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【発明の名称】 X線画像生成方法およびX線CT装置
【発明者】 【氏名】黒田 義康

【氏名】郷野 誠

【要約】 【課題】高いkV時でも人体の軟部のコントラストの高い画像を見れるようにする。

【解決手段】X線管21から出射したX線を、直接的に又は被検体を透過させて、B側検出器列27Bで検出する。一方、X線管21から出射してフィルタ板25を透過したX線を、直接的に又は被検体を透過させて、A側検出器列27Aで検出する。そして、B側検出器列27Bを通じて取得したデータとA側検出器列27Aを通じて取得したデータとを減算または加算して新たなデータを得て、その新たなデータを再構成して新たなX線画像を生成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 短波長成分および長波長成分の両方を含むX線を用いて取得したデータと前記短波長成分よりも前記長波長成分を大きく減衰させたX線を用いて取得したデータとを減算または加算して得た新たなデータを再構成してX線画像を生成することを特徴とするX線画像生成方法。
【請求項2】 短波長成分および長波長成分の両方を含むX線を用いて撮影したX線画像と前記短波長成分よりも前記長波長成分を大きく減衰させたX線を用いて撮像したX線画像とを減算または加算して新たなX線画像を生成することを特徴とするX線画像生成方法。
【請求項3】 X線管と、そのX線管から出射したX線を直接的に又は被検体を透過させて検出する第1検出器列と、前記X線管から出射してフィルタ板または多層膜ミラーを透過したX線を直接的に又は被検体を透過させて検出する第2検出器列と、前記第1検出器列を通じて取得したデータと前記第2検出器列を通じて取得したデータとを減算または加算して新たなデータを得るデータ合成手段と、前記新たなデータを再構成してX線画像を生成する再構成手段とを具備したことを特徴とするX線CT装置。
【請求項4】 X線管と、そのX線管から出射したX線を直接的に又は被検体を透過させて検出する第1検出器列と、前記X線管から出射してフィルタ板または多層膜ミラーを透過したX線を直接的に又は被検体を透過させて検出する第2検出器列と、前記第1検出器列を通じて取得したデータを再構成して第1X線画像を生成すると共に前記第2検出器列を通じて取得したデータを再構成して第2X線画像を生成する再構成手段と、前記第1X線画像と前記第2X線画像とを減算または加算して新たなX線画像を得るX線画像合成手段とを具備したことを特徴とするX線CT装置。
【請求項5】 請求項3または請求項4に記載のX線CT装置において、前記X線管から出射してフィルタ板または多層膜ミラーを透過したX線を直接的に又は被検体を透過させて検出する第2検出器列の代りに、前記X線管から出射してフィルタ板または多層膜ミラーを透過したX線を直接的に又は前記X線管から出射し被検体を透過し更にフィルタ板または多層膜ミラーを透過したX線を検出する第2検出器列を用いることを特徴とするX線CT装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、X線画像生成方法およびX線CT装置(Computer Tomography)に関し、更に詳しくは、高電圧下(高いkV時)でも人体の軟部のコントラストの高い画像を得ることが出来るX線画像生成方法およびX線CT装置に関する。
【0002】
【従来の技術】図20は、X線CT装置で人体を撮影する状態を示す模式図である。X線管21から出射されたX線Iは、直接的に又は人体Jを透過して、検出器列27で検出される。なお、Jhは人体Jの硬部(骨)であり、Jsは人体Jの軟部(組織)である。図21は、高いkV時に検出器列27で検出されるX線強度分布の模式図である。X線強度は、波長が短い成分である硬X線部Hの強度と波長が長い成分である軟X線部Nの強度の和からなっている。なお、Sは散乱部である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】一般に、硬X線部Hによれば人体Jの硬部Jhのコントラストが高くなり、軟X線部Nによれば人体Jの軟部Jsのコントラストが高くなる。図21に示したように、検出器列27で検出されるX線は、高いkV時には、硬X線部Hと軟X線部Nの両方を含んでいる。従って、人体Jの硬部Jhのコントラストについての情報と人体Jの軟部Jsのコントラストについての情報の両方を検出器列27で得られているはずである。