を伝導させることができるので、バッキング材3を容易に加温することができる。バッキング材3に伝導された熱は、バッキング材3から超音波振動子5、整合層6、音響レンズ7の順番に伝導され、振動子部1a全体を加温することが可能となるので、たとえば、冬季間のように、保管中に冷えてしまっている振動子部1aを容易に加温させることができ、使用開始時における被検者の苦痛となる違和感を低減することができる。したがって、被検体に塗布するゼリー等の加温を行う必要がなくなり、医師等の診断効率をさらに向上することができる。
【0059】さらには、本実施の形態の超音波探触子を用いた超音波診断装置では、電子冷却手段10でポンピングする熱量によってヒートポンプ2から放熱板11に放熱する熱量すなわちバッキング材3の冷却度合いを制御することができるので、振動子部1aの温度を一定に保持することが可能となる。したがって、超音波計測の開始から終了までの間の超音波振動子5の温度変化を少なくすることができる。その結果、超音波振動子5の温度変化に伴う超音波画像の画質を向上することができる。
【0060】以上説明したように、本実施の形態の超音波診断装置では、バッキング材3の超音波振動子5が配置される側と対向する側の面を、その曲面の形状が放物線形状となるかまぼこ型とし、その放物線形状の焦点位置Fにヒートポンプ2を配置することによって、振動子部1aで発生する熱すなわちバッキング材3に入射する超音波を減衰させる過程において発生する熱を効率よく吸熱し、ヒートポンプ2でグリップ部1cに伝導させると共に、グリップ部1cに設けた放熱板1には電子冷却手段10を介してヒートポンプ2を当接することによって、該電子冷却手段10の熱のポンピング作用によってヒートポンプ2の熱を効率よく放熱板11に放熱することができるので、振動子部1aを効率よく冷却することができる。
【0061】さらには、本実施の形態では、挿入部1bに柔軟性を有する経食道用探触子の場合について説明したが、たとえば、図6に示す体腔用の超音波探触子のように挿入部1bが固い物質でできた超音波探触子にも適用でき、この場合には、ヒートポンプ2として、たとえば、その容器として銅等の熱の伝導率の高い物質を使用した高効率の熱伝導性を有する液体の潜熱を利用した周知のヒートパイプ等を使用することができる。したがって、振動子部1aの冷却効率をさらに向上することができる。ただし、他の部分の構成については、前述した経食道用探触子と同様に、バッキング材3の対向面の焦点位置Fにこのヒートポンプ2の一端側を配置し、他端側に電子冷却素子10を介して放熱板11を設けた構成となっているので、図6に示す探触子においても、前述する効果を得ることができる。
【0062】また、バッキング材3の超音波振動子5と対向する側の面の形状は、超音波振動子の配列方向に対しては同じ高さであり、配列方向と垂直をなす方向に対しては放物線に沿う形状に形成することによって、振動子部1aを円柱状でかつ小型化できるという効果もある。
【0063】また、バッキング材3あるいはヒートポンプ2に温度検出手段を設け、この温度検出器の出力に基づいて、ペルチェ素子10の動作電流の電流量あるいは/および電流の方向を放熱制御手段108で制御することによって、振動子部1aの温度を一定に保持できるという効果もある。このとき、動作電流の電流値の制御ではなく、動作電流のON/OFFを制御してもよいことはいうまでもなく、この場合においても、電流値を制御した場合と同様な効果を得ることができる。
【0064】また、本実施の形態においては、放熱手段として超音波探触子のグリップ部1c内に放熱板11を設ける構成としたが、これに限定されることはなく、たとえば、ペルチェ素子10をケース4に直接取り付けてこのケース4を放熱手段としてもよいことは言うまでもない。このとき、ケース4の外側に放熱板等を設けることによって、放熱性能を向上できることは言うまでもない。
【0065】さらには、バッキング材3の超音波振動子5と対向する側の面の形状をかまぼこ形としたが、これに限定されることはなく、たとえば、対向する側の面の形状を、放物線の軸を回転中心として1回転させた形状としてもよいことは言うまでもない。
【0066】以上、本発明者によってなされた発明を、前記発明の実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、前記発明の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは勿論である。
【0067】
【発明の効果】本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、下記の通りである。
(1)超音波振動子部分の温度上昇を抑えることができる。
(2)超音波探触子の使用開始時における被検者の苦痛(違和感)を低減することができる。
(3)検者の診断効率を向上することができる。
【出願人】 【識別番号】000153498
【氏名又は名称】株式会社日立メディコ
【出願日】 平成10年(1998)4月16日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】秋田 収喜
【公開番号】 特開平11−299775
【公開日】 平成11年(1999)11月2日
【出願番号】 特願平10−105967