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【発明の名称】 眼底撮影装置
【発明者】 【氏名】浜田 洋一

【要約】 【課題】自動動作する眼底撮影装置では、光学系を前眼部観察光学系から眼底撮影光学系に切り替えたときに被検眼の固視が狂って視線が動揺してしまい、それ以降の眼底カメラの動作に支障をきたすので光学系切り替え前に被検眼の視度に応じて眼底撮影光学系の焦点を合わせることができ、光学系切替時の被検眼の視線の動揺を防止できるような眼底撮影装置を提供する。

【解決手段】眼底撮影装置では、眼底撮影光学系の焦点を調整する焦点調整部(フォーカスレンズ)7が移動手段59に連動し、移動に伴い変化する視度指標63の視度に合わせて眼底撮影光学系の焦点が調整される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 被検眼の眼底を撮影する眼底撮影光学系と、視度指標と、該視度視標を視度が変化する方向に移動させる移動手段とを具備し、該眼底撮影光学系の焦点を調整する焦点調整部が該移動手段に連動し、移動に伴い変化する該視度指標の視度に合わせて該眼底撮影光学系の焦点が調整される眼底撮影装置。
【請求項2】 前記視度指標の位置に対応して変化する変量を検出する検出手段を具備し、前記焦点調整部が、該検出手段の出力に基づき、該視度指標の視度に合わせて眼底撮影光学系の焦点を調整するように駆動される、請求項1記載の眼底撮影装置。
【請求項3】 前記被検眼の前眼部を観察する前眼部観察光学系を具備し、前記視度指標が該前眼部観察光学系に組み込まれた、請求項1または2記載の眼底撮影装置。
【請求項4】 前記移動手段が操作部を備え、前記視度指標がこの操作部の操作に応じて移動する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の眼底撮影装置。
【請求項5】 前記移動手段が手動装置である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の眼底撮影装置。
【請求項6】 前記移動手段が前記視度指標を移動させるための動力装置を備えた、請求項1〜4のいずれか1項に記載の眼底撮影装置。
【請求項7】 前記被検眼にアライメント指標光を投射し、該アライメント指標光の眼球面反射像を前眼部観察光学系で受像し、この眼球面反射像を追随しつつ前記眼底撮影光学系のアライメントを自動的に行うアライメント手段を具備する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の眼底撮影装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、眼底撮影装置に関し、特に、眼底撮影光学系の焦点を被検眼の視度に合わせて調整できる眼底撮影装置に関する。
【0002】
【従来の技術】眼科装置の一つに眼底カメラ(眼底撮影装置)がある。これは被検眼の眼底を撮影するための装置である。
【0003】眼底力メラでは眼底の所定位置を撮影するために、固視標により被検眼の視線を誘導した後に撮影を行う。一方、眼底力メラは瞳孔を通して照明、撮影を行うため、眼底撮影光学系と被検眼の瞳との位置合わせが重要である。従来の手動操作による眼底力メラでは、次の手順で撮影をしていた。まず正面を向く被検眼の前限部を前眼部観察光学系で観察し、観察画面の中央に瞳孔が写るように光軸をあわせる。そして、例えばスプリットイメージにより作動距離を合わせる。これにより、光学系と被検眼の概略的な位置合わせがなされる。次にカメラの光学系を眼底撮影光学系に切替えて眼底を映し出す。そして、スプリットイメージを用いて眼底に焦点を合わせる。焦点が合うと固視標にピントが合うことになるので、被検者は固視標をはっきりと視認できるようになる。そして、用意された指標光を用いて詳細位置合わせを行ってから撮影を行う。
【0004】このように、手動操作式の眼底カメラでは、煩雑な操作が必要となり、また、撮影までに時間もかかるので被検者に長時間の緊張を強いることととなる。このような煩雑な操作を解消し、また、撮影に要する時間を短縮することができるように、光学系の被検眼に対するアライメントを自動的に行う眼底力メラも提案されている。この眼底カメラは次のように動作が自動でなされる。まず前眼部観察光学系の観察画面によってXY方向のアライメントがなされ、次に作動距離合わせがなされる。次にカメラの光学系が眼底撮影光学系に切替わる。次に眼底に自動フォーカシングがなされて、眼底像が撮影される。