しかし、これにより得られるX線画像を見ると、硬X線部Hによる人体Jの硬部Jhのコントラストの高さばかりが目立ち、軟X線部Nによる人体Jの軟部Jsのコントラストが判りにくい問題点がある。そこで、本発明の目的は、高いkV時でも人体の軟部のコントラストの高い画像を得ることが出来るX線画像生成方法およびX線CT装置を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】第1の観点では、本発明は、短波長成分および長波長成分の両方を含むX線を用いて取得したデータと前記短波長成分よりも前記長波長成分を大きく減衰させたX線を用いて取得したデータとを減算または加算して得た新たなデータを再構成してX線画像を生成することを特徴とするX線画像生成方法を提供する。短波長成分および長波長成分の両方を含むX線とは、硬X線部と軟X線部の両方を含むX線であり、このX線を用いて取得したデータは、人体Jの硬部Jhのコントラストについての情報と人体Jの軟部Jsのコントラストについての情報の両方を含むデータである。但し、これにより得られるX線画像を見ると、人体Jの硬部Jhのコントラストの高さばかりが目立ち、人体Jの軟部Jsのコントラストは判りにくい。一方、前記短波長成分よりも前記長波長成分を大きく減衰させたX線とは、実質的に硬X線部のみのX線であり、このX線を用いて取得したデータは、人体Jの硬部Jhのコントラストについての情報のみのデータである。従って、このデータから得られたX線画像では、人体Jの硬部Jhのコントラストしか見えない。さて、上記第1の観点によるX線画像生成方法では、短波長成分および長波長成分の両方を含むX線を用いて取得したデータと前記短波長成分よりも前記長波長成分を大きく減衰させたX線を用いて取得したデータとを減算または加算して得た新たなデータを得るが、まず減算したデータは、人体Jの硬部Jhのコントラストについての情報と人体Jの軟部Jsのコントラストについての情報の両方を含むデータと人体Jの硬部Jhのコントラストについての情報のみのデータの差分であるから、人体Jの軟部Jsのコントラストについての情報のみのデータとなる。従って、これを再構成して得られるX線画像では、人体Jの軟部Jsのコントラストだけを見ることが出来る。次に加算したデータは、人体Jの硬部Jhのコントラストについての情報と人体Jの軟部Jsのコントラストについての情報の両方を含むデータと人体Jの硬部Jhのコントラストについての情報のみのデータの合計であるから、人体Jの硬部Jhのコントラストについての情報を強調したデータとなる。従って、これを再構成して得られるX線画像では、人体Jの硬部Jhのコントラストを特に強調して見ることが出来る。
【0005】第2の観点では、本発明は、短波長成分および長波長成分の両方を含むX線を用いて撮影したX線画像と前記短波長成分よりも前記長波長成分を大きく減衰させたX線を用いて撮像したX線画像とを減算または加算して新たなX線画像を生成することを特徴とするX線画像生成方法を提供する。前述のように、短波長成分および長波長成分の両方を含むX線を用いて撮影したX線画像では、人体Jの硬部Jhのコントラストの高さばかりが目立ち、人体Jの軟部Jsのコントラストは判りにくい。しかし、このX線画像は、人体Jの硬部Jhのコントラストについての情報と人体Jの軟部Jsのコントラストについての情報の両方を含むX線画像である。一方、前述のように、前記短波長成分よりも前記長波長成分を大きく減衰させたX線を用いて撮像したX線画像は、人体Jの硬部Jhのコントラストについての情報のみのX線画像である。さて、上記第2の観点によるX線画像生成方法では、短波長成分および長波長成分の両方を含むX線を用いて撮影したX線画像と前記短波長成分よりも前記長波長成分を大きく減衰させたX線を用いて撮像したX線画像とを減算または加算して新たなX線画像を生成するが、まず減算したX線画像は、人体Jの硬部Jhのコントラストについての情報と人体Jの軟部Jsのコントラストについての情報の両方を含むX線画像と人体Jの硬部Jhのコントラストについての情報のみのX線画像の差分であるから、人体Jの軟部Jsのコントラストについての情報のみのX線画像となる。従って、人体Jの軟部Jsのコントラストだけを見ることが出来る。次に加算したX線画像は、人体Jの硬部Jhのコントラストについての情報と人体Jの軟部Jsのコントラストについての情報の両方を含むX線画像と人体Jの硬部Jhのコントラストについての情報のみのX線画像の合計であるから、人体Jの硬部Jhのコントラストについての情報を強調したX線画像となる。従って、人体Jの硬部Jhのコントラストを特に強調して見ることが出来る。
