| 【発明の名称】 |
超音波ファントムおよびその製造方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】カワン・スタント
【氏名】中島 英洋
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| 【要約】 |
【課題】医用超音波の研究、関連装置、器具等の開発製造、医師あるいは技術者等の訓練用のために供する、人体に近似した音響特性に調整することが容易で経時安定性に優れ、かつ耐温度特性が良好な超音波ファントムおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】母材にウレタン系水膨潤性樹脂を用い、音響特性を人体のそれに近似させるため、カーボンマイクロビーズ、グラファイト、ガラスビーズ、樹脂製微小中空球などの微粉体を母材であるウレタン系水膨潤性樹脂水溶液に混入する。上記混合液を70℃で12時間乾燥させ、次に110℃で30分間の熱処理を行い、熱処理後の樹脂に酸性水(Cl2、HClO、ClO−を含む)を100分以上吸収させることを特徴とする、超音波ファントムである。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】母材にウレタン系水膨潤性樹脂を用いることを特徴とする、超音波ファントム。 【請求項2】音響特性を人体のそれに近似させるため、カーボンマイクロビーズ、グラファイト、ガラスビーズ、樹脂製微小中空球などの微粉体を前記母材の水溶液に混入することを特徴とする、請求項1記載の超音波ファントム。 【請求項3】前記母材の水溶液を固体化させ、水に不溶性であるが膨潤性を有し、また音響特性を安定させるために、乾燥により水を除去し、さらに熱処理を行うことを特徴とする、請求項1又は2記載の超音波ファントム。 【請求項4】前記母材の熱処理後に吸水させる液体に酸性水を用いることを特徴とする、請求項3記載の超音波ファントム。 【請求項5】音響特性を安定させるために、前記母材の熱処理後に酸性水を吸水させる時間を100分以上必要とすることを特徴とする、請求項4記載の超音波ファントム。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、医用超音波の研究、関連装置、器具等の開発製造、医師あるいは技術者等の訓練用のために供する超音波ファントムに関する。 【0002】 【従来の技術】医用超音波の研究、関連装置、器具等の開発製造、医師あるいは技術者等の訓練の度に人体を用いることは、物理的にも経済的にも問題があるため、一般に上記目的のために超音波ファントムが用いられている。 【0003】この超音波ファントムは、音速や減衰といった音響特性が人体の生体組織のそれに近似した模擬体であり、通常、母材として寒天やゼラチンなどのゲル状の媒質や、あるいはゴム系の媒質を使用している。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、寒天やゼラチンを母材としたファントムは、グラファイトやポリスチレンなどの微粒子を加えたり、音速の調整のためにn−プロパノールなどを加えたりして、容易に音響特性を調整することが可能である反面、腐敗などが原因である経時変化があり、長期間の使用が不可能であるという問題があった。 【0005】また、癌等の悪性腫瘍や前立腺肥大症等の良性腫瘍という生体の異常な細胞組織で構成される患部を治療するための方法として患部に超音波を照射し、43℃付近の温度で所定時間加温することによって患部を治療する温熱治療(超音波ハイパーサーミア)に用いるファントムは、43℃付近の温度で長時間の間、安定した音響特性を保持する必要がある。しかし、寒天やゼラチンという融点の低い材料を母材としたファントムは、43℃付近の温度では溶解してしまうため、超音波ハイパーサーミア用のファントムとしては使用できないという問題もあった。 【0006】一方、ゴム系の超音波ファントムは腐敗の問題もなく、音響特性が長期間安定し、また43℃付近の温度でも溶解することがなく、超音波ハイパーサーミア用ファントムとしても使用することができる反面、人体に近い音響特性の確保、調整が困難であるという問題があった。 【0007】本発明は、このような従来の問題点を解決するためになされたもので、母材にウレタン系水膨潤性樹脂を使用することにより、寒天やゼラチン製のファントムでは困難であった腐敗の防止や高温条件下での溶解の軽減、さらにゴム系のファントムでは困難であった音響特性の調整が容易な超音波ファントムを提供することを目的とする。 【0008】 【課題を解決するための手段】この目的を達成するために本発明の超音波ファントムは、母材にウレタン系水膨潤性樹脂を用い、それを溶解する媒質に水を使用し、そこに目的に応じた音響特性になるように微粉体を混入し、その混合液を乾燥させて水を除去し、さらに熱処理を行って架橋状態を形成し、その後pH3〜5の酸性水を100分以上吸水させることによって安定した音響特性を実現することを特徴とする。 【0009】すなわち、本発明の超音波ファントムは母材に吸水性ポリマーであるウレタン系水膨潤性樹脂を使用することにより、腐敗の防止ができる。また、高温下での溶解の軽減、さらにゴム系材料では困難であった音響特性の調節が容易に実行可能である超音波ファントムの作製が可能となる。 【0010】 【発明の実施の形態】図1は、本発明の超音波ファントムの一実施形態の製造方法を示したフローチャートである。 【0011】本発明の超音波ファントムの母材としては、吸水性ポリマーの一つであるウレタン系水膨潤性樹脂を用いる。吸水性ポリマーは、一般的に農園芸用保水剤やおむつ、コンタクトレンズなどに使用されている。