【0005】この装置では、光学系切替によって被検者がのぞき見ることのできる光路が切り替わってしまうので、2系統の固視標が設けられている。つまり、被検眼が光学系切替前に見る固視灯の系統と、切替後に見る固視標の系統が設けられており、光学系が切り替わっても被検眼の視線が動揺しないようにしているのである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、被検眼によってその視度はまちまちであるため、被検者によっては固視標をはっきりと視認できない場合がある。すなわち、本来、固視標のピントは眼底へのフォーカシングがなされた状態でしか合わないのであるが、上記自動式の眼底カメラでは光学系切替前から被検者に固視標を見せる必要があるので、眼底フォーカシングがされないままの状態で固視標を見せている。被検眼が固視標をはっきりと視認できるような視度である場合には問題はないが、そうでない場合、特に被検眼の視度が標準的な視度から大きく偏倚しているような場合には固視標をはっきりと見ることができず、正しい固視ができない。するとアライメントができないし、また、光学系の切替に際し固視が狂って視線が動揺してしまい、それ以降の眼底カメラの動作に支障をきたすことにもなる。
【0007】本発明は、上記課題に鑑み、光学系切り替え前に被検眼の視度に応じて眼底撮影光学系の焦点を合わせることができ、光学系切替時の被検眼の視線の動揺を防止できるような眼底撮影装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するためこの出願発明に係る眼底撮影装置は、被検眼の眼底を撮影する眼底撮影光学系と、視度指標と、該視度視標を視度が変化する方向に移動させる移動手段とを具備し、該眼底撮影光学系の焦点を調整する焦点調整部が該移動手段に連動し、移動に伴い変化する該視度指標の視度に合わせて該眼底撮影光学系の焦点が調整されるように構成されている(請求項1)。この眼底撮影装置において、前記視度指標の位置に対応して変化する変量を検出する検出手段を具備し、前記焦点調整部が、該検出手段の出力に基づき、該視度指標の視度に合わせて眼底撮影光学系の焦点を調整するように駆動されるようにしてもよい(請求項2)。このように構成されているので、視度指標の位置は連続的に変化させることができる。そして被検者が最も明確に視認できる位置に視度指標を停止させ、この視度指標の位置に基づいて眼底撮影光学系の焦点を調整することができるので、光学系切替時の被検眼の視線の動揺を防止することができる。
【0009】また、前記眼底撮影装置において、前記被検眼の前眼部を観察する前眼部観察光学系を具備し、前記視度指標が該前眼部観察光学系に組み込まれるように構成してもよい(請求項3)。このように構成すると、前眼部観察時に明瞭な視度指標を固視標として見せることができるので被検眼の視線を安定させた状態で前眼部を観察できる。また、前眼部観察光学系から眼底撮影光学系に光学系の切り替えがなされた時、眼底撮影光学系側の明瞭な固視標をすぐに確認できるので被検眼の視線が動揺しない。
【0010】また、前記眼底撮影装置において、前記移動手段が操作部を備え、前記視度指標がこの操作部の操作に応じて移動するように構成するのがよい(請求項4)。
【0011】また、前記移動手段は、手動装置であってもよいし(請求項5)、前記視度指標を移動させるための動力装置を備えたものであってもよい(請求項6)。
【0012】また、前記被検眼にアライメント指標光を投射し、該アライメント指標光の眼球面反射像を前眼部観察光学系で受像し、この眼球面反射像を追随しつつ前記眼底撮影光学系のアライメントを自動的に行うアライメント手段を具備するようにしてもよい(請求項7)。このように構成すると、アライメント時に視線が安定するので正確なアライメントが可能となる。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本出願発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0014】まず、図1、図2、図3に基づいて、本発明の一実施形態である眼底撮影装置1の装置構成を説明する。図1は、眼底撮影装置1の概略構成を示すブロック図であり、図2は、眼底撮影装置1に設けられた前眼部観察光学系Saの構成を詳細に示すブロック図であり、図3は、視度指標63、移動手段59、フォーカスレンズ7等の関係を示す図である。
【0015】図1に示されるように眼底撮影装置1は主として種々の光学系をその上に配設した鏡体3と、この鏡体3を駆動する駆動機構(XY軸駆動機構50、Z軸駆動機構52)と、前記光学系からの信号を処理したり駆動機構を制御したりするための制御回路91から構成されている。