【0006】第3の観点では、本発明は、X線管と、そのX線管から出射したX線を直接的に又は被検体を透過させて検出する第1検出器列と、前記X線管から出射してフィルタ板または多層膜ミラーを透過したX線を直接的に又は被検体を透過させて検出する第2検出器列と、前記第1検出器列を通じて取得したデータと前記第2検出器列を通じて取得したデータとを減算または加算して新たなデータを得るデータ合成手段と、前記新たなデータを再構成してX線画像を生成する再構成手段とを具備したことを特徴とするX線CT装置を提供する。上記第3の観点によるX線CT装置において、第1検出器列を通じて取得したデータは、短波長成分および長波長成分の両方を含むX線を用いて取得したデータに相当する。また、第2検出器列を通じて取得したデータは、前記短波長成分よりも前記長波長成分を大きく減衰させたX線を用いて取得したデータに相当する。よって、上記第1の観点によるX線画像生成方法を好適に実施でき、人体Jの軟部Jsのコントラストだけを見ることが出来る。また、人体Jの硬部Jhのコントラストを特に強調して見ることが出来る。
【0007】第4の観点では、本発明は、X線管と、そのX線管から出射したX線を直接的に又は被検体を透過させて検出する第1検出器列と、前記X線管から出射してフィルタ板または多層膜ミラーを透過したX線を直接的に又は被検体を透過させて検出する第2検出器列と、前記第1検出器列を通じて取得したデータを再構成して第1X線画像を生成すると共に前記第2検出器列を通じて取得したデータを再構成して第2X線画像を生成する再構成手段と、前記第1X線画像と前記第2X線画像とを減算または加算して新たなX線画像を得るX線画像合成手段とを具備したことを特徴とするX線CT装置を提供する。上記第4の観点によるX線CT装置において、第1検出器列を通じて取得したデータを再構成した第1X線画像は、短波長成分および長波長成分の両方を含むX線を用いて取得したデータを再構成したX線画像に相当する。また、第2検出器列を通じて取得したデータを再構成した第2X線画像は、前記短波長成分よりも前記長波長成分を大きく減衰させたX線を用いて取得したデータを再構成したX線画像に相当する。よって、上記第2の観点によるX線画像生成方法を好適に実施でき、人体Jの軟部Jsのコントラストだけを見ることが出来る。また、人体Jの硬部Jhのコントラストを特に強調して見ることが出来る。
【0008】第5の観点では、本発明は、上記構成のX線CT装置において、前記X線管から出射してフィルタ板または多層膜ミラーを透過したX線を直接的に又は被検体を透過させて検出する第2検出器列の代りに、前記X線管から出射してフィルタ板または多層膜ミラーを透過したX線を直接的に又は前記X線管から出射し被検体を透過し更にフィルタ板または多層膜ミラーを透過したX線を検出する第2検出器列を用いることを特徴とするX線CT装置を提供する。前記第3の観点または前記第4の観点のX線CT装置では、X線管と被検体の間にフィルタ板または多層膜ミラーを設置したが、上記第5の観点のX線CT装置のように被検体と検出器列の間にフィルタ板または多層膜ミラーを設置しても等価である。前者では後者に比べて被検体の被曝量が少なくなる利点があり、後者では前者に比べてフィルタ板または多層膜ミラーの設置が容易になる利点がある。
【0009】なお、上記第3の観点から上記第5の観点のX線CT装置において、第1検出器列と第2検出器列とは、物理的(空間的)に別個の検出器列であってもよいが、物理的(空間的)には同一の検出器列であって論理的(時間的)に別個の検出器列であってもよい。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、図に示す本発明の実施の形態により本発明をさらに詳しく説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【0011】−第1の実施形態−図1は、この発明の第1の実施形態にかかるX線CT装置100の構成ブロック図である。このX線CT装置100は、操作コンソール1と、撮影テーブル10と、走査ガントリ20とを具備している。