吸水性ポリマーは、合成高分子であるため、寒天やゼラチンと比べて耐久性がある。したがって、寒天やゼラチンよりも長期にわたる経時安定性が期待できる。また、添加物を分散させやすいという利点もある。 【0012】ファントム内に気泡が含まれていると、それは音響特性を不安定にさせる原因の一つとなるため脱泡が必要となるが、ウレタン系水膨潤性樹脂を溶解させた水溶液の粘度は小さく、脱泡しやすいという利点もある。 【0013】本発明の超音波ファントムの製造方法は、図1に示すように、水にウレタン系水膨潤性樹脂を溶解させ、十分に混合後、型に入れ脱泡を行う。その後、水溶液の水分を蒸発させるために乾燥させ、さらに熱処理を行い、その後にpH3〜5の酸性水を100分以上吸水させることにより、人体に近似した弾性を有し、また比較的音響特性が安定している弾性体を形成することができる。 【0014】水溶液の水分を蒸発させて乾燥させたウレタン系水膨潤性樹脂は、その後に熱処理を行うことによって、分子が相互に結びつき、架橋による網目構造を形成することによって、水に不溶性であるが膨潤性を有し、網目構造の内部に酸性水を保持するようになる。 【0015】上記酸性水としては、純水やイオン交換水に、塩素(Cl2)、次亜塩素酸(HClO)、次亜塩素酸イオン(ClO−)のいずれかを添加したものを用いる。この酸性水のpHは3〜5程度である。ウレタン系水膨潤性樹脂に酸性水を吸水させるのは、これによって腐敗が抑圧され、ファントムの音響特性等の経時安定性が大幅に改善できるためである。 【0016】図1は本発明の第1の実施形態を示し、水にウレタン系水膨潤性樹脂を入れて、十分に溶解、混合後、型に入れ脱泡を行う。その後、水溶液の水分を蒸発させるために70℃で12時間乾燥させる。次にウレタン系水膨潤性樹脂が水に不溶性であるが膨潤性を有し、その架橋による網目構造の内部に水を保持することができるようにするため、110℃で30分間熱処理を行う。その後pH3〜5の酸性水を100分以上吸水させる。 【0017】ウレタン系水膨潤性樹脂による網目構造を形成するための熱処理を行った後、酸性水を吸水させた時間と音速、減衰という音響特性との関係を図2、図3に示すが、吸水開始から約100分までは音速、減衰とも急激に変化した。しかし、吸水開始から約100分を経過すると音響特性が安定してくる。すなわち、ウレタン系水膨潤性樹脂をファントムとして使用するには100分以上の吸水時間をとる必要があることがわかる。 【0018】得られた弾性体の音速は、1520(m/s)であり、人体の脂肪や肝臓や腎臓、あるいは筋肉という軟部組織の音速に近似した値となっている。しかしながら、この弾性体の減衰係数は上記の人体の軟部組織の一般的な減衰係数0.5〜1.3(dB/cm/MHz)と比較すると、約0.39と少し小さかった。 【0019】図4は本発明の第2の実施形態を示し、減衰係数まで人体の軟部組織の値に近似させる必要がある場合には、上記の第1の実施形態に準拠して、水にウレタン系水膨潤性樹脂を溶解させ、十分に混合した後、カーボンブラックのパウダーでコーティングされたカーボンマイクロビーズ等の超音波に対する散乱特性あるいは吸収性を有する微粉体を混入させる。 【0020】図5には、カーボンマイクロビーズの微粉末を混入した超音波ファントムの音速、減衰と超音波ファントム母材中における混入カーボンマイクロビーズの重量濃度との関係を表す測定データが示されている。図5によれば、混入カーボンマイクロビーズの重量濃度が増加すると、音速、減衰とも増加する傾向を示し、この傾きから人体の脂肪、腎臓、肝臓等の軟部組織の音響特性を実現するためのカーボンマイクロビーズの混合比の目安がわかる。 【0021】また、図6には、本発明の超音波ファントムの音速の経時安定性に関する測定データが示されている。この図6より、本発明の超音波ファントムの音速は、製作後180日以上経過しても、ほとんど変化しないことがわかる。 【0022】さらに、本発明の超音波ファントムは、長時間の使用で内部に保持した水が蒸発等により減少しても、再び吸水させることによって吸水前の音響特性と同じ特性が安定して再現できるという特徴もある。 【0023】本実施形態では、母材であるウレタン系水膨潤性樹脂に混入する粉体としてカーボンマイクロビーズを混入する場合について述べてきたが、ガラスビーズ、樹脂製微小中空球樹脂粉末、金属粉末、その他母材と超音波特性の異なる粉体を混入した超音波ファントムが本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。 【0024】 【発明の効果】以上説明してきたように、本発明の超音波ファントムによれば、超音波特性を容易に調節可能であり、かつ経時安定性を有する超音波ファントムが作製可能である。また、超音波ハイパーサーミア用のファントムとしても、43℃付近の温度で長時間の間、安定した音響特性を保持することも可能となる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】593232206 【氏名又は名称】学校法人桐蔭学園
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| 【出願日】 |
平成10年(1998)3月17日 |
| 【代理人】 |
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| 【公開番号】 |
特開平11−262487 |
| 【公開日】 |
平成11年(1999)9月28日 |
| 【出願番号】 |
特願平10−108396 |
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