【0016】鏡体3上には、主に、前眼部観察光学系Sa、作動距離指標投影光学系Sb、作動距離検出光学系Sc、眼底撮影光学系Sd、が配設されている。
【0017】前眼部観察光学系Saは、図1において符号Saで示す一点鎖線によって囲まれた部分の光学系であり、その構成は図2に詳細に示されている。この前眼部観察光学系Saは、被検眼Eの眼球面Fにアライメント指標光を投影してこの指標光の眼球面Fからの反射光を受光すると共に、被検眼Eの前眼部像を受像するための光学系である。また、この前眼部観察光学系Saには被検眼Eの視度を検出するための光学系80が組み込まれている。
【0018】前眼部観察光学系Saは、アライメント指標光の投影・受光および前眼部像受像のために、アライメント指標光を発するための赤外発光ダイオード21a、集光レンズ23、ミラー25及び凹レンズ26、ハーフミラー24、前眼部観察用レンズ28、テレビカメラ30及び前眼部照明用光源21bを備えている。凹レンズ26は対物レンズ5の強いパワーを打消す補正を行うためのものであり、その打ち消すパワーの強いものが用いられる。赤外発光ダイオード21aから発せられたアライメント指標光である赤外光は、アライメント指標光軸27aに沿って集光レンズ23及びハーフミラー24を通過し、ミラー25により反射され、撮影光軸4上に光路を折曲げられる。さらにアライメント指標光は凹レンズ26と眼底撮影光学系Sdの対物レンズ5とを通過し、被検眼Eの眼球面Fに向けて平行光として投射される。そして、このアライメント指標光の眼球面Fからの反射光は、対物レンズ5と凹レンズ26とを通過し、ミラー25により反射され、アライメント指標光軸27a上に光路を折曲げられる。さらにこの反射光はハーフミラー24により反射され、前眼部観察光軸27b上に光路を折曲げられる。そして前眼部観察用レンズ28を通過した反射光は、テレビカメラ30のCCD受光面29上に達し、結像する。また、被検眼Eの前眼部像も、アライメント指標光の反射光と同じルートにて、テレビカメラ30に入力される。前眼部照明用光源21bは、前眼部像がより鮮明に形成されるように、赤外光で被検眼Eを照明するために設けられたものである。テレビカメラ30から出力される画像信号は制御回路91に入力される。
【0019】なお、凹レンズ26とミラー25とは、眼底撮影光学系Sdで眼底を撮影するときには、光路切替機構54によって撮影光軸4から退避させられる。
【0020】前述したように、この前眼部観察光学系Saには、被検眼Eの視度を検出するための光学系80が組み込まれている。図2に示されるようにこの光学系80は、可視光反射赤外透過ミラー61によって光軸27aから折り曲げられた光軸27d上に配設された、リレーレンズ62、視度指標63、および、可視光発光ダイオード64から構成されている。視度指標63に表されたパターンは、裏面から可視光発光ダイオード64に照射される。リレーレンズ62、視度指標63および可視光発光ダイオード64は、光軸27dに沿って一体的に移動可能に構成されており、これらを移動手段59が移動させる。
【0021】再度図1を参照すると、作動距離指標投影光学系Sbは、撮影光軸4に対して45度をなす作動距離検出指標光軸35aに沿って配設される作動距離検出用発光ダイオード(赤外LED)31、集光レンズ32、作動距離検出指標用スリット33及び投影レンズ34から構成される。作動距離検出用発光ダイオード31からの光は、作動距離検出指標光軸35aに沿って進み、集光レンズ32、作動距離検出指標用スリット33、投影レンズ34を順次通過することによって作動距離検出指標光として眼球面Fに入射される。
【0022】作動距離検出光学系Scは、眼球面Fにより反射された前記作動距離検出指標光を受光するための結像レンズ36及び作動距離検出用受光素子(PSD)37を備えて構成される。結像レンズ36及び作動距離検出用受光素子37は、撮影光軸4に対して作動距離検出指標光軸35aと対称をなす作動距離検出光軸35bに沿って配設される。そして、作動距離検出用受光素子37は、前記作動距離検出指標光の受光に伴う受光信号を制御回路91へ出力する。
【0023】眼底撮影光学系Sdは、図1において符号Sdによって示された一点鎖線によって囲まれた部分の光学系である。この眼底撮影光学系Sdは、被検眼Eの眼底を照明するための光学系Sd1、光学系Sd1の照明光に基づき眼底を撮影するための光学系Sd2、および、光学系Sd2の焦点を被検眼Eの眼底に合わせるための光学系Sd3で構成されている。