前記操作コンソール1は、操作者の指示入力や情報入力などを受け付ける入力装置2と、本発明にかかるマルチコントラスト撮影処理(後述する)や通常の撮影処理などを実行する制御を行う中央処理装置3と、制御信号などを前記撮影テーブル10や前記走査ガントリ20とやり取りする制御インタフェース4と、走査ガントリ20で取得したデータを収集するデータ収集バッファ5と、前記データから再構成して得たX線画像を表示するCRT6と、プログラムやデータやX線画像を記憶する記憶装置7とを具備している。前記撮影テーブル10は、被検体を乗せて体軸方向に移動させる。前記走査ガントリ20は、X線管21と、X線コントローラ22と、コリメータ23と、コリメータコントローラ24と、前記X線管21から出射されたX線を透過させる際にその短波長成分よりも長波長成分を大きく減衰させるフィルタ板25と、X線の透過経路中に前記フィルタ板25を入れたりX線の透過経路中から前記フィルタ板25を出したりする制御を行うフィルタ板コントローラ26と、2列の検出器列をもつ検出器アレイ27と、データ収集部28と、被検体の体軸の回りにX線管21などを回転させる回転コントローラ29とを具備している。
【0012】図2は、上記X線CT装置100の要部構成図である。X線管21は、X線を出射する。コリメータ23は、スリットによりX線を偏平なX線ビームIoにする。検出器アレイ27は、いわゆるツインデテクタであり、A側検出器列27AとB側検出器列27Bからなっている。フィルタ板25は、X線の波長の短い成分を波長の長い成分より大きく減衰させる物質で作られた板(例えばアルミ板)であり、通常の撮影処理のときはX線ビームIoの透過経路から出され、本発明にかかるマルチコントラスト撮影処理のときはA側検出器列27Aに入射するX線ビームの透過経路に入れられる。すなわち、マルチコントラスト撮影処理のときは、前記A側検出器列27Aには、前記フィルタ板25を透過したA側X線ビームIAが入射する。また、前記B側検出器列27Bには、前記フィルタ板25を透過しないB側X線ビームIBが入射する(つまり、X線ビームIoがそのまま入射する)。
【0013】図3の(a)はA側X線ビームIAの強度の波長特性図であり、図3の(b)はB側X線ビームIBの強度の波長特性図である。B側X線ビームIBは、X線ビームIoがそのまま入射するので、高いkV時には、短波長成分および長波長成分の両方を含んでいる。A側X線ビームIAは、フィルタ板25により短波長成分よりも長波長成分が大きく減衰しているので、実質的に短波長成分のみになっている。
【0014】図4は、上記X線CT装置100で人体Jを撮影する状態を示す模式図である。A側X線ビームIA,B側X線ビームIBは、直接的に又は人体Jを透過して、A側検出器列27A,B側検出器列27Bでそれぞれ検出される。なお、Jhは人体Jの硬部(骨)であり、Jsは人体Jの軟部(組織)である。
【0015】図5の(a)はA側検出器列27Aで検出されるX線強度分布の模式図であり、図5の(b)はB側検出器列27Bで検出されるX線強度分布の模式図である。A側検出器列27Aで検出されるX線強度は、波長が短い成分である硬X線部Hの強度のみからなっている。なお、Sは散乱部である。B側検出器列27Bで検出されるX線強度は、波長が短い成分である硬X線部Hの強度と波長が長い成分である軟X線部Nの強度の和からなっている。なお、Sは散乱部である。
【0016】図6は、上記X線CT装置100のマルチコントラスト撮影処理のフローチャートである。ステップQ1では、ピッチ1のヘリカルスキャンを行い、データDAn,DBnを得る。ここで、ピッチ1のヘリカルスキャンとは、A側検出器列27Aを進行方向前側として体軸方向に移動しながらヘリカルスキャンを行う場合に、B側検出器列27Bの位置が1回転前のA側検出器列27Aの位置に一致するようなピッチでのヘリカルスキャンをいう。また、データDAn,DBnにおける添字nは、ヘリカルスキャンの回転番号を意味する。従って、データDAnー1 とデータDBnは、同じ空間位置で得られたデータとなる。
【0017】ステップQ2では、データDAn,DBnに前処理を施し、データProjAn,ProjBnを求める。これらデータProjAn,ProjBnは、いわゆる投影データである。ステップQ3では、差分データSubnおよび合計データTotnを求める。
Subn=ProjBn−k・ProjAn-1Totn=ProjBn+k・ProjAn-1(荷重係数kは経験的に定める)
