トップ :: A 生活必需品 :: A61 医学または獣医学;衛生学




【発明の名称】 眼科測定装置
【発明者】 【氏名】鈴木 孝佳

【氏名】横井 則彦

【要約】 【課題】前眼部に溜まる涙液の物理量を定量的に測定しドライアイの症状を診断することが可能な眼科測定装置を提供する。

【解決手段】所定形状の開口を形成した格子27をランプ21からの光で照明し、下眼瞼36に溜まる涙液メニスカス28に投影する。この涙液に投影された開口の像がCCDカメラ31で撮像される。格子像が結像される際、涙液メニスカス28が凹面鏡の役割をしているので、結像倍率は涙液メニスカスの曲率半径rによって変化する。従って、カメラ31での格子像の大きさを演算回路32で求め、涙液メニスカスで形成される格子像の大きさを演算し、涙液メニスカスの曲率半径rを求める。涙液量Vはrによって変化するので、この半径値を涙液量を示す値として用い、ドライアイの診断を行う。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 所定形状の開口を形成した光制御手段と、前記開口を下眼瞼に溜まる涙液表面に投影する投影手段と、涙液表面に投影された前記開口の像を撮像する撮像手段と、撮像された前記開口の像に基づいて涙液の物理量を演算する手段と、を有することを特徴とする眼科測定装置。
【請求項2】 前記開口の像に基づいて涙液表面の曲率半径を演算することを特徴とする請求項1に記載の眼科測定装置。
【請求項3】 前記演算された涙液表面の曲率半径に基づいてドライアイの病態を評価することを特徴とする請求項2に記載の眼科測定装置。
【請求項4】 前記光制御手段がスリット状の開口を複数等間隔に配置した格子縞であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の眼科測定装置。
【請求項5】 前記投影手段と撮像手段にそれぞれ偏光板を設けることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の眼科測定装置。
【請求項6】 涙液表面に開口が投影される位置に応じて前記開口の向きを変化させることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の眼科測定装置。
【請求項7】 投影手段と撮像手段の光学系を同軸上に配置することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の眼科測定装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、眼科測定装置、更に詳細には、下眼瞼に溜まる涙液の物理量を非接触で測定する眼科測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、VDT(visual display terminal)作業者の増加や冷暖房による部屋の乾燥などによりドライアイ患者が増加している。ドライアイになると角膜上皮や結膜上皮障害、その他にも種々の眼科疾患を併発するおそれがあり、ドライアイの診断は眼科診断の上で重要なテーマとなっている。
【0003】従来は、生体染色検査、涙液量検査などによりドライアイの診断を行なっていたが、薬物点眼や異物接触を伴うため被検者の苦痛は避けられなかった。そこで、非接触的にドライアイを検出するために、被検眼にコヒーレント光を照射して涙液層での干渉縞を観察する方法が試みられている。これら装置では、被検眼の涙液層の油膜で形成される干渉模様(虹色に変化するカラーの干渉模様)のカラー画像が受光光学系の光電変換素子により光電変換され、その干渉模様のカラー画像が表示手段に表示されるので、診断者はこの干渉模様を観察することにより涙液層の状態を知り、ドライアイの簡易的診断を行っている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】このような従来の装置により涙液層の油膜により形成される干渉縞を見ることはできるが、干渉縞の明暗のコントラストが低く、干渉縞に基づく良好な眼科診断が困難になるとともに、画面の色模様を診断者が直接見て、ドライアイのグレードを評価しており、定性的な測定しかできない、という問題がある。