【0024】光学系Sd1は、ストロボ放電管11、集光レンズ12、13、円形スリット14、ミラー15、集光レンズ18、20及び穴あきミラー6を備えている。ストロボ放電管11の発する可視光は、集光レンズ12及び13により円形スリット14の位置に集束した後、該円形スリット14を通過してミラー15により反射され、照明光軸16上に光路を折曲げられる。さらにこの可視光は照明光軸16上を進み、集光レンズ18、光学系Sd3のハーフミラー19及び集光レンズ20を経て穴あきミラー6付近で集束し、円形スリットの像が穴あきミラー6上に形成される。さらにこの可視光は穴あきミラー6で反射され、撮影光軸4上に光路を折曲げられて対物レンズ5を通過し、被検眼Eの頂点位置から瞳孔付近で集束し、眼底網膜面を照射するようになっている。
【0025】光学系Sd2は、対物レンズ5、フォーカスレンズ7、リレーレンズ8及びテレビカメラ(眼底撮像用カラーテレビカメラ)10を備えている。これらの部材は撮影光軸4上に配設されている。眼底像は対物レンズ5、光学系Sd1の穴あきミラー6、フォーカスレンズ7及びリレーレンズ8を通過して、テレビカメラ10のCCD受光面9に結像され、撮影される。テレビカメラ10から出力される画像信号は制御回路91に入力される。フォーカスレンズ7は眼底撮影光学系Sdの焦点を調整する焦点調整部として機能する。
【0026】光学系Sd3は、ハロゲンランプ38、集光レンズ39、自動焦点指標用スリット40、投影レンズ41、スプリットプリズム42、固視標43、集光レンズ44及びハーフミラー19を備えている。このうちハロゲンランプ38、集光レンズ39、自動焦点指標用スリット40、投影レンズ41、スプリットプリズム42及び固視標43は一体的に可動部45を形成する。固視標43はスプリットプリズム42とほぼ同位置に設けられている。この位置はテレビカメラ10の結像位置であるCCD受光面9の位置と等価の位置である。固視標43は、前眼部観察光学系Saに組み込まれた視度指標63によって固定された被検眼Eの視線を、ミラー25と凹レンズ26とが撮影光軸4から退避した後もその角度のまま固定維持させるために設けられたものである。
【0027】眼底撮影装置1の架台と鏡体3との間には、XY軸駆動機構50およびZ軸駆動機構52が介在し、架台に対する鏡体3の位置はこれらの駆動機構によって変更される。Z軸駆動機構52は、鏡体3をZ方向に移動させるための駆動機構である。ここでZ方向とは、被検眼Eに対して接近・離隔する方向(図1における左右方向)である。なお、撮影光軸4の方向は、Z方向に一致している。XY軸駆動機構50は、鏡体3をXY方向に移動させるための駆動機構である。ここでX方向とは、水平面内においてZ軸と直交する方向(図1における紙面と垂直な方向)をいう。また、Y方向とは、鉛直方向(図1における上下方向)をいう。
【0028】制御回路91は、テレビカメラ10、テレビカメラ30、作動距離検出用受光素子37からの信号を入力し、これらの信号を所定の手順に従って処理してXY軸駆動機構50、Z軸駆動機構52、光路切替機構54、合焦駆動機構56等に制御信号を送出するための回路である。
【0029】次に図3に基づいて、移動手段59と視度指標63、フォーカスレンズ7等がどのように結合されているかを説明する。この移動手段59は手動装置であり、操作部たる操作つまみ59aと、この操作つまみ59aに連結されて操作つまみ59aの回転運動を直線運動に変換するラック・ピニオン機構のような変換機構59bとで構成されている。リレーレンズ62、視度指標63および可視光発光ダイオード64は、変換機構59bの一方の出力部に取り付けられており、操作つまみ59aの回転に連動して光軸27dに沿って移動する。一方、フォーカスレンズ7と可動部45は変換機構59bの他方の出力部に取り付けられており、操作つまみ59aの回転に連動してそれぞれ撮影光軸4、光軸46に沿って移動する。つまり、視度指標63と眼底撮影光学系Sdの焦点調整部たるフォーカスレンズ7とは連動して移動するように構成されている。視度指標63の視度は、光軸27d上の位置によって決まるので、操作つまみ59aが回転操作されて視度指標63の位置が変化するとその視度も変化する。一方、操作つまみ59aが回転操作されるとフォーカスレンズ7や可動部45の位置も変化するので眼底撮影光学系Sdの焦点も変化するのであるが、その焦点の変化が視度指標63の視度の変化を追随するように構成されている。つまり、操作つまみ59aの回転操作によって視度指標63がどのような位置に移動しても、眼底撮影光学系Sdの焦点は常に視度指標63の視度に合致しているのである。なお、操作つまみ59aの回転によって視度指標63とフォーカスレンズ7とが移動するのであるが、視度指標63とフォーカスレンズ7の移動量は同じであってもよいし異なっていてもよい。また、移動方向が同一であっても逆向きであってもよい。要は、眼底撮影光学系Sdの焦点の変化が視度指標63の視度の変化を追随できればよいのである。