ステップQ4では、データProjAn,ProjBn,Subn,Totnにそれぞれ再構成演算を施して、X線画像ImgAn,ImgBn,ImgSn,ImgTnを求める。
【0018】前記X線画像ImgAnは、実質的に硬X線部HのみのA側X線ビームIAを用いて取得したデータProjAnから生成されたX線画像であり、人体Jの硬部Jhのコントラストだけが見える。前記X線画像ImgBnは、硬X線部Hと軟X線部Nの両方を含むB側X線ビームIBを用いて取得したデータProjBnから生成されたX線画像であり、人体Jの硬部Jhのコントラストについての情報と人体Jの軟部Jsのコントラストについての情報の両方を含んでいるが、人体Jの硬部Jhのコントラストの高さばかりが目立ち、人体Jの軟部Jsのコントラストは判りにくい。前記X線画像ImgSnは、人体Jの硬部Jhのコントラストについての情報と人体Jの軟部Jsのコントラストについての情報の両方を含むデータProjBnと人体Jの硬部Jhのコントラストについての情報のみのデータProjAn-1 の差分である、人体Jの軟部Jsのコントラストについての情報のみのデータSubnから生成されたX線画像であり、高いkV時でも人体Jの軟部Jsのコントラストを見ることが出来る。前記X線画像ImgTnは、人体Jの硬部Jhのコントラストについての情報と人体Jの軟部Jsのコントラストについての情報の両方を含むデータProjBnと人体Jの硬部Jhのコントラストについての情報のみのデータProjAn-1 の合計である、人体Jの硬部Jhのコントラストについての情報を強調したデータTotnから生成されたX線画像であり、人体Jの硬部Jhのコントラストを特に強調して見ることが出来る。
【0019】−第2の実施形態−第2の実施形態は、上記第1の実施形態のマルチコントラスト撮影処理(図6)の代りに、図7に示すマルチコントラスト撮影処理を行うものである。
【0020】図7は、第2の実施形態にかかるマルチコントラスト撮影処理のフローチャートである。ステップP1では、任意ピッチのヘリカルスキャンを行い、データDAn,DBnを得る。ステップP2では、データDAn,DBnに前処理および再構成演算を施して、X線画像ImgA(z),ImgB(z)を求める。ここで、zは、X線画像を生成する体軸方向の位置であり、X線画像ImgA(z),ImgB(z)の両方のz位置を合せる必要がある。ステップP3では、差分X線画像ImgS(z)および合計X線画像ImgT(z)を求める。
ImgS(z)=ImgB(z)−k・ImgA(z)ImgT(z)=ImgB(z)+k・ImgA(z)(荷重係数kは経験的に定める)
前記X線画像ImgA(z)は、実質的に硬X線部HのみのA側X線ビームIAを用いて取得したデータDAnから生成されたX線画像であり、人体Jの硬部Jhのコントラストだけが見える。前記X線画像ImgB(z)は、硬X線部Hと軟X線部Nの両方を含むB側X線ビームIBを用いて取得したデータDBnから生成されたX線画像であり、人体Jの硬部Jhのコントラストについての情報と人体Jの軟部Jsのコントラストについての情報の両方を含んでいるが、人体Jの硬部Jhのコントラストの高さばかりが目立ち、人体Jの軟部Jsのコントラストは判りにくい。前記X線画像ImgS(z)は、人体Jの硬部Jhのコントラストについての情報と人体Jの軟部Jsのコントラストについての情報の両方を含むX線画像ImgB(z)と人体Jの硬部Jhのコントラストについての情報のみのX線画像ImgA(z)の差分であり、高いkV時でも人体Jの軟部Jsのコントラストを見ることが出来る。前記X線画像ImgT(z)は、人体Jの硬部Jhのコントラストについての情報と人体Jの軟部Jsのコントラストについての情報の両方を含むX線画像ImgB(z)と人体Jの硬部Jhのコントラストについての情報のみのX線画像ImgA(z)の合計であり、人体Jの硬部Jhのコントラストを強調して見ることが出来る。
【0021】−第3の実施形態−図8に示す如きフィルタ板切換機構30を用いてもよい。このフィルタ板切換機構30は、減衰波長特性の異なる第1フィルタ板31,第2フィルタ板32および第3フィルタ板33と、それらフィルタ板31〜33を保持する回転ホルダ35と、その回転ホルダ35を回転させるモータ36とを具備している。また、回転ホルダ35の一辺は透過部34になっている。マルチコントラスト撮影処理を行なう時は、フィルタ板31〜33の中から撮影条件にあったものを選び、モータ36により回転ホルダ35を回転させて、そのフィルタ板をX線透過経路中に入れる。また、通常の撮影を行なう時は、モータ36により回転ホルダ35を回転させて、透過部34をX線透過経路中に合せる。