【0005】本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、下眼瞼縁に溜まる涙液の物理量を定量的に測定しドライアイの病態を診断することが可能な眼科測定装置を提供することをその課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、この課題を解決するために、所定形状の開口を形成した光制御手段と、前記開口を下眼瞼に溜まる涙液表面に投影する投影手段と、涙液表面に投影された前記開口の像を撮像する撮像手段と、撮像された前記開口の像に基づいて涙液の物理量を演算する手段とを有する構成を採用した。
【0007】涙液表面(涙液メニスカス)は凹面鏡の役割をしているので、撮像される開口の像倍率は涙液表面の曲率半径によって変化する。そこで、本発明では、開口像の像倍率を求め、涙液表面の曲率半径を求める。この曲率半径は、ドライアイの病態に影響する涙液量に関係するので、涙液表面の曲率半径を求めることにより、ドライアイの重症度あるいはその改善を定量的に評価することが可能になる。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、図面に示す実施の形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
【0009】図1には、涙液量を測定する涙液メニスコメータの原理が図示されている。涙液は最表層より油層、水層、ムチン層からなっており、油層はマイボーム腺から分泌され、瞼を閉じるとき瞼で圧縮される。このとき涙液3は、図1(A)、(B)に図示したように、眼1の下眼瞼縁2に貯留する。そして、ドライアイ(かわき目)の検査は、この下眼瞼縁に溜まる涙液量と関連付けて行なわれ、涙液量が少ないほど、ドライアイは重症となる。
【0010】涙液量Vと涙液3の表面の曲率半径rの関係は、角膜4及び瞼2が曲面であるため、Vが増加するとrも大きくなる。この関係が図1(C)、(D)に図示されており、涙液量Vが、V1からV2に増加すると、涙液表面の曲率半径もr1からr2に増大する。このときθ1、θ2は表面張力で決まる定数であり、ドライアイの重症度によって変化するが、rの変化に比較すると無視できるほどに小さい。
【0011】そこで本発明では、涙液表面(涙液メニスカス)の曲率半径rを測定することにより涙液量Vを検出するようにする。そのため、本発明では、涙液表面に格子像を投影し、その格子像を解析することにより涙液の物理量、すなわち涙液表面の曲率半径rを測定する。その原理構成が図2に図示されている。
【0012】図2(A)において、光制御手段としての格子12は、ランプ10からの光により対物レンズ11を介して照明され、涙液メニスカスのモデルとなる凹面鏡13に投影される。この凹面鏡により格子像14が形成され、格子像14が撮影レンズ15により撮像手段としてのカメラ16で撮像される。
【0013】今、(B)に示した半径rの凹面鏡(涙液メニスカス)からワーキングディスタンスWの距離にある高さdの格子は凹面鏡によりW1の距離にd1の像に変換される。よく知られた、2/r=(1/W)+(1/W1)の関係からW1=(rW)/(2W−r)が得られ、またd1/d=W1/Wの関係からd1=(d/W)×W1が得られる。
【0014】両式からd1=(d/W)×{rW/(2W−r)}
d1={dr/(2W−r)}となる。
【0015】ここで、W>>r(例えばW=24、r=0.3)ならば2W−r≒2Wとなり、d1≒(dr/2W)の近似式が得られ、r=(d1/d)×2Wとなる。
【0016】格子像d1がモニタにβ倍に拡大されて(C)に示したようにDの大きさになったとすると、D=β×d1であるので、r=(D/β)(2W/d)となり、モニタが例えば14型のテレビの場合にはβ=190.9となるので、r=(D/190.9)(2W/d)となる。
【0017】dは格子サイズ(格子ピッチ)で定数であり、またWはワーキングディスタンスで設計で決まる値であり、アライメントで多少変化するが、無視できるほどに小さい値であることから、モニタで表示される格子像の大きさDを測定することにより涙液量Vに関係した涙液メニスカスの半径rを知ることができる。
【0018】上述した原理に基づいて具体化した装置が図3に図示されている。同図において、ハロゲンランプ21からでた光は、熱線をカットするフィルタ22、偏光板23、照明レンズ24を介して、ハーフミラーあるいは穴開きミラー等のミラー25で反射され、対物レンズ26を介して光制御手段としての複数の開口を有する格子27を照明し、照明された格子27は下眼瞼36に溜まる涙液メニスカス28に投影される。