【0030】次に、眼底撮影装置1の動作・操作手順を、説明する。動作・操作手順は、(1)視度検出・予備的焦点調整、(2)アライメント、(3)作動距離調整、(4)合焦、(5)眼底撮影の各段階に分けることができる。以下、これらの各段階毎に説明を行う。
【0031】(1)視度検出・予備的焦点調整先ず被検者が眼底撮影装置1の前面に設けられたアゴ台(図示せず)に頭部を固定すると、眼底撮影装置1の操作者はこのアゴ台を操作して、モニタ表示器92にテレビカメラ30が受像した被検者の被検眼Eの前眼部が映るように調整する。この調整がなされた状態では、被検眼は概略、図1に示されるように光軸4付近に位置することになる。このとき被検者には、対物レンズ5を通して光学系80に組み込まれた視度指標63が見える。
【0032】次に被検者は、操作つまみ59aを回転させながら視度指標63を最も鮮明に見ることのできる位置に視度指標63を移動させる。つまり、操作つまみ59aの回転によって視度指標63は光軸27d上を移動する。すると、被検眼Eから視度指標63までの光路長が変化し、視度指標63の視度が変化する。被検者は自分の視度に最も適した位置、すなわち、最も鮮明に見えるような位置に視度指標63を移動させるのである。
【0033】視度は、通常、ジオプタという単位で表される。視度をこの単位で表したとき、その数値が標準的な数値(標準値)であるような被検眼にとっては、視度指標63が可動範囲の略中央位置にあるときに視度指標63を最も鮮明に見ることができる。数値が標準値からある程度プラス側に偏倚しているような被検眼にとっては、遠い位置に移動させると視度指標63を鮮明に見ることができる。反対に、数値が標準値からある程度マイナス側に偏倚しているような被検眼にとっては、近い位置に移動させると視度指標を鮮明に見ることができる。このように被検眼Eの視度によって、どのような位置に視度指標63を移動させるとこれを最も鮮明に見ることができるかが決定される。被検眼Eの視度がどのようなものであっても、最も鮮明に見える位置に視度指標63を移動させることによって、固視を安定させることができる。
【0034】一方、前述したように、操作つまみ59aの回転操作は、フォーカスレンズ7や可動部45を撮影光軸4、光軸46上で移動させて、眼底撮影光学系Sdの焦点を視度指標63の視度に追随させる。よって、視度指標63の位置合わせがされると同時に予備的焦点調整がなされることになる。
【0035】視度指標63の位置合わせが終わると、被検者または操作者は起動スイッチ(図示せず)を操作することにより制御回路91に起動信号を与える。以降、眼底撮影装置1は、アライメントから眼底撮影までを自動的に行う。
【0036】なお後述するように、被検眼Eを受像する光学系が前眼部観察光学系Saから眼底撮影光学系Sdに切り替えられた後に、最終的な焦点調整(合焦)がなされる。
【0037】(2)アライメント前記起動信号を受けると、次に制御回路91は、赤外発光ダイオード21aと作動距離検出用発光ダイオード31を点灯させる。そして、テレビカメラ30の撮像画面に写された前眼部像にアライメント指標光の眼球面Fからの反射光による眼球面反射像(プルキンエ像)が鮮明に写るようになるまで、Z軸駆動機構52を駆動して鏡体3を被検眼Eに向かって前進せしめる。プルキンエ像がテレビカメラ30の撮像画面上で鮮明に認識されると、プルキンエ像がテレビカメラ30の撮像画面上の概略中央部に設定された所定範囲に入るように鏡体3をXY方向に駆動させる。プルキンエ像がこの所定範囲に入ることによってXY方向のアライメントが完了する。前述のように、被検者は被検眼Eの視度に合致した視度の視度指標63を見ているので固視が安定し、よって、アライメントも正確になされる。
【0038】(3)作動距離調整次に、撮影画面上の前記所定範囲にプルキンエ像が入ったままの状態が維持されるように、すなわちアライメントがされた状態が維持されるようにプルキンエ像を追随しながらXY軸駆動機構50を制御しつつ、作動距離調整がなされる。作動距離調整は、作動距離検出用受光素子37が作動距離検出指標光(眼球面反射光)を受光するまで、鏡体3を被検眼Eに向かって前進させることによりなされる。