【0022】−第4の実施形態−図9に示すように、A側検出器列27AとB側検出器列27BとC側検出器列27Cとをもつ検出器アレイを用い、A側検出器列27Aにはフィルタ板25aとフィルタ板25bの両方を透過させたX線ビームを入射させ、B側検出器列27Bにはフィルタ板25bのみを透過させたX線ビームを入射させ、C側検出器列27Cにはフィルタ板を透過させないX線ビームを入射させるようにしてもよい。この場合、A側検出器列27AとB側検出器列27BとC側検出器列27Cの任意の2つを選び、それら検出器列で得たデータを減算または加算し再構成してX線画像を生成するか、あるいは、それら検出器列で得たデータを再構成して得たX線画像を減算または加算してX線画像を生成する。
【0023】−第5の実施形態−上記の実施形態ではX線管と被検体の間にフィルタ板を設置する代りに、図10に示すように、被検体(人体)JとA側検出器列27Aの間にフィルタ板25を設置しても等価である。
【0024】−第6の実施形態−第6の実施形態として、上記第1の実施形態から上記第5の実施形態のようにコリメータと検出器アレイの間にフィルタ板を設置する代わりに、図11に示すようにX線管21とコリメータ23の間にフィルタ板25を設置してもよい。
【0025】−第7の実施形態−第7の実施形態では、前記フィルタ板の代わりに多層膜ミラーを用いる。図12に、この発明の第7の実施形態にかかるX線CT装置100の構成ブロック図を示す(図1との対応部分に同一符号を付す)。本実施形態のX線CT装置100は、操作コンソール1と、撮影テーブル10と、走査ガントリ20とを具備している。前記操作コンソール1は、操作者の指示入力や情報入力などを受け付ける入力装置2と、本発明にかかるマルチコントラスト撮影処理や通常の撮影処理などを実行する制御を行う中央処理装置3と、制御信号などを前記撮影テーブル10や前記走査ガントリ20とやり取りする制御インタフェース4と、走査ガントリ20で取得したデータを収集するデータ収集バッファ5と、前記データから再構成して得たX線画像を表示するCRT6と、プログラムやデータやX線画像を記憶する記憶装置7とを具備している。前記撮影テーブル10は、被検体を乗せて体軸方向に移動させる。前記走査ガントリ20は、X線管21と、X線コントローラ22と、コリメータ23と、コリメータコントローラ24と、前記X線管21から出射されたX線のうちの長波長成分(軟X線)のみを反射させ短波長成分は透過させる多層膜ミラー45と、X線の透過経路中に前記多層膜ミラー45を入れたりX線の透過経路中から前記多層膜ミラー45を出したりする制御を行う多層膜ミラーコントローラ46と、2列の検出器列をもつ検出器アレイ27と、データ収集部28と、被検体の体軸の回りにX線管21などを回転させる回転コントローラ29とを具備している。
【0026】図13は、上記X線CT装置100の要部構成図である。X線管21は、X線を出射する。コリメータ23は、スリットによりX線を偏平なX線ビームにする。検出器アレイ27は、いわゆるツインデテクタであり、A側検出器列27AとB側検出器列27Bからなっている。多層膜ミラー45は、後述の軟X線多層膜ミラーであり、通常の撮影処理のときはX線ビームの透過経路から出され、本発明にかかるマルチコントラスト撮影処理のときはA側検出器列27Aに入射するX線ビームの透過経路に入れられる。すなわち、マルチコントラスト撮影処理のときは、前記A側検出器列27Aには、前記多層膜ミラー45を透過したA側X線ビームIAが入射する。また、前記B側検出器列27Bには、前記多層膜ミラー45を透過しないB側X線ビームIBが入射する。
【0027】軟X線多層膜ミラーは、2種類の多層膜材料よりなる膜を、軟X線の波長オーダーの厚さで複数層交互に積層した多層膜からなる。多層膜の作製には、真空蒸着法、各種スパッタ法、CVD法などが用いられる。多層膜表面に入射した軟X線は多層膜の各界面で反射するが、1界面当たりの反射率は1%以下のわずかなものである。この各界面での反射光が強め合いの干渉条件となるように膜周期を構成することにより、高反射率を得ることができる。軟X線多層膜ミラーの表面にX線ビームを入射すると、その長波長成分(軟X線)は反射し、短波長成分(硬X線)は透過する。従って、軟X線多層膜ミラーを長波長成分と短波長成分の両方を含むX線ビームの経路の上流に配置することで、その経路の下流では長波長成分が大きく減衰し短波長成分が支配的になったX線ビームが得られる。軟X線多層膜ミラーを透過する短波長成分の透過率は、前記フィルタ板を透過する短波長成分の透過率に比べて大きい。また、軟X線多層膜ミラーは、多層膜の材料や作製方法によって、反射するX線ビームの波長や反射率を変えられる。