【0019】この格子27は、図4に示したように、D1×D2の大きさの基板にD3×D5の同じ大きさのスリット状開口を複数個(5個)それぞれD4の距離を隔てて等間隔に配置し、上下にD6の余白を、また左右にD7の余白を設けた格子縞である。各寸法は、例えば、D1=48.0mm、D2=15.0mm、D3=9.0mm、D4=4.0mm、D5=4.0mm、D6=6.0mm、D7=3.0mmに設定される。この例では、図2(B)に示したd(格子ピッチ)はd=D4+D5=8mmとなる。
【0020】投影された格子27からの光は涙液メニスカス28で反射され、涙液メニスカスの近傍に格子像を形成する。この涙液メニスカスにより形成された格子像は、対物レンズ26、ミラー25を通過して撮影レンズ29により偏光板30を介してCCDカメラ31で撮像され、その像が演算回路32で画像処理される。例えば、この演算回路で画像信号を2値化して各開口の画素の座標位置を求めることによりd=D4+D5に対応したCCDカメラ上での格子像ピッチを求めることができる。また、演算回路32は、これにレンズ倍率を考慮して涙液メニスカスにより形成される格子像ピッチd1を演算し、上記r=(d1/d)×2Wの式に従って涙液メニスカス28の曲率半径rを演算する。
【0021】上述したように、格子像が結像される際、涙液メニスカス8が凹面鏡の役割をしているので、格子像の結像倍率は涙液メニスカスの曲率半径rによって変化する。涙液表面の曲率半径を求めることにより、ドライアイの重症度を定量的に評価することが可能になる。各演算結果ないし評価は、モニタ33に表示することができる。
【0022】なお、照明ないし投影系に配置される偏光板23と、撮像系に配置される偏光板30は偏光方向が同じ向きになっており、同じ方向の光を透過するように設置される。涙液メニスカスが液体で、反射の際、偏光状態がくずれにくいので、これらの偏光板を用いることにより撮像時のS/Nを向上させることができる。
【0023】図5には、格子の他の例が図示されており、この例では、格子ピッチが細かくされ、例えば、D1=48.0mm、D2=15.0mm、D3=9.0mm、D4=2.0mm、D5=2.0mm、D6=7.0mm、D7=3.0mmに設定され、格子ピッチは4mmとなる。
【0024】ワーキングディスタンスWを24mm、格子ピッチを図4に示した8mmとし、モニタ33を14インチ型として、rがどの程度正確で有るかを、半径0.30mmのガラス管及び半径0.15mmのピアノ線を図3の装置を用いて(演算装置32は使用しない)実測した結果を以下に示す。14インチ型のモニタの場合、β=190.9となるので、上述した式から半径rはr=(D/190.9)×{(2×24)/8)
=0.0314×Dとなる。
【0025】半径0.30mmのガラス管の場合、モニタで観察される格子ピッチDを、例えば定規により10回測定した平均値が9.55mmであったので、r=0.0314×9.55=0.30mmとなり、その値は正確であった。また、半径0.15mmのピアノ線の場合、Dの10回の計測平均値は4.58mmであり、r=0.0314×4.58=0.14mmとなった。、誤差は僅か0.01mmであり、かなりの精度でメニスカスの半径を計測できることが確認できた。
【0026】なお、涙液メニスカス28は、横長の形状になっており、また目尻の方へ行くと角度が変わるので、格子27を回転可能とすることで、図6に図示したように、涙液表面に投影される中央部の格子像40と周辺部の格子像41とでその向きを変化させるようにする。例えば格子開口を直交する直線が一点に集まるように変化させることにより涙液照明光を効率よく涙液メニスカスに導くことができる。
【0027】
【発明の効果】以上説明したように、本発明では、涙液表面に投影された開口像に基づいて涙液の曲率半径などの物理量を演算しているので、ドライアイの重症度あるいはその変化を定量的に評価することが可能になる。
【出願人】 【識別番号】000163006
【氏名又は名称】興和株式会社
【識別番号】598037400
【氏名又は名称】横井 則彦
【出願日】 平成10年(1998)3月20日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 卓
【公開番号】 特開平11−267102
【公開日】 平成11年(1999)10月5日
【出願番号】 特願平10−71615