【0039】つまり、アライメントが完了した時点では、眼底撮影光学系Sdは作動距離よりも被検眼Eから離隔した位置にあり、この状態では前記作動距離検出指標光が眼球面Fの頂点(被検眼頂点)ERには入射されない。鏡体3の前進によって、鏡体3が被検眼Eに対してある距離にまで達すると、作動距離指標投影光学系Sbによる前記指標光が眼球面Fの被検眼頂点に入射され、その反射光が作動距離検出用受光素子37に受光される。制御回路91は、作動距離検出用受光素子37が作動距離検出指標光(眼球面反射光)を受光したことを検知すると、XY軸駆動機構50及びZ軸駆動機構52の駆動動作を停止させる。このようにして作動距離調整が完了する。また、プルキンエ像を追随しながら行っていたXY方向のアライメント状態の維持も、XY軸駆動機構50を一旦停止させることによって終了する。
【0040】(4)合焦上記のようにして作動距離調整が完了すると、制御回路91から完了信号が光路切替機構54に出力され、これを受けて光路切替機構54はミラー25と凹レンズ26とを撮影光軸4から退避させる。こうして、被検眼Eを受像する光学系が、前眼部観察光学系Saから眼底撮影光学系Sdへ切り替えられるのであるが、すでに眼底撮影光学系Sdの予備的な焦点調整がなされているので、被検者には切り替え直後にも鮮明な固視標43の像を注視できる。従って、被検眼Eの視線は動揺しない。
【0041】そして、次のような公知の方法で合焦がなされる。すなわち、制御回路91でハロゲンランプ38を点灯させ、図示しない検出光学経路により合焦が検出されるまで、光学系Sd3の可動部45と光学系Sd2のフォーカスレンズ7とをZ方向に連動移動させる。可動部45およびフォーカスレンズ7の移動は、合焦駆動機構56に制御回路91から駆動信号を送出することによってなされる。
【0042】前述したように、光学系の切り替え前にすでに眼底撮影光学系Sdの予備的な焦点調整がなされているので、この段階での可動部45とフォーカスレンズ7の移動量はそれほど大きくはない。よって、光学系の切り替えがされてから合焦が完了するまでの時間は、従来の眼底撮影装置に比べて大幅に短縮される。
【0043】このようにして最終的な焦点調整(合焦)が完了すると、ハロゲンランプ38は消灯される。
【0044】(5)眼底撮影上記のようにして合焦が完了すると、制御回路91に制御されてストロボ発光回路57がストロボ放電管11を発光させ、これに同期してテレビカメラ10が眼底像を撮影する。眼底撮影後、鏡体3は初期の待機位置に戻りスタンバイ状態となる。眼底撮影装置1の動作、操作手順は以上の通りである。
【0045】次に、図4、図5に基づいて、移動手段の他の構成例を説明する。
【0046】図4に示す移動手段95は、図3の移動手段59とは異なり、動力装置たるモータ95dを備えている。そして操作部として、モータ95dの正転・停止・逆転を制御する操作スイッチ95aを備えている。95cはモータ95dを制御する制御回路である。つまり、この操作スイッチ95aの可動子の位置によって、モータ95dが正転、停止または逆転するのである。そしてモータ95dは、モータ95dの回転運動を直線運動に変換するラック・ピニオン機構のような変換機構95bに連結されている。リレーレンズ62、視度指標63および可視光発光ダイオード64は、変換機構95bの一方の出力部に取り付けられており、モータ95dの回転に連動して光軸27dに沿って移動する。一方、フォーカスレンズ7と可動部45は変換機構95bの他方の出力部に取り付けられており、モータ95dの回転に連動してそれぞれ撮影光軸4、光軸46上に沿って移動する。この場合も、図3の装置と同様、視度指標63がどのような位置に移動しても、眼底撮影光学系Sdの焦点は常に視度指標63の視度に合致するように構成されており、被検者が、操作スイッチ95aを操作することにより、最も鮮明に見ることのできる位置に視度指標63を移動させると、それと同時に眼底撮影光学系Sdの予備的な合焦がなされる。
【0047】図5に示す移動手段96は、動力装置たるモータ96dと、モータ96dの回転運動を往復直線運動に変換するスライダ・クランク機構のような往復運動機構96bを備えている。モータ96dはこの往復運動機構96bに連結されている。また、操作部として、モータ96dの起動・停止を制御する操作スイッチ96aを備えている。96cはモータ96dを制御する制御回路である。つまり、この操作スイッチ96aの可動子の位置によって、モータ96dが回転または停止するのである。リレーレンズ62、視度指標63および可視光発光ダイオード64は、往復運動機構96bの一方の出力部に取り付けられており、モータ96dの回転に連動して光軸27d上を往復運動する。一方、フォーカスレンズ7と可動部45は往復運動機構96bの他方の出力部に取り付けられており、モータ96dの回転に連動してそれぞれ撮影光軸4、光軸46上を往復運動する。この場合も、図3の装置と同様、視度指標63がどのような位置に移動しても、眼底撮影光学系Sdの焦点は常に視度指標63の視度に合致するように構成されている。被検者は、操作スイッチ96aを操作することにより、視度指標63を往復運動させ、最も鮮明に見ることのできる位置で視度指標63を停止させることができる。また、それと同時に眼底撮影光学系Sdの予備的な合焦がなされる。