【0028】図14の(a)は本実施形態におけるA側X線ビームIAの強度の波長特性図であり、図14の(b)はB側X線ビームIBの強度の波長特性図である。B側X線ビームIBは、高いkV時には、短波長成分および長波長成分の両方を含んでいる。A側X線ビームIAは、多層膜ミラー45で長波長成分が反射されたことによって短波長成分に比べて長波長成分が大きく減衰しているため、実質的に短波長成分のみになっている。図14の(c)は前記フィルタ板25を透過したA側X線ビームIAの強度の波長特性図の一例である。図14の(a)と(c)から、前記フィルタ板25を透過した短波長成分と比べて、多層膜ミラー45を透過した短波長成分が大きいことが分かる。
【0029】図15は、上記X線CT装置100で人体Jを撮影する状態を示す模式図である。A側X線ビームIA,B側X線ビームIBは、直接的に又は人体Jを透過して、A側検出器列27A,B側検出器列27Bでそれぞれ検出される。なお、Jhは人体Jの硬部(骨)であり、Jsは人体Jの軟部(組織)である。
【0030】図16の(a)はA側検出器列27Aで検出されるX線強度分布の模式図であり、図16の(b)はB側検出器列27Bで検出されるX線強度分布の模式図である。A側検出器列27Aで検出されるX線強度は、波長が短い成分である硬X線部Hの強度のみからなっている。なお、Sは散乱部である。B側検出器列27Bで検出されるX線強度は、波長が短い成分である硬X線部Hの強度と波長が長い成分である軟X線部Nの強度の和からなっている。なお、Sは散乱部である。
【0031】図17は、上記X線CT装置100のマルチコントラスト撮影処理のフローチャートである。ステップQ1では、ピッチ1のヘリカルスキャンを行い、データDAn,DBnを得る。ここで、ピッチ1のヘリカルスキャンとは、A側検出器列27Aを進行方向前側として体軸方向に移動しながらヘリカルスキャンを行う場合に、B側検出器列27Bの位置が1回転前のA側検出器列27Aの位置に一致するようなピッチでのヘリカルスキャンをいう。また、データDAn,DBnにおける添字nは、ヘリカルスキャンの回転番号を意味する。従って、データDAnー1 とデータDBnは、同じ空間位置で得られたデータとなる。
【0032】ステップQ2では、データDAn,DBnに前処理を施し、データProjAn,ProjBnを求める。これらデータProjAn,ProjBnは、いわゆる投影データである。ステップQ3では、差分データSubnおよび合計データTotnを求める。
Subn=ProjBn−k・ProjAn-1Totn=ProjBn+k・ProjAn-1(荷重係数kは経験的に定める)
ステップQ4では、データProjAn,ProjBn,Subn,Totnにそれぞれ再構成演算を施して、X線画像ImgAn,ImgBn,ImgSn,ImgTnを求める。
【0033】前記X線画像ImgAnは、実質的に硬X線部HのみのA側X線ビームIAを用いて取得したデータProjAnから生成されたX線画像であり、人体Jの硬部Jhのコントラストだけが見える。前記X線画像ImgBnは、硬X線部Hと軟X線部Nの両方を含むB側X線ビームIBを用いて取得したデータProjBnから生成されたX線画像であり、人体Jの硬部Jhのコントラストについての情報と人体Jの軟部Jsのコントラストについての情報の両方を含んでいるが、人体Jの硬部Jhのコントラストの高さばかりが目立ち、人体Jの軟部Jsのコントラストは判りにくい。前記X線画像ImgSnは、人体Jの硬部Jhのコントラストについての情報と人体Jの軟部Jsのコントラストについての情報の両方を含むデータProjBnと人体Jの硬部Jhのコントラストについての情報のみのデータProjAn-1 の差分である、人体Jの軟部Jsのコントラストについての情報のみのデータSubnから生成されたX線画像であり、高いkV時でも人体Jの軟部Jsのコントラストを見ることが出来る。前記X線画像ImgTnは、人体Jの硬部Jhのコントラストについての情報と人体Jの軟部Jsのコントラストについての情報の両方を含むデータProjBnと人体Jの硬部Jhのコントラストについての情報のみのデータProjAn-1 の合計である、人体Jの硬部Jhのコントラストについての情報を強調したデータTotnから生成されたX線画像であり、人体Jの硬部Jhのコントラストを特に強調して見ることが出来る。