【0048】次に、本出願発明の眼底撮影装置のもう一つの実施形態を図6、図7を参照しながら説明する。図6は、眼底撮影装置1’の概略構成を示すブロック図であり、図7は視度指標63を移動させる移動手段97と視度指標63の位置を検出する検出手段58の具体的構成を示す構成図である。
【0049】図6の眼底撮影装置1’も、図1の眼底撮影装置1と同様に、主として種々の光学系をその上に配設した鏡体3と、この鏡体3を駆動する駆動機構(XY軸駆動機構50、Z軸駆動機構52)と、前記光学系からの信号を処理したり駆動機構を制御したりするための制御回路91から構成されている。そして、鏡体3上には、主に、前眼部観察光学系Sa’、作動距離指標投影光学系Sb、作動距離検出光学系Sc、眼底撮影光学系Sdが配設されている。各光学系の構成は図1の眼底撮影装置1とほぼ同様である。しかし、眼底撮影光学系Sdの焦点調整部たるフォーカスレンズ7が、視度指標63を移動させる移動手段に、視度指標の位置を検出する検出手段58等を介して間接的に連動する点で、図1の眼底撮影装置1と異なる。以下、主に、この相違する点について説明する。
【0050】図7は、前眼部観察光学系Sa’に組み込まれたリレーレンズ62、視度指標63、これらを移動させる移動手段97、その位置を検出する検出手段58の関係を説明するためのものである。リレーレンズ62、視度指標63および可視光発光ダイオード64は、光軸27dに沿って一体的に移動可能に構成されており、これらは移動手段97によって移動させられ、その位置は検出手段58によって検出される。移動手段97の具体的構成としては、例えば図3〜5に示したような種々のものを採用できる。検出手段58は、直流電流が流れる抵抗58aとこの抵抗58a上を摺動する摺動子58bとで構成されている。摺動子58bはリレーレンズ62、視度指標63および可視光発光ダイオード64と一体的に移動する。検出手段58が検出した視度指標63の位置は、摺動子58bの電圧として、制御回路91に送出される。つまりこの場合は、視度指標63の位置が変量であり、この変量を検出手段58が検出していることになる。
【0051】被検者が、移動手段97を操作しながら、視度指標63を最も鮮明に見ることのできる位置に視度指標63を移動させると、視度指標63の位置は検出手段58によって検出される。検出手段58の出力信号、すなわち摺動子58bの電圧は制御回路91に送出されており、制御回路91はこの信号から視度指標の視度を知ることができる。そして、この視度に合わせて眼底撮影光学系Sdの焦点を合わせるべく、合焦駆動機構56に駆動信号を出力する。合焦駆動機構56はこの駆動信号を受けて、フォーカスレンズ7と可動部45とを連動して移動させる。フォーカスレンズ7は光軸4に沿って、また可動部45は光軸46に沿って移動する。フォーカスレンズ7と可動部45とをどの位置にまで移動させるかは、検出手段58からの出力信号によって定まる。つまり、検出手段58からの出力信号の大きさによって視度指標の視度を知ることが出来るので、この視度に応じてフォーカスレンズ7、可動部45を移動させて眼底撮影光学系Sdについての予備的な焦点調整が行われるのである。
【0052】このようにして、視度検出がされると同時に予備的焦点調整が、つまり、視度検出と予備的焦点調整とが時間的に並列的に行われる。こうして予備的焦点調整がなされると、その後は図1の眼底撮影装置1と同様の操作手順にて、アライメント、作動距離調整、合焦(最終的は焦点調整)、眼底撮影がなされる。
【0053】眼底撮影装置1’の装置構成、動作・操作手順は以上の通りであるが、上記では視度検出と同時に予備的焦点調整がなされ、この予備的焦点調整の完了後にアライメント、作動距離調整がされる旨説明した。
【0054】しかし、視度検出が完了した後、つまり、被検者が移動手段97によって最も鮮明に見える位置に視度指標63を移動させた後に、操作者や被検者によって起動スイッチ(図示せず)を操作させるようにし、制御回路91はこの起動スイッチからの起動信号を受けてから検出手段58の検出信号に基づいて予備的焦点調整を行うようにしてもよい。
【0055】また、予備的焦点調整は、視度検出後、アライメントや作動距離調整と時間的に並列して行うようにしてもよい。つまり、予備的焦点調整の動作が、アライメントや作動距離調整の動作と、同時進行してもよい。要は、光学系が前眼部観察光学系Sa’から眼底撮影光学系Sdに切り替わる前に、予備的焦点調整が完了していればよいのである。
【0056】次に、図8に基づき、検出手段の他の構成例を説明する。移動手段99は図3の移動手段59と同様に操作つまみ99aと変換機構99bによって構成されており、操作つまみ99aの回転運動が変換機構99bで直線運動に変換され、これによりリレーレンズ62、視度指標63および可視光発光ダイオード64が光軸27dに沿って移動する。検出手段98は、操作つまみ99aの回転角度を検出するものである。検出手段98は操作つまみ99aの回転に応じてパルスを出力するパルスジェネレータとこのパルスジェネレータの発するパルスを積算する積算器から構成されている。この積算値は、視度指標63の位置に対応して変化する変量であり、検出手段98はこの積算値を制御回路91に送出する。制御回路91はこの積算値から視度指標63の視度を知ることができる。そして、この視度に合わせて眼底撮影光学系Sdの焦点を合わせるべく、合焦駆動機構56に駆動信号を出力する。このように、視度指標63の位置を直接検出するのではなく、視度指標63の位置に対応して変化する種々の変量を利用して、視度指標63の視度を検出するようにしてもよい。
【0057】図1、図6の眼底撮影装置1、1’では、視度指標63が前眼部観察光学系Sa、Sa’に組み込まれているが、視度指標63は必ずしも前眼部観察光学系に組み込む必要はない。
【0058】また、眼底撮影装置1、1’では、その光軸がフォーカスレンズ7の前方(図1、図6において左方)で光学系Sd2から分岐した光学系Sd3に、固視標43が設けられている。しかし、眼底撮影装置のなかには、光学系Sd3のような合焦用の光学系を備えないようなものもある。そのような眼底撮影装置は、フォーカスレンズ7よりも後方(図1、図6において右方)の位置に固視標を設けるようにしている。この場合も、フォーカスレンズ7を通してこの固視標が見えるように構成されているのであるが、この固視標の位置は眼底撮影光学系のカメラの結像位置と等価となる。よって、予備的焦点調整によってフォーカスレンズ7が移動調整されることによって、光学系切り替え直後にも被検者は固視標をはっきりと見ることができる。
【0059】また、一般的な眼底撮影装置は、右眼用、左眼用にそれぞれ別個の、さらには、誘導したい視軸方向毎にそれぞれ別個の固視標を備えている。上記においては説明の煩雑化を回避するために、光学系80には一の視度指標63のみを、また、光学系Sd3には一の固視標43のみを示している。しかしこれらの視度指標、固視標として、右眼用のものと、左眼用のものをそれぞれ別個に、また、誘導したい視軸方向毎にそれぞれ別個に設けるようにしてもよい。
【0060】
【発明の効果】以上に説明したように、本願発明の眼底撮影装置によると次のような効果が得られる。
【0061】(1)眼底撮影光学系を使用する前に予備的な焦点調整を行うことができ、眼底撮影光学系の使用開始後、最終的な焦点合わせが素早く正確にできるようになる。しかも視度指標の位置は連続的に変化させることができるので、正確な予備的焦点調整を行うことができる。
【0062】(2)視度指標が前眼部観察光学系に組み込まれるように構成された眼底撮影装置では、前眼部観察時に明瞭な視度指標(固視標)を見せることができるので被検眼の視線を安定させた状態で前眼部を観察できる。また、前眼部観察光学系から眼底撮影光学系に光学系の切り替えがなされた時、すぐに明瞭な固視標を確認させることができるので被検眼の視線が動揺しない。
【0063】(3)眼球面反射像を追随しながら眼底撮影光学系のアライメントを自動的に行う眼底撮影装置では、アライメント時に被検眼の視線を安定させることができるので正確なアライメントが可能となる。
【出願人】 【識別番号】000143282
【氏名又は名称】株式会社コーナン
【出願日】 平成10年(1998)4月15日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】角田 嘉宏 (外4名)
【公開番号】 特開平11−299738
【公開日】 平成11年(1999)11月2日
【出願番号】 特願平10−104745