【0034】前述の通り、軟X線多層膜ミラーを透過する硬X線の透過率は、フィルタ板を透過する硬X線の透過率に比べて大きい。従って、フィルタ板25の代わりに多層膜ミラー45を使用することにより、硬X線の利用効率を向上することができる。また、前述の通り、軟X線多層膜ミラーは材料や作製方法によって反射する軟X線の波長や反射率が変化する。従って、材料や作製方法の異なる多層膜ミラー45を使用することで、マルチコントラスト撮影におけるA側X線ビームの強度の波長特性を選択でき、より撮影条件に適した波長特性を有するX線ビームによる撮影が可能になる。
【0035】−第8の実施形態−第8の実施形態は、上記第7の実施形態のマルチコントラスト撮影処理(図17)の代りに、図18に示すマルチコントラスト撮影処理を行うものである。
【0036】図18は、第8の実施形態にかかるマルチコントラスト撮影処理のフローチャートである。ステップP1では、任意ピッチのヘリカルスキャンを行い、データDAn,DBnを得る。ステップP2では、データDAn,DBnに前処理および再構成演算を施して、X線画像ImgA(z),ImgB(z)を求める。ここで、zは、X線画像を生成する体軸方向の位置であり、X線画像ImgA(z),ImgB(z)の両方のz位置を合せる必要がある。ステップP3では、差分X線画像ImgS(z)および合計X線画像ImgT(z)を求める。
ImgS(z)=ImgB(z)−k・ImgA(z)ImgT(z)=ImgB(z)+k・ImgA(z)(荷重係数kは経験的に定める)
前記X線画像ImgA(z)は、実質的に硬X線部HのみのA側X線ビームIAを用いて取得したデータDAnから生成されたX線画像であり、人体Jの硬部Jhのコントラストだけが見える。前記X線画像ImgB(z)は、硬X線部Hと軟X線部Nの両方を含むB側X線ビームIBを用いて取得したデータDBnから生成されたX線画像であり、人体Jの硬部Jhのコントラストについての情報と人体Jの軟部Jsのコントラストについての情報の両方を含んでいるが、人体Jの硬部Jhのコントラストの高さばかりが目立ち、人体Jの軟部Jsのコントラストは判りにくい。前記X線画像ImgS(z)は、人体Jの硬部Jhのコントラストについての情報と人体Jの軟部Jsのコントラストについての情報の両方を含むX線画像ImgB(z)と人体Jの硬部Jhのコントラストについての情報のみのX線画像ImgA(z)の差分であり、高いkV時でも人体Jの軟部Jsのコントラストを見ることが出来る。前記X線画像ImgT(z)は、人体Jの硬部Jhのコントラストについての情報と人体Jの軟部Jsのコントラストについての情報の両方を含むX線画像ImgB(z)と人体Jの硬部Jhのコントラストについての情報のみのX線画像ImgA(z)の合計であり、人体Jの硬部Jhのコントラストを強調して見ることが出来る。
【0037】−第9の実施形態−図19に示す如き多層膜ミラー切換機構50を用いてもよい。この多層膜ミラー切換機構50は、反射波長特性の異なる第1多層膜ミラー51,第2多層膜ミラー52および第3多層膜ミラー53と、それら多層膜ミラー51〜53を保持する回転ホルダ55と、その回転ホルダ55を回転させるモータ56とを具備している。また、回転ホルダ55の一辺は透過部54になっている。マルチコントラスト撮影処理を行なう時は、多層膜ミラー51〜53の中から撮影条件にあったものを選び、モータ56により回転ホルダ55を回転させて、その多層膜ミラーをX線透過経路中に入れる。また、通常の撮影を行なう時は、モータ56により回転ホルダ55を回転させて、透過部54をX線透過経路中に合せる。
【0038】
【発明の効果】本発明のX線画像生成方法およびX線CT装置によれば、高電圧下(高いkV時)でも人体の軟部のコントラストの高い画像を得ることが出来る。
【出願人】 【識別番号】000121936
【氏名又は名称】ジーイー横河メディカルシステム株式会社
【出願日】 平成10年(1998)11月16日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】有近 紳志郎
【公開番号】 特開平11−267120
【公開日】 平成11年(1999)10月5日
【出願番号】 特願